セーフィーのニュース
セーフィー、パートナーとの連携を深めソリューションを構築 2025年にARR200億円から250億円を目指す
会社概要
佐渡島隆平氏(以下、佐渡島):みなさま、こんにちは。セーフィーの佐渡島と申します。本日はお集まりいただきまして誠にありがとうございます。私どもは「映像から未来をつくる」というビジョンに向けてしっかり投資していくことを考えており、今日は投資家のみなさまとのコミュニケーションを非常に楽しみにしていました。
それでは、発表会を始めます。会社概要、決算概況、中期目標と成長戦略、業績予想という順番で進めます。最初に私がお話しし、古田からフォローさせていただきたいと思っています。
まず、会社概要について簡単にご説明します。セーフィーという会社は2014年に生まれ、ようやく8年目となりました。従業員数は268名で、売上高は84億5,600万円となっています。ARRは56億7,900万円、課金カメラ台数は14万台です。
私どもは、あらゆる場所からカメラを通じて映像データを集め、その集まったデータに対して新しいアプリケーションを付与していくというサービスを提供しています。
沿革およびマーケットシェア
沿革とマーケットシェアについてご説明します。キヤノングループ、NTTグループ、KDDIグループ、セコムなど、大手の企業と一緒にクラウドカメラというマーケットを作ってきました。
このように、マーケットを牽引して非常に大きく成長しつつ、今後はマーケットシェアが1つの鍵になると考えています。私どもはクラウドカメラのマーケットシェアの47.5パーセントと、約過半数をしっかりと保有していますので、こちらをさらに拡大していけるように取り組んでいます。
環境変化 - 高まる弊社サービスの活用余地
急成長している背景についてです。昨今のコロナ禍により、企業の仕事環境は大きく変わりました。非接触や遠隔が当たり前になったり、労働生産人口の減少、さらには映像などのデータからAIで示唆できるようになってきています。
また、テクノロジーの進化によってGPU性能が向上し、AIがより民主化され、5Gのテクノロジーによってさらに大きく広がってきています。
この集まってくるデータを新しいアプリケーションに変えていくというのがまさに社会のニーズであり、当社の経営環境そのものであると考えています。この不可逆な流れが我々の成長を大きく後押ししています。
ビジネスの成長に伴い拡大する広大なTAM
ビジネスのTAMについて、あらためてご説明します。私どもの課金カメラ14万台に対し、カメラを使って業務を推進していこうとしている潜在ネットワークカメラ台数は国内で約2,863万台と考えています。国内にも100倍以上の成長が残っているということです。
さらに、今後グローバルで4億台以上のカメラがネットワーク化していくため、グローバルに展開していく可能性も十分に残っています。圧倒的なシェアをもとに横展開しながら、この大きなTAMを攻略することが経営戦略になっています。
2021年の決算については、CFOの古田からご説明します。
2021年12月期本決算 ハイライト
古田哲晴氏(以下、古田):決算ハイライトになります。売上高は84億円と、前年同期比でプラス67.5パーセントの成長を実現しています。
第3四半期との比較では、特定卸商流における販売施策の変更の影響もあり2.7パーセントの増加にとどまっていますが、ARR全体は順調に成長して56億円に到達し、課金カメラ台数は14万台で着地しています。
粗利率は40.2パーセントで、前年同期比で5.0ポイント向上しました。こちらは継続的に改善しています。今後の成長に向けた人材獲得と認知向上に向けた広告宣伝費の投資により、通期では7,600万円の営業損失を計上しています。
売上高の推移
売上高の詳細はスライドのとおりです。通期のリカーリング収益については、前年比でプラス109.4パーセントと増加を示しています。スポット収益についてもプラス35.2パーセントの増加となっています。
一方、四半期別の推移では、スポット収益は第3四半期に比べて減少していますが、リカーリング収益は引き続き増加している状況です。
ARR及び課金カメラ台数の推移
最重要のKPIであるARRと課金カメラ台数の推移はスライドのとおりです。ARRは56億円を超え、課金カメラ台数は14万台に到達しています。
ARR及び課金カメラ台数の推移
解約率です。特定卸商流において9.4パーセントの解約率となっています。他の商流に比べて高い状況ではありますが、前回発表のとおり、改善傾向がしっかりと続いています。
その他の商流については、前回の発表から特に変更はありません。特定卸商流が全体ARRに占める割合は8パーセントと減少しています。
売上高構成比およびスポット/リカーリング粗利推移
売上高の構成比率についてです。
パートナー経由の売上高が従来の60パーセントから57パーセントに減っています。こちらは増資資金をもとに直販の営業網を強化し、直販における営業が順調なためです。
