554円
ココナラのニュース
■業績動向
1. 2022年8月期の業績概要
ココナラ<4176>の2022年8月期の連結業績は、営業収益で前期比39.7%増の3,837百万円、営業損失で515百万円(前期は89百万円の利益)、経常損失で511百万円(同59百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失で494百万円(同41百万円の利益)となり、「ココナラ」の流通高は同32.5%増の12,718百万円となった。流通高、営業収益ともに期初計画を上回り、ココナラ経済圏の拡大が順調に進んだものと評価される。また、営業利益は2期ぶりに損失を計上したが、人材投資に加えてTVCMなど広告宣伝費を大幅に積み増したことが主因であり、TVCM関連費用控除前のNon-GAAP営業利益では前期の262百万円から449百万円と増益基調が続いた。
期初計画比で営業損失額が774百万円縮小した要因は、営業収益が187百万円上振れたことに加えて、広告宣伝費を中心に営業費用が587百万円下回ったことによる。特に広告宣伝費は、第3四半期に新たなマーケティングチャネルの活用に向けた検討を行うため予定していたTVCMを見送り、計画比で302百万円の減額となった。TVCMの費用対効果については従来と遜色なく、第4四半期には再開している。そのほかの費用では人件費・採用費が主に計画を下回ったようだ。
第2四半期に新設した子会社のココナラスキルパートナーズの業績は、売上計上がなく営業損失で12百万円となり、特別損失として投資有価証券評価損30百万円を計上した。ただ、非支配株主に帰属する当期純損失44百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は単体ベース(493百万円の損失)とほぼ同額となった。
(1) 「ココナラ」の動向
2022年8月期の営業収益は前期比36.0%増の3,455百万円となり、営業損失は508百万円となった※。プロダクトアップデート施策(プラットフォームの利便性向上を目的とした機能拡充)とユーザー獲得施策(TVCMを中心とした積極的なマーケティング投資)を推進し、会員数並びに流通高の拡大に取り組んだ。プロダクトアップデート施策としては、チーム閲覧機能やプロジェクト管理、各種書類発行機能、後払い機能、占い認定、サービスPR、SMS認証、取引管理リニューアルなどの機能をアップデートした。これらの取り組みと積極的なマーケティング投資を行ったことにより、登録会員数は前期末比29.7%増の3,146千人に拡大し、流通高は前期比32.5%増の12,718百万円と過去最高を大きく更新した。また、各種施策に取り組むなかで出てきた課題として、ビジネス利用拡大のスピードアップ、プロダクトの磨き込み、新たなユーザー獲得手法の確立の3点を挙げ、2023年8月期以降にこれら課題を解決することでさらなる成長を目指す。
※2022年8月期より収益認識会計基準等の適用により、営業収益で12百万円の減額、営業利益で8百万円の増額要因となっている。前期も同様の会計基準を適用した場合、営業収益の成長率は36.7%増と試算される。
2022年8月期の流通高をカテゴリ別で見ると、制作・ビジネス系が前期比40.0%増の7,724百万円、相談・プライベート系が同22.7%増の4,976百万円といずれも2ケタ成長となった。特に制作・ビジネス系については、「ココナラ」の認知度が向上してきたことに加えて、2021年8月に法人利用の促進を図るための各種機能を揃えた専用サイト「ココナラビジネス」※を立ち上げたことも高成長につながったと考えられる。法人登録会員については小規模企業(従業員1~20名)を中心に2021年時点では数千社にとどまっていたが、「ココナラビジネス」を立ち上げて以降、2022年3月時点で1.4万社、2022年8月時点で2万社を突破するなど右肩上がりに増加した。2023年8月期は後述する新たなユーザー獲得手法に取り組むことで法人会員の獲得ペースを一段と加速させる計画となっている。一方、相談・プライベート系については主力の「占い」系のほか、TVCM効果によりレッスン系のサービスなどが拡大した。直近第4四半期の伸び率を見ても、制作・ビジネス系が前年同期比35.6%増の2,108百万円、相談・プライベート系が同20.6%増の1,329百万円と高成長が続いた。
※「ココナラ」の中からビジネス利用に特化した230超のサービスをラインナップし、一定品質以上の評価を獲得している出品者を掲載。法人でも利用しやすいように、組織・チームで仕事を進めるうえで便利な「チーム管理・連携機能」や「プロジェクト管理機能」を実装したほか、請求書払いや源泉徴収計算、請求書・領収書のオンライン発行等にも対応している。
