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品川リフラクトリーズのニュース
*12:39JST 品川リフラ Research Memo(9):高温技術分野で世界的トップランナーを目指す(1)
■品川リフラクトリーズ<5351>の中長期の成長戦略
2. サステナビリティ経営
気候問題が自然災害の激甚化に現われている。2022年は、8月にパキスタンが国土の3分の1が水没する大洪水に見舞われた。西ヨーロッパは、熱波による記録的な猛暑のため2万人超が死亡した。米国は1200年ぶりの巨大干ばつと連続する山火事が発生した。2023年5月の大型サイクロンにより、ミャンマーでは160万人の被災者が支援を必要としていると国連は国際社会に支援を求めた。イタリア北部では、36時間で半年分の降雨量を記録し、大洪水が発生した。イタリアのメローニ首相が、G7広島サミットを途中で切り上げ、帰国する事態になった。持続可能な社会を維持するために温室効果ガス排出量の削減とカーボンニュートラル実現は、世界的な共通課題となり、市民レベルから企業活動および国の政策に影響及ぼす不可避の巨大なメガトレンドとなっている。
(1) 日本政府の温室効果ガス削減目標と鉄鋼業などのウェート
日本政府は、2021年4月に2030年度の温室効果ガス削減目標(2013年度比)を以前の26%減から46%減へ改定した。部門別では、産業部門の目標が7%減から38%減へ拡大された。2020年度の産業部門のCO2排出量は、3億5,553万トンであった。業種別構成比は、鉄鋼が37%、化学が15%、機械が13%、セメント、窯業・土石が8%、その他が27%であった。窯業・土石に分類される同社の排出量は、全体から見れば微々たるものだ。顧客となる鉄鋼、化学、機械は社会になくてはならない基幹産業であるが、エネルギー多消費型であるためCO2排出量が多い。同社が世界最高水準の技術力とソリューションを提供することで需要先の高温プロセスにおけるCO2排出量削減に貢献することは、持続可能な社会の実現に大きく寄与することになる。
今後は、カーボンニュートラル実現目標がサプライチェーン全体に広がる。製造業の競争要因はQCDD(品質、コスト、納期、開発)と言われているが、開発ではCO2排出量削減が重要なファクターとなろう。米アップルは、世界21ヶ国にある事業所で直接、使用する電力(Scope2)を100%再生可能エネルギー由来(RE100)とした。Scope3となる取引先にも再エネ100%由来の電力使用を要請している。電子部品の村田製作所<6981>は、国際的なイニシアティブ「RE100」に加盟した。
国・地域のレベルでは、欧州連合(EU)が2022年末に環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける国境炭素調整措置(CBAM、国境炭素税)を導入することで合意した。鉄鋼とセメント、アルミニウム、肥料、電力、水素が対象となるが、対象品目の拡大を検討している。2023年10月から、EUに輸出する企業はその製品の排出量を当局に報告する義務を負う。2026~27年にはEUの排出量取引制度の炭素価格に基づき、排出量に相当する炭素税の支払いが始まる見通しだ。
日本製鉄は、2023年度からCO2排出量が実質ゼロの「カーボンニュートラルスチール」の発売をする。新設した電炉で、グリーン電力を使って生産する。電炉で最高級の電磁鋼板を造るのは、世界で初めての試みとなる。JFEスチールは、2023年度上期から製造プロセスにおけるCO2排出量を大幅に削減した鉄鋼製品「JGreeX」(ジェイグリークス)の販売を開始する。
(2) 同社のサステナビリティ経営