リカーリングの割合については、42パーセントから55パーセントへ増加しています。それぞれの粗利率については発表している数字と大きく変わっておらず、リカーリングの粗利率は引き続き高い水準を維持しています。
売上総利益の推移
その結果として、売上総利益は通期で34億円に到達し、粗利率が40.2パーセントと、前年比で5.0ポイント向上しています。四半期別の推移でも順調に増加しています。
販売費および一般管理費の対売上高比率①
販売費および一般管理費の売上高比率です。広告宣伝費については、第3四半期と同様に10パーセント近い水準で推移しています。人件費、その他費用については、IPOで得た資金をもとにしっかりとした先行投資を行っており、ともに前回を上回る水準で先行投資を重ねています。
営業利益の推移
営業利益の推移です。通期で7,600万円の赤字ですが、赤字幅は前年比で縮小しています。一方で、四半期ごとでは赤字幅が増加しており、最終的に第4四半期は第3四半期よりも営業損失額が大きくなっています。こちらは、当初の予定どおりに先行投資をしっかりと行っているためです。
既存顧客からの収益推移(NRR)
NRRの推移です。2021年の実績としては、直販・販売パートナー向け・全体のいずれも150パーセント前後の数字となっています。
販売パートナー向けの数字については、2020年12月末の308パーセントより減少しているように見えますが、当時の分母である2019年12月末の販売パートナー向けの売上高が小さかったため、比率の問題です。全体のトレンドとして悪い影響が出ているわけではありません。
スライド右側のコホートチャートのとおり、全体としては既存顧客からの売上が順調に増加している状況が続いています。
2025年12月末のARRターゲット
佐渡島:中期目標と成長戦略について、佐渡島からご説明します。我々は2025年12月末に、ARRで200億円から250億円を達成したいと考えています。こちらを念頭にKPIをARRに置き、みなさまとコミュニケーションをしっかり取っていきたいと考えています。
達成するための優先順位
ARRを構成しているポイントと、達成するための優先順位についてご説明します。
業界攻略を進め、各インダストリーで映像を使うことが始まっているため、まずは課金カメラの台数をしっかりと追いかけていこうと考えています。
後ほどご説明しますが、先ほどのコホートチャートでも既存のお客さまからのリピートオーダーが非常にたくさんありますので、リピートをしっかり獲得していきたいと思います。
また、インフラや公共、スマートビルディングでも新たな需要が拡大しているため、そのようなところに対してもしっかりと需要に応えるサービスを打ち出していきます。さらに、ARRの上に乗ってくるようなアプリケーションの獲得により、新しい収益の基盤を構築していきたいと考えています。
スライドに記載のとおり、「課金カメラ台数×課金カメラ1台あたりのARR」ということで、中長期的には課金カメラ1台あたりのARRをしっかりと拡大していこうと考えています。
まずは台数を追っていき、アプリマーケットなどを立ち上げていくにあたって一つひとつのカメラの単価を徐々に上げていこうと思っています。どのように投資していくかに関しては後ほどご説明します。
達成にむけた成長テーマ
先ほどお伝えしたとおり、2025年のARRのターゲットは200億円から250億円で、一番重要なテーマは「現場DX」だと考えています。オフィスワークでは当たり前のように「Google Meet」や「Zoom」での業務が実現していると考えていますが、現場では遠隔業務をなかなか推進できないという課題があります。
それをカメラや映像によって実現するということが非常に求められており、映像データであらゆる産業の現場でDXを行うということで、我々は「現場DX」と呼んでいます。
クラウドカメラを使った現場DXの5ステップ
業界や利用者のみなさまがDXを実現していくステップは非常に大事です。我々はSTEP1からSTEP5に分けてセールス活動を行っています。
STEP1では、映像での仕事について把握できていない方もたくさんいるため、まずは防犯や記録、業務管理というかたちで、何かあった時に見るために使っていただきます。
STEP2では、たくさんの映像をもとに遠隔で仕事をしていきます。自分の目の代わりに仕事をしてもらうというかたちで使っていただきます。
STEP3は、さまざまなAPIとつなぎ、業務システムの中に深く組み込んで使っていただきます。
STEP4では、AIは人の代替が可能ですので、映像からの示唆を通してカメラが賢くなっていきます。
STEP5では、映像同士が連携していくことでかなりデータ化していきますので、そのデータをもとに、業界や業務をまたいで仕事の仕方が変わっていくことで、社会課題を解決していくというエコシステムの構築を考えています。
