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―大阪IRは2030年開業、国際的観光拠点の誕生でビジネスチャンス急拡大へ―
大阪・関西万博の開幕が来年4月に迫るなか、開催地の「夢洲(ゆめしま)」に再びスポットライトが当たろうとしている。万博に関しては、さまざまな課題を抱えつつも、どうにか開催に漕ぎ着けそうだ。また、カジノを含む統合型リゾート(IR)については、2030年秋に予定通り開業することが確実視される状況で視界良好。万博+IRというビッグプロジェクトで、ドリームアイランド「夢洲」が輝きを増すなか、関連株のいまを点検した。
●多くの“出世株”を輩出
夢洲は大阪ベイエリアに位置する人工島で、税制優遇などの支援を受けることができる関西イノベーション国際戦略総合特区に指定されている。面積は約390ヘクタールに及び、甲子園球場約100個分という広大な埋め立て地だ。かつて、バブル経済の崩壊により開発が進まなかった夢洲が、いま大きく変わろうとしている。現在は、東側が物流拠点として活用されているが、万博に続き30年にIR事業がスタートすれば新たな国際観光拠点としての存在感を高めそうだ。近隣には、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)があり、観光拠点として大きなシナジーが期待される。
18年にフランス・パリで開催されたBIE(博覧会国際事務局)総会の投票で、25年万博の開催地が大阪に決定したことにより、会場となる夢洲の知名度が一気にアップ。また、夢洲をIRの候補地として大阪府・市が名乗りを上げたことで、株式市場での関心は更に熱を帯びることになる。そして、同島に用地を取得している銘柄を筆頭に、多くの“出世株”を輩出することになった。
●投資規模は1兆円、ビッグビジネスに奮起する関西圏
一時は暗雲が垂れ込めたカジノを含むIR事業だが、今年9月にカジノ施設などの整備・運営を行う「大阪IR」が、違約金なしで撤退できる解除権を放棄。加えて、万博の期間中もIR工事が行えるようになったこともあり、30年の開業に向けて大きく前進した格好だ。大阪IRは、米MGMリゾーツ・インターナショナル
賛否両論が渦巻くなか大阪IR事業はカジノに多くの関心が集まるが、IRは統合型リゾート(Integrated Resort)の略称で、国際会議場や宿泊施設、エンターテインメント施設なども設置される計画にある。今後、MICE(マイス)関連をはじめとして、さまざまな銘柄に投資家の注目が及ぶことになりそうだ。経済波及効果は、年間で約1兆1400億円を見込んでいる。
●山九、上組は業績好調でGO
かつて荒れ放題だった埋め立て地が万博誘致に成功し、そしていま国際的な観光拠点となることが見込まれており、夢の島がまさに宝の島へと変貌しようとしている。こうしたなか、株式市場では“土地持ち”企業に注目が集まった。物流用地を取得している山九 <9065> [東証P]、上組 <9364> [東証P]に投資家の視線が向かい、折に触れて株価を刺激している。また、夢洲関連ではヨコレイ <2874> [東証P]、櫻島埠頭 <9353> [東証S]、そして杉村倉庫 <9307> [東証S]などにも物色の矛先が向かった経緯がある。
この手の話では、往々にして思惑買いが先行するが、現在の業績はどうなのだろうか。山九は10月31日の取引時間中に発表した、25年3月期の連結業績予想の修正で、営業利益を365億円から390億円(前期比10.7%増)へ上方修正。機工事業でメンテナンスにおいてSDM(定期修理工事)の量が想定を上回る見込み。また、設備工事でのカーボンニュートラル案件の獲得なども収益を押し上げる。株価はこの発表を受け急伸、14%近く上昇し5332円で引けた。現在も5200円近辺で頑強展開を見せており、ここからの動向に期待感が高まる。
また、上組も今月13日の取引終了後、25年3月期通期の連結業績予想を上方修正。上期の実績を踏まえて、営業利益を300億円から313億円(前期比2.3%増)へ修正した。営業利益は減益予想から一転、増益を計画する。同時に自社株買いも発表しており、これらを好感した買いが流入し株価は急速に上げ足を強めている。
