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サカタインクス、通期は前年比減益も増収着地、2023年12月期は下期の回復を想定し増収増益予想
目次
上野吉昭氏:サカタインクスの上野でございます。本日はお忙しい中、誠にありがとうございます。
2022年は昨年に引き続き、原材料価格をはじめとしたさまざまなコストの上昇により、事業環境の厳しい状況が続きました。一方で、2030年を見据えた「長期ビジョン」に基づき、環境配慮型製品を中心としたパッケージ用インキと機能性材料の拡販とともに、新規事業の確立に向けた基盤作りを進めました。
これらの取り組みの詳細について、スライドにしたがってご説明します。
1-1 連結実績
2022年12月期の連結業績です。印刷インキや機能性材料の拡販が進み、販売価格の改定や円安による為替換算の影響を大きく受け、売上高は2,155億円、前期比18.8パーセントの増加となりました。
利益面では、販売数量の増加による利益の増加があったものの、サプライチェーンの混乱や需給バランスの悪化に加え、ウクライナ問題による原油価格の高騰などがありました。そのため、原材料価格が想定以上に上昇し、特に欧米を中心に物流コストや人件費が著しく増加しました。
一方で、販売価格の改定も進めましたが、すべての上昇分を補うまでには至っておらず、現在も継続して価格改定を進めています。結果として、営業利益は41億円、前期比44.4パーセントの減少となりました。
1-2 前期比 要因別増減
売上高と営業利益の増減要因です。売上高は、価格改定に伴うインキ販売単価の増加で147億円、円安による為替換算の影響で209億円の増加となり、前期比341億円の増収となりました。
営業利益は、インキ販売単価で146.6億円の増加となったものの、原材料や製造経費、物流費、販管費といったインキコストの増加で182.7億円の減少となり、前期比32.9億円の減益となりました。
1-3 四半期別売上高・営業利益
ここ数年間の四半期ごとの推移から、現在の状況をご説明します。新型コロナウイルス感染症が蔓延した2020年以降、原材料価格の高騰をはじめ、さまざまな要因でインキコストが上昇しています。しかし、2022年は各国での経済活動の活発化に伴う需要増や、パッケージインキの拡販、円安による為替換算の効果もあり、売上は伸びています。
一方、インキコストの増加により、第1四半期まで回復傾向にあった営業利益は減少しました。また、第4四半期後半には、アメリカの金融引き締めによる市況の急激な悪化により、消費が落ち込んだことで、販売が減少した点も想定外の減少の一因となりました。
1-4 コスト上昇の背景と利益影響
コストと価格改定の状況についてご説明します。2017年から多少の変動はあるものの、基本的には原材料価格が上昇しており、それに対して価格改定やコスト削減の取り組みを進めてきました。
2022年も期初の段階で利益をかなり圧迫すると予想していましたが、ウクライナ問題の発生により、インキコストのさらなる急激な上昇が起きました。ほかにも、ユーティリティコストの上昇、インフレによる物流コスト、人件費の著しい増加が業績を下押ししました。
過去3年間はさまざまなコスト削減に努めたものの、原材料や諸経費を合わせたインキコストとして248億円も増加しました。
これに対し、グループ全体で価格改定に努めたことで204億円改善したものの、すべてを補うまでには至っておらず、依然として利益の改善が必要な状況が続いています。今後も価格改定を継続しつつ、国内拠点の統合・再編や生産設備の合理化、人員の最適配置、同業各社との業務提携なども含め、効率化に向けた取り組みを進めていきます。
1-5 セグメント別売上高・営業利益
各セグメントの業績です。全体の概要はスライドのとおりです。次ページから個別にご説明します。
1-6 印刷インキ・機材(日本)
はじめに、日本セグメントです。パッケージ分野のグラビアインキは、単身世帯の増加や内食関連の需要増に伴い個包装化が進んでいるほか、健康志向の高まりによるヘルスケア関連製品の増加などにより、販売が伸びています。
フレキソインキも、経済回復により段ボールが堅調でした。また、ファーストフードチェーンをはじめとした企業や消費者の環境意識の高まりにより、ボタニカルインキを使用した紙袋などの採用が増加しています。このようにパッケージ用インキが堅調な一方で、新聞インキやオフセットインキは厳しい状況が続いています。
営業利益については、パッケージ関連のインキ販売が好調で、価格改定も進めたものの、原材料価格の上昇、情報メディア関連が低調であったことなどから減益となりました。
1-7 印刷インキ(アジア)
アジアセグメントです。上海のロックダウンによるパッケージ用インキの販売の落ち込みや中国経済の悪化により、情報メディア関連が低調でした。しかし、アジア全体としては、インドネシアやベトナムなどを中心にパッケージ用インキの拡販が進み、バングラデシュの新工場も順調に稼働するなど、多くの地域で堅調に推移して増収となりました。
営業利益は、販売数量の増加に加え、価格改定の効果が大きかったものの、想定以上に原材料が高騰したことにより減益となりました。
1-8 印刷インキ(米州)