現在、まさにSTEP2が非常に大きく花開き始めており、業務ツールにAPI連携していくことが既存のメインマーケットになっています。
「見る・聞く・記憶する・しゃべる・考える」など、人が行っていることをより代替していくことで、カメラによって仕事をすることが実現可能となり、STEP3以降では潜在マーケットへの広がりを考えています。
大きな成長余地 - セーフィーが解決できる顧客課題は多様
小売、飲食、建設、製造、公共などのあらゆる課題を映像によって解決していくことを考えていますが、STEP1、STEP2の防犯や管理での使用や、遠隔で業務を推進するところについては、基本的には現在の機能で十分に実現できています。
STEP3、STEP4では、業界ごとに課題がどんどん変わってきます。業界カットを増やすことにより、2025年のARR200億円から250億円という目標をアプリケーションを増やしながら実現していきたいと思っています。お客さまの課題解決に役立つことを念頭に、マーケットと向き合いながら、業界カットを増やしているところです。
現場DX 5ステップ – 飲食/サービス業界
業界について簡単にご説明します。飲食/サービス業界では最初に防犯カメラとして利用していただくケースが多いですが、そのあとは1人の店長が5店舗、10店舗を同時に管理していくために利用しています。
これまでは店長が店舗に行くことで1店舗を管理していましたが、5店舗、10店舗を同時に管理するという多店舗同時管理を映像でできるようになってきています。
また、新たな付加価値として、来店客分析を行いながら店内の放送を変えたり、チャットツールと連携して業務のオペレーションのPOSレジに並んだ方に対して新しいオペレーションを付与しています。また、カメラを使って荷物を受け取るなど、人の代替ができるアプリケーションが次々と生まれてきていますので、さらに業界を増やして進めていきたいと考えています。事例については、次ページでご説明します。
ベルクさま
ベルクさんは、東京を中心に126店舗ほどのスーパーマーケットを運営しています。特にスーパーマーケットではベルクに限らずチャンスロスという課題があります。スライドの写真は鮮魚売り場ですが、例えば、魚を丸ごと1匹置いて夕方まで売れ残ってしまうとロスになってしまい、利益率が改善しないという問題があります。
惣菜コーナーの売上によってスーパーマーケットの売上は非常に変わってきますので、お客さまの出入りに応じて刺身をカットするなど、私どものカメラがそのような課題解決に役立っています。今後は、業務を見て改善するところから、AIでの改善につなげていきたいと考えています。
EAGLYSさまとの連携
STEP4のAIで解決するというPoCを実現しているポイントについてご説明します。塚田農場さんという居酒屋チェーンを運営している会社と一緒に、EAGLYSさんというAIのベンダーと連携して行っている実証実験です。
キッチンからホールに出てくるところをデシャップと呼びますが、そのデシャップの映像を自動的にキャプチャし、冷めた食事を出していないか、その盛り付けが正しいかなどをAIで簡易的にチェックする機能で業務改善が進んでいます。
現場DX 5ステップ – 建設業界
建設業界についてご説明します。当然、建設の現場でも防犯というニーズはありますが、国土交通省では、昨今、遠隔臨場というかたちで、遠隔で仕事を進めることが増えてきています。「Safie Pocket」を使い、オペレーションの改善や多現場同時管理、安全確認などを遠隔で行っています。
また、施工管理のアプリケーションも、バーティカルなSaaSの間で非常に流行ってきているため、そのようなところとの連携や、人や車、物に対してAIでさらに解決するということが起きています。さらに、業界をまたいだデータ化も少しずつ進み始めてきているため、そのあたりについて簡単にご説明します。
大東建設さま
スライドは、まさにツールを組み込んで業務を行っていただく事例です。大東建託グループの大東建設さんでは、「Safie Entrance」という機能を使い、顔認証で作業者を管理しています。
従来、どのようなスキルの方が何時間働いているかを紙等で管理していた部分をDX化することにより、非常に簡便な現場運営ができるようになり、コスト削減に寄与しているという事例です。
鹿島建設さま
鹿島建設さんとは非常に長い間、いろいろなお付き合いをしています。鹿島建設さんの掲げる「鹿島スマート生産ビジョン」では、「すべてのプロセスをデジタルに」を目指し、「作業の半分はロボットと」「管理の半分は遠隔地で」を推進しています。
昨今は、1現場につきカメラを3台から5台付けるのは当たり前になってきましたが、40台から50台のカメラを付け、「鹿島スマート生産ビジョン」の実現に向けて取り組んでいます。
このように、3Dデータとリアルタイムの映像を結び付けることにより、現場に行く回数をどこまで減らせるかというところを、AIも駆使して実現しようしています。
