バリオセキュアのニュース
【QAあり】バリオセキュア、「Vario Ultimate ZERO」の提供を開始 24時間365日の運用管理・保守、全国への駆け付け体制強化へ
第86回 個人投資家向けIRセミナー
山森郷司氏(以下、山森):みなさま、こんにちは。バリオセキュア株式会社、代表取締役社長の山森です。よろしくお願いします。
私は9月30日付で代表取締役社長に就任しました。まず、当社から適時開示した前社長による交際費の不正利用について、関係者のみなさまにご迷惑とご心配をおかけしましたことをおわびします。今後さらにクリーンな経営を目指して、代表取締役社長として取り組んでいきたいと思っています。
会社概要
山森:会社概要についてご説明します。当社は2001年創業で、はや23年になります。この業界にいると、いつまで経っても自社はスタートアップなのではないかという気持ちになりますが、IT業界で23年というと、もうスタートアップとはいえません。
従業員数は全体で100名弱、本社は東京にあり、大阪と福岡に事務所を構えています。事業内容は、この後詳細にご説明します。ネットワークセキュリティという単一セグメントでの事業構成です。
スタンダード市場の銘柄で、親会社として同じくスタンダード市場に上場しているHEROZ株式会社があります。
事業概要 - 業務領域
山森:事業概要です。ネットワークセキュリティとは、リスクを特定し防御することです。ただし、防御できない可能性もあり、その場合は元の状態まで復旧するための一連のメニューが必要です。それを製品販売ではなく、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)として提供していることが当社の大きな特徴です。
会社でセキュリティを守らなければいけない時は、通常はセキュリティ機器を購入し、それを社内で運用する手間がかかります。しかし、セキュリティに詳しい方がおらず、どのセキュリティ製品を購入すればいいのかわからなくても、当社に任せていただければ、適切なセキュリティ製品を選び、運用管理から通常の監視まですべて請け負うことができます。これが当社の大きな特徴です。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):スライドを見ると、御社は防御の製品群が一番多いです。それは需要が多いからなのか、あるいはセキュリティの中で防御が一番大事だからなのでしょうか? また、それが御社の一番の強みですか?
山森:お客さまのニーズは「守ってほしい」ということで、最初に目が向くのは「防御すること」だと思います。世の中にあるセキュリティ商品も、やはり防御に絞ったところが需要としては大きく、防御とその周辺を抑えていると捉えていただくといいと思います。
坂本:スライドの1から7の製品群は、全部をパッケージで契約しなければいけないのでしょうか? 必要に応じて1つや2つを契約することもできますか?
山森:当然、個別で契約することも可能です。
坂本:他社の製品等も使い分けできるということですね。
山森:そのとおりです。「今まで対策はゼロだったのですが、ゼロからいろいろやりたい」という時は全部ご提案することもありますが、「もうファイアウォールは入っているんですよね」「パソコンにはもうウイルスソフトが入っているんですよね」というお客さまには、足りない部分をご提供するという方法も可能です。
坂本:ソフトウェアとハードウェアの部分がありますが、ソフトウェアに関しては自社開発ですか?
山森:自社開発です。
統合型インターネットセキュリティサービスのビジネスモデル
山森:当社の販売方式です。ネットワークセキュリティとは、基本的にはネットワークがないと何の意味もない事業です。BtoBで企業にネットワーク回線を引いているネットワーク事業者が、新たに企業にネットワーク回線を引いた時、そちらを終端するためのセキュリティ装置として当社の製品を担いで販売してくれています。
OEMや再販などいろいろなかたちがありますが、基本的にはネットワークを終端するところにセキュリティもバンドルして販売してくださっているのがこれまでの販売スタイルでした。
坂本:こちらは基本的には直販せず、代理店に営業スタイルを任せているのでしょうか?
