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東亞合成、半導体製造用薬剤と車載電池用材料のさらなる伸長を目指す 新製品や新技術の開発力強化へ

投稿:2024/06/10 17:00

成長ドライバー

守田正樹氏(以下、守田):ここからは「トップに聞く」をお届けします。今日は、東亞合成の髙村美己志社長にお越しいただいています。高村社長、今日はよろしくお願いします。

髙村美己志氏(以下、髙村):よろしくお願いします。

守田:さて、東亞合成の創立は1944年だと、もう創業80年になると思います。ずっと新しい成長分野を増やして、大きくなってきた会社だと思います。今、成長ドライバーと位置づけているのは、どのような分野ですか?

髙村:大きくは2つあります。1つは半導体製造用薬剤です。もう1つは車載電池用材料です。

守田:2つの成長ドライバーについてはここからどのように育てていくのか、後ほどゆっくりお話をうかがいたいと思います。

5つの事業セグメント(川上から川下へ)

守田:スライドでは2ページにわたって、御社の5つの事業セグメントをまとめています。

1つ目が基幹化学品事業で、無機化学品とアクリルモノマーを扱っています。2つ目が高機能材料事業、3つ目がポリマー・オリゴマー事業、4つ目が接着材料事業、5つ目が樹脂加工製品事業です。

御社にはこのような5つの事業セグメントがありますが、どのような事業展開をしているのでしょうか?

髙村:それぞれの事業は深く関連しています。特に、最初の無機化学品の製造からは100年以上経つ中で、カセイソーダや塩酸などから、現在の半導体向けの材料などが出てきました。

アクリルも石油化学事業の一環で、アクリル酸、アクリル酸エステルに取り組みました。こちらを「川下展開」として高機能を持たせたポリマー事業が始まり、これらがさらに発展して車載用電池の材料や化粧品関係の添加剤など、機能を多彩に持たせたものができるようになってきました。

守田:御社の事業展開の1つの特徴は、川上から川下まで、広くバリューチェーンの上から下まで展開していることです。そのような中で、どんどん新しい高機能製品を展開してきた歴史があります。

そのような中で、今でも何か高機能製品を作る上で川上の素材の部分から、いろいろ事業展開できる強みがあるのですね。

髙村:おっしゃるとおりです。

5つの事業セグメント

守田:BtoB、BtoCで分けると、BtoCも含めて展開していますね。

髙村:そうですね。接着材料事業では、BtoBとBtoCの両方に取り組んでいます。BtoBは車載用を含んでいます。

BtoCは「アロンアルフア」です。何年かに一度まったく新しい新製品を出しており、昨年は光で硬化する「アロンアルフア光」を発売しました。

模型工作など、いろいろなところに今までとまったく違う原理でつけられ、強度も非常に強く白化(※)しないなどの点で高評価を得ています。

守田:「アロンアルフア」は発売からすでに50年以上経ち、市場シェアも8割というレベルです。一般消費者向け瞬間接着剤最長寿ブランドとして、ギネス世界記録にも認定されています。我々は当たり前に捉えていますが、技術もどんどん進んでいるのですね。

髙村:おっしゃるとおりです。容器やパッケージを変えるだけではなく、我々はその中の原液から変えて、新製品を「アロンアルフア」として出しています。このようなことができるのも、弊社ならではの強みだと思っています。

※:瞬間接着剤が接着部分の周囲に粉末状に付着し白くなる現象

東亞合成グループの収益構造(2023年実績・事業セグメント別)

守田:このような5つの事業セグメントを持って進めているわけですが、ここで収益構造を確認しておきたいと思います。

髙村:スライドは昨年の実績です。円グラフの外側は売上高、内側が営業利益を表しています。キャッシュについては、ベーシックな基幹化学品製品で稼いでいます。機能製品のポリマー・オリゴマー、接着剤以下、このようなところで必要な手だてもできるかたちになっています。