新たな業界での成長加速
新たな業界での成長加速ということで、業界のカットで、映像を活用したDXを行いたいというニーズはさまざまなところからたくさん来ています。製造現場、スマートビルディングや物流現場、さらには金融など、大きくなりそうなところは公共でも当社の事例は広がってきています。
このように、アプリケーションをさまざまな業界ごとに提供することにより高付加価値なサービスを提供し、さらにはグローバルな映像のプラットフォームに進化していくというのが、当社の成長戦略になっています。
三菱ケミカルさま
事例を簡単にご紹介します。三菱ケミカルさんは、最近は建設のみでなくプラントにも広がってきています。プラントの安全点検や定期の進捗管理、さらに、計器をカメラから見て、データからそこの運営を正常化させる、安全パトロールなどにも活用されています。
株式会社マクアケさま
オフィスビルの新たな事例についてご紹介します。最近はいろいろなベンチャー企業で働き方をより軽くしていこうという流れがたくさんあります。例えば、マクアケさんは、当社の顔認証サービスを導入し、各従業員のオフィス出勤状況を管理しています。
具体的には、リモートワークと実際にオフィスに出勤することがあるため、定期代支給から実費精算への切り替えを行い、総務のDXというかたちで顔認証を使って勤怠管理をしています。カードレスになり、さらにはお仕事が楽になるということで、具体的なコスト削減にも寄与し始めてきています。
渋谷区さま
公共の事例について、簡単にご説明します。昨今、いろいろな公共の事例が出てきていますが、こちらは先日、渋谷区さんと一緒にプレスリリースしたものです。宮下公園に人流測定カメラを設置し、利用者数や利用者の属性推定データ等を分析しています。
新しい付加価値のある街作りや、新しい公共空間の作り方ということで、当社でプライバシーをきちんと配慮しながら利用者の動向等をしっかりとモニタリングすることにより、その地域の有用性を上げていくという取り組みが始まっています。
このように、公共の分野でも当たり前にクラウドを使っていると言えます。
当社の顧客基盤:大手企業を含む導入実績(一部)
家から街までをデータ化していく中で、大手企業を含め非常に多くの企業が顧客となっています。ファーストリテイリンググループさんや「牛角」をはじめとしたコロワイドグループさんにもご利用いただいています。
また、大林組など、大手ゼネコントップ30社のうち約28社が当社のお客さまとなってきています。まだまだ開拓の余地はありますが、建設現場において、当社の映像サービスはかなりスタンダードなツールになり始めてきています。
さらに、公共やインフラでの利用は、これまでセキュリティがなかなか難しいと言われていた世界ですが、当社はセキュリティを担保してサービスをしっかり行っているため、公共分野にも非常に大きく広がってきています。
TAMをしっかりと獲得していくことにより、今後の200億円から250億円までの成長をしっかり支えられると考えています。
集積されたデータを活かしたアプリビジネスの拡大が期待可能
当社は家から街までをデータ化していきます。まさに人が行っていた「見る・聞く・記憶する・しゃべる」、そしてAIにより考えるということが、映像データのようなリアルタイム性のあるデータにより実現できるようになってきています。
これを自社のアプリケーションにとどまらず、先ほどお伝えしたようなさまざまな新しいAIベンチャー、バーティカルSaaS企業のANDPADなどと連携し、新たなサービス・付加価値を提供します。「映像から未来をつくる」ということで、家から街までをデータ化しながら、データをアプリケーションに変えるということを徐々に実現し始めています。
アプリプラットフォーム実現にむけて
今回、IPOで得た資金をしっかりと投資に振り向けることが当社の成長にとって非常に有益であると考えています。昨今は、AIを簡単にアプリケーションに変えていく仕組みに投資しています。
映像のデータを収集してAIのモデルを作るということは、非常に一般化し始めています。そのため、私たちの大きなデータプラットフォームがお客さまのソリューションに変わるということは、非常にメリットになります。
石油精製所のように、生データから徐々に精製しながら新しいアプリケーションに変えていくことを当社のプラットフォーム上のみで完結し、それを開発環境としてAIのベンダーさんにも使っていただけるようなかたちを取ろうと考えています。
それにより、小売店等でお客さまが並び始めたら店内の放送を変えるなど、通知プラットフォームとアプリフレームワーク等により簡単に実現できるようになります。さらには、大量のアプリケーションが一気に「safie プラットフォーム」上から生まれ始めるため、ここにしっかり投資を振り向けていこうと考えています。
映像を活用したアプリケーションマーケット構想