同社は、サステナビリティ、環境対策、女性活躍等のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)、人権等の取り組みを経営と表裏一体と捉えて経営計画を作成している。2022年6月には「気候変動リスク及び収益機会について」を開示した。気候変動への対応を重大な経営課題と受け止め、リスクに的確に対応するとともに、収益機会を積極的に活用していく。2050年度のカーボンニュートラル実現に挑戦するとし、2030年度のScope1・2を対象とするCO2排出量を2013年度の年52,900トンから26,000トンへと半減することを目指す。省電力機器への交換はもとより、グループの工場や倉庫などの施設に太陽光発電システムを設置するなど創エネも行う。焼成炉の燃料は、重油からLNGへ切り替える。また、不定形耐火物の販売を促進する。不定形耐火物は、定形耐火物の製造工程にあるプレス・焼成・乾燥におけるエネルギー消費が不要なため省エネとなるためだ。2025年3月期上期からのフル生産を目指して、37億円をかけて西日本地区の不定形耐火物の生産体制の最適化を進めている。新プラントの建屋建設、大容量設備の導入、操業の無人化や高速化により、生産性は現在の1.6倍と飛躍的に向上する。拡販と競争力強化だけでなく、CO2排出量削減にも寄与する。
(3) 需要先のCO2排出量削減に対する同社のソリューション
耐火物業界の大手である同社は、需要先のCO2排出量削減に貢献することでもトップランナーを目指す。同社の優位性は、耐火物、断熱材、エンジニアリング築炉技術の一貫対応である。環境配慮型商品には、顧客の操業時に熱ロス低減が図れる低熱伝導性商品、交換頻度が少ない高耐用製品、リサイクル原料を活用した製品などがある。耐火物の耐久(耐用)性を向上させ、耐火物の使用量削減や補修工事を減少させる。断熱材は、熱ロス対策となり省エネ効果を生む。エンジニアリング築炉技術では、最適なライニング(耐火物・断熱材)設計及び蓄積された築炉技術を提供する。顧客と使用後耐火物のリサイクルプロジェクトを推進し、バージン原料と置き換えることで産業廃棄物の発生量を抑える。今後は、セクター間の協業を促進し、一体販売をさらに強化する。
鉄鋼業は、資本集約型の装置産業であることから、新技術の開発はもとより、新型設備の実用化や関連インフラの整備などの資金力を問われる。政府は脱炭素への移行期に支援する対象を新技術の開発だけではなく、実機の製造・設置や周辺インフラの整備を行う資金力がある企業を支援の対象としており、同社にとって追い風となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<AS>
2. サステナビリティ経営
気候問題が自然災害の激甚化に現われている。2022年は、8月にパキスタンが国土の3分の1が水没する大洪水に見舞われた。西ヨーロッパは、熱波による記録的な猛暑のため2万人超が死亡した。米国は1200年ぶりの巨大干ばつと連続する山火事が発生した。2023年5月の大型サイクロンにより、ミャンマーでは160万人の被災者が支援を必要としていると国連は国際社会に支援を求めた。イタリア北部では、36時間で半年分の降雨量を記録し、大洪水が発生した。イタリアのメローニ首相が、G7広島サミットを途中で切り上げ、帰国する事態になった。持続可能な社会を維持するために温室効果ガス排出量の削減とカーボンニュートラル実現は、世界的な共通課題となり、市民レベルから企業活動および国の政策に影響及ぼす不可避の巨大なメガトレンドとなっている。
(1) 日本政府の温室効果ガス削減目標と鉄鋼業などのウェート
日本政府は、2021年4月に2030年度の温室効果ガス削減目標(2013年度比)を以前の26%減から46%減へ改定した。部門別では、産業部門の目標が7%減から38%減へ拡大された。2020年度の産業部門のCO2排出量は、3億5,553万トンであった。業種別構成比は、鉄鋼が37%、化学が15%、機械が13%、セメント、窯業・土石が8%、その他が27%であった。窯業・土石に分類される同社の排出量は、全体から見れば微々たるものだ。顧客となる鉄鋼、化学、機械は社会になくてはならない基幹産業であるが、エネルギー多消費型であるためCO2排出量が多い。同社が世界最高水準の技術力とソリューションを提供することで需要先の高温プロセスにおけるCO2排出量削減に貢献することは、持続可能な社会の実現に大きく寄与することになる。