●夢洲+USJで良いとこどりの京阪HD
半年にも及ぶ万博開催、そして観光拠点を目指すIR事業は、関西圏のホテル業界にとっては大きな恩恵となる。関西の名門・ロイヤルホテル <9713> [東証S]や京都ホテル <9723> [東証S]はもちろんだが、ここでは京阪ホールディングス <9045> [東証P]に注目したい。
京阪HDは、関西2府1県での鉄道事業を中核に不動産、流通に加え、ホテルをはじめとするレジャー・サービス業を展開するが、インバウンド需要の拡大を受け業績も好調。傘下のホテル京阪は、夢洲に近いJRゆめ咲線のユニバーサルシティ駅前で、「ホテル京阪 ユニバーサル・タワー」を運営。同ホテルは、USJのオフィシャルホテルであることも、大きなポイントだ。同社は今月8日の取引終了後、25年3月期連結業績予想について、営業利益を355億円から392億円(前期比15.6%増)へ上方修正し、過去最高を更新する見込みだ。これを受けて株価は急伸、その後も上値指向を継続しており目が離せない状況だ。
●大林組、大成建は液状化対策工事に着手
大阪IR事業では、建設用地において昨年12月からゼネコン関西2強の竹中工務店(大阪市中央区)、大林組 <1802> [東証P]に加え大成建設 <1801> [東証P]が液状化対策工事に着手している。対策面積は建物直下となる約21ヘクタールで、28年ごろまで続く見通し。概算額は約255億円。
大林組が今月11日に発表した25年3月期上期(24年4~9月)の連結決算は、営業利益段階では前年同期比47.5%増の454億9700万円となり、通期では前期比17.2%増の930億円を計画する。関西発祥の大林組が、これから大阪IR事業の建設で、どの程度食い込むか関心が高まる状況だ。同社の株価は、前週末15日に2079円まで買われ最高値を奪回しており、投資家の熱い視線が向かう。
また、大成建の25年3月期連結業績は、営業利益で前期比3.3倍となる870億円を予想している。株価は、今月7日に7485円まで買われ年初来高値を更新。その後は調整局面入りしたものの、きょうは7日ぶりに反発し170円高の6746円で取引を終えている。
●出番を待つ日金銭などカジノ関連
現在は、来年に控える万博開催を前に、いわゆるカジノ関連株の影はいまひとつ薄い。しかし、万博という大きなイベントが終了した後は、夢洲で30年の開業を目指すIR事業に関心が移ることになる。その中核となるカジノ関連株だが、新型コロナウイルスの感染拡大の際には厳しい事業環境が続き苦汁をなめることになった。しかし、コロナ禍を経て成長ロードに復帰した銘柄も多い。
日本金銭機械 <6418> [東証P]は、大阪に本社を置く貨幣処理、硬貨計数機大手で紙幣鑑別機を手掛ける。同社は、今月8日に25年3月期上期(24年4~9月)の連結決算を発表。営業利益は前年同期比4.1倍となる37億5500万円に拡大し、通期計画の43億円に対する進捗率は87%に達した。主力市場であるゲーミング市場で、海外のカジノホテルなどにおける設備投資需要が高水準に推移。国内では、遊技場向け機器市場においてスマート遊技機に関連する周辺機器の需要が堅調だったことに加え、新紙幣の改刷対応に伴う製品の改修や更新需要が継続している。株価は底値圏からようやく浮上しているが、見直し機運が高まれば上値指向を強めそうだ。
また、パチスロなどメダル計数機最大手のオーイズミ <6428> [東証S]、貨幣処理機大手のグローリー <6457> [東証P]など、カジノ関連に関心が戻るなか再び脚光を浴びる可能性も大きく、注視しておく必要がありそうだ。
そのほかでは、舞台装置と遊戯機械大手の三精テクノロジーズ <6357> [東証S]にも目を配っておきたい。同社は、万博関連として多くの投資家の視線を集めてきた銘柄で、1970年の大阪万博でエレベーターやオートロード(動く歩道)をはじめ、舞台機構や各種遊戯機械を提供。更に、多くの博覧会での実績も豊富なうえ、地元大阪企業ということもあり、思惑先行で株価を刺激する場面もあった。大阪IRでは、エンターテインメント施設などの建設も予定されるだけに、今後再注目の機会が増える可能性もありそうだ。
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