さまざまなAIベンチャーが開発したアプリケーションと当社が作ったアプリケーションが、ともにお客さまのDXを実現するソリューションとなるように、この先もアプリケーションのマーケットをしっかり構築していこうと考えています。これにより、さまざまな業態でのDXが実現できると確信し、私たちは投資しています。
サマリー
最後に、当社は現場DXを推進し、2025年にARR200億円から250億円を目指すということをみなさまにしっかりとコミットメントしていきたいと思いますし、各業界を攻略し、まずは課金カメラをしっかりと伸ばしていきます。
そして、パートナーとの連携を深めてソリューションをしっかり作っていきます。AIを活用した人間からの代替サービスをアプリケーションとして出し、DXにおけるステップ3にしっかりと取り組んでいきたいと考えています。
また、このプラットフォーム構築に向け、大量に集まるリアルタイムの映像データだからこそできる大きなプラットフォームを実現し、ハードウェアのラインナップを揃え、アプリケーションをさまざまな業界ごとに揃えていきます。
開発環境としてさまざまなパートナーに活用いただくことで、大きなDXのエコシステムを構築するというのが、当社のサマリーになっています。
2025年までの投資領域
2025年までの投資領域を簡単にご説明します。課金カメラ台数の拡大については、セールス&マーケティング、いわゆるソリューション営業の人員の拡大により、各業界をしっかり攻略できるような人員を揃えていきます。当然、認知拡大は一定程度必要になります。売上の10パーセントを目安に広告宣伝を行うことで、もう少し認知を上げていく努力をしていきます。
さらには、デバイスのラインナップを揃えて、解析プラットフォームおよびアプリマーケット構築を行い、ハードウェアのエンジニア、ソフトウェアのエンジニア、またエッジAIのエンジニアを採用し、開発費に投資していきます。開発と認知拡大セールスの2点に大きく投資を振り向けていこうと考えています。
2022年の業績予想については、CFOの古田よりご説明します。
2022年12月期 業績予想
古田:2025年に向けた第一歩として、2022年の数字については、ARRで83億円、課金カメラ台数で20万台、売上高は110億円、売上総利益は47億円、営業損失としては5億円から10億円の範囲内と見込んでいます。
課金カメラ台数については、特定卸商流における販売施策の変更の影響が一巡し、40パーセント超の増加を見込んでいます。売上高については、次のページでご説明します。
2022年12月期 業績予想 – 売上高
リカーリング収益は、順調に増加を見込んでおり、売上高全体としては、FY2022は前年比で30パーセント程度の成長を見込んでいます。
スポット収益は、特定卸商流における影響があります。また、一部ほかの卸商流においても、当社からカメラを仕入れずに独自でカメラを仕入れることができる販売パートナー各社による業績の成長を考慮し、スポット売上の成長は限定的です。一方で、リカーリング収益については、50パーセント超の成長を見込んでいます。
販売費および一般管理費の対売上高比率②
コストについては、少し開示の方法を変えています。セールス&マーケティング活動に伴う費用で、30億円前後を使う予定です。開発に関しては13億円から15億円の間、一般管理費は、社員数の増加に伴い10億円程度まで費用が増加する予定です。
質疑応答:カメラ台数について
質問者1:質問は大きく2問です。1つ目が、今期の御社の売上高計画の前提について、カメラ台数を商流別に整理するとどのような見え方になるかうかがいたいです。6万台の純増になると思いますが、それぞれどう動くのかについて教えてください。
古田:商流別の数字については開示する予定がありませんが、おっしゃるように6万台の純増というかたちで考えています。全体の販売動向としては、直販と販売パートナーの比率は従来より大きく変わることはないと想定しているため、現状の販売比率を参考に、おおよその台数の比率はご推定できると思っています。
質問者1:ARRを台数で割った単価の想定のところが、これまでの実績として弱い背景は、おそらく建設チャネルがこの2021年度より伸びないと言いますか、台数として大きく全体としてインパクトが上がることはないのかなと思っています。この単価の伸びが弱いところについてお願いします。
古田:単価については、スライドの42ページに、ARRが83億円、前期比で46パーセントという数字と、課金カメラ台数は42パーセントの増加とあります。単価という意味では、通年で見るとむしろやや強く、当社のベースの考え方としては、従来と大きく変わらないと見ています。
質問者1:ARRの中期見通しのところですが、こちらの台数やARPCのブレークダウン、また、商流別の伸び方の考え方等があれば教えてください。その際のヒントになり得る情報として、以前、30万台が参入障壁だとおっしゃっていたかと思いますが、いつ頃達成するのがメインシナリオなのでしょうか?
