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東芝のニュース
*12:03JST 巴川紙 Research Memo(3):半導体・ディスプレイ関連事業は半導体実装用テープに強み
■巴川コーポレーション<3878>の会社概要
(2) 半導体・ディスプレイ関連事業
半導体・ディスプレイ関連事業は、半導体実装用テープ、半導体関連部品、FPD(フラットパネルディスプレイ)向け光学フィルムを3本柱に事業を営んでいる。半導体実装用テープはICメーカーやリードフレームメーカー、半導体関連部品は国内大手半導体製造装置メーカー、光学フィルムはFPD向け光学フィルムメーカーなどへ販売している。
同事業の中心はICチップ搭載用リードフレーム固定接着テープを核とする半導体実装用テープで、売上は同事業の55.1%を占める。これはリードフレームの中心部においたICチップとリードフレームのピンの先端を金線でワイヤボンディングする際に、リードフレームが触れることを防止し、平坦に維持するためのもの。1984年に発売を開始、国内だけでなく米国・韓国・東南アジアでも使用された。1989年に入り、ノートPCなどで多ピン化ニーズからQFP(Quad Flat Package;半導体パッケージの1種で、リードが4側面に伸びている)が成長し、急速に生産量が伸びた。またTAB(Tape Automated Bonding)テープを開発、1986年に上市し、1988年には受注が急増した。同部門の売上高は2001年3月期に全体売上の30%にまで高まり、同社収益に大きく寄与した。しかしその後はテープを必要面積分のみ利用するセグメント貼り方式に移行し伸び悩んだ。また半導体需要の中心がタブレットさらにはスマートフォンに移り、BGA(Ball Grid Array;リードの代わりにはんだボールで接続)を主とするFC-BGA基板が中心となり民生用向けも低迷した。ただし最近は信頼性の要求度が高い車載半導体などでQFPが増加している。
半導体関連部品については、売上構成比が12.4%(同)と小さいが、今後の成長性が高い分野。この中心は静電チャックと金属繊維不織布シートを組み込んだ製造装置用部材である。静電チャックは1987年に半導体製造装置メーカーからの開発依頼を受け、1991年に同社、東芝<6502>、東京エレクトロン<8035>で共同開発し上市した。静電チャックシートは静電気の吸着力でシリコンウエハを固定するシートで、プラズマエッチング加工で用いられる。生産数量は1995年当時月産数百台程度が、2000年には月産千台を超える規模に拡大し、トップシェアの地位を築いた。ただしウエハ市場が12インチに移行し、耐熱性、耐摩耗性、化学的安定性などでセラミック静電チャックが採用となり、同社は出遅れ伸び悩んだ。しかしここにきてレガシー半導体の拡大を受けて8インチ以下対応装置の稼働率が向上し、一定の売上高を確保している。なお開発中の金属繊維不織布シートを組み込んだ製造装置用部材は納入に向けた取り組みを行っている状況にあるが、開発中だった「新型静電チャック」は開発方針見直しとなり、当面は不織布シートの成長が鍵となる。
FPD向け光学フィルムは、1975年に粘着加工技術を生かしLCD偏光板粘着加工の事業を開発したことに始まる。1981年には電子ゲーム用なども受注し、車載用には耐熱性に優れた粘着加工なども増え事業拡大した。また2000年手前では大型FPDTVとしてPDP(プラズマディスプレイパネル)向けに期待がかかり、2001年にPDP用の電磁波シールド材を上市、PDPTVの拡大に伴い急拡大した。しかし光学フィルムはPDPがFPD市場を退場するなかで縮小、コストの重荷を背負う時期が続いた。現在は損益分岐点を下げ、高い利益を得られる体制にあるが、受注変動で収益のぶれが大きく安定しない事業となっている。なお、半導体・ディスプレイ関連事業における売上構成比は32.4%(同)となっている。
機能性シート事業は製紙、塗工紙、機能性不織布、ガムテープ、紙加工の5つに大別
(3) 機能性シート事業
機能性シート事業は、祖業の電気絶縁紙を含む製紙(2024年3月期の売上構成比24.0%)、磁気乗車券などを含む塗工紙(同12.3%)、機能性不織布(同17.1%)、ガムテープ(同20.9%)、紙加工(同25.6%)で構成されている。同事業は継続的な製紙事業の縮小から損失が続くなかで構造改善を進め黒字化を目指し、営業損失が縮小過程にある。同社は構造改革において、2022年3月に大型抄紙機をすべて停機し、小型抄紙機で小回りのきく体制を整えた。なお機能性不織布関連については成長分野として伸ばす。
