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*12:08JST ファンペップ Research Memo(8):「FPP005」は製剤技術の研究を進める方針に変更
■主要開発パイプラインの動向
4. FPP005(乾癬)
「FPP005」は大阪大学大学院医学系研究科との共同研究のもとでファンペップ<4881>が創製した開発化合物で、IL-23を標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドとなる。IL-23は自己免疫疾患において主要な役割を担うTh17細胞を分化・安定化するサイトカインで、乾癬においてもIL-23により活性化されたTh17細胞が、IL-17AやTNF-αを含む炎症性サイトカインを産生することにより慢性的な炎症を引き起こす。乾癬の治療では、既存治療が効かないまたは重症例の患者にTNF-α、IL-17及びIL-23を阻害する抗体医薬品が使用されているが、IL-23は炎症性サイトカインの産生過程において、IL-17A及びTNF-αの上流に位置するため、維持投与期に投与間隔を3ヶ月まで広げても有効性が持続することが特徴となっている。
「FPP005」は2021年より開始した前臨床試験の結果が良好なものであったことから、2023年内を目途に乾癬を適応症とした第1相臨床試験を開始する予定であったが、投与間隔などの利便性や投与量減少も含めた開発品プロファイル向上のため、製剤技術の改良を行う必要性が生じたことから計画の見直しを行った。有望な新規開発候補品(FPP004X)が見つかったことも一因となっている。メドレックス<4586>との共同研究中のマイクロニードル技術をはじめ、アジュバント※を用いるなど製剤技術の改良研究を進めていくことにしている。
※アジュバントとは、薬物による効果を高めたり補助したりする目的で併用される物質・成分の総称。抗体誘導ペプチドと一緒に投与することで、細胞の免疫反応を高める効果を持つ。今回はアジュバントを用いることで抗体誘導ペプチドの投与量を減らし(=毒性を薄める)、免疫効果を実現しようとしている。
なお、抗IL-23抗体医薬品の市場規模は、乾癬のほか乾癬性関節炎やクローン病、潰瘍性大腸炎なども適応疾患となっているため、IL-17抗体医薬品よりも大きく、2020年の10,986百万米ドルから2025年には18,140百万米ドルに拡大するとの調査会社の予測※もある。現在商品化されている「ステラーラ®」「スキリージ®」「トレムフィア®」「イルミア®」の2022年販売実績は合計で17,903百万米ドルと大きく成長し、抗IL-17A抗体の2倍以上の市場規模となっている。今回開発スケジュールが一旦後退したものの、大型契約につながる可能性もあり、その動向は引き続き注目しておきたい。
※Informa「Datamonitor Healthcare」(2021年11月)
脂質異常症を対象とした共同研究を熊本大学と進める
5. その他の開発状況
その他の開発テーマとしては、住友ファーマと共同研究契約を締結している精神神経疾患のほか、片頭痛、高血圧、アレルギー性疾患、抗血栓、脂質異常症等がある。このうち、片頭痛を適応症とした抗CGRP治療薬の開発プロジェクトについては2023年内に前臨床試験を開始する方針であったが、FPP004Xへ優先的に開発リソースを配分することから開発の優先順位を引き下げたことを明らかにした。片頭痛分野は、既に競合品の開発が進んでいることや低分子化合物の治療薬が普及していることもあり、市場でのポジショニングを考えながら探索研究を継続する。
こうしたなかで脂質異常症のプロジェクトに関しては、2022年4月より共同研究を開始した熊本大学で良好なデータが得られているようで、今後の進展が期待できる状況となっている。脂質異常症は動脈硬化性疾患の危険因子となる疾患で、脂質異常症の治療には血中LDLコレステロールを低下させるための、スタチン系薬剤が一般的に広く使用されている。しかし、家族性高コレステロール血症や心血管イベントのリスクが高い患者など、スタチン系薬剤で効果が不十分な場合には、PCSK9阻害薬など他の薬剤との併用療法が実施されている。一方で、動脈硬化は血中中性脂肪の上昇により促進されることも知られており、血中LDLコレステロールに加えて中性脂肪も低下させる作用を持つANGPTL3阻害薬※が2021年に欧米で家族性高コレステロール血症を適応症とした製造販売承認を取得した。同社では今後、熊本大学との共同研究を進め、抗体誘導ペプチドでの抗ANGPTL3治療薬の開発を目指す。
※Regeneron Pharmaceuticals,Incの抗体医薬品「Evkeeza®」(evinacumab)が承認された。2022年の米国での売上高は48百万米ドル。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SO>