また、単価に関わってくる部分としてオプション機能やアプリマーケットとの織り込み具合等が入ってくると思います。オプションがより強く効いてくるような時期としてはいつ頃を想定されているかについて、何かしらヒントになる情報があればお願いします。
古田:中長期の見方で、ARR200億円から250億円について、ブレークダウンはなかなか開示が難しいところは正直あります。当社としては、台数が非常に売れて達成するのか、高単価なものを大量にうまく出せることにより達成するのか、いずれのシナリオも正直あり得ると思っています。そのあたりも含めて幅として出ているところはあります。
現在の読みとしては、当面は現状より激しく変わることはないと思っているものの、やはり今後の戦略優先順位においても、中期的には単価を上げるような商材を出していくのは現時点の開発テーマにもなっています。これが奏功していれば、単価が高く台数が少ないということはあり得ます。
また、販売台数の勢いという面だけでも市場規模は非常に大きいと思っているため、高単価にならずに台数だけでも達成する場合、台数が増えるとどうしても高単価な商材の比率は下がってくるものが出てきます。そのようなシナリオも十分に考えているため、幅があるというのが現時点での見立てとなっています。
佐渡島:アプリケーションの部分について補足します。一部一般論も混じりますが、今後エッジAIが非常に流行すると考えています。したがって、我々のカメラのラインナップに、そのような製品も含まれてくると考えていただければと思います。
エッジAIを活用した新しいアプリケーションは、プロセッシングがカメラのエッジ側にくるため、駆動コストが大幅に安くなり、非常に高機能なAIを付与できるようになってきます。そして、先ほどみなさまにご紹介したような事例がさらにエッジ化していき、大量にばらまかれていくような事例は今後非常に増えてくると考えています。
どのくらいのお客さまが、人とカメラの代替をどの程度の単価で実現していくかというのは、世の中的にも我々としても、まさにチャレンジしていく領域となります。当社としては、そこをしっかりと見極めながら台数を追えば、ARR200億円から250億円は達成できると踏んでいます。アップサイドとして、エッジAIを活用したアプリケーションが増えてくると考えていただければと思います。
質疑応答:ターゲットの概念と営業利益の成長予想について
質問者2:200億円から250億円のARRのターゲットについて、概念的に教えてください。また、粗利のマージンはまったく変わるのでしょうか? 営業利益も高いところを目指せると想定されているのかどうかもうかがいたいです。
古田:粗利については、おそらくは現時点とそれほど大きく変わらない構成となり、ARRの粗利率は、開示しているリカーリング収益の粗利率とそれほど大きく変わらないと見ています。
もちろん、高単価な商材をうまく出していくことによって、今よりも上がる可能性は十分あります。しかしながら、上がらなくとも達成できる予定です。
営業利益に関しては、いつぐらいに成長曲線が収まるところとみなすかという点に、非常にリンクしています。当社としては、2025年であっても、依然として成長途上にあり、まだ伸ばせる余地がある可能性もあります。その時点で利益目標を置いたり、利益を出すということは特に重要視しておらず、自然なかたちで利益が出ている水準になっていると想像しています。
ただし、その時点で見えている新しい市場のオポチュニティに対して、先行投資をさらに行うことが適切であるという判断になれば、数字を変えることもあります。我々は中長期的な企業価値の最大化を最重要視しているため、その時の状況に応じて、必ずしも、2025年時点で大きな営業黒字または高い営業黒字マージンを目指さないことはあり得る、というのが現時点での考え方です。
質疑応答:製品や企業の認知度について
質問者3:投資領域に認知度を挙げられていますが、実際の防犯カメラ、監視カメラなどの製品の認知度や、御社自身の認知度についてどのようにとらえられていますか? また、広告をどのような方たちに向けて行っていくのでしょうか? KPIとしてとらえているものや、広告の方法を教えてください。
佐渡島:まずは認知度についてです。大きくは、我々が対応しているBtoBのインダストリーの意思決定者である方々に、十分に認知されているかどうかを基準に考えています。
我々はBtoBを主眼にしているところもあり、一般消費者にむやみに認知を拡大するような大きな広告宣伝を実行しなくとも、ここまでしっかりと成長してきたという実績があります。ですので、ターゲットを十分に絞って、認知度を上げていくことが先決だと考えています。