今後は、カーボンニュートラル実現目標がサプライチェーン全体に広がる。製造業の競争要因はQCDD(品質、コスト、納期、開発)と言われているが、開発ではCO2排出量削減が重要なファクターとなろう。米アップルは、世界21ヶ国にある事業所で直接、使用する電力(Scope2)を100%再生可能エネルギー由来(RE100)とした。Scope3となる取引先にも再エネ100%由来の電力使用を要請している。電子部品の村田製作所<6981>は、国際的なイニシアティブ「RE100」に加盟した。
国・地域のレベルでは、欧州連合(EU)が2022年末に環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける国境炭素調整措置(CBAM、国境炭素税)を導入することで合意した。鉄鋼とセメント、アルミニウム、肥料、電力、水素が対象となるが、対象品目の拡大を検討している。2023年10月から、EUに輸出する企業はその製品の排出量を当局に報告する義務を負う。2026~27年にはEUの排出量取引制度の炭素価格に基づき、排出量に相当する炭素税の支払いが始まる見通しだ。
日本製鉄は、2023年度からCO2排出量が実質ゼロの「カーボンニュートラルスチール」の発売をする。新設した電炉で、グリーン電力を使って生産する。電炉で最高級の電磁鋼板を造るのは、世界で初めての試みとなる。JFEスチールは、2023年度上期から製造プロセスにおけるCO2排出量を大幅に削減した鉄鋼製品「JGreeX」(ジェイグリークス)の販売を開始する。
(2) 同社のサステナビリティ経営
同社は、サステナビリティ、環境対策、女性活躍等のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)、人権等の取り組みを経営と表裏一体と捉えて経営計画を作成している。2022年6月には「気候変動リスク及び収益機会について」を開示した。気候変動への対応を重大な経営課題と受け止め、リスクに的確に対応するとともに、収益機会を積極的に活用していく。2050年度のカーボンニュートラル実現に挑戦するとし、2030年度のScope1・2を対象とするCO2排出量を2013年度の年52,900トンから26,000トンへと半減することを目指す。省電力機器への交換はもとより、グループの工場や倉庫などの施設に太陽光発電システムを設置するなど創エネも行う。焼成炉の燃料は、重油からLNGへ切り替える。また、不定形耐火物の販売を促進する。不定形耐火物は、定形耐火物の製造工程にあるプレス・焼成・乾燥におけるエネルギー消費が不要なため省エネとなるためだ。2025年3月期上期からのフル生産を目指して、37億円をかけて西日本地区の不定形耐火物の生産体制の最適化を進めている。新プラントの建屋建設、大容量設備の導入、操業の無人化や高速化により、生産性は現在の1.6倍と飛躍的に向上する。拡販と競争力強化だけでなく、CO2排出量削減にも寄与する。
(3) 需要先のCO2排出量削減に対する同社のソリューション
耐火物業界の大手である同社は、需要先のCO2排出量削減に貢献することでもトップランナーを目指す。同社の優位性は、耐火物、断熱材、エンジニアリング築炉技術の一貫対応である。環境配慮型商品には、顧客の操業時に熱ロス低減が図れる低熱伝導性商品、交換頻度が少ない高耐用製品、リサイクル原料を活用した製品などがある。耐火物の耐久(耐用)性を向上させ、耐火物の使用量削減や補修工事を減少させる。断熱材は、熱ロス対策となり省エネ効果を生む。エンジニアリング築炉技術では、最適なライニング(耐火物・断熱材)設計及び蓄積された築炉技術を提供する。顧客と使用後耐火物のリサイクルプロジェクトを推進し、バージン原料と置き換えることで産業廃棄物の発生量を抑える。今後は、セクター間の協業を促進し、一体販売をさらに強化する。
鉄鋼業は、資本集約型の装置産業であることから、新技術の開発はもとより、新型設備の実用化や関連インフラの整備などの資金力を問われる。政府は脱炭素への移行期に支援する対象を新技術の開発だけではなく、実機の製造・設置や周辺インフラの整備を行う資金力がある企業を支援の対象としており、同社にとって追い風となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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