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―市況底入れと加速する微細化投資、第2のレーザーテックを探す時がついに訪れた―
ここへ来て、3月の底値から堅調に推移してきた日経平均株価だったが、米中貿易摩擦や依然として収束の気配が見えない新型コロナウイルスの経済への影響を見極めたいとの思惑から上値が押さえられる展開となっている。しかし、半導体関連株は強い値動きを示すものが多い。米国株市場では半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株(SOX)指数が過去最高値に近い水準で推移している。また、東京市場では東京エレクトロン <8035> が連日で上場来高値を更新した。
こうした流れは、世界の半導体大手の投資意欲にも反映されている。米インテルや台湾積体電路製造(TSMC)などが相次ぎ2020年の設備投資を積み増している。 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界規模での外出自粛を受け、テレワークや動画配信、ゲームなどの利用により通信量が急増した。各社はインフラ整備に積極的であることからデータセンターに使用される半導体の関連企業には追い風が吹いている。株式市場ではこれを織り込む形で半導体関連株の物色人気が演出されている。とりわけ、半導体製造工程で主力となるマスクブランクス検査装置でほぼ商品シェアを独占するレーザーテック <6920> は、投資家から熱い視線が注がれている。
●ニッチ分野の王者レーザーテックの株価は10倍に
レーザーテックは10年6月期から抜本的な事業構造改革に取り組み、自社の強みを最大限に生かせる分野として半導体関連事業に経営資源を集中してきた。その結果として、17年6月期には収益ともに過去最高を更新した。ニッチ分野においてほぼ独占的ともいえるシェアナンバーワン企業となったことから、この頃から株式市場でも注目を集め始めた。これは17年秋口以降の同社株の長期上昇トレンドにも映し出されている。
同社は今年4月、今20年6月期の受注計画を従来の700億円から850億円へ引き上げた。半導体メーカーが次世代EUV(極端紫外線)リソグラフィーを用いた先端ラインの設備投資を継続するなか、マスクブランクス欠陥検査装置などの需要拡大が収益を押し上げている。17年前半の株価は1000円にも満たないが、今年6月には1万950円の最高値を形成しており、約3年で10倍以上に上昇したことになる。半導体関連で第2のレーザーテックとなる可能性を持つ銘柄を探し出すことは、投資する側にとっても大きな課題といえる。
●レーザーテック変身のきっかけとなった「EUV」
5G・AI時代では従来の4Gに比べて膨大なデータをスピーディーに処理する最先端のCPUが必要とされている。CPU性能向上のためロジック半導体の高集積化が必要不可欠となり、回路を描く線幅の微細化が進展している。その際に次世代技術として導入が進められているのがEUV露光技術だ。現在最先端の線幅は5ナノ(ナノは10億分の1)メートルだが、TSMCでは4月までにその量産を始めたとの報道もある。韓国のサムスン電子や米インテルも5ナノ半導体の量産に向けた投資に積極的な姿勢をみせている。
最先端のEUV露光装置が普及することにより、周辺の半導体製造装置や材料も更新されていく。レーザーテックはそのシンボルストックだ。同社は19年、微細化に加え、新材料・新構造の導入で高度化が進む半導体製造プロセスになくてはならないEUV用フォトマスクブランクス検査装置というニッチ分野を完全制覇した。
●シリコンサイクルに底打ち感も
米半導体工業会(SIA)が6月に発表した統計によると、半導体の世界4月売上高は前年同月比6.1%増の344億3000万ドル(約3兆7000億円)と3ヵ月連続で前年実績を上回っている。半導体市場はシリコンサイクルと呼ばれるほぼ4年周期で需給が循環することが知られている。今回サイクルの下落局面は18年後半から始まっており、半導体関連銘柄にとって株価との相関関係が高いシリコンサイクルの底打ちが確認できたことは買い安心感にもつながる。直近の株式市場は、業績に安定感のある主力株を中心に買われているが、中小型の半導体関連銘柄は業績変動率が高いことから株価の変貌余地も大きい。今の東京市場には、EUVなど技術革新をチャンスに大化けする第2のレーザーテックが眠っている可能性がある。
リードフレーム(半導体基板)大手の三井ハイテック <6966> はハイブリットカー用モーターコア金型の超精密加工技術などが世界から高い評価を得ている。リードフレームは半導体パッケージの内部配線として使われる薄板の金属部品。半導体チップを固定し、外部の配線との橋渡しの役目を果たすが、同社はこのリードフレームを、世界で初めて精密金型を使った打ち抜き(スタンピング)により低コストかつ高性能に生産することを可能にしたという。6月に発表した21年1月期第1四半期(2-4月)の連結決算は、経常損益1億8000万円の黒字(前年同期は2億2600万円の赤字)と黒字転換した。電子部品事業の急回復が要因。新型コロナウイルス感染症拡大を背景とする操業停止から早期回復した生産拠点を活用し供給不足に対応したことに加え、生産性向上や原価低減を進めたことも利益改善に大きく貢献したという。
ホロン <7748> [JQ]はフォトマスクと呼ばれるガラス板に刻まれた微細な回路パターンを、電子ビームで計測する検査装置を中心に業容拡大している。20年3月期は既存顧客からのEUV露光設備投資に関する引き合いが高いことなどを背景に、営業利益は前の期比77.9%増の14億4300万円と大幅増益となった。
THK <6481> は半導体製造装置や工作機械を動かすのに欠かせないリニアガイド(直動案内)が、世界シェアトップで5割超を誇る。5月に発表した20年1-3月期の連結最終損益が26億5500万円の赤字(前年同期は50億2000万円の黒字)になったと発表。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中国や欧州の工場を停止したことが響いた。ただ、足もとでは半導体などのエレクトロニクス向けを中心に受注が回復しており、業績の底打ち期待が浮上している。
半導体や光ファイバーなど最先端デバイスの製造用化学材料を製造・販売するトリケミカル研究所 <4369> は、半導体の微細化を多品種小ロット生産で対応する絶縁膜の材料で世界的シェアを誇る。5月下旬に発表した21年1月期第1四半期(2-4月)連結決算で、売上高22億8700万円(前年同期比10.3%増)、営業利益7億1300万円(同21.8%増)と2ケタの増収増益となった。5Gの商用化に伴い、スマートフォンやサーバーのメモリー容量が増加し、これが同社の高純度薬品の販売増につながっているようだ。
株探ニュース
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