また、ターゲットは顕在層と潜在層の2つに分類しています。潜在層では、遠隔での業務が映像によってできるということそのものの利用価値について、いまだ知らない方がほとんどです。そのような方々に対しては、ユースケースを念頭に「現場DX」というかたちで、現場のDX推進をどのように実現するかを開示することで、認知度を上げていこうと考えています。
1つの目安として、BtoBの業態の5割くらいの方々が知っているところまで持っていくため、中期的に十分に投資しながら取り組んでいきます。
そして、防犯カメラ、監視カメラのクラウド化については、Webマーケティングなどをしっかりと行います。潜在的なニーズではなく、「今すぐお店を出すので安くほしい」という顕在層の方もたくさんおり、そのような方々はある程度CACが見えているため、Webマーケティングでしっかりと獲得していきます。
高成長するためにも、足元で顕在的なニーズを捉えながら、潜在的なニーズへの投資により、さらにアップサイドを狙っていくという戦略で認知活動を進めています。
質問者3:今は、防犯カメラ、監視カメラの存在自体はある程度知られていると思うのですが、そうでもないということでしょうか?
佐渡島:防犯監視カメラというのは、当社にとっては潜在的なニーズではなく、顕在化したニーズだととらえています。そのため、広く認知を取りにいくという問題ではなく、まずは欲しいと思う方にしっかりと刺さるマーケティングを実行していきます。
「防犯カメラを安く買いたい。防犯カメラで工事をしたくない。工事を手軽にしたい」といったニーズでの検索は、すでに数字で見えているため、そこにさらに投資していくわけではなく、今はむしろ獲得のフェーズに入っています。
そして、我々が投資するポイントは、遠隔で業務を進める、いわゆる「現場DX」を推進するところにあります。例えば、「Safie Pocket」は数字でもマーケットレポートでも、防犯カメラ、監視カメラという世界観とはまったく異なるところに位置しています。高単価商品のため、潜在顧客からの認知によりさらなる成長が期待でき、顧客側も投資と考えていると解釈しています。
防犯カメラのニーズは当然あると思いますが、我々としてはそこまで大きな投資だと考えておらず、日々の営業活動ですでに取り組んでいることだと考えています。
質問者3:ちなみに御社自身の認知度はどのように捉えられているのですか?
佐渡島:先ほどお伝えしたとおり、「BtoBの遠隔業務を推進したい」と思えるような、高単価なエンタープライズのお客さまの意思決定者に向けて、認知度は5割くらいに持っていきたいと考えています。
今の数字は特に開示していませんが、認知度は5割に到達していません。3年くらいかけて十分なマーケティングを行えば、到達できる目標だと考えています。
質疑応答:卸商流の現況と今後について
質問者4:卸商流に問題があったところを教えてください。過剰在庫はまだ何かありますか? 2月時点ではすでに解消しているのかなど、今の状況についてアップデートをお願いします。
古田:特定卸商流については、「販売施策を特定卸商流さまのほうで変更する」という内容を前回の第3四半期の決算発表時に発表しました。結果として、積極的な販売ではなく、販売ペースが落ちるかたちになっています。
この商流は大量解約や大量の新規契約ともに起きていた商流でした。今回、第3四半期と第4四半期の中で調整が起きており、解約される可能性のあるカメラ群が着々と解約されていき、一方で新規契約は従来よりも少し少ないペースで動いている状況です。
これらは当時の発表のとおりで推移しており、足元で解約される可能性のあるカメラ群の解約は進んでおり、第1四半期中ではおそらくかなり少なくなっていく状況です。
一方、新規については従来よりも少ないペースですが、販売は順調です。第1四半期以降で純増チャネルに再び戻るかたちで、販売量はきちんとプラスになっていくと見ています。
ただし、大前提として、昨年に比べると四半期別での販売量自体は少なくなっており、昨年よりも当社のスポット売上の金額は少なくなります。前年比で見ると一部悪い影響はありますが、結果的に解約のように積み上げた台数が減るという減少ではなく、着実に台数自体は伸びていくという商流になっています。
補足すると、我々の在庫というよりも販売パートナーの販売在庫が一部あるようです。ですので、当社から販売パートナーに対する販売量も従来に比べると少し減少する見込みです。
質疑応答:業績予想の前提について
質問者4:42ページの業績予想は、保守的なのか、アグレッシブなターゲットなのか、その中間なのか、会社の見解を教えてください。
古田:業績予想はいずれも、ややコンサバなベースケースと見ており、しっかりと達成することを前提として考えています。
質疑応答:セールス&マーケティングの費用内訳について
質問者4:44ページについてです。セールス&マーケティングは10億円まで増やすということですが、どの程度がセールスチームの人員獲得の費用となりますか? また、直販の人数は何人くらいになる予定でしょうか?