山森:中期経営計画の施策も含めた今後の取り組みで、当社は9月に社内の組織体制を変更しました。その中で、これまでの代理店との活動は当然続けていくものの、直販もしっかりと固めていくための組織変更を行い、現在その準備を進めているところです。
ネットワークセキュリティBPOサービス 強力な販売チャネル
山森:販売代理店についてです。スライドのとおり、法人の回線に関して比較的大きなシェアを持っている企業が多く、そのような会社が当社の製品を担いでバンドル販売という方法で販売していただいています。
ただし、当社はものを売っているのではないため、ネットワークの回線と一緒に、運用管理のビジネスを提供しているかたちです。
飯村美樹氏(以下、飯村):OEMのパートナーは何社ぐらいあるのでしょうか?
山森:当社はバリオセキュアから代理店に提供して、代理店が自らの会社のブランドに切り替えて販売、提供するものをOEMと呼んでいます。そのような意味でのOEMは30社強で、バリオセキュアの名前での再販まで含めると50社強かと思います。
このようにそもそも名前が出ていないため、バリオセキュアという会社の名前を知らない方も多いかと思っています。
坂本:OEMならOEM先の商品名になるということですね。
市場シェア
山森:当社の市場シェアについてです。一番強いのは、エンタープライズ級の大企業ではなく100人未満の中小企業です。これはセキュリティに関してのすみ分けの話になります。
当社のビジネスは、会社の中に情報システム部がしっかりと存在していない「ひとり情シス」という言葉もありますが、なかなかそこに予算をかけられない、人員をかけられない、という会社が、「自社でそのようなものを準備しなくても、バリオセキュアに丸投げして大丈夫」というビジネスモデルです。
したがって、やはり部門が脆弱な100人未満の企業が、我々の非常に大きなターゲットとなっています。そもそも何をしていいのかわからない、人員もいない、何を購入すればいいのかわからない、という方々にサービスを提供してきました。
逆に、年間何億円も予算があり、何十名も情報システムのメンバーがいる企業については、そのような企業に人を送り込める大企業にお任せすればいいと思っています。
坂本:1,000人未満の企業のトップシェアで、100人未満についてもシェアが高くなっています。こちらをターゲットにしているということは、そのような規模の会社が使いやすいシステムになっているのでしょうか?
山森:セキュリティとは、お金をかけようと思えばいくらでもかけられる領域で、日々いろいろな会社が「やられました。2ヶ月、事業停止です」というような状態になります。すべてのことをしようとすると、いくらお金があっても足りないのです。
かけられる予算が決まっている中で、月額数万円というレベルのセキュリティで守ってほしいというお客さまが多数います。あまり多くを求めないものの、ぎりぎりのところで絶対に攻撃されないようにしてほしいというお客さまに対しては、かなり最適化されたメニューになっていると思います。
2025年2月期第2四半期(3/1 ~ 8/31) 決算ハイライト・重要な業績指標
山森:第2四半期の決算状況です。売上収益や営業利益はスライドのとおりです。進捗率は半期が終了した段階での進捗率のため、数パーセントの上振れや下振れはあるものの、想定の範囲内の動きをしていると思っています。
当社のビジネスモデルの中で非常に特徴的なストック型、つまり継続課金型のワンショットではない売上の比率が86パーセント強になっています。また、BPOというサービスの解約率が0.7パーセントと非常に低い数字で継続して推移していることが大きな特徴だと思っています。
新型コロナウイルス感染症や国際的な動き、国内の動きなどありましたが、非常に安定したビジネスモデルが継続できていると考えています。
坂本:解約率が0.7パーセントとかなり低いのですが、低く推移している理由や取り組みがあれば教えてください。
山森:当社のサービスをご利用いただいている企業は、自社で人材を確保するのが難しいのが特徴です。また、どのような機材を購入すればいいのかわからず、自社で行うのは難しいという方々がメインのターゲットになってきます。
そのため、当社のサービスを解約して自社で行おうとすると、まず社内に詳しい人間を養成しなければいけません。詳しい人間を養成できなければ、また別の会社にSES(システムエンジニアリングサービス)のようなかたちで人を派遣してもらわなければいけません。このように非常に高い障壁が出来上がっていることが一番大きな理由かと思います。
坂本:代理店を使っていることも理由としてありますか? 代理店を介して営業している中で、同じような商材を代理店がセールスして導入する場合、よほど顧客メリットがないと難しいと思います。その点についてはやはり課題がありますか?