米州セグメントです。金属缶用インキは、環境意識の高まりのほか、低アルコール飲料やエナジードリンクなどの需要増加などからアルミ缶飲料の需要が依然として高く、それに伴い販売が伸びています。
パッケージ用インキは第3四半期まで好調に推移したものの、第4四半期において急激な消費の冷え込みにより販売が大きく落ち込みました。
結果として、販売価格の改定と円安による為替換算効果により増収となりましたが、営業利益は価格改定の効果が大きく寄与したものの、原材料高や物流コスト、人件費などがその効果を上回って増加したことにより減益となりました。
1-9 印刷インキ(欧州)
欧州セグメントです。金属缶用インキ、パッケージ関連のインキともに販売が堅調に推移したことに加え、販売価格の改定も寄与したことで増収となりました。
営業利益は、販売数量の増加と価格改定効果が寄与しましたが、原材料高の影響に加え、物流コストや人件費、特に電気やガスといったユーティリティコストの増加により営業損失となりました。
1-10 機能性材料
機能性材料セグメントです。カラーフィルタ用顔料分散液は、パネルディスプレイ需要の減少が影響し、販売が伸び悩みました。一方、インクジェットインキは引き続き海外を中心に、新型コロナウイルス感染症の影響によって落ち込んでいた広告需要が回復し、高付加価値製品の投入により拡販が進みました。
また、トナーもオフィス需要が海外を中心に上向いてきたことなどから前年を上回りました。営業利益は、デジタル印刷材料の販売が全般的に増加したものの、原材料高の影響を受けたことなどから減益となりました。
1-11 連結貸借対照表の主な増減・ 連結キャッシュフロー計算書
連結貸借対照表およびキャッシュ・フロー計算書は、スライドに記載のとおりです。
2-1 通期業績予想
2023年12月期の連結業績予想についてご説明します。今期はウクライナ問題や世界的なインフレの加速、アメリカの金融引き締めによる金利の上昇などが経済活動の重しとなることが見込まれます。上期は引き続き厳しい状況が続くものの、下期には緩やかに回復が進むと想定しており、増収増益を予想しています。
2-2 通期予想 要因別増減(前期比)
主な増減要因です。上期の日本セグメントでは、原材料価格の上昇がピークとなり、連結では通年でユーティリティコストや人件費が世界的に高いレベルを維持すると見られ、インキコストで55.4億円の上昇を見込んでいます。
一方、価格改定に継続して取り組むことで50億円、底堅い需要のあるパッケージ用インキや拡販が進む金属缶用インキの販売量増加により26.9億円の増加を見込んでいます。
2-3 セグメント別 通期業績予想
セグメント別の予想は、スライドに記載のとおりです。日本は上期に原材料価格上昇のピークを迎えるものの下期には落ち着き、さらに価格改定効果によって年間の利益はほぼ相殺されると考えています。
アジアは原材料価格がすでにピークアウトしており、価格改定もほぼ一巡したと考えているため、拡販による数量増を見込んでいます。米州も価格改定効果があらわれるとともに、消費活動が徐々に盛り返すことで、利益が大きく回復すると考えています。
欧州は原材料価格が落ち着くものの、ユーティリティコストの高止まりが影響し、昨年に比べると多少改善すると見込んでいますが、黒字化は難しい状況です。
機能性材料は、デジタル印刷材料の販売は好調なものの、液晶ディスプレイ需要が低迷しており、昨年と同程度になると考えています。
そのほか、事業拡大および今後のDX推進など、経営基盤の構築に向けて諸経費が増加する予定ですが、グループ全体で拡販を推し進め、販売価格の改定が寄与することにより増益を見込んでいます。
2-4 地域別設備投資予定額(非連結含む)
地域別の設備投資予定額です。2023年12月期は日本で20億円、アジアで29億円、米州で27億円、欧州で6億円、連結合計で82億円となる見込みです。
2-5 主な設備投資計画
今後の主な設備投資計画についてご説明します。パッケージ用インキの拡販に対応すべく、アメリカでは新たな用地を取得し、ブラジルでは新工場建設と販売拠点のあるコロンビアで生産設備を導入します。ベトナムでは北部地域の需要増に対応した生産設備の増設、フィリピンでは新工場の建設と移転を進めているところです。
メタルインキはアメリカの旺盛な需要に対応すべく、ニューヨーク州の工場にまもなく生産設備が増設されます。また、DXを見据えたデジタル化の推進や基幹システムの更新、老朽化した大阪工場のリニューアルなども進めています。
3-1 持続的成長に向けた取り組み(長期ビジョン)
長期ビジョンに掲げている戦略の方向性に基づき、当社が進める持続的成長に向けた取り組みをご説明します。
当社は「SAKATA INX VISION 2030」を実現させるために、3つの戦略の方向性を掲げています。昨年は基盤構築フェーズの2年目にあたり、持続的成長を遂げるためのさまざまな取り組みを進めてきました。
3-2.1 ESG・サステナビリティの取り組み強化
ESG・サステナビリティの取り組みを強化し、ESG経営を実践していくにあたり、まずは各取り組みに関する方針の制定や改定を実施してきました。また、国連グローバル・コンパクトやTCFD提言への賛同表明など、さまざまな団体や外部イニシアティブへも参加を進めています。