古田:主に、広告宣伝費として使う部分と、人件費の増加の2つに分けることができると思っています。広告宣伝費は、売上高全体の10パーセントという目安感で考えているため、S&M関連費用全体の30億円のうちの10億円程度というイメージになります。残りは大半が人件費にあてる部分であるとご理解いただければと思います。
直販のセールスチーム人数と販売パートナー支援のセールスチーム人数については、2対1くらいの割合で、直販側の人数のほうがやや多くなっています。しかしそれ以上に、セールス&マーケティング活動の中には、販売後のアフターフォローや販売するカメラの調達、工事など、共通で使われるミドル機能のような人員を含めています。
人員構成の大まかなイメージとしては、人数は共通部分のほうがやや多く、セールス活動に直接関わる人間の中でさらに割合を出すと、2対1で直販のほうが多くなっています。
佐渡島:少しだけ補足します。直販と卸で分けていますが、当社のセールスのラインとしては、先ほど私からお伝えしたとおり、エンタープライズのお客さまの引き合いが非常に強くなってきています。
エンタープライズのお客さまを一緒に攻略していくとなると、パートナーと一緒に攻略方法、作戦を練りながら営業することになります。そのため、直販と代理店の販売について、社内での区分けは特にありません。基本的には「お客さまがどこを選ぶか」ということで行っているため、我々も営業ノウハウをパートナーとともに十分に成長にあてていくことを考えています。
質疑応答:企業からの受注率について
質問者4:今は受注は企業からの引き合いが強いということですが、成長率が50パーセント以上なのでしょうか? 今の受注率はどのくらいか教えてください。
古田:受注率は当社で開示しているものではありませんが、昨年までの傾向と比べて、当社の認知度の向上や人員の増加も含めて、営業の勢いはむしろ従来より増しているというのが全体像です。それに伴い、取引先数も増えており、NRRで開示しているとおり既存取引先からの追加オーダーも非常に多く届いています。数字で開示ができず申し訳ございませんが、全体としては非常に好調だと思います。
質疑応答:今年度の社員数について
質問者4:今年度の社員は何人くらいになりそうですか?
古田:現時点で毎月10名超の新入社員が入ってきている状況で、計画としては2022年12月末時点で400名を少し超えるような人数まで増えていく予定です。
質疑応答:特定卸商流の見通しについて
質問者5:特定卸商流の影響は一巡して純増ペースになりそうでしょうか? グロスネットの入りについて教えてください。
古田:第1四半期に入り、特定卸商流における影響は、完全に一巡すると見ています。
第1四半期で、特定卸商流において純減していった状態から純増するチャネルに変わり、それ以降の販売台数やARRには大きな影響はないと見ています。ただし、スポット売上のカメラ物販売に関しては、従来よりも販売ペースは少なくなるため、昨年比での影響は多少出てくるという状況です。
佐渡島氏よりご挨拶
佐渡島:投資家のみなさま、今日はお時間をいただきまして誠にありがとうございます。「映像から未来をつくる」ということで、家から街までをデータ化し、そこを新たなアプリケーションに変え、人々の意思決定をより変えていくというのが私たちのビジョンです。そのビジョンの推進に向けて、しっかりとTAMの攻略を行い、ARRの拡大に十分に投資していきます。
みなさまどうぞご支援ご鞭撻のほど、今後ともよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。
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