昨年は数量がなかなか伸び悩み減収減益になってしまったものの、値上げなどの価格転嫁により、それなりの利益水準は維持できました。

守田:基幹化学品がキャッシュ・カウとして機能して、高機能材料などの成長につながってくるという収益構造になっています。

前期は減収減益となり、前期比10パーセント程度の営業減益だったと思います。今期は前期比12パーセント増の営業増益を見込んでいるのですよね。

髙村:全セグメントで営業利益は増益という計画を立てています。特に期待しているのは、半導体向け材料が入っている高機能材料セグメントや接着剤です。このあたりの増益を期待しています。

守田:わかりました。先ほどご紹介いただいた2つの成長ドライバーについておうかがいします。まずは半導体関連について教えてください。

成長ドライバー(半導体関連)

髙村:当社は、特にウエハ材料などの洗浄や研磨に使われる3つの材料を供給しています。売上高は右肩上がりで推移しており、昨年は残念ながら少し落ちたものの、今年はすでに回復しつつあるという手応えが出てきています。

それぞれの分野で、特にスライドにある上の2つは市場でも高いシェアを占めているため、さらに発展が期待できると考えています。

守田:なるほど。次に、もう1つの成長ドライバーである車載電池関連について教えてください。

成長ドライバー(車載電池関連)

髙村:車載電池用接着剤とリチウムイオン電池用バインダーの2つが商品群です。昨年もご紹介しましたが、接着剤は搭載されている車種が確実に増えているとご理解いただきたいと思います。売上高はグラフのように伸びています。

また、リチウムイオン電池用バインダーも確実に伸びています。国内だけではなく、海外での生産も必要になってくるということを視野に入れ、どこでどのように作るかを検討しているところです。

守田:なるほど。2025年までの経営計画で、今は研究開発に重きを置いた経営だとおっしゃっていますが、これはどのようなことを考えているのですか?

成長へ向けた研究開発、設備投資

髙村:メーカーとしてこれから成長していくためにも、根本である研究開発を強化し、品揃えを増やしていくことが必要だと思っています。このスライドでは、研究開発費、設備投資のグラフを提示しています。2024年はそれぞれ過去最高の数値を予定しています。

おかげさまで新しいネタが育ちつつあり、設備にするべきところも出てきています。非常にありがたいことだと思っています。

守田:成長に向けた投資は惜しまないということだと思いますが、今度、首都圏に新たに研究開発の拠点を作られるのでしょうか?

髙村:そうですね。首都圏に拠点を作る理由は、名古屋市に総合研究所があったのですが、BtoBのお客さまと開発を進める上で、時間的に少し効率の悪い部分があったと考えたためです。

新製品・新技術の開発力強化

髙村:今年の夏、「川崎フロンティエンスR&Dセンター」を開設する予定です。我々は、このような建物を作れば自然と新製品ができるわけではないと思っています。その中で研究員が動いていき、力のあるユーザーと共同で開発できるかどうかが製品化の鍵だと考えています。

守田:これがまさに顧客との協創ですね。

髙村:おっしゃるとおりです。

守田:確かに、名古屋市から西のほうに拠点が多かったと思いますが、東のパワーユーザーも含めて共同で研究開発を進めていくような取り組みということですね。

新製品開発(メディカルケア関連 止血材)

次の展開として、新しい製品の開発にも取り組まれると理解しています。これから新しい柱を作っていく新製品は、どのようなものが目玉でしょうか?

髙村:先ほど力を入れているとご説明した半導体関連材料と車載電池用材料もまだ進化していますが、それ以外の分野では歯科向け医療用接着材料があります。

また、皮膚用接着剤「アロンアルフア スキンプロテクト」も昨年発売を開始しました。このような製品も、広くバイオメディカル関係の分野として力を入れていきたいと思っています。

守田:「アロンアルフア」の機能を工夫することで、医療用にも活かしていけるのですね。

髙村:おっしゃるとおりです。我々のように原液から調合したり配合したりする力を持っているメーカーでなければこのようなことはできないと思っています。医師のニーズにしっかり応えていきたいです。

