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日本カーバイド工業のニュース
■会社概要
1. 会社沿革並びに事業概要
日本カーバイド工業<4064>は、硫酸アンモニウム製造をハーバーボッシュ法により行うことを目的として1926年に設立された東洋窒素工業を前身とし、東洋窒素工業がアセチレン系化学工業を興すことを目的に、新会社を設立することになり、1935年に誕生した。新会社は富山の国産肥料(株)を1936年1月に合併し、同年2月には魚津工場の操業を始め、最先端化学工業としてアセチレン誘導工業の拡大を支えてきた。石灰窒素肥料主体から、戦後は塩化ビニル樹脂の急速な成長にけん引され、そのほかにもメラミン、有機合成群を製造し成長した。
しかし有機化学の分野では、石灰石—カーバイドを原料としたアセチレン主体の電気化学から石油—ナフサを原料とするエチレン主体の石油化学への転換が進み、日本のカーバイド産業も転換期を迎える。実際、1960年に世界一の世界生産量を誇り、1967年には生産のピークを記録した日本のカーバイド産業であったが、その後は高い電力コストなどの制約も影響し、大型エチレンプラント工場の立ち上げでエチレン生産コストが下落したため、急速にエチレンを中心とする石油化学に押されることになり、多角化を図らざるを得ない状況に置かれた。
このようななかで同社は、多角化事業として1976年3月にはマーキングフィルム事業、1980年1月には(株)北陸セラミックに資本参加し電子材料(セラミック基板)事業に進出、1990年1月にはプリント配線板事業にも参入、1991年5月にはニッカポリマ(株)を設立し、再帰反射シート事業にも進出した。80年代はバブルでもあり、市場シェアが低くとも売上高を拡大することが可能で、売上高が膨らんでいった。
しかし、バブル崩壊とともに投資負担がのしかかり収益が低迷。1992年3月期に売上高90,213百万円と過去最大の売上高を計上するものの、純利益は投資負担増や特別損失計上もあり193百万円の損失を計上した。1993年3月期は営業利益1,841百万円と最高営業利益更新ながら、税引利益段階では805百万円の損失を計上。その後、売上減少のなかで事業再編を余儀なくされ、1993年3月期から2002年3月期までの10年間で累計営業利益19,590百万円計上したものの、支払利息や各種営業外費用がかさみ経常利益は累計3,468百万円にとどまり特別損失を累計14,505百万円計上、税引損失が10期中8期、累計税引損失は9,158百万円に及んだ。
その後も子会社統合や不採算事業の撤退を続け、2004年3月期には47,479百万円まで売上高が縮小した。一方でスペシャリティケミカルの拡大などが進展したことで徐々に売上高が拡大、収益性も向上し、リーマンショック後の2010年3月期には売上高こそ46,939百万円とピーク時の52%まで縮小したものの、利益面では黒字を維持、2011年3月期には経常利益4,401百万円、当期純利益2,766百万円と最高益更新を果たした。
現状、グローバル化推進や研究開発投資負担増など先行投資負担がかさみ、いまひとつ伸び悩んでいるものの、収益性においては高付加価値化で総利益率が着実に向上している。また財務面でも緩やかながら体質強化が図られ、代表的な指標である自己資本比率、D/Eレシオが着実に向上している。このようななかで、国内については2016年にプリント配線板事業からの撤退を終え、生産設備、子会社の統廃合、不採算事業からの撤退などがほぼ完了した。これにより、国内ネットワークとして国内6拠点(本社・支店1拠点、工場2拠点、製造所1拠点、研究所1拠点)へ集約化された。また海外については主要12拠点を有するまでになった。国内外での生産、販売ネットワークの適正な構築が進んだなかで、同社はコア技術である樹脂重合技術、フィルム・シート技術、焼成技術を軸に様々な製品・サービスを提供する企業グループとして、新たな成長を目指している。
2. 事業内容
主要セグメントは4つの事業に分類され、2019年3月期における売上構成は、電子・機能製品事業38%、フィルム・シート製品事業33%、建材関連事業19%、エンジニアリング事業10%となっている。