山森:代理店のロジックがあります。代理店は当社のサービスだけを提供しているわけではなく、他社からも多くの商品を仕入れたり、OEM提供を受けたりしており、当社の商品はその中の一部として取り扱われています。そのような点も、解約率を低く抑えている一因になっていると思います。
坂本:次に、エンドユーザー数は微増かと思います。代理店が積極的に御社の製品に乗り換えるよう促すのは難しいかと思います。市場としては、中小企業を中心にすでにある程度セキュリティソフトが普及しているのでしょうか?
1つや2つのセキュリティソフトを導入するケースはあると思いますが、全体的に普及しきっているのか、その市場規模について教えてください。
山森:2つの側面があると思います。まず、中小企業にセキュリティが行き届いているかというと、まったくそうではないと思います。その背景として、これまでのセキュリティ事業者の売り方は、製品の性能や機能を説明するような非常にややこしい売り方でした。
一般のITに詳しくない方々が知っているセキュリティ用語といえば「ファイアウォール」や「ウイルス」くらいです。「マルウェアとランサムウェアの違いがわからない」「UTMって何ですか?」という方々に対して、そのややこしい売り方ではまだリーチできていないのが現状です。
セキュリティ用語を理解している一定のリテラシーを持った方々には、比較的行き届いていると思います。一方で、その何十倍ものITに詳しくない方々には、まだお届けできていません。
坂本:最近はそのような流れになっていますよね。例えば、セキュリティとは分野が違いますが、ノーコード製品を入り込む時も「とても簡単ですよ」というアプローチで進められます。同じようにセキュリティも簡単に理解していただき、導入するということでしょうか?
山森:おっしゃるとおりです。
2025年2月期業績予想の進捗状況
山森:売上や利益に関しての数字です。2023年4月に、中期経営計画の中で成長のための投資を行うと発表しました。
ゼロトラストという概念のもとでのセキュリティビジネスに参入していくために、人材、ソフトウェア開発への投資や事業提携、先々にはM&Aの可能性も含めて、2027年2月期まで成長投資を行っていこうと思っており、それが表れた数字となっています。
今後の事業展開について
山森:当社の計画の中核である今後の事業展開についてです。そもそも「ファイアウォール」と「ウイルス」という言葉しか知らないようなお客さまに対して、どのようにセキュリティを届けていくのかについて、当社が出した答えが「Vario Ultimate ZERO」という新たな売り方です。
今までの売り方には、バリオセキュアも含めてセキュリティ業界全体の傲慢さが表れていると思います。訳のわからないセキュリティ用語を次から次へと並べ、ホラーストーリーから入るのです。「あの会社が2ヶ月事業停止になりました」「あの病院は外来受付ができなくなりました」という話をし、その後に「当社はこのような製品を持っています」と機能、性能の説明に入ります。
このような話がわかるわけがありません。怖いことはわかったものの、何をしてくれるのかがわからないのです。そのような販売方法では、リテラシーの高い会社には理解されますが、リテラシーがまだそこまで追いついていない会社にとっては「何か難しいことをたくさん言われただけで終わってしまった」ということになります。
そこで、今後の我々の売り方として、セキュリティの機能や性能を売るのではなく「WORKを提供します」ということを前面に押し出そうとしています。お客さまは別にUTMが欲しいわけでもIDSが欲しいわけでも、ADSやSASEが欲しいわけでもありません。
もう何が欲しいのかもわからないけれど、会社のネットワークを、社員が使っているパソコンを守ってほしいのです。今使っている、外部にあるGoogleなどのSaaSと呼ばれるようなクラウド上のサービスのアカウントを守ってほしいなど、お客さまは何かを守ってほしいのであって、我々が偉そうに提案する製品が欲しいわけではありません。
当社の非常に特徴的なところとして、もともとBPOというかたちで、製品よりも24時間365日お客さまの環境をしっかり監視して、その運用を請け負います。場合によっては全国47都道府県、どこであっても現地の駆け付けまでできる運用体制が、もっとも強いのです。
