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戸田工業のニュース
*14:46JST 戸田工業 Research Memo(6):中期成長事業に加え次世代事業の拡大で新たな成長を目指す(1)
■中長期の成長戦略
1. 中期事業計画-Vision2023-
戸田工業<4100>は2021年8月に中期事業計画として2023年の創業200周年を念頭に2022年3月期から2024年3月期までの3カ年を実行期間として、「Vision2023」を発表した。本期間においては「電子素材」セグメントを成長事業とし、「機能性顔料」を安定した経営基盤として位置づけ、「事業成長に向けた生産能力強化、既存設備の維持更新」、「次世代電子材料や環境関連材料などの新規事業への投資」、「ESGの取り組み推進」も行い、目標達成を目指すとしていた。具体的な数値目標として2024年3月期に売上高365億円、営業利益23億円を掲げた。電子素材事業では戦略3事業を伸ばし、5つの事業フィールドについては、「自動車」と「家電・通信機器」での拡大を目指す計画となっている。
2. Vision2023の進捗状況
Vision2023の進捗状況については、2022年3月期の実績で年度計画として売上高は2023年3月期の計画値を超え、営業利益は最終年度の計画値を上回った。売上高は当初の為替前提が1$=105円であり、またニッケル価格などの市況連動製品も多く、どの指標も中期事業計画からずれていたこともあり、大きく上振れた。但し2023年3月期は、原材料の高騰、加えて為替の円安傾向、また自動車生産が半導体調達や中国でのロックダウン、ウクライナ紛争によるエネルギー価格の高騰など、同社を取り巻く環境が激変し、売上高では計画値を上回り34,934百万円となったものの、営業利益は1,367百万円と大幅な未達を余儀なくされた。また2024年3月期についても前半は引き続きコスト高継続の中で市況の低迷が懸念され、厳しい環境が続く見通しに加え、当初計画に織込んでいなかった戸田聯合の連結除外もあり、計画値に対し売上高で4,500百万円下回る32,000百万円、営業利益に至っては1,400百万円下回る900百万円予想に止まっている。なお計画期間において想定していなかった戸田聯合除外を考慮した場合、売上高は5,000百万円程度上回る予想となるが、当初の為替前提が1$=105円であり、現状の為替推移を考慮すると実質的に計画値並みになると判断できる。但し利益面では為替影響の感応度がそれほど大きくないと見られ、連結除外影響を考慮しても計画値の9割に止まる見通しと言えよう。
3. 創業200周年のさらにその先へ-Go Beyond 200-
同社は今回、2024年3月期から3カ年の次期中期事業計画の策定を2024年5月に行い、新事業分野の本格拡大で新たな成長を目指すこととした。具体的な目標数字の開示はこれを待つこととなるが、方向性は変わらず、現在の磁石材料、誘電体材料、LIB用材料の戦略3事業の拡大に加え、軟磁性材料、環境関連材料など次世代事業を展開することで、新たな飛躍を目指すことになるとみられる。
(1) 戦略3事業
a) 磁石材料
磁石材料は従来用途に加え、自動車用途に適した耐熱性の確保を目指し、素材開発、サプライチェーン強化を図る。フェライト系磁石材料は、複写機・プリンターなどのマグロール向けが成熟し、2000年以降はエアコンの省エネ化でモーターのDC化が加速、DCタイプには極異方性ボンド磁石が高効率化、軽量化、軸インサート成形が可能なことで現在も多用されている。また希土類系磁石材料は、PC周辺のスピンドルモーターなど、PC周辺やゲーム機向けなどで利用されていた。
今後は自動車用途への期待が大きく、ゴム磁石は既に自動車用のABS用磁気エンコーダマグネットに応用されており、最近では熱管理に必要な各種冷却ポンプ用マグネットとして需要が伸びている。
