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―20年間で47%増加、増え続ける「負動産」問題の解決は待ったなしの課題―
全国で「空き家問題 」が深刻化している。現在、全国の住宅の約7軒に1軒が空き家といわれており、管理費や固定資産税がかさむことから「負動産」といわれるだけではなく、景観や衛生面などに関しても近隣住民への「負」の影響が無視できない。そのため「空き家問題」の解決は、行政にとっても待ったなしの課題となっており、昨年12月には改正空家法が施行された。改正法により空き家問題解消の進展が期待でき、そこにはビジネスチャンスも生まれる。関連銘柄にとって追い風となりそうだ。
●増加の一途をたどる日本の空き家
「平成30年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)によると、2018年10月時点の全国の空き家数は848万8600戸と過去最多となり、前回調査の13年に比べて29万3000戸(3.6%)増加した。総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)も全国の住宅の13.6%を占めている。20年前にはそれぞれ576万4100戸、11.5%であったことを考えると、20年間で272万5000戸近く(47.3%)も増加したことになる。
空き家の増加は、少子高齢化の進展や人口移動の変化などが背景にあるといわれており、地方の問題と思われがちだが、18年の調査では東京都内の空き家は80万9900戸もある。空き家の取得は相続によるものが多いことから、高齢化によって今後も増加が見込まれるが、空き家が増えることは景観や衛生、治安の悪化につながるほか、住宅の劣化によって災害などで倒壊する恐れも出てくる。近隣に住む人々の生活環境にも影響を及ぼすことから、社会問題になりつつある。
●改正空家法で「管理不全空き家」を新設
こうした空き家の解消を図るために、15年には「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家法)が施行された。居住目的のない空き家において、放置を続ければ倒壊などの危険性が高い空き家は「特定空き家」に指定され、放置すると助言や指導、勧告などが行われ、最終的には取り壊しとなる行政代執行が行われることになる。ただ、既に倒壊の危険がある物件への対応が中心であったことから、周囲に悪影響を及ぼす前段階での管理や有効活用を促す必要があり、今回の改正に至ったとされる。
施行された改正空家法では、「特定空き家」に至る前の窓や壁が破損しているなど管理が不十分な状態の空き家を「管理不全空き家」とし、行政による改善の指導が行えるようにした。助言に従わずに勧告を受けると固定資産税などの軽減措置(住宅用地特例)が受けられなくなり、税負担が大幅に増えることになる。
また、市区町村が中心市街地や地域の再生拠点、観光振興地区など重点的に空き家の活用を図りたい区域を対象に、建築基準法などで定められている接道や用途の規制を緩和できる「空家等活用促進区域」の指定権限を持つことになり、用途の変更や建て替えなどを促進できるようになった。これにより空き家活用の可能性が広がることになり、関連銘柄にとってビジネスチャンスが広がりそうだ。
●空き家対策の関連銘柄
LIFULL <2120> [東証P]は、全国の自治体や国が管理する空き家情報を集めたプラットフォーム「LIFULL HOME’S 空き家バンク」を運営している。「空き家バンク」とは、空き家物件情報を地方公共団体のホームページ上などで提供する仕組みのこと。「LIFULL HOME’S 空き家バンク」は、全国の「空き家バンク」から情報の提供を受けており、750強の自治体から提供された6800以上の物件を掲載。国土交通省の「全国版空き家・空き地バンク」のモデル事業にも採択されている。
And Doホールディングス <3457> [東証P]は、プロパティマネジメント事業を行う子会社ピーエムドゥが空き家活用に関するコンサルティング業務を展開。ハウス・リースバック事業などを手掛ける強みを生かし、空き家の無料調査や売却サポート、固定資産税や相続税などに関するフィナンシャルサービスなどを行っている。
三井住友トラスト・ホールディングス <8309> [東証P]は、グループ会社の三井住友トラスト不動産が空き家に関する悩み相談サービス「空き家トータルサポート」を展開している。同サービスではALSOK <2331> [東証P]、積水ハウス <1928> [東証P]と連携することで、空き家の診断や売却、見回り、有効活用などを総合的にサポートする。
オリエントコーポレーション <8585> [東証P]は昨年3月、空き家情報の流通プラットフォーム「アキカツナビ」を運営する空き家活用(東京都港区)と空き家問題の原因の一つである「空き家購入希望者の資金問題」の解消に資する商品「アキカツローン」を商品化した。「アキカツナビ」で空き家を購入した人などに、地域金融機関が同ローンを提供し、オリコが地域金融機関の保証を行う仕組みで、ローンを取り扱う金融機関も25行以上と現在も増加している。
カチタス <8919> [東証P]は、独自のノウハウにより空き家を含む中古住宅を仕入れ、リフォームによって付加価値をつけることで、新築の半額程度の価格で販売するビジネスモデルを展開している。主に地方都市をターゲットに、「新築」「中古」「賃貸」に代わる「第4の選択肢」として、リフォーム済み住宅を市場に供給しており、中古住宅の買い取り再販事業で、販売戸数は6927戸(23年3月期)と業界首位を誇る。
バリュークリエーション <9238> [東証G]は、不動産DX事業として住宅解体のプラットフォーム「解体の窓口」を運営しており、空き家問題の市場関心度の増加に伴いユーザー申し込み数が増加の一途をたどっている。また、昨年12月には空き家活用と業務提携しており、空き家所有者や対処事業者に対する広報・啓発活動などを強化している。
このほか、建物の異常性や美化保全を目的に庭木の目視点検や建物の劣化防止を目的とした通気・換気や雨漏り点検などを行う安江工務店 <1439> [東証S]や、賃貸物件の原状回復工事やリノベーションなどを手掛けるニッソウ <1444> [東証G]、中古・ リノベーション住宅の流通プラットフォーム「カウカモ」を運営するツクルバ <2978> [東証G]、中古物件を取り扱うリファイニング事業を本格的に開始したタスキ <2987> [東証G]、子会社グッドルームがリノベーション工事からメディア集客、運営まで自社で一気通貫で行うことにより、空き家問題の解決に貢献するgooddaysホールディングス <4437> [東証G]、空き家などの遊休資産をリノベーションし中長期滞在型施設「MUJI BASE」として展開する良品計画 <7453> [東証P]も注目したい。
株探ニュース
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