流通高を購入UU数と1人当たり購入額に分解すると、購入UU数は前期比23.5%増の395千人、1人当たり購入額は同7.4%増の32千円といずれも増加基調が続いた。1人当たり購入額の上昇については、平均購入額が相対的に高い制作・ビジネス系の成長が増加要因になったと考えられる。一方、出品者側から見た場合も販売UU数が前期比9.0%増の61千人、1人当たり販売額が同21.7%増の206千円といずれも増加した。同社は販売UU数を拡大していくこともココナラ経済圏の拡大に向けて重要と考えており、そのための施策として2022年7月に新たにサービスPR機能をリリースした。
サービスPR機能とは、出品者が自身のサービスを「ココナラ」サイト上に広告宣伝できるサービスである。購入希望者が対象サービスを購入する場合、検索絞り込み機能を使って出品者を選択するが、検索結果は評価の高い出品者が上位に表示される。このため、スキルの高い出品者であっても取引実績がない場合や少ない場合は検索上位画面に表示されにくいという課題があった。こうした課題を解消するため、検索結果画面に広告枠を設けて、出品者が自身のサービスを掲載することで、購入者に宣伝できる機能となる。出品者は広告枠がクリックされた件数によって広告費用が発生することになるが、負担額は小さく費用対効果も可視化できるため利用しやすくなっている。新たに「ココナラ」でサービスを販売したい出品者にとっては有用性の高いサービスとなり、販売UU数の拡大につながる取り組みとして期待される。また、同社にとっても広告収入という流通高に連動しない新たな収益を得られることになる。
テイクレートについては前期の26%台から27%台に若干上昇した。2021年4月以降、手数料率を25%に統一した際に(電話相談は約50%)、販売額5万円超の取引の手数料率を段階的に下げる仕組みが撤廃されたことが要因と見られる。また、第4四半期のテイクレートが27.3%と前四半期比で0.1ポイント上昇したが、サービスPR機能を導入した効果が若干ながら出たものと考えられる。今後のテイクレートの水準については、手数料率の高い「電話相談」の構成比率低下を見込むものの、サービスPR機能の導入により広告収入の増加が期待できることもあり、当面は同水準で推移すると見られる。中期的には、利用者がメリットを享受できる有料サービスを導入することができれば、緩やかに上昇する可能性もある。実際、海外で同様のビジネスを展開するFiverr Internationalでは、手数料率25%をベースに各種有料サービスを導入することで29%台のテイクレートを実現している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2022年8月期の業績概要
ココナラ<4176>の2022年8月期の連結業績は、営業収益で前期比39.7%増の3,837百万円、営業損失で515百万円(前期は89百万円の利益)、経常損失で511百万円(同59百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失で494百万円(同41百万円の利益)となり、「ココナラ」の流通高は同32.5%増の12,718百万円となった。流通高、営業収益ともに期初計画を上回り、ココナラ経済圏の拡大が順調に進んだものと評価される。また、営業利益は2期ぶりに損失を計上したが、人材投資に加えてTVCMなど広告宣伝費を大幅に積み増したことが主因であり、TVCM関連費用控除前のNon-GAAP営業利益では前期の262百万円から449百万円と増益基調が続いた。
期初計画比で営業損失額が774百万円縮小した要因は、営業収益が187百万円上振れたことに加えて、広告宣伝費を中心に営業費用が587百万円下回ったことによる。特に広告宣伝費は、第3四半期に新たなマーケティングチャネルの活用に向けた検討を行うため予定していたTVCMを見送り、計画比で302百万円の減額となった。TVCMの費用対効果については従来と遜色なく、第4四半期には再開している。そのほかの費用では人件費・採用費が主に計画を下回ったようだ。
第2四半期に新設した子会社のココナラスキルパートナーズの業績は、売上計上がなく営業損失で12百万円となり、特別損失として投資有価証券評価損30百万円を計上した。ただ、非支配株主に帰属する当期純損失44百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は単体ベース(493百万円の損失)とほぼ同額となった。
(1) 「ココナラ」の動向
2022年8月期の営業収益は前期比36.0%増の3,455百万円となり、営業損失は508百万円となった※。プロダクトアップデート施策(プラットフォームの利便性向上を目的とした機能拡充)とユーザー獲得施策(TVCMを中心とした積極的なマーケティング投資)を推進し、会員数並びに流通高の拡大に取り組んだ。プロダクトアップデート施策としては、チーム閲覧機能やプロジェクト管理、各種書類発行機能、後払い機能、占い認定、サービスPR、SMS認証、取引管理リニューアルなどの機能をアップデートした。これらの取り組みと積極的なマーケティング投資を行ったことにより、登録会員数は前期末比29.7%増の3,146千人に拡大し、流通高は前期比32.5%増の12,718百万円と過去最高を大きく更新した。また、各種施策に取り組むなかで出てきた課題として、ビジネス利用拡大のスピードアップ、プロダクトの磨き込み、新たなユーザー獲得手法の確立の3点を挙げ、2023年8月期以降にこれら課題を解決することでさらなる成長を目指す。