機能性不織布は特殊抄紙技術(異種繊維沿抄紙、含浸、混抄、担持など)を生かし、新機能を有する湿式不織布などを開発・製造している。機能性不織布の開発自体の歴史は古く、1960年代初頭からの電気絶縁紙の高性能化を図る目的で合成繊維混抄紙を開発したことに遡る。1980年代前半には新素材ブームで、ステンレス繊維シートやフッ素樹脂繊維シートを開発したが、コスト高などで大きなビジネスにならずに推移してきた。その後、特殊繊維抄紙技術や粉体担持技術などを生かし、無機繊維断熱シートやガス吸着シートなどを開発、上市し事業として拡大してきた。なお2016年には、銅繊維シートを開発、ユーザー試験、評価を受ける体制もでき、今後の量産化が待たれる状況にある。またステンレス繊維シートは前述の半導体製造装置用部材に使用され、量産化で事業の本格拡大が期待される。
指紋認証カードや電子回路基盤内蔵カードなどで事業拡大
(4) セキュリティメディア事業
セキュリティメディア事業は、有価証券印刷やICカード、ポイントカード、プリペイドカードなどの製造、加工及び情報処理関連を展開している。2020年3月31日に昌栄印刷を連結子会社化したことで、2021年3月期より新セグメントとなった。
(5) 新規開発事業
2020年4月の組織改革で生まれた新事業。主にiCas関連製品の開発と販売を進めるなかで、事業部に移管する前に新製品が上市されたものなどを売上計上している。iCasは同社の強みである「抄く(抄紙技術)」と「塗る(塗工技術)」に電気物性のノウハウを融合させ、熱・電気・電磁波をコントロールし、電気電子機器・部品の故障・誤作動防止に貢献する製品群である。製品ブランド名「iCas」(アイキャス)は「Insulation」(絶縁)、「Conduction」(伝導)、「Absorption」(吸収)、「Solution」(解決)の頭文字を列記したもので、2015年に統一ブランドとして創設した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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(2) 半導体・ディスプレイ関連事業
半導体・ディスプレイ関連事業は、半導体実装用テープ、半導体関連部品、FPD(フラットパネルディスプレイ)向け光学フィルムを3本柱に事業を営んでいる。半導体実装用テープはICメーカーやリードフレームメーカー、半導体関連部品は国内大手半導体製造装置メーカー、光学フィルムはFPD向け光学フィルムメーカーなどへ販売している。
同事業の中心はICチップ搭載用リードフレーム固定接着テープを核とする半導体実装用テープで、売上は同事業の55.1%を占める。これはリードフレームの中心部においたICチップとリードフレームのピンの先端を金線でワイヤボンディングする際に、リードフレームが触れることを防止し、平坦に維持するためのもの。1984年に発売を開始、国内だけでなく米国・韓国・東南アジアでも使用された。1989年に入り、ノートPCなどで多ピン化ニーズからQFP(Quad Flat Package;半導体パッケージの1種で、リードが4側面に伸びている)が成長し、急速に生産量が伸びた。またTAB(Tape Automated Bonding)テープを開発、1986年に上市し、1988年には受注が急増した。同部門の売上高は2001年3月期に全体売上の30%にまで高まり、同社収益に大きく寄与した。しかしその後はテープを必要面積分のみ利用するセグメント貼り方式に移行し伸び悩んだ。また半導体需要の中心がタブレットさらにはスマートフォンに移り、BGA(Ball Grid Array;リードの代わりにはんだボールで接続)を主とするFC-BGA基板が中心となり民生用向けも低迷した。ただし最近は信頼性の要求度が高い車載半導体などでQFPが増加している。
