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森六 Research Memo(5):2030年にむけた新中期経営計画を発表(1)

配信元:フィスコ
投稿:2023/01/24 15:25
■新中期経営計画

1. 新中期経営計画:「2030年ビジョン」(CREATE THE NEW VALUE)
森六ホールディングス<4249>では、前回の中期経営計画(第12次中期経営計画)が2022年3月期で終了したことを受けて、新たに「2030年ビジョン」を発表した。「CREATE THE NEW VALUE」をスローガンとして掲げ、独自技術を強みとした価値創造で、持続可能な未来社会に貢献するグローバル企業集団を目指している。

(1) サステナビリティ活動の推進による経営のレジリエンス向上
新中期経営計画を遂行するにあたって同社は、サステナビリティ活動が最も重要であると考えており、2030年度までに達成するサステナビリティKPIを3つ設定した。1つ目は、人材に関するKPIで、「社員エンゲージメント」と「社員を生かす環境」の肯定回答を60%以上にすること。残る2つは環境に関するKPIで、グループ全体でGHG(Green House Gasの略、温室効果ガスのこと)排出量の2019年度比50%削減と、再生可能エネルギー導入比率の55%への引き上げを掲げている。また、サステナビリティ活動推進の実効性を高めるため、主要KPIの達成度を役員報酬の一部に反映するようにしている。このことは、同社のサステナビリティ活動への取り組みに対する本気度がいかに高いかを示していると言えよう。

(2) 「新たな事業の柱」の創出
事業戦略面では、モビリティ、ファインケミカル、ライフサイエンス、環境の4分野にフォーカスして、新たな事業機会の獲得を目指す。森六テクノロジー、森六ケミカルズを中心とする同社グループの既存事業を拡大・強化しながら、現在保有する資本や強みを生かせる事業領域で、新たな事業の柱を創出する。

フォーカスした4分野のうち、モビリティでは、高付加価値化や販路拡大などにより規模拡大を狙う。環境の分野では、サステナブル材料事業や環境対応製品事業に新たに取り組む。ライフサイエンス分野では、既存の高機能フィルム事業を伸ばすとともに、ヘルスケア事業への新規参入を目指す。ファインケミカルの分野では、既存のケミカル合成事業の収益性を高め、一層の規模拡大を目指す。

(3) 実現に向けてのステップ
「2030年ビジョン」の実現に向けては、3期・9ヶ年のステップを描いており、ステップ1の第13次中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)では、「強みのある事業の強化・成長分野の絞り込み」を、ステップ2の第14次中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)では「成長分野の収益化を加速」させ、ステップ3の第15次中期経営計画(2029年3月期~2031年3月期)では「4領域でバランスのよい収益ポートフォリオ構築」を目指す計画である。

2. 第13次中期経営計画
第13次中期経営計画では、基本戦略として、I安定した財務基盤の確立・収益力の強化、II研究開発の強化による価値創造と2030年に向けた種まき、IIIサステナビリティ活動の推進による経営のレジリエンス向上の3つを掲げている。基本戦略I・IIの2030年に向けた種まきや収益力の強化はグループ成長戦略の中心である。加えて、基本戦略IIIとしてサステナビリティ活動の推進を掲げたことは、サステナビリティ経営に注力する同社グループの経営姿勢を示すものと言えよう。

また、2025年3月期の連結業績は、売上高1,430億円、営業利益110億円、ROE 9.1%などを目標とする。売上高が伸び悩むなかでも、十分な営業利益を確保し、安定したROEを達成する計画だ。そして、生み出した資金は、将来のための戦略投資に振り向ける考えだ。なお、2024年3月期に減収(前期比10億円減)を見込むのは、ホンダのモデルチェンジにより一部の車種で1台当たりの販売価格が低下することで、樹脂加工製品事業の売上高が減少する見通しであるためだ。ただ、生産体質強化による利益確保や、ケミカル事業での新規拡販などに注力する計画である。

セグメント別には、樹脂加工製品事業では、2025年3月期の売上高は1,120億円(2022年3月期比10.0%増)、営業利益は90億円を計画し、営業利益率は2022年3月期の1.2%から8.0%を見込む。2022年3月期は環境悪化に伴い利益率が大きく低下したが、次第に本来の利益率に戻ることを想定している。また、ケミカル事業では、2025年3月期の売上高は310億円(同14.6%増)、営業利益は23億円(同25.2%増)を計画し、営業利益率は2022年3月期の6.7%から7.4%を見込んでいる。

中期経営計画の業績目標を達成するための、3つの基本戦略の詳細は以下のとおりである。

(1) 基本戦略I 安定した財務基盤の確立・収益力の強化
財務戦略では、安全性と効率性を重視しつつ、「攻めの姿勢」に転じるための財務戦略を目指す。安全性では、グループ内資金の弾力的な活用により、必要十分な資金の確保を図る。効率性では、ROEを重視した高効率な連結経営や事業会社単位のKPI設定により、資本コストを意識した効率性を追求する。また、成長性では、戦略的な投資枠の拡充や積極的な業務提携、M&Aにより、投下資本の最適配分を図る。さらに、株主還元方針として、株主に対する利益還元を経営上の重要な施策の1つとして位置付け、将来への投資や内部留保のバランスを考慮しながら、安定した配当を継続する方針である。基本戦略Iの安定した財務基盤の確立・収益力の強化は、主として基本戦略IIで推進する成長戦略を下支えするものであると考えられる。

(2) 基本戦略II 研究開発の強化による価値創造と2030年に向けた種まき
同社グループでは、既存事業の強化・新たな柱の創出を成長戦略に掲げる。その実現に向けて、事業基盤を維持するための投資を263億円とし、前中期経営計画並みの規模を確保しながら、そのうち環境投資の割合を大きく増やす計画だ。地域別には、北米では、太陽光発電だけでなく風力発電の導入も予定しており、ASEAN地域では新たな拠点の設置や、現地パートナー企業の選定を行う。また、新たに戦略事業投資として100億円を設定、研究開発費も前中期経営計画から26億円増額し新規事業の創出を加速させる計画であり、技術研究所では先行開発に注力する。事業セグメント別の成長戦略は、以下のようになっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

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配信元: フィスコ
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