守田:今おっしゃったように御社はバリューチェーンの川上から持っているため、どこをどのように活かせるかのノウハウを実際の製品作りに活用していくことが、メディカルケア分野の取り組みの1つということですね。

新製品開発(セルロースナノファイバー(CNF))

守田:もう1つの新製品開発分野であるセルロースナノファイバーについてうかがいたいです。

髙村:これももう2年ほど前に紹介していただきましたが、ゴムに混ぜると弾性や伸びが良くなるという特徴だけではこのCNFの機能を本当に活かした使い方ではないため、いろいろ今研究をしています。

そのうちの1つとして、実は耐磨耗性や耐擦過性に優れ、スチールウールなどでこすっても傷が付きにくいです。まさに今まで考えられなかったような方面での開発ということで、自社製品にこのCNFを混ぜようとしているところです。

守田:ディスプレイなども傷が付きにくくなり、使い方が活かせるということですね。

髙村:そのようなことです。

守田:わかりました。このようなことも第4の柱になって育っていくと見ています。

株主還元の強化

守田:さて、ここで市場との関係をうかがいます。まず株価は2023年の年初に比べると23パーセントほど上がっています。PBRもずいぶん上がってきましたが、まだ0.9倍です。このあたりをどう受け止められていますか? 

髙村:昨年の春に東証から出た「PBR1倍を早く超えるように努力しなさい」という要請を真剣に受け止め、昨年の夏あたりからいろいろな手を打ってきたおかげもあって、このような株価になってきたとは思っています。

これからは株主還元なども含め、持てる資産・財産をどう有効に活用するかです。まずは研究開発・設備投資に使いますが、もっと株主還元できる余地があるだろうということも考え、このPBRは早く1倍を超えられるように努力していきたいと考えているところです。

守田:我々取材している側がある意味強みだろうと思っているのは「本当に長い歴史を積み重ねてきた中でもう十分に収益あるいは財務の力を持っています」「成長投資にはしっかり投資していけます」「そのようなことで過去最高の研究開発や設備への投資などを実現できます」というところです。

ただそれだけではなく、株主還元にも力を入れられるということですね。

髙村:おっしゃるとおりです。2017年から3年間ずつ中期経営計画を回していますが、前中計・今中計では1株当たりの配当金を非常に増やしています。

自社株買いの金額もこの中期経営計画期間中は3年間で200億円ほどです。2025年の計画はまだ発表していませんが、配当金も総額200億円前後ほどになるだろうと思っています。

守田:総還元性向の目安は80パーセントを掲げていらっしゃったように思いますが、実際には2023年から2025年に100パーセントを達成しているということですね。

髙村:そうですね、総還元性向は100パーセントを目標として、公表しています。

守田:実際問題としては、公表して実行していらっしゃる中でPBRも2022年12月末はまだ0.65倍だったのですね。

髙村:はい。おかげさまで、ここの4月現在では0.91倍になりました。1倍を超えるまでもう少しというところまできています。

守田:東証の要請を受けて考えかたを公表した資料には、2027年にはROEを8パーセントに上昇させてPBR1倍超えを目指すとあります。視界は良好ですか? 

髙村:はい。もっと早められます。特にPBRのほうに関しては早めなければならないと思い、いろいろ計画を練っているところです。

守田:もう1回確認しておくと、第4の柱作りを含め成長投資にもここから資金を投じていき、株主還元も2023年から2025年の期間での総還元性向100パーセントを核としながらしっかりこれからも行っていかれるということですね。

髙村:はい。日本経済は今、30年ぶりと言われているほどデフレからインフレに大きく変化しているところです。我々も時期をほぼ同じくして第4の柱作りになる研究開発・設備投資をしっかり行っています。これを確実に実らせ、さらにPBRでは1倍のみならず1倍を上回ることで株主のみなさまの期待に応えていきたいと思っているところです。よろしくお願いします。

守田:東亞合成の髙村美己志社長にお話をうかがいました。髙村社長、今日はどうもありがとうございました。

髙村:ありがとうございました。

配信元: ログミーファイナンス
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