半導体関連部品については、売上構成比が12.4%(同)と小さいが、今後の成長性が高い分野。この中心は静電チャックと金属繊維不織布シートを組み込んだ製造装置用部材である。静電チャックは1987年に半導体製造装置メーカーからの開発依頼を受け、1991年に同社、東芝<6502>、東京エレクトロン<8035>で共同開発し上市した。静電チャックシートは静電気の吸着力でシリコンウエハを固定するシートで、プラズマエッチング加工で用いられる。生産数量は1995年当時月産数百台程度が、2000年には月産千台を超える規模に拡大し、トップシェアの地位を築いた。ただしウエハ市場が12インチに移行し、耐熱性、耐摩耗性、化学的安定性などでセラミック静電チャックが採用となり、同社は出遅れ伸び悩んだ。しかしここにきてレガシー半導体の拡大を受けて8インチ以下対応装置の稼働率が向上し、一定の売上高を確保している。なお開発中の金属繊維不織布シートを組み込んだ製造装置用部材は納入に向けた取り組みを行っている状況にあるが、開発中だった「新型静電チャック」は開発方針見直しとなり、当面は不織布シートの成長が鍵となる。
FPD向け光学フィルムは、1975年に粘着加工技術を生かしLCD偏光板粘着加工の事業を開発したことに始まる。1981年には電子ゲーム用なども受注し、車載用には耐熱性に優れた粘着加工なども増え事業拡大した。また2000年手前では大型FPDTVとしてPDP(プラズマディスプレイパネル)向けに期待がかかり、2001年にPDP用の電磁波シールド材を上市、PDPTVの拡大に伴い急拡大した。しかし光学フィルムはPDPがFPD市場を退場するなかで縮小、コストの重荷を背負う時期が続いた。現在は損益分岐点を下げ、高い利益を得られる体制にあるが、受注変動で収益のぶれが大きく安定しない事業となっている。なお、半導体・ディスプレイ関連事業における売上構成比は32.4%(同)となっている。
機能性シート事業は製紙、塗工紙、機能性不織布、ガムテープ、紙加工の5つに大別
(3) 機能性シート事業
機能性シート事業は、祖業の電気絶縁紙を含む製紙(2024年3月期の売上構成比24.0%)、磁気乗車券などを含む塗工紙(同12.3%)、機能性不織布(同17.1%)、ガムテープ(同20.9%)、紙加工(同25.6%)で構成されている。同事業は継続的な製紙事業の縮小から損失が続くなかで構造改善を進め黒字化を目指し、営業損失が縮小過程にある。同社は構造改革において、2022年3月に大型抄紙機をすべて停機し、小型抄紙機で小回りのきく体制を整えた。なお機能性不織布関連については成長分野として伸ばす。
機能性不織布は特殊抄紙技術(異種繊維沿抄紙、含浸、混抄、担持など)を生かし、新機能を有する湿式不織布などを開発・製造している。機能性不織布の開発自体の歴史は古く、1960年代初頭からの電気絶縁紙の高性能化を図る目的で合成繊維混抄紙を開発したことに遡る。1980年代前半には新素材ブームで、ステンレス繊維シートやフッ素樹脂繊維シートを開発したが、コスト高などで大きなビジネスにならずに推移してきた。その後、特殊繊維抄紙技術や粉体担持技術などを生かし、無機繊維断熱シートやガス吸着シートなどを開発、上市し事業として拡大してきた。なお2016年には、銅繊維シートを開発、ユーザー試験、評価を受ける体制もでき、今後の量産化が待たれる状況にある。またステンレス繊維シートは前述の半導体製造装置用部材に使用され、量産化で事業の本格拡大が期待される。
指紋認証カードや電子回路基盤内蔵カードなどで事業拡大
(4) セキュリティメディア事業
セキュリティメディア事業は、有価証券印刷やICカード、ポイントカード、プリペイドカードなどの製造、加工及び情報処理関連を展開している。2020年3月31日に昌栄印刷を連結子会社化したことで、2021年3月期より新セグメントとなった。
(5) 新規開発事業
2020年4月の組織改革で生まれた新事業。主にiCas関連製品の開発と販売を進めるなかで、事業部に移管する前に新製品が上市されたものなどを売上計上している。iCasは同社の強みである「抄く(抄紙技術)」と「塗る(塗工技術)」に電気物性のノウハウを融合させ、熱・電気・電磁波をコントロールし、電気電子機器・部品の故障・誤作動防止に貢献する製品群である。製品ブランド名「iCas」(アイキャス)は「Insulation」(絶縁)、「Conduction」(伝導)、「Absorption」(吸収)、「Solution」(解決)の頭文字を列記したもので、2015年に統一ブランドとして創設した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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