(1) 主要事業の主な取扱製品の説明
a) 電子・機能製品事業
電子・機能製品事業は3つのカテゴリーに大別でき、2019年3月期の売上高比率で示すと、機能化学品15%、機能樹脂57%、電子素材28%という内訳になる。
1) 機能化学品
機能化学品には、ファインケミカル製品や医薬品原体・中間体がある。社名の「カーバイド」由来の化合物を中心に、電子材料、特殊塗料、農薬、金属表面処理剤、医薬品、生化学など多様な分野に製品を供給している。
特に、萌芽や発芽を促進する植物成長調整剤「CX-10」は、落葉果樹の発芽促進を目的とした植物成長調整剤の国内唯一のメーカーとしてシェア100%である。同製品はブドウなどの休眠芽に処理を加え休眠覚醒を促し、発芽の促進、発芽率の向上を目的に開発された。有効成分としてシアナミド(土壌中の害虫や雑草にも効果があり土壌消毒用の農薬として利用されている)を含む。これは休眠打破効果があり、2000年に植物成長調整剤(萌芽促進剤・発芽促進剤)として農薬登録(登録番号 第20344号)を行って以来、農薬として売上拡大している。芽ぞろいを良くできることから、ジベレリン処理(種なし葡萄化処理)の作業効率アップや、収穫期間の短縮による暖房費の節約などが可能となる。このため、ブドウ・梨・さくらんぼ・桃などの果実はもちろん、桜の開花促進などでも利用されている。
2) 機能樹脂
機能樹脂としては、フィルムラベル用から電子・光学用粘着剤や自動車、パップ材などの医療用など幅広い用途に使用される粘・接着剤、さらにはトナー用樹脂(バインダー)向けに開発されたスチレンアクリル系の樹脂などがある。また学校や病院、回転寿司店などで広く使われている、軽くて丈夫、熱にも強い「メラミン食器」も扱っている。最近では、コーセー<4922>と共同開発した“ホットフラッシュ”といった、突然の汗にもくずれない耐水性を実現しながら柔軟性も高く肌への負担感がない「汗くずれ防止美膜キープ成分」など、高機能製品の投入も増えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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1. 会社沿革並びに事業概要
日本カーバイド工業<4064>は、硫酸アンモニウム製造をハーバーボッシュ法により行うことを目的として1926年に設立された東洋窒素工業を前身とし、東洋窒素工業がアセチレン系化学工業を興すことを目的に、新会社を設立することになり、1935年に誕生した。新会社は富山の国産肥料(株)を1936年1月に合併し、同年2月には魚津工場の操業を始め、最先端化学工業としてアセチレン誘導工業の拡大を支えてきた。石灰窒素肥料主体から、戦後は塩化ビニル樹脂の急速な成長にけん引され、そのほかにもメラミン、有機合成群を製造し成長した。
しかし有機化学の分野では、石灰石—カーバイドを原料としたアセチレン主体の電気化学から石油—ナフサを原料とするエチレン主体の石油化学への転換が進み、日本のカーバイド産業も転換期を迎える。実際、1960年に世界一の世界生産量を誇り、1967年には生産のピークを記録した日本のカーバイド産業であったが、その後は高い電力コストなどの制約も影響し、大型エチレンプラント工場の立ち上げでエチレン生産コストが下落したため、急速にエチレンを中心とする石油化学に押されることになり、多角化を図らざるを得ない状況に置かれた。
このようななかで同社は、多角化事業として1976年3月にはマーキングフィルム事業、1980年1月には(株)北陸セラミックに資本参加し電子材料(セラミック基板)事業に進出、1990年1月にはプリント配線板事業にも参入、1991年5月にはニッカポリマ(株)を設立し、再帰反射シート事業にも進出した。80年代はバブルでもあり、市場シェアが低くとも売上高を拡大することが可能で、売上高が膨らんでいった。