本当は24時間365日全国どこにでも行ける、そのようなセキュリティのプロが揃っていることが主従関係でいう主です。そして、そのために使っているツールが先ほどお示しした製品群で、それらは従にあたります。そもそも我々は今まで売り方を間違っていたという反省を持っており、スライドの図にそれを表現しています。
「Vario Ultimate ZERO」のラインナップ(再掲)
山森:製品サービスとは主従関係でいう従で、我々が訴えなくてはいけないのは「我々が全部守りますが、何を守りますか」という主の部分です。
最近、社内のみんなで使っている表現は「ネットワークの正義の味方の派遣業みたいなものだから」というものです。正義の味方が銃を使っていようが、刀を使っていようが、手錠を使っていようが別にいいのに、いきなり手錠のスペックについて話されても、「いや、守ってくれればいいんですよ」という話になるわけです。
そこのところを我々はセキュリティ業界の1社として、今までの自分たち売り手側のロジックをきちんと反省して、守るべきものをしっかりと守るという方向性に持っていきたいというのが、「Vario Ultimate ZERO」というシリーズです。
サービス構成図
山森:サービス構成となると、どうしても技術的なネットワーク図に入り込んでいかなくてはいけません。その中でも、パソコンやファイルを守るなど、何を守るのかという、リテラシーの低い方でもわかりやすい表現で、まだ我々のサービスが行き渡っていない企業にもしっかり届けていきたいと思っています。
まだ社内で「Vario Ultimate ZERO」のコンセプトを練っている最中ですが、簡単に動画にまとめています。こちらをご覧ください。
(動画流れる)
顧客のセキュリティ課題
山森:動画のとおり、近年のサイバー攻撃はその数が激増しています。ふだんみなさまはあまり自分たちの会社や自宅が攻撃されているという感触は持っていないと思います。
しかし、我々のようなセキュリティの専業の会社から見ると、どの会社も毎日ものすごい数のアタックを受けています。アタックする前の偵察の段階も含めると、その境界にある機器が受けている不正なパケットの量は、肌感覚で全体の1割を越えているのではないかというぐらいです。
攻撃を受けていてなぜそこまで被害が出ていないかというと、簡単に言えば、ナットという外部のものを全部弾き返してしまうようなネットワークの設定があり、それがたまたま弾き返してくれているだけです。みなさまの会社も、おそらく飛んでくるパケットのうちの1割ぐらいは不正パケットだと思います。
そのように攻撃が多様化している中で、やはりセキュリティの対策はきめ細かくしていかなくてはいけません。「Windows」を使っていると、いきなりアップデートとして何かをダウンロードさせられてセキュリティ対策をさせられることがあると思いますが、それと同じことが実はセキュリティの機器に関しても必要です。
そのようなところをしっかりと当社が請け負います。つまり、当社にすべて任せていただいても大丈夫なのです。
当社の競争優位性
山森:当社の競争優位性は、どのような製品、プログラムを持っているかよりも、24時間365日プロが見ていることと、何かあったら駆け付けるということです。これは自動車のロードサービスによく似たところがあるのではないかと思っています。そして、セキュリティのけっこう広い分野に関するカバレッジがあるのです。
したがって、これまで持っていた製品群を改変して新しく届けるというよりは、お客さまのニーズに即した、しかもつまみ食いができるようなセキュリティの幕の内弁当のようなもののデリバリーサービスを実行することが、これから先の売り方の根本になってくるかと思います。
坂本:御社の強みとしては「お弁当を作って配達するところまでやります」および「お弁当に不具合があったら見ます」ということだと思います。顧客に直接アクセスして監視しているのであれば、逆にウイルスの最近のトレンドやお客さまの困りごとも巻き取れると思います。それが製品のアップデートに活かされることがあるのでしょうか?
