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PR好機で記念配の思惑も、「2026年周年企業」から有望株をセレクト <株探トップ特集>

配信元:株探
投稿:2025/12/23 19:30

―企業ブランド向上へメディア露出増加に期待、組織変革の節目で競争力強化なるか―

 年の瀬となり兜町は2026年の相場展望で話題は持ちきりとなっている。3月期決算企業であれば事業環境の予測を踏まえ、来期予算の精査を進めるところも多いはずだ。設立からの節目を迎える企業であればブランド力を高めるべく、効果的な広報活動の立案に邁進していることだろう。個別株投資において「周年企業」に対しては記念配当上乗せの思惑が広がりやすく、投資家からの人気は根強い。26年に節目を迎える周年企業のなかから、好パフォーマンスが期待される有望株をセレクトしていく。

●人的リソースの拡充に効果

 周年企業と一括りに言っても、10周年企業があれば150周年企業もあり幅広い。150周年企業となれば幾多の戦禍をくぐり抜けて戦後の高度経済成長期とバブル崩壊、失われた30年を経て、今も事業活動を継続している企業ということになる。数々のショックのなかで磨かれた経営知をもとに、変化する事業環境に適応し、着実に事業を成長させている企業となれば、中長期の投資家にとってはそれだけで魅力的な投資対象となる。

 50年前となると1976年だ。企業としての成長期にバブル景気が重なる。財テクに勤しんだ企業のなかには淘汰される企業もあった。96年はIT関連企業が勃興した時期であり、30周年企業はITバブルの崩壊と08年秋のリーマン・ショック、コロナショックを乗り越えたこととなる。

 多くの業界で人手不足が叫ばれている昨今、こうした風雪に耐えてきた企業は、働き手にとっては安心感がある。業績拡大を伴っている企業の場合、スタートアップよりも採用活動を優位に進められるという利点も併せ持つ。周年記念の広報活動は、自社の製品やサービスの認知度向上にとどまらず、人的リソースの拡充といった効果をもたらしうるものとなる。経営陣が社内外に将来の指針を示すとともに、組織変革に着手するための好機にもなる。

●相次ぐ記念配当

 周年企業といえば株式市場では「記念配当」を連想させる言葉である。証券界のガリバーである野村ホールディングス <8604> [東証P]は25年3月期の期末配当において、普通配当24円に創立100周年の10円を加えて34円(年間57円)とした。同業のいちよし証券 <8624> [東証P]は今年8月に創立75周年を、東海東京証券を傘下に持つ東海東京フィナンシャル・ホールディングス <8616> [東証P]が10月にグループ誕生25周年を迎え、それぞれ記念配当の実施を発表した。証券以外の周年企業においても、記念配当の発表が相次いでいる。26年は主要企業のうち、大日本印刷 <7912> [東証P]が創業150周年、川崎重工業 <7012> [東証P]が130周年、東レ <3402> [東証P]やクラレ <3405> [東証P]が創業100周年を迎える。もちろん、周年企業はこれらにとどまらない。

 ところで上場企業の株主還元姿勢に対し、マーケットが要求するレベルは年々切り上がっており、配当政策に関して企業側のプレッシャーも高まっている。周年企業の場合も記念配を巡る思惑があるだけに、従来通りの安定配当を行った場合、一定の失望感が生じるリスクがあることには留意が必要だ。

 保守的な戦略かもしれないが、過去の節目で記念配当の実施の有無に注目しつつ、業績拡大が期待できる銘柄を選別することが求められることになるだろう。これらを踏まえ、周年企業のなかから好業績が期待できる銘柄や、株価に出遅れ感のある銘柄を中心に、投資家の評価拡大の余地のある有望株をチョイスしていきたい。

●荒川化やたけびしに注目

 荒川化学工業 <4968> [東証P]は多くの薬品関連企業を輩出した大阪市・道修町で1876年に創業。来年は150周年の節目の年だ。松やにを精製した樹脂であるロジンを起点に、光硬化型樹脂や半導体向け先端材料、精密研磨剤などを展開。データセンター投資の活発化がファイン・エレクトロニクス事業の追い風となっており、高付加価値用の製品の拡販が期待されている。足もとの株価水準において配当利回りはすでに4%を超える。前期の政策保有株売却に伴う特別利益の反動などが響き26年3月期は前期比で最終減益予想だが、営業利益は2.6倍と収益性は大きく改善する見通しだ。

 たけびし <7510> [東証P]は三菱電機 <6503> [東証P]系商社でロボット・装置や半導体、エレベーター、放射線がん治療装置など幅広い製品を取り扱う。三菱特約店として1926年に創業。来年は100周年となる。足もとではインド向けデバイス事業や医療関連ビジネスが好調で、防衛関連向けなどで非破壊検査装置も伸長しているという。26年3月期の経常利益は7%増を予想。23年3月期の過去最高益に肉薄する。

 チノー <6850> [東証P]は計測制御機器や温度・湿度センサーなどを製品群に持ち、燃料電池や水素を製造するシステムの評価装置も手掛ける。千野製作所としての会社設立から来年で90周年。中期経営計画最終年度の27年3月期に配当性向を40%(26年3月期予想36.1%)に高める方針を示し、取得上限86万株(自社株を除く発行済み株式の約5%)の自社株買いと株式2分割、株主優待の実質拡充に踏み切るなど、株主還元と流動性向上に積極的に取り組んでいる。90周年が現中計の最終年度となることから、今後100周年に向けた新たな成長ビジョンをどう示すのか、注目されることとなる。

 スギホールディングス <7649> [東証P]は中部地方を本拠としてドラッグストア「スギ薬局」を展開。愛知県西尾市で1976年に創業し、来年に創業50周年を迎える。26年2月期の最終利益は前期比7割増で連続最高益更新を計画。PER(株価収益率)は15倍近辺とドラッグストア銘柄のなかでは割安な水準に映る。

 富士急行 <9010> [東証P]は富士急ハイランドをはじめ富士山周辺の観光施設や鉄道・バス事業を展開。1926年創業で来年は100周年だ。日中関係の悪化に伴い、インバウンドの失速懸念から株価は11月以降に調整色を強めた。しかしながら来年は富士急ハイランドに「リラックマ」や「すみっコぐらし」、「たれぱんだ」などサンエックスキャラクターの世界観を楽しめる新エリアが開業する予定で、集客増による業績押し上げ効果が期待される。中国人観光客需要の鈍化を日本人や他の外国人観光客により補い、業績の下振れが回避されれば、株価は反騰攻勢を強めそうだ。

株探ニュース
配信元: 株探

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