しかし、バブル崩壊とともに投資負担がのしかかり収益が低迷。1992年3月期に売上高90,213百万円と過去最大の売上高を計上するものの、純利益は投資負担増や特別損失計上もあり193百万円の損失を計上した。1993年3月期は営業利益1,841百万円と最高営業利益更新ながら、税引利益段階では805百万円の損失を計上。その後、売上減少のなかで事業再編を余儀なくされ、1993年3月期から2002年3月期までの10年間で累計営業利益19,590百万円計上したものの、支払利息や各種営業外費用がかさみ経常利益は累計3,468百万円にとどまり特別損失を累計14,505百万円計上、税引損失が10期中8期、累計税引損失は9,158百万円に及んだ。
その後も子会社統合や不採算事業の撤退を続け、2004年3月期には47,479百万円まで売上高が縮小した。一方でスペシャリティケミカルの拡大などが進展したことで徐々に売上高が拡大、収益性も向上し、リーマンショック後の2010年3月期には売上高こそ46,939百万円とピーク時の52%まで縮小したものの、利益面では黒字を維持、2011年3月期には経常利益4,401百万円、当期純利益2,766百万円と最高益更新を果たした。
現状、グローバル化推進や研究開発投資負担増など先行投資負担がかさみ、いまひとつ伸び悩んでいるものの、収益性においては高付加価値化で総利益率が着実に向上している。また財務面でも緩やかながら体質強化が図られ、代表的な指標である自己資本比率、D/Eレシオが着実に向上している。このようななかで、国内については2016年にプリント配線板事業からの撤退を終え、生産設備、子会社の統廃合、不採算事業からの撤退などがほぼ完了した。これにより、国内ネットワークとして国内6拠点(本社・支店1拠点、工場2拠点、製造所1拠点、研究所1拠点)へ集約化された。また海外については主要12拠点を有するまでになった。国内外での生産、販売ネットワークの適正な構築が進んだなかで、同社はコア技術である樹脂重合技術、フィルム・シート技術、焼成技術を軸に様々な製品・サービスを提供する企業グループとして、新たな成長を目指している。
2. 事業内容
主要セグメントは4つの事業に分類され、2019年3月期における売上構成は、電子・機能製品事業38%、フィルム・シート製品事業33%、建材関連事業19%、エンジニアリング事業10%となっている。
(1) 主要事業の主な取扱製品の説明
a) 電子・機能製品事業
電子・機能製品事業は3つのカテゴリーに大別でき、2019年3月期の売上高比率で示すと、機能化学品15%、機能樹脂57%、電子素材28%という内訳になる。
1) 機能化学品
機能化学品には、ファインケミカル製品や医薬品原体・中間体がある。社名の「カーバイド」由来の化合物を中心に、電子材料、特殊塗料、農薬、金属表面処理剤、医薬品、生化学など多様な分野に製品を供給している。
特に、萌芽や発芽を促進する植物成長調整剤「CX-10」は、落葉果樹の発芽促進を目的とした植物成長調整剤の国内唯一のメーカーとしてシェア100%である。同製品はブドウなどの休眠芽に処理を加え休眠覚醒を促し、発芽の促進、発芽率の向上を目的に開発された。有効成分としてシアナミド(土壌中の害虫や雑草にも効果があり土壌消毒用の農薬として利用されている)を含む。これは休眠打破効果があり、2000年に植物成長調整剤(萌芽促進剤・発芽促進剤)として農薬登録(登録番号 第20344号)を行って以来、農薬として売上拡大している。芽ぞろいを良くできることから、ジベレリン処理(種なし葡萄化処理)の作業効率アップや、収穫期間の短縮による暖房費の節約などが可能となる。このため、ブドウ・梨・さくらんぼ・桃などの果実はもちろん、桜の開花促進などでも利用されている。
2) 機能樹脂
機能樹脂としては、フィルムラベル用から電子・光学用粘着剤や自動車、パップ材などの医療用など幅広い用途に使用される粘・接着剤、さらにはトナー用樹脂(バインダー)向けに開発されたスチレンアクリル系の樹脂などがある。また学校や病院、回転寿司店などで広く使われている、軽くて丈夫、熱にも強い「メラミン食器」も扱っている。最近では、コーセー<4922>と共同開発した“ホットフラッシュ”といった、突然の汗にもくずれない耐水性を実現しながら柔軟性も高く肌への負担感がない「汗くずれ防止美膜キープ成分」など、高機能製品の投入も増えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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