山森:あります。日々更新されるセキュリティ情報はものすごい数があり、セキュリティに詳しくない方が見ると「毎日100個のセキュリティ問題が出ているのだけれど、どれに対応すればいいのか」「自分たちに本当に必要なセキュリティ対策はどれなのか」というところからわからないのが現状だと思います。
そのため、そのようなところをきちんと取捨選択して、遠隔地からですが我々が全部アップデートして回るという、活かされているというよりもそれ自体が我々の仕事であると捉えていただくといいかと思います。
ネットワークセキュリティビジネス市場の動向
山森:先ほどご紹介した「Vario Ultimate ZERO」は、我々の製品が大きく変わるというよりも、売り方や訴え方などを変えていくことが主眼です。まだネットワークセキュリティのビジネス市場は成長がかなり大きく見込まれます。ただし、現状ではリテラシーの高い方々にしか行き渡っていません。
日本にある企業は、中小企業を合わせて400万社といわれています。その中でもアクティブに動いているのが仮に100万社ぐらいあった場合、これから先、我々は100万社というパイを全部見ながら動いていかなければいけないと思っており、そのような意味でまだ市場は伸びていくと予測しています。
セキュリティの動向は日進月歩で変わるため、この数字が本当に正しいのかどうか、実際にどうなるのかまでは想定できませんが、かなりの伸びが期待できる市場であることは間違いないと思っています。
坂本:セキュリティの必要性を認識することで、当然、これを導入する方は将来的にいて、市場規模拡大はあると思います。業界としては、売上ベースの値上げはありますか?
山森:あります。もともとは会社の境界に置くファイアウォールだけを使っていたお客さまが、「最近リモートワークが増えてきて、リモートからアクセスする手段も欲しい」ということで、値上げというよりアップセルに近いかたちでの拡大があります。
当然、今の為替状況や円安基調などもどうしても捉えざるを得ないものの、スライドの数字には物価高などはおそらく入っていません。
坂本:純粋に必要な機能と、必要な会社が増えるということですね。
中期経営方針
山森:先ほどご説明した市場の環境も踏まえ、当社では中期経営方針として3つを掲げています。1つ目は、24時間365日の運用・管理、全国駆け付け体制の強化です。こちらに関しては我々の生命線だと思っており、競合から見た時にも一番の競争優位性になってくると考えています。
もしもこのような事業をまったく展開していない会社で私が社長を務めており、部下が「今度このようなビジネスをしたいです」とこのビジネスモデルをプレゼンしてきたら、「なに馬鹿なことを言っているんだ。24時間365日、全国に駆け付けようと思ったら、どれだけ立ち上げが大変だと思っているんだ」と言うと思います。「馬鹿じゃないのか」と思うようなことが、すなわち競争優位性だと思うのです。
このクラウド領域での駆け付けに加え、2つ目としてゼロトラストという成長セキュリティ市場への参入、そして3つ目に先ほどお話ししたような、売り手の理論ではなく顧客ニーズにフォーカスした新たな販売体制構築に取り組みます。今、これまでの通信事業者だけではない、新たな販売代理店の開拓および直販体制の構築もあわせて行っているところです。
中期経営方針に沿ったM&A戦略
山森:M&Aの戦略です。M&Aというと、会社をどこかから引き入れることにフォーカスした言葉に聞こえますが、私自身はM&Aは事業提携の1つの形式にすぎないと思っています。
セキュリティは非常に幅広い対応が必要なため、我々も自社だけでできるわけではなく、他社から商材を提供していただいたり、開発リソースを提供していただいたりと、他の会社と協力しながら進んでいくことが絶対に必要です。
今、私は他の会社と協力しながら進んでいく1つの究極形態がM&Aだと思っています。セキュリティ関連のIT企業や強い営業力を持った会社などと、事業提携またはM&Aというかたちを取るのかについては柔軟に考えつつも、中期経営計画の中でオーガニックな成長ではないジャンプアッププランはしっかり考えていきたいと思っています。
中期経営目標
山森:中期経営計画の目標です。売上高は37億6,300万円、営業利益は9億2,000万円です。もともとリカーリング型のストックビジネスのため、営業利益率は比較的高い状態でした。その営業利益率をしっかりと維持または伸ばしていきながら、販売戦略および販売パートナーをさらに開拓していき、このような数字を目指していきたいです。
