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―幅広いワクチン接種業務のニーズ捉え、更なる活躍期待高まる企業群に注目―
1日から 新型コロナワクチンの3回目接種、いわゆるブースター接種がスタートした。まずは医療従事者を対象に進められ、その後に高齢者や一般対象者に順次拡大していく予定だ。3回目接種が始まるなか、新たな変異株であるオミクロン株が出現し世界を不安に陥れているが、ワクチンを製造するファイザー
●オミクロン株出現も重症化予防で効果
オミクロン株の感染拡大が世界を震撼させ、日本も国内での感染者確認を受け、外国人の入国原則停止という、いわば“鎖国”に再び舵を切った。デルタ株からオミクロン株への置き換わりが急速に進むなか、ワクチンメーカーも対応を急ぐが、直近ではファイザー幹部の発言として、ワクチン効果はオミクロン株にも有効であるとの見通しも伝わっている。また、国産ワクチンの開発を進める塩野義製薬 <4507> でも「オミクロン株用についても、製造の検討には入っている」(会社側)と話す。いずれにしても既存ワクチンでの3回目接種は重症化予防では効果的との見方は強く、スムーズな接種体制の構築が求められている。3回目接種について、岸田首相はきょう行われた所信表明演説で、「8ヵ月を待つことなく、できる限り前倒しする」と表明したことが伝わっている。現在までは2回目接種を完了した日から、原則8ヵ月以上経過した18歳以上が対象としていたが、経過期間を短縮することでワクチン接種のスピードを加速させる方針だ。
●MRT、医療従事者確保のニーズ継続へ
ワクチン接種をサポートする関連企業の業績については、コロナ禍にあっても堅調に推移している銘柄は少なくない。当然のことながら接種支援が本業ではなく、接種予約システムを支えるソリューション企業をはじめ、医療人材確保、会場設営などで、さまざまな分野の企業が支えている。
代表例としては、ワクチン接種のための医療人材の確保で、非常勤医師求人紹介サービスを手掛け、コロナ禍のなか「オンライン診療ポケットドクター」でも注目を集めるMRT <6034> [東証M]が挙げられる。同社は、ワクチン接種が本格化した当初、相次いで自治体から接種に向けた支援業務を受託し、医療人材の確保に努めている。11月12日、21年12月期業績予想の上方修正を発表。新型コロナワクチン接種に関する医療従事者確保のニーズ継続を見込むことを背景に、営業利益を前期比4.4倍となる11億5000万円とし、従来予想のレンジ(4億1000万~4億8000万円)を上回る見通しを示している。ただ、株価は9月1日に年初来高値2468円をつけた後は調整局面入り。ここにきては、全体相場の地合い悪もあり高値からの半値に近い1400円台まで下押ししている。業績も好調、ワクチン接種でも活躍場面も続くだけに押し目買いニーズを捉える可能性もありそうだ。
●「あくまで特殊要因」も一定の受注には期待
このように、3回目接種が始まりサポートに絡む企業に業績への寄与が期待されるなか、接種に絡むシステムを手掛ける企業の広報担当者は「接種関連業務による業績への好影響は、あくまで特殊要因」と冷静だ。契約期間は自治体や団体によって異なるが、1回目、2回目同様に3回目についても新たな契約を結ばなければならず、「他社への乗り換え、規模の縮小も考えられる。もちろん、一定の受注については期待している」(同)と話す。3回目については受注状況に変化があるかもしれないという慎重な見方だが、関連業務のノウハウを蓄積しているだけに、同一企業への発注の可能性は少なくないといえそうだ。
●ダスキンは幅広いニーズを捉える
ダスキン <4665> も新型コロナのワクチン接種支援で幅広いニーズを捉えている。同社はワクチン接種会場の設営から動線確保、更に「イベント衛生サービス」(検温設備、飛沫対策パネル、消毒剤、衛生マットなどの設置及び会場内の巡回衛生サービスなど)が全国のワクチン接種会場からの受注が好調だ。11月5日に発表した同社の22年3月期第2四半期累計の連結営業利益は前年同期比2.2倍の63億4600万円になり、通期計画の84億円(前期比80.6%増)に対する進捗率は76%に達している。同社では、ワクチン接種会場に絡む受注について、「自治体からの問い合わせ、引き合いは始まっている」(広報)と話す。株価は11月8日に直近高値2803円をつけた後、全体相場の波乱もあって値を崩すが、直近安値2610円を底に上値指向。
●ヒトコムHD、接種関連案件獲得で大幅増益に
家電・通信・食品などの販促支援が主力のヒト・コミュニケーションズ・ホールディングス <4433> も接種案件を取り込み業績に反映させている。21年8月期は、インバウンドやツーリズム分野が不振だった一方、アウトソーシング事業では政府・地方公共団体などから新型コロナワクチン接種関連案件を獲得したことに加え、デジタル事業分野の主力事業であるEC運用受託事業が好調だったことが寄与し、連結営業利益が前の期比52.0%増の47億8700万円と大幅増益で着地。22年8月期は販売・営業・サービス分野の事業環境が期中に改善すると予想し前期比4.4%増の営業利益50億円を計画している。株価は10月中旬に直近安値1732円をつけた後、急速に切り返し11月22日には2783円まで買われ年初来高値を更新。現在は上昇一服も、2400円近辺で頑強展開となっている。
●全研本社は接種専用予約管理システムで攻勢
6月にマザーズ市場に上場した全研本社 <7371> [東証M]も子会社のサイシードが開発した新型コロナワクチン接種専用予約管理システムの利用団体が増加し業績に寄与した一社だ。これに伴い、11月12日に発表した22年6月期業績予想で、営業利益を13億9300万円から17億5400万円(前期比37.8%増)へ上方修正している。同時に発表した第1四半期(7-9月)決算は、営業利益5億4000万円で着地した。同社株は、上場初日に1568円まで買われた後は冴えない展開が続き8月には909円まで売られた。11月25日には1235円まで買われたものの、ここにきて1000円近辺で一進一退。上値の重い展開が続くなか、再評価機運の高まりを待つ状況だ。
●日本ラッド、エコモット、NCS&Aにも注目
日本ラッド <4736> [JQ]は5月から新型コロナワクチン接種のクリニックにおける予約業務負担を大幅に省力化するAI完全無人音声自動電話予約システム「トルテル」の販売を開始し多くのクリニックや東京都府中市などの自治体で採用されている。11月10日には、主にクリニック向けである「トルテル」を、3回目接種に向け集団接種受付にもきめ細かく対応した「トルテルα」としてサービス化し、販売を拡大すると発表。短期間で実装可能なうえ、大量のコールも同時にさばける実績も含めて、多くの自治体での導入が期待されるという。11月1日に発表した22年3月期第2四半期累計の営業損益(非連結)は6300万円の赤字(前年同期は2億800万円の赤字)に赤字幅が縮小した。株価は下値模索の展開だが、じわり値ごろ感も。
そのほかでは、新型コロナワクチン保管用フリーザー対応型IoT無停電電源装置(UPS)を提供するエコモット <3987> [東証M]、自治体でのワクチン接種予約受付管理業務に向けた予約受付管理システムを手掛けるNCS&A <9709> [東証2]などにも注目しておきたい。
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