自動車の電装化の進展とともにボンド磁石の需要が高まる一方、特性面では、高温対応や耐環境性、高磁気特性の要求が高まっている。同社は素材開発として磁性粉(フェライト・希土類)の改良、樹脂複合化技術のさらなる研鑽を図る。例えば、フェライト系磁石材料では、靭性の高い素材や、成形時の腐食性ガス発生を抑制した素材の開発に成功している。2022年に開発した靭性の高い素材は、樹脂の配合割合を工夫し、従来品の1.25倍まで耐熱性を高め、温度変化への耐性も高めたもので、EV等の車体内部の熱管理に使う冷却ポンプのモーター向けをメインターゲットとしている。EVはエンジンがない一方、2次電池やECUが発熱するため熱管理が重要で、冷却ポンプは必須かつ重要部品であるため、今後の需要拡大が見込まれる。また射出成形時に金型を腐食するガスを9割削減した射出成形用ボンド磁石PPSコンパウンド(ポリフェニレンサルファイド樹脂:耐熱性、化学耐性、電気絶縁性などに優れた複合材料)は、金型の寿命を伸ばすことで金型メンテナンス費用を抑制できる製品である。これはセンサー向けやエアコン部品にも利用可能で、用途開発にも力を入れる。加えて、磁石成形事業会社である江門協立の買収により、素材から部品加工まで一貫生産体制の構築によるシナジー効果も見込まれる。
中期事業計画では磁石事業で100億円を目指していたが、2023年3月期で磁石材料の売上高が114億円まで高まり、さらに2024年3月期は江門協立での増分を足し合わせた金額を上回る売上が見込まれる。世界のボンド磁石市場はEV化の加速もあり今後の成長加速に期待がかかる。
b) 誘電体材料
誘電体材料は、MLCCの小型化に対応したさらなる微粒子化を追求し、コスト削減を図り、先端材料としての拡大を目指す。MLCCのサイズトレンドでは、スマートフォンなどモバイル機器により、0603サイズが1005サイズを抜き最大比率となり、さらに0402サイズの比率も高まっている。さらに0201サイズも通信モジュールやウェアラブル機器などでの利用が見込まれる。一方、車載向けはECU小型化で1005サイズが主流となり、0603サイズも今後増えると思われるが、こちらは小型化よりも酷寒から灼熱まで広い温度範囲で安定した特性を出せる高信頼性の製品が求められている。現在、環境対応車や自動運転支援の普及で、自動車1台当たりのMLCC使用数量が従来の100個~3,000個程度から3,000個~6,000個程度まで伸長している。さらに今後はパワートレイン系、xEV系、ボディ系、走行安全系、インフォテインメント系、全ての分野で使用個数が拡大するとみられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
<SI>
1. 中期事業計画-Vision2023-
戸田工業<4100>は2021年8月に中期事業計画として2023年の創業200周年を念頭に2022年3月期から2024年3月期までの3カ年を実行期間として、「Vision2023」を発表した。本期間においては「電子素材」セグメントを成長事業とし、「機能性顔料」を安定した経営基盤として位置づけ、「事業成長に向けた生産能力強化、既存設備の維持更新」、「次世代電子材料や環境関連材料などの新規事業への投資」、「ESGの取り組み推進」も行い、目標達成を目指すとしていた。具体的な数値目標として2024年3月期に売上高365億円、営業利益23億円を掲げた。電子素材事業では戦略3事業を伸ばし、5つの事業フィールドについては、「自動車」と「家電・通信機器」での拡大を目指す計画となっている。
2. Vision2023の進捗状況
Vision2023の進捗状況については、2022年3月期の実績で年度計画として売上高は2023年3月期の計画値を超え、営業利益は最終年度の計画値を上回った。売上高は当初の為替前提が1$=105円であり、またニッケル価格などの市況連動製品も多く、どの指標も中期事業計画からずれていたこともあり、大きく上振れた。但し2023年3月期は、原材料の高騰、加えて為替の円安傾向、また自動車生産が半導体調達や中国でのロックダウン、ウクライナ紛争によるエネルギー価格の高騰など、同社を取り巻く環境が激変し、売上高では計画値を上回り34,934百万円となったものの、営業利益は1,367百万円と大幅な未達を余儀なくされた。また2024年3月期についても前半は引き続きコスト高継続の中で市況の低迷が懸念され、厳しい環境が続く見通しに加え、当初計画に織込んでいなかった戸田聯合の連結除外もあり、計画値に対し売上高で4,500百万円下回る32,000百万円、営業利益に至っては1,400百万円下回る900百万円予想に止まっている。なお計画期間において想定していなかった戸田聯合除外を考慮した場合、売上高は5,000百万円程度上回る予想となるが、当初の為替前提が1$=105円であり、現状の為替推移を考慮すると実質的に計画値並みになると判断できる。但し利益面では為替影響の感応度がそれほど大きくないと見られ、連結除外影響を考慮しても計画値の9割に止まる見通しと言えよう。