現状から見ると背伸びした数字ですが、こればかりは着実に進めていくしかないと思っています。目標達成の実現に向けて努力していきたいです。
当社の競争優位性
山森:競争優位性について、もう1つお話ししたいことがあります。当社は24時間365日の運用や、全国への駆け付け対応を行っています。これに加えて、セキュリティのメーカーとしては珍しく国産メーカーという特徴があります。
例えばセキュリティ分野では、アメリカのC社やF社、ロシアのK社などがあります。そのようにグローバルな展開をしている企業が多い中、国産の自社製品を持っていることは非常に強いと思っています。国産であることは、主従関係でいうと従になると思います。しかし、24時間365日の広くて深いサポートをする上で、自社製品は非常に大きなメリットになっています。
お客さまから不具合の問い合わせを受けた時に、例えば外資系の大企業であれば「わかりました。アメリカの研究所に問い合わせてみます」と答え、たらい回しになった末、1ヶ月後に「すみません。再現できませんでした」と返事がくることがあります。
これに対して当社の強みは、電話やメールを受けた際に、サポートメンバーの隣に作った張本人がいることです。これはすなわち、解決し終わるまで絶対に逃げ道がありません。お客さまからすると小さなバグだったとしても、我々はそこから絶対に逃げることがなく、最後まで問題解決に取り組むという意味で、お客さまに対するホスピタリティが高いとも捉えていただけます。
24時間365日の体制で、どこでも駆け付けられることに加え、国産のセキュリティメーカーであるというレアな特性もあるため、このような特徴を今後も全面的に強化しながら事業を進めていきたいと思います。
質疑応答:24時間365日の対応について
坂本:24時間365日の対応は、おそらくこの23年の中で構築されたと思います。御社の支店は3つぐらいですが、外注で行っているのでしょうか? もしくは、4時間以内に駆け付けられるところに常駐の方がいるのでしょうか?
山森:全国に駆け付けられる営業所を持つ、比較的大きな会社と提携しています。ただし、ただ駆け付けて行けばいいわけではありません。
現場に行った上で的確な対応ができなくてはいけないため、難しい事案の場合は当社から詳細なマニュアルを渡すことがあります。また、トラブルが起きて緊急で駆け付ける時は、対応の手順を伝えることもあります。また、現地に行ったものの本当の専門家でないとわからない時は、会社にテレビ会議などをつないでもらい、隣で指示を出します。
ラストワンマイルの駆け付けるところは、全国にネットワークを持つビジネスパートナーにお願いしていますが、そこでの動き自体は当社ですべてコントロールできているという認識です。
質疑応答:成長ポイントと未達リスクについて
坂本:今後の成長や中期経営計画達成の一番大きなポイントと、未達になるリスクがあれば教えてください。
山森:まずは未達になるリスクについて回答します。先ほど当社のビジネスモデルをご説明した時に、86パーセントがリカーリングモデルとお話ししました。これは未達になったからといって、いきなり事業の根幹が崩れるわけではありません。
ただし、投資家の方々にはご迷惑をかけることになるため、未達は絶対にあってはならないと思います。そのリスクとしては、社業に関するリスクというよりは上場企業としてのリスクのほうが大きいと思います。
中期経営計画達成のためのポイントは、先ほどからお話ししている当社の強みと、当社が提供できるサービスのシンプルさを、よりしっかりと訴えていくことです。
セキュリティの会社となると、「競合はどこだ?」「ライバルはどこだ?」というご質問を受けます。それについてはアメリカのC社やF社のような、セキュリティ機器を作っている会社が当社の競合だと考える方が多いですが、当社はSESで人材派遣ができる会社を本当の競合だと考えています。
機器を製造している会社は、単にツールの部分での競合であって、本当の競合は、何十人もの技術者を運用のために送り込むことができる人材派遣業です。ただし、これから先は競合という視点ではなく、そのようなSIerと手を組んで、どこまで自社のサービスを広げられるかが中期経営計画の肝になると思います。
坂本:中期経営計画の先の話になるかもしれませんが、海外に出ていく考えはありますか?