※2022年8月期より収益認識会計基準等の適用により、営業収益で12百万円の減額、営業利益で8百万円の増額要因となっている。前期も同様の会計基準を適用した場合、営業収益の成長率は36.7%増と試算される。
2022年8月期の流通高をカテゴリ別で見ると、制作・ビジネス系が前期比40.0%増の7,724百万円、相談・プライベート系が同22.7%増の4,976百万円といずれも2ケタ成長となった。特に制作・ビジネス系については、「ココナラ」の認知度が向上してきたことに加えて、2021年8月に法人利用の促進を図るための各種機能を揃えた専用サイト「ココナラビジネス」※を立ち上げたことも高成長につながったと考えられる。法人登録会員については小規模企業(従業員1~20名)を中心に2021年時点では数千社にとどまっていたが、「ココナラビジネス」を立ち上げて以降、2022年3月時点で1.4万社、2022年8月時点で2万社を突破するなど右肩上がりに増加した。2023年8月期は後述する新たなユーザー獲得手法に取り組むことで法人会員の獲得ペースを一段と加速させる計画となっている。一方、相談・プライベート系については主力の「占い」系のほか、TVCM効果によりレッスン系のサービスなどが拡大した。直近第4四半期の伸び率を見ても、制作・ビジネス系が前年同期比35.6%増の2,108百万円、相談・プライベート系が同20.6%増の1,329百万円と高成長が続いた。
※「ココナラ」の中からビジネス利用に特化した230超のサービスをラインナップし、一定品質以上の評価を獲得している出品者を掲載。法人でも利用しやすいように、組織・チームで仕事を進めるうえで便利な「チーム管理・連携機能」や「プロジェクト管理機能」を実装したほか、請求書払いや源泉徴収計算、請求書・領収書のオンライン発行等にも対応している。
流通高を購入UU数と1人当たり購入額に分解すると、購入UU数は前期比23.5%増の395千人、1人当たり購入額は同7.4%増の32千円といずれも増加基調が続いた。1人当たり購入額の上昇については、平均購入額が相対的に高い制作・ビジネス系の成長が増加要因になったと考えられる。一方、出品者側から見た場合も販売UU数が前期比9.0%増の61千人、1人当たり販売額が同21.7%増の206千円といずれも増加した。同社は販売UU数を拡大していくこともココナラ経済圏の拡大に向けて重要と考えており、そのための施策として2022年7月に新たにサービスPR機能をリリースした。
サービスPR機能とは、出品者が自身のサービスを「ココナラ」サイト上に広告宣伝できるサービスである。購入希望者が対象サービスを購入する場合、検索絞り込み機能を使って出品者を選択するが、検索結果は評価の高い出品者が上位に表示される。このため、スキルの高い出品者であっても取引実績がない場合や少ない場合は検索上位画面に表示されにくいという課題があった。こうした課題を解消するため、検索結果画面に広告枠を設けて、出品者が自身のサービスを掲載することで、購入者に宣伝できる機能となる。出品者は広告枠がクリックされた件数によって広告費用が発生することになるが、負担額は小さく費用対効果も可視化できるため利用しやすくなっている。新たに「ココナラ」でサービスを販売したい出品者にとっては有用性の高いサービスとなり、販売UU数の拡大につながる取り組みとして期待される。また、同社にとっても広告収入という流通高に連動しない新たな収益を得られることになる。
テイクレートについては前期の26%台から27%台に若干上昇した。2021年4月以降、手数料率を25%に統一した際に(電話相談は約50%)、販売額5万円超の取引の手数料率を段階的に下げる仕組みが撤廃されたことが要因と見られる。また、第4四半期のテイクレートが27.3%と前四半期比で0.1ポイント上昇したが、サービスPR機能を導入した効果が若干ながら出たものと考えられる。今後のテイクレートの水準については、手数料率の高い「電話相談」の構成比率低下を見込むものの、サービスPR機能の導入により広告収入の増加が期待できることもあり、当面は同水準で推移すると見られる。中期的には、利用者がメリットを享受できる有料サービスを導入することができれば、緩やかに上昇する可能性もある。実際、海外で同様のビジネスを展開するFiverr International
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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