3. 創業200周年のさらにその先へ-Go Beyond 200-
同社は今回、2024年3月期から3カ年の次期中期事業計画の策定を2024年5月に行い、新事業分野の本格拡大で新たな成長を目指すこととした。具体的な目標数字の開示はこれを待つこととなるが、方向性は変わらず、現在の磁石材料、誘電体材料、LIB用材料の戦略3事業の拡大に加え、軟磁性材料、環境関連材料など次世代事業を展開することで、新たな飛躍を目指すことになるとみられる。
(1) 戦略3事業
a) 磁石材料
磁石材料は従来用途に加え、自動車用途に適した耐熱性の確保を目指し、素材開発、サプライチェーン強化を図る。フェライト系磁石材料は、複写機・プリンターなどのマグロール向けが成熟し、2000年以降はエアコンの省エネ化でモーターのDC化が加速、DCタイプには極異方性ボンド磁石が高効率化、軽量化、軸インサート成形が可能なことで現在も多用されている。また希土類系磁石材料は、PC周辺のスピンドルモーターなど、PC周辺やゲーム機向けなどで利用されていた。
今後は自動車用途への期待が大きく、ゴム磁石は既に自動車用のABS用磁気エンコーダマグネットに応用されており、最近では熱管理に必要な各種冷却ポンプ用マグネットとして需要が伸びている。
自動車の電装化の進展とともにボンド磁石の需要が高まる一方、特性面では、高温対応や耐環境性、高磁気特性の要求が高まっている。同社は素材開発として磁性粉(フェライト・希土類)の改良、樹脂複合化技術のさらなる研鑽を図る。例えば、フェライト系磁石材料では、靭性の高い素材や、成形時の腐食性ガス発生を抑制した素材の開発に成功している。2022年に開発した靭性の高い素材は、樹脂の配合割合を工夫し、従来品の1.25倍まで耐熱性を高め、温度変化への耐性も高めたもので、EV等の車体内部の熱管理に使う冷却ポンプのモーター向けをメインターゲットとしている。EVはエンジンがない一方、2次電池やECUが発熱するため熱管理が重要で、冷却ポンプは必須かつ重要部品であるため、今後の需要拡大が見込まれる。また射出成形時に金型を腐食するガスを9割削減した射出成形用ボンド磁石PPSコンパウンド(ポリフェニレンサルファイド樹脂:耐熱性、化学耐性、電気絶縁性などに優れた複合材料)は、金型の寿命を伸ばすことで金型メンテナンス費用を抑制できる製品である。これはセンサー向けやエアコン部品にも利用可能で、用途開発にも力を入れる。加えて、磁石成形事業会社である江門協立の買収により、素材から部品加工まで一貫生産体制の構築によるシナジー効果も見込まれる。
中期事業計画では磁石事業で100億円を目指していたが、2023年3月期で磁石材料の売上高が114億円まで高まり、さらに2024年3月期は江門協立での増分を足し合わせた金額を上回る売上が見込まれる。世界のボンド磁石市場はEV化の加速もあり今後の成長加速に期待がかかる。
b) 誘電体材料
誘電体材料は、MLCCの小型化に対応したさらなる微粒子化を追求し、コスト削減を図り、先端材料としての拡大を目指す。MLCCのサイズトレンドでは、スマートフォンなどモバイル機器により、0603サイズが1005サイズを抜き最大比率となり、さらに0402サイズの比率も高まっている。さらに0201サイズも通信モジュールやウェアラブル機器などでの利用が見込まれる。一方、車載向けはECU小型化で1005サイズが主流となり、0603サイズも今後増えると思われるが、こちらは小型化よりも酷寒から灼熱まで広い温度範囲で安定した特性を出せる高信頼性の製品が求められている。現在、環境対応車や自動運転支援の普及で、自動車1台当たりのMLCC使用数量が従来の100個~3,000個程度から3,000個~6,000個程度まで伸長している。さらに今後はパワートレイン系、xEV系、ボディ系、走行安全系、インフォテインメント系、全ての分野で使用個数が拡大するとみられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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