山森:現段階では、海外で具体的にターゲットを絞ってはいません。しかし、ネットワーク事業は万国共通な点もあるため、事業提携などで自分たちの中でどこまで広げられるか次第だと思います。
質疑応答:採用状況について
飯村:自社製品で広くて深いサポートを行うところが御社の強みだと思いますが、「こうした競争優位性を維持するために人員の確保が必要だと思います。人員配置や人手不足の中での採用状況について教えてください」というご質問です。
山森:人材に関しては、我々も長らく悩んできた領域です。ただでさえ技術者のコストは右肩上がりで、とどまることを知りません。
また、セキュリティは一朝一夕でマスターできる技能ではありません。いろいろなことを全部知っていて、その上にセキュリティの技術を身につけ、エンジニアとしての質のようなものが出来上がってきます。
そのようなことから、我々もフロントのエンジニアが高齢化していくという問題を抱えていました。コアメンバーは、インターネットの黎明期から見てきて、歴史も含めて昔話を始めたら2時間ぐらい止まらないような人々でした。
しかし昨年度から、人材に関する方針を大きく転換しました。「最初は誰もが素人だった」と考え、主に第2新卒の採用を強化しています。そして、これまではビジネスパートナーから人材を借りてサポートセンターの維持、運営を行う部分が大きかったのですが、現在、プロパーへの大幅切り替えを進めています。
そのような意味で、以前「どうしよう、困ったな」と思っていたところから少し光明が見えており、自社内での技術者の成長スパイラルを描けるようになってきたと思います。具体的な人数まではお伝え出来ませんが、これからしっかりとした一人前のエンジニアに育てるため、相当数の人員が確保できつつあります。
質疑応答:親会社との関わりについて
坂本:親会社はHEROZですが、仕事の関わりはありますか?
山森:あります。ただし、事業のフロントに出るところで、セキュリティとAIを活用してお客さまがお金を払いたいと思うようなビジネスとなると、もう少し時間かかると思います。
坂本:そうなると非常に独創的なサービスを提供できますね。
山森:当社の24時間365日の監視体制に関しては、ある程度人数を確保しないとこれまでは運用できませんでした。当然、内部でも自動化に取り組み、ビジネスの売上とコストの拡大規模が比例しないように努力はしてきましたが、今、自動化のさらに先にあるAI化に取り組んでいます。
マニュアルになくてもAIが答えられるような、曖昧な領域まで担保できるAI活用にHEROZと一緒に取り組んでおり、徐々に成果も出始めています。フロントのビジネスとしてAIを担ぐというよりも、裏側の根幹の部分にAIを組み込むことで、より収益性の高い企業を作るために協力しています。
質疑応答:代理店販売のシェアについて
坂本:「一部の上位代理店の合計シェアは上場時で4割ぐらいでしたが、今は5割を超えています。乗り換えされない可能性も高く、自社商材を今から作り出すのも大変だと思います。代理店への依存度が高くなることによるリスクはありますか?」というご質問です。
山森:もともと社業の出だしはファイアウォールのサブスクリプションサービスでした。そこから周辺にサービスを広げるに当たり、代理店によっては「周辺サービスはすでに持っているから、このファイアウォールの部分だけでいいよ」と言われることがたくさんありました。
坂本:組み合わせて提供されるのですね。
山森:そのとおりです。当社が横に広げたところを、シェアの高い代理店が一緒に扱うことでシェアが広がったという面があると思います。
我々は、特定代理店への依存度が高いことがそこまで大きなリスクになるとは思っていません。扱う商材は1つだけではなく、スライドにある7つの主要商品をたくさん扱っていただくことで、自然とシェア自体が大きくなると思います。
坂本:例えば1つの戦略として、新しいソフトウェアやハードウェアが必要になるかもしれないし、今後、御社からしたいことが出てくるかもしれません。その場合に取り扱い製品が増えることはあり得ますか?