3-2.2 ESG・サステナビリティの取り組み強化(マテリアリティと進捗)
環境、社会、ガバナンスのそれぞれの課題において、スライドに記載の目標とKPIを設定し、取り組んでいます。これらの目標達成に向け、各担当部門や部門を横断した複数の変革プロジェクトが取り組みを推進するとともに、事業環境の変化に対応した見直しを随時行い、実効性のあるものへとブラッシュアップしています。
3-3.1 既存事業拡大(ボタニカルインキ)
戦略の方向性の2つ目として、既存事業の拡大を掲げています。その戦略製品として拡販を進めているボタニカルインキは、国内での販売は順調に進んでおり、フィルムパッケージや紙袋における販売比率は6割を超えるまでに至っています。
販売量についても5年前と比べ2倍を超えました。今期も販売比率、数量ともに伸びていくと見込んでいます。今後は海外での展開を強化していくため、アジアやアメリカでの販売を始めています。
3-3.2 既存事業拡大(メタルインキ)
メタルインキについてです。環境意識の高まりによりアルミ缶のリサイクル性の高さが注目されているほか、低アルコール飲料やエナジードリンクなどの販売増加もあり、アルミ缶需要が伸びていることで、メタルインキの販売も増加しています。
世界のアルミ缶需要の3割以上を占めると言われるアメリカ市場では、2030年までに年率5パーセント前後で増加するという予測もされています。当社の販売についても、ここ数年で約25パーセント増加しており、今期も増加する見込みです。
今後の需要の伸びに対応すべく、一昨年にはスペインの工場に、今年3月にはアメリカのニューヨーク州の工場にメタルインキの生産設備を建設しており、さらなる販売増を目指していきます。
3-3.3 既存事業拡大(パッケージ用インキ)
パッケージ用インキについてです。世界全体で安定的に需要が伸びているパッケージ用インキは、過去5年で約10パーセント伸びており、今期もアジアや南米を中心に増加を見込んでいます。人口増と経済成長に比例して伸びる分野であり、特にアジアや南米といった新興国市場において、今後も成長が期待されています。
当社においてもインドやインドネシア、ベトナム、ブラジルなどで順調にパッケージ用インキが伸びており、今後も新興国市場を中心に拡販を進めていきます。
3-4.1 新規事業分野
新規事業分野についてです。2030年までに既存事業に並ぶ新たな柱とすべく、1兆円を超える市場をターゲットとして、スライドに記載している4つのケミカル分野での取り組みを進めています。
3-4.2 新規事業の具体的取り組み(環境・バイオケミカル)
環境・バイオケミカル分野では、非可食の植物素材を活用したバイオマス樹脂の開発を進めています。現在、塗料や電子部材などを扱う企業に興味を持っていただき、サンプルワークを進めています。
また、印刷技術向けとして開発を進めていた「プラズマ技術」を用いて、水耕栽培などの工業排水を除菌し機能水化させる実証実験を行っています。これらの取り組みが、同時にCO2削減や水質改善などに寄与することを期待しています。
3-4.3 新規事業の具体的取り組み(エレクトロニクスケミカル)
エレクトロニクスケミカル分野では、関連会社であるシークスやワンダーフューチャーコーポレーションとの協業のほか、さまざまな大手機器メーカーや大手部品メーカーなどとも共同開発を進めています。
これまでの取り組みの中で、当社が開発した材料の一部が、量産されるモバイル機器にも採用されることになりました。ほかにも、さまざまな企業から問い合わせが来ており、それぞれの要望に合わせた開発を進めています。
3-4.4 新規事業の具体的取り組み(エナジーケミカル・オプトケミカル)
エナジーケミカル分野では、今注目を浴びている新しいタイプの太陽電池である「ペロブスカイト太陽電池」の開発に関して、京都大学が立ち上げた「フィルム太陽電池研究コンソーシアム」に参画しています。
また、東京工業大学の松下洋子准教授とともに、熱による発電を可能とする「半導体増感型熱利用電池」の共同開発も進めています。これらの研究が社会実装されることで、CO2を発生しないクリーンエネルギーの推進に寄与できると考えています。
オプトケミカル分野においても、独自技術による無機分散液を活用した機能性コーティング剤の開発を進めており、一部では採用も実現しています。
基盤構築である現中期経営計画では、開発とオープンイノベーションを着実に進めており、来年から始まる次期中期経営計画での新規事業化に向けて、取り組みを加速させていきます。
4-1 配当金の推移(1株当たり)
最後に配当金についてご説明します。当社は財務体質と経営基盤の強化を図るとともに、株主に対して利益配当を含めた利益還元を経営の重要施策と位置づけており、配当については安定的な利益の還元を基本方針としています。
2022年12月期の期末配当金については、3月末の株主総会での承認を経て、1株あたり15円とする予定です。これにより、年間配当金は中間配当金と合わせて30円となります。
以上で、2022年12月期の決算説明を終了させていただきます。ありがとうございました。
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