4. FPP005(乾癬)
「FPP005」は大阪大学大学院医学系研究科との共同研究のもとでファンペップ<4881>が創製した開発化合物で、IL-23を標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドとなる。IL-23は自己免疫疾患において主要な役割を担うTh17細胞を分化・安定化するサイトカインで、乾癬においてもIL-23により活性化されたTh17細胞が、IL-17AやTNF-αを含む炎症性サイトカインを産生することにより慢性的な炎症を引き起こす。乾癬の治療では、既存治療が効かないまたは重症例の患者にTNF-α、IL-17及びIL-23を阻害する抗体医薬品が使用されているが、IL-23は炎症性サイトカインの産生過程において、IL-17A及びTNF-αの上流に位置するため、維持投与期に投与間隔を3ヶ月まで広げても有効性が持続することが特徴となっている。
「FPP005」は2021年より開始した前臨床試験の結果が良好なものであったことから、2023年内を目途に乾癬を適応症とした第1相臨床試験を開始する予定であったが、投与間隔などの利便性や投与量減少も含めた開発品プロファイル向上のため、製剤技術の改良を行う必要性が生じたことから計画の見直しを行った。有望な新規開発候補品(FPP004X)が見つかったことも一因となっている。メドレックス<4586>との共同研究中のマイクロニードル技術をはじめ、アジュバント※を用いるなど製剤技術の改良研究を進めていくことにしている。
※アジュバントとは、薬物による効果を高めたり補助したりする目的で併用される物質・成分の総称。抗体誘導ペプチドと一緒に投与することで、細胞の免疫反応を高める効果を持つ。今回はアジュバントを用いることで抗体誘導ペプチドの投与量を減らし(=毒性を薄める)、免疫効果を実現しようとしている。
なお、抗IL-23抗体医薬品の市場規模は、乾癬のほか乾癬性関節炎やクローン病、潰瘍性大腸炎なども適応疾患となっているため、IL-17抗体医薬品よりも大きく、2020年の10,986百万米ドルから2025年には18,140百万米ドルに拡大するとの調査会社の予測※もある。現在商品化されている「ステラーラ®」「スキリージ®」「トレムフィア®」「イルミア®」の2022年販売実績は合計で17,903百万米ドルと大きく成長し、抗IL-17A抗体の2倍以上の市場規模となっている。今回開発スケジュールが一旦後退したものの、大型契約につながる可能性もあり、その動向は引き続き注目しておきたい。
※Informa「Datamonitor Healthcare」(2021年11月)
脂質異常症を対象とした共同研究を熊本大学と進める
5. その他の開発状況
その他の開発テーマとしては、住友ファーマと共同研究契約を締結している精神神経疾患のほか、片頭痛、高血圧、アレルギー性疾患、抗血栓、脂質異常症等がある。このうち、片頭痛を適応症とした抗CGRP治療薬の開発プロジェクトについては2023年内に前臨床試験を開始する方針であったが、FPP004Xへ優先的に開発リソースを配分することから開発の優先順位を引き下げたことを明らかにした。片頭痛分野は、既に競合品の開発が進んでいることや低分子化合物の治療薬が普及していることもあり、市場でのポジショニングを考えながら探索研究を継続する。
こうしたなかで脂質異常症のプロジェクトに関しては、2022年4月より共同研究を開始した熊本大学で良好なデータが得られているようで、今後の進展が期待できる状況となっている。脂質異常症は動脈硬化性疾患の危険因子となる疾患で、脂質異常症の治療には血中LDLコレステロールを低下させるための、スタチン系薬剤が一般的に広く使用されている。しかし、家族性高コレステロール血症や心血管イベントのリスクが高い患者など、スタチン系薬剤で効果が不十分な場合には、PCSK9阻害薬など他の薬剤との併用療法が実施されている。一方で、動脈硬化は血中中性脂肪の上昇により促進されることも知られており、血中LDLコレステロールに加えて中性脂肪も低下させる作用を持つANGPTL3阻害薬※が2021年に欧米で家族性高コレステロール血症を適応症とした製造販売承認を取得した。同社では今後、熊本大学との共同研究を進め、抗体誘導ペプチドでの抗ANGPTL3治療薬の開発を目指す。
※Regeneron Pharmaceuticals,Incの抗体医薬品「Evkeeza®」(evinacumab)が承認された。2022年の米国での売上高は48百万米ドル。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SO>
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