山森:取り扱いの柱というより、先ほどお話しした幕の内弁当の具が1つ増えることになります。幕の内弁当のデリバリーサービスに判子を押していただいている以上、その中の具を増やすことは、これから積極的に行いたいと思います。これからの事業提携の中で、その具材を提供する会社がいれば、それを取り込んで幕の内弁当にしたいと思っています。
坂本:多ければ多いほどいいということですね。
山森:セキュリティは、全方位的にいろいろと取り組まなければいけないと考えています。一面に特化することも必要ですが、結局はセキュリティのコンビニエンスストアのようなところがない限りは、お客さまにリーチするのが難しいと思っています。
坂本:その機能を今、代理店が有している状況なのですね。御社としては大分そろってきたので、今後の戦略で直販も含めて考えているということですね。
質疑応答:直販の戦略について
坂本:直販について、どのような戦略をとっていますか? 完全に固まっていないかもしれませんが、例えば代理店がリーチしないところにアプローチしたり、Web広告で集客したりといった方向性があれば教えてください。
山森:いくつかの方向性があります。全部はお話しできませんが、1つは業界特化型の直販を大きな柱にしています。
セキュリティは、おしなべて似たような機能になっているわけではありません。カルテデータを扱う医療業界のように、データを失うことが命取りになってしまうなど、業界によって注力するべきところが違っています。そのため、業界特化型での直販営業を1つの柱として考えながら、扱う機能の絞り方を検討している最中です。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:防御しきれないものの割合は、どのくらいあるものなのでしょうか?
回答:「防御」をインターネットと会社ネットワークとの境界を守ることだとすると、会社ごとのセキュリティ環境によって、さまざまな状況が存するため一概に割合を回答することは困難です。顧客企業において私的デバイスの持ち込みによりウイルス感染した事例はありますが、常に「侵入ありき」のスタンスでセキュリティサービスを提供しているため、結果として防御できなかったものはほとんどないと認識しています。
<質問2>
質問:顧客はどのように獲得されているのでしょうか? 口コミや紹介によるものが多いのでしょうか?
回答:現在の顧客獲得方法は、代理店の営業力に依拠する部分が多く、口コミや紹介によるものは少ないです。9月の組織再編で直販部隊を組成しており、今後は直販経由での顧客獲得も強化していきます。
<質問3>
質問:株主にとって御社の株を保有する魅力は何でしょうか?
回答:現在、PERで8倍前後、PBRで0.5倍前後であり、直近3事業年度の平均営業利益6億円強及び同営業利益率23パーセントから24パーセントの水準の事業ポテンシャルからすると、当社株価は割安であると認識しており、中期成長戦略を含めた当社の成長実現によっては、株価向上により大きなキャピタルゲインを得られる可能性がある点が、当社株を保有いただく魅力だと考えます。
<質問4>
質問:交際費の不正利用で社長交代となった件について説明してください。1社目のサンリツは冒頭で子会社の不正について説明していました。御社もまずこれを言うべきではないでしょうか?
回答:社長交代に係る詳細は次のリンク先の適時開示のとおりです。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4494/tdnet/2505662/00.pdf
本セミナーでは、限られた時間の中で当社の現状と将来像をお伝えすることに主眼を置いたため、前社長による交際費の不正利用の詳細については割愛し、冒頭での事案発生に対する謝罪のみとしました。ご理解のほどよろしくお願いします。
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