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森六 Research Memo(6):2030年にむけた新中期経営計画を発表(2)

配信元:フィスコ
投稿:2023/01/24 15:26
森六ホールディングス<4249>の新中期経営計画

(樹脂加工製品事業)
高付加価値化による利益率の向上と、積極的な販路拡大を目指す。すなわち、ベースとなる保有技術を磨き、高付加価値製品の提案によって利益率の向上を図る。グループ内で、素材やコンパウンドの調達から設計、量産まで行える強みを生かして、バイオプラスチックなど環境商材へのチャレンジも進める。既存顧客以外の自動車メーカーに積極的に販路を拡大するだけでなく、異業種にも目を向ける計画だ。

また、強みを生かし、ニーズを先取りする提案型開発に注力する。従来保有している要素技術に加え、近年では多層成形や、ホットスタンプ(金属光沢を装飾することができる「箔押し」と呼ばれる印刷技術)、LED照明設計などに力を入れている。これらの技術を内外装部品に応用して、提案型の開発を行い、展示会への出展などを通じて積極的なセールスプロモーションを進める計画だ。

(ケミカル事業)
まず営業機能の大胆な組織再編により、ターゲットの4分野で案件創出のスピードアップを図る計画だ。具体的には、モビリティ部と電機・電子部の統合により、自動車のEV化に対応する。また、ファインケミカル部とコーティング部の統合により、環境対応ニーズに応える機能性化学品に注力する。さらに、生活材料部とフード&ヘルスケアの統合により、例えば食品と包装材をセットで提案できるようにする。これらの営業部門の大胆な再編により、従来に比べて付加価値の高い商品を提案する計画だ。併せて、事業企画部を新設することで、成長戦略の実行力を高め、スピードアップしていく。

ケミカル事業は商社機能であることから元々付加価値が小さいが、今後は「ものづくり機能」を強化することで付加価値拡大を目指す計画だ。まずは、「ものづくり事業推進室」を新設し、営業部と同列に置くことで顧客との距離を縮めて、マーケットインの技術開発を加速する。そして、森六ケミカルズと、ものづくり機能を持つグループ会社との連携強化を図る。具体的には、化学品の合成受託や自動車用機能材の製造を行う五興化成工業(株)では、総額8億円の投資を継続し、研究開発の強化によりオリジナル商品を開発する。また、高機能多層フィルムの成形を行う四国化工では、総額30億円規模の投資を継続する。これらの施策によって、ものづくり機能を強化し、付加価値の高いトータルソリューションを提案する計画である。

(新規事業の創出)
さらに、既存事業の成長戦略に加えて、グループのシナジーを発揮して「新規事業の創出」にも取り組む。特に、グループの持つ資本や強みを生かせる環境・ライフサイエンスの領域で新しいテーマを探索する。第13次中期経営計画では、常に複数のプロジェクトを並行して進めることで、新規事業を創出する計画である。

以上の成長戦略の着実な実行が、第13次中期経営計画で掲げた業績目標の達成を確実なものにすると考えられる。今後の各成長戦略の進捗状況に注目したい。

(3) 基本戦略III サステナビリティ活動の推進による経営のレジリエンス向上
同社グループでは、東証プライム企業としてのマネジメント機能向上に注力し、グループ連携でサステナビリティ経営を深化させる方針だ。そして、環境への配慮と人材の確保・育成を最重点課題に掲げた。また、DXの推進、コーポレート・ガバナンスの高度化、知財戦略の強化などによって、経営のレジリエンスを向上する。さらに、こうした取り組みの詳細について情報開示をすることで、企業価値を高める考えだ。

「環境に配慮した事業活動」については、グループ3社の社長直下に「サステナビリティ推進室」を置き、連携しながら活動を推進する。年に4回以上のサステナビリティ委員会を開催し、進捗管理や活動の後押しをするとともに、取締役会を通じて、社外取締役及び監査役によるチェックを実施する。こうした強力な推進体制により、国内外グループ全社をあげてGHG排出量削減を進め、第13次中期経営計画期間中に2019年度比で30%削減を目指す。併せて、全消費電力に占める再生可能エネルギー由来の電力量の割合を、グループ全体で35%まで高める考えだ。

「多様な人材の確保と育成」については、第1に、戦略を先取りした人材の確保と育成を掲げ、外部からの獲得やM&Aによる補完も選択肢として、人材確保を進める。第2に、人材と組織の活性化を目指し、同社を支える人材や組織がポテンシャルを最大限発揮できるよう、社員エンゲージメント向上に取り組む。第3に、ダイバーシティの推進を図り、多様な人材の活躍により、時間や場所にとらわれない新しい働き方を推奨することで、イノベーションを促進する。これらの取り組みにより、社員意識調査での「個人の尊重」「協力体制」「リーダーシップ」への肯定回答の比率を、2021年度の調査結果から10ポイント高くすることを目指している。

特に同社が今後注力するのが「ダイバーシティの推進」だ。女性管理職比率の2021年実績は10%を超えており、グループ会社では、内部昇格による女性執行役員が活躍している。今後も、能力と適正を見ながら女性役員の道を広げる方針だ。海外においても、優秀な現地人の登用を進めている。中国では既に現地人役員が出ており、カナダでは現地人社長が登場している。これにより現地人社員の労働意欲が高まっていることから、今後も優秀な現地人を積極的に登用していく。特に栗田現社長は海外経験が長いこともあり、ダイバーシティに対しては積極的に対応する方針だ。

サステナビリティ活動の推進に加えて、経営のレジリエンス向上のための施策も行う。第1に、DXの推進については、前例にこだわらず、デジタル技術の活用を前提としたビジネス再構築に取り組む。第2に、コーポレート・ガバナンスの高度化については、取締役会の多様性を確保し、実効性や透明性の向上に取り組む。第3に、知的財産戦略の強化については、事業戦略、研究開発戦略と連動した知的財産戦略を進める。第4に、情報開示の拡充については、タイムリーに分かりやすく情報発信する方針だ。

以上のように、同社ではサステナビリティ推進活動を、長期ビジョン並びに中期経営計画の柱の1つに据えることで、東証プライム市場の企業にふさわしい責任を果たしながら、社会とともに成長を目指すという経営方針を強く示している。近年、年金基金など主要投資家の間では企業の社会的責任に対する関心が高まっており、ESGに対する企業の取り組みを重視して銘柄を選別する「ESG投資」が、世界的に拡大傾向にある。同社グループのサステナビリティや情報開示に対する前向きな姿勢が理解されることで、同社株式の投資家層がさらに拡大すると予想される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

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配信元: フィスコ
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