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―感染予防で高まる価値、ニューノーマル実現へ競争活発化―
政府は新型コロナウイルス特措法に基づき全国に発令した緊急事態宣言について、14日に特定警戒となっていた愛知や福岡を含む39県で解除した。残る東京や大阪など8都道府県については21日をメドに専門家の評価を受け、31日の期間満了を待たずに解除される可能性がある。ただ、現時点では有効なワクチンや治療薬が確立しておらず、当面は新型コロナと共存する生活を受け入れざるを得ない。今後も感染予防への高い意識が維持されるとみられるなか、足もとでは人と人との接触を避ける「タッチレス(非接触)」製品や技術を投入する企業が相次いでいる。
●「非接触」がキーワードに
特定警戒が続く大阪府が段階的に休業要請を緩和するなど経済活動は徐々に再開されつつあるが、感染拡大の第2波への警戒感は根強く、正常化へのハードルは高い。こうしたなか、厚生労働省は長期的な闘いを想定した「新しい生活様式」を公表し、実践例として買い物では通販や電子決済を推奨しているほか、働き方ではテレワークやローテーション勤務などの活用を求めている。新型コロナは一般的に、感染者のくしゃみなどによる「飛沫感染」のほか、咳などを押さえた手で触れたものを介してうつる「接触感染」があり、新型コロナと共存するニューノーマル(新常態)では「衛生管理の徹底」「ソーシャルディスタンス(他者との距離を確保すること)の尊重」「タッチレスの実現」が主要なキーワードとなりそうだ。
不特定多数が利用する機器でのタッチレス操作に対する需要は以前からあったが、コロナ禍をきっかけに導入が加速するとともに、その利便性から社会生活に一層定着することが見込まれる。世界保健機関(WHO)によれば、新型コロナはプラスチックの表面で最大72時間、ボール紙では最大24時間存在するといい、不特定多数が使うものに対して「できれば触れたくない」とする心理的な抵抗感が更に顕在化しそうだ。東京都の小池知事は5日の会見で、非接触型技術を後押しし、関連企業によるイノベーションを促進する考えを示しており、タッチレス製品に使用されるセンサーに強みを持つ国内企業の世界市場での活躍が期待される。
●新技術の投入相次ぐ
日立製作所 <6501> は、ビル・マンション向けに新たに開発した 画像解析サービスをはじめとした製品・サービスをタッチレスソリューションとして体系化し、順次提供を開始する。具体的には、防犯カメラなどで顔認証を行う画像解析サービスや、ハンズフリータグ(携帯しているだけで入退出が可能なタグ)の活用により、建物エントランスの自動ドアやセキュリティーゲートの通過、エレベーターの呼び出しや行先階の登録、入退室管理システムの開錠などを非接触で行うことが可能になるという。
エレベーター向けでは、フジテック <6406> が4月から販売を開始した標準型マシンルームレス・エレベーター「エクシオール」に、手をかざすことで操作できる「非接触呼び登録」や「抗菌ボタン」などクリーンに利用するための機能をラインアップ。混雑状況を乗場で事前に把握できる「混雑度表示」を新機能として搭載し、ソーシャルディスタンスに配慮した利用が可能だ。
●ユビAIなどにも商機
また、アルプスアルパイン <6770> は、画面に直接触れなくても手を近づけるだけで入力操作ができるタッチレス操作パネルを医療・介護現場や公共施設に提案していく方針を掲げ、2021年頃の製品化を目指して市場調査を推進中。オプテックスグループ <6914> は、食品工場や医療施設のドア、倉庫の間仕切り、シャッターの開閉に利用する非接触スイッチ「CleanSwitch」の販売を4月から開始した。
ユビキタス AIコーポレーション <3858> [JQ]はこのほど、イスラエルのジャンゴ・コネクティビティー社が開発した非接触ヒューマン・マシン・インターフェース「MagiaTouch」の提供を開始した。これは機器メーカーやアプリメーカー向けの開発キットで、ユーザーがキーボードやマウスなどによって行う操作の代わりに、カメラやマイクからのインプットによるタッチレスでのインターフェースを実現するもので、今後の需要増が期待される。
このほか、キッチン用タッチレス水栓を展開するLIXILグループ <5938> 、静電容量式非接触型センサーを取り扱うジオマテック <6907> [JQ]、銅タッチセンサーを手掛ける凸版印刷 <7911> 、手の動きやサインを認識して電化製品などを動作させる組み込み機器向けのジェスチャー認識ソフトを提供する日本システムウエア <9739> などにも商機がありそうだ。
●触れない技術は他にも
不特定多数が使用する機器を触らないことは有効な感染防止策となるだけに、「触れない」製品・技術へのニーズはより一層高まることが予想される。そのひとつが 顔認証で、直近ではNEC <6701> が世界最高水準の精度を持つ顔認証と虹彩認証を組み合わせたマルチモーダル生体認証端末を新たに開発。グローリー <6457> はマスク着用でも本人認証が可能な顔認証エンジンを開発し、ネクストウェア <4814> [JQ]は米リアルネットワークスの顔認識システム「SAFR」を使用し新型コロナ対応を強化したソリューションを提供している。
これ以外では、空中にディスプレーなどを表示できる技術も見逃せず、3D(立体画像)用の特殊プレートを手掛けるアスカネット <2438> [東証M]、非接触サイネージシステムを展開するJMACS <5817> [東証2]に注目。
声による操作も感染リスクを抑制できることから、音声認識技術を持つフュートレック <2468> [東証2]、アドバンスト・メディア <3773> [東証M]、ネクストジェン <3842> [JQG]などもビジネス機会の拡大が見込めそうだ。
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