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トヨタのEV戦略加速、新成長ステージに立つ「系列部品・部材」関連 <株探トップ特集>

配信元:株探
投稿:2023/05/17 19:30

―佐藤社長「マルチパスウェイ戦略」強調、EVシフト推進で系列企業の注目度アップ―

 トヨタ自動車 <7203> [東証P]は10日に開いた2023年3月期の決算説明会で、30年までに電気自動車(EV)関連に5兆円を投資する方針を明らかにした。21年12月に示されたEV戦略では4兆円が掲げられていたが、わずか1年半で1兆円を積み増した。二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量削減が世界的な潮流となるなか、米欧勢をはじめとする大手自動車メーカーがガソリン車からEVにシフトする動きを加速していることが背景にあり、同社はEV市場での巻き返しを図る構え。こうした動きからトヨタ系列でEV関連の部品・部材を手掛ける企業に注目しておきたい。

●トヨタは30年までに5兆円投資

 トヨタは世界で販売するクルマの平均CO2排出量を19年比で、30年に33%以上減、35年には50%を超える削減レベルを目指すとしている。佐藤恒治社長は決算説明会の席上で、地域ニーズに応じて最適なパワートレインを提供する「マルチパスウェイ戦略」を強調するとともに、特に進展の速いEVについては「26年・150万台」を基準としてペースを定め、米国と中国を中心にラグジュアリーから小型車、商用車まで10モデルの投入を計画していることに言及。今後、新たな専任組織「BEVファクトリー」による次世代のEV開発を加速し、そのコンセプトを今秋に開催される「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー)」で示すとした。

 決算説明会での資料によれば、アジア・新興国の自動車市場は22年の1900万台から30年には2500万台に拡大する見通しで、同社はハイブリッド車(HEV)を軸に市場の成長を取り込み、収益基盤の強化を図る考え。また、同時に電池の原価低減も進め、EVの収益力を確保するとしている。会見に同席した宮崎洋一副社長は、30年に世界で350万台のEVを販売するという目標の達成に必要な投資額として、「26年・150万台」に向けては2兆5000億円、「30年・350万台」に向けては今の環境下でアップデートすると約5兆円になると述べた。

愛知製鋼 <5482> [東証P]

 電動車の普及に伴い、ガソリン車のエンジンに替わる電動車の駆動ユニットである電動アクスル(e-Axle)に使われるリチウム・コバルト・ネオジムといったレアメタルや電磁鋼板の資源リスクが懸念されている。こうしたなか、愛知鋼は特殊鋼やボンド磁石の素材技術を応用し、e-Axleの省資源化につながる研究開発に取り組んでおり、同社が開発した世界最強のボンド磁石「マグファイン」を使ったモーターは、電気抵抗率の高さと耐遠心力性に優れているため超高速回転が実現できるという。また、昨年には電動車の需要拡大を見据えて放熱部品の生産能力を増強している。なお、24年3月期の連結営業利益は前期比53.4%増の50億円が見込まれている。

ファインシンター <5994> [東証S]

 ファインシンは粉末冶金技術を用いて、製品の設計・製造・販売を行っている専業メーカー。生産性の高さ、高精度、耐摩耗性、耐熱性など数々の特性を生かし、全体の80%以上を自動車用部品として提供している。電動関連ではHEVのインバーターユニット内に配置される昇圧システム部品などを生産しており、HEV以外でも昇圧を必要とするプラグインハイブリッド車(PHEV)やEV、燃料電池車への展開が期待される。24年3月期は販売量の増加やロスの低減、構造改革の効果などから連結営業損益は8億円の黒字(前期は9億7300万円の赤字)になる予想だという。

ジェイテクト <6473> [東証P]

 ジェイテクトは高耐熱リチウムイオンキャパシタなどを手掛けているほか、昨年にはe-Axleに搭載される超幅狭軸受「JTEKT Ultra Compact Bearing」をリリース。直近ではe-Axleの更なる小型化・軽量化、ひいてはEVの航続距離向上につながる遊星減速キャリア一体「JTEKT Ultra Compact Diff.」を新たに開発したことを明らかにしている。「長期・中期経営計画」第1期の最終年度となる24年3月期の連結事業利益は前期比19.7%増の750億円となる見通しだ。

デンソー <6902> [東証P]

 デンソーはEV向けの駆動システム(変速機の油圧やシフト操作を制御するシステム)や、電源系システム(電気モーターや高電圧電池の充放電など車両全体を制御するシステム)をはじめ幅広く展開。直近ではSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体を用いたインバーターを開発したほか、ユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン(横浜市神奈川区)と車載パワー半導体の量産出荷を開始している。24年3月期は拡販効果に加え、固定費の抑制を推進し、連結営業利益予想は前期比19.7%増の5100億円としている。

アイシン <7259> [東証P]

 世界各国の電源構成、カーボンニュートラル達成に向けた政策、顧客のニーズなどのさまざまな要因により、最適な電動ユニットは地域ごとに異なるが、アイシンはEV・HEV・PHEV向けに電動ユニットをフルラインアップで揃え、あらゆる要望に対応できる開発体制を構築。同社が手掛けるe-AxleはトヨタのEV「bZ4X」などに搭載されており、第2世代はBluE Nexus(愛知県安城市)及びデンソーと共同開発している。24年3月期は電動化商品の増加などで収益体質の向上を図り、連結営業利益は前期比3.3倍の1900億円を見込んでいる。

●大豊工業、太平洋工などにも注目

 EVの普及を阻む要因の一つとして航続可能距離が挙げられるが、解決のカギを握るのが電池の高性能化と車体の軽量化だ。そこで注目したいのが、トヨタ向けを中心にプレス部品を提供する太平洋工業 <7250> [東証P]だ。同社はプレス成形領域の拡大とあわせ、構造解析技術を深化させているほか、アルミ材やガラス繊維強化プラスチック(GFRP)など新素材を用いた製品の加工に注力。また、電動車向けではプレス製品の軽量化に加え、樹脂製品ではモーター音などの防音・防振ニーズに対して新素材開発、工法開発・製品設計を進めている。

 このほかでは、トヨタ「bZ4X」に内装品が採用された実績のあるトヨタ紡織 <3116> [東証P]、充電ケーブルリールなどを扱う中央発條 <5992> [東証P]、電動コンプレッサーを手掛ける豊田自動織機 <6201> [東証P]、電動化製品に注力する大豊工業 <6470> [東証P]、航続距離延長の実現に向けて熱マネジメントや軽量化に取り組む豊田合成 <7282> [東証P]、自動車用リチウムイオン電池セル用ケース・カバーに関して冨士発條(兵庫県朝来市)と業務提携している愛三工業 <7283> [東証P]、関西学院大学とSiCパワー半導体ウエハーの研究開発会社を設立した豊田通商 <8015> [東証P]などもマークしておきたい。

株探ニュース
配信元: 株探
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