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レゾナック・ホールディングスのニュース

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取締役会の実効性はいかに

著者:鈴木 行生
投稿:2024/07/29 13:34

・指名委員会等設置会社は、日本ではあまり普及していない。経営の監督と業務の執行を分離して、指名委員会で次の経営陣を選び、報酬委員会で役員の報酬を決めるというやり方に馴染みにくいようだ。多くの企業のトップは、内心では嫌がっており、わが社には合わず、時期尚早と発言する。

・経営陣には会社のパフォーマンスを上げてもらいたい。そうすれば全てのステークホルダーが満足するはずである。パフォーマンスとは何か。今どきでいえば、企業価値を中長期的に持続的に高めていくことである。

・このパフォーマンスを何で測るか。「資本コストと株価を意識した経営」の実践でいえば、ROE、ROIC、WACC、株価パフォーマンスなどがKPIとして入ってこよう。経営陣にすれば、自ら頑張ってコントロールできるKPIは納得できるとしても、株価パフォーマンスは自分ではどうしようもないと考えがちである。

・でも、自社の株価は何で決まるのか。これを分析して頭にいれながら経営を実行するのは、当然の姿勢である。筆者は、かつてアナリスト10か条というのを作って、実践したことがある。その中から経営陣にも当てはまることをいくつか咀嚼してみると、投資家の目線が分かってくる。

・第1が、自社の正確な業績予想が立てられるか。第2が、自らの属する業界の分析を的確に行って、中長期の戦略が立てられているか。第3に、自社の株価の変動要因を、マクロ・ミクロの観点から分析して、企業価値との連動性を図っているか。

・第4に、有力投資家とのネットワークを広げて、自社をマーケティングし、そのフィードバックを経営に活かしているか。第5が、広く社会に対して、自らの存在価値を認知してもらいながら、社会的価値のインパクトをアピールしていけるか。こうしたことが問われている。

・自社の株価パフォーマンスが、市場平均であるTOPIXを上回っているか。同業他社を上回っているか。何らかのベンチマークを定めて、その成果を測っていく。それが経営陣の成果と報酬に明確に組み込まれている必要がある。

レゾナック<4004>の高橋社長は今年3月の株主総会で、株主から質問された。現在の株価水準をどう考え、今後どうなるとみているかと。株主にとっての最大の関心事であろう。

・従来型の経営者なら、株価はマーケットが決めること、自分は足元の業績を固めて、中期戦略の実行に力を入れていく、と答えるところであろう。

・高橋社長は、経営者の責任は株価を上げることであると明言した。社長就任以来、株価は当時の現状でTOPIX並み、同業他社比では上回っていたが、これを一段と引き上げたいと語った。自らの報酬にも、株価パフォーマンスの評価が明確に反映されるようになっている。

・取締役会は、本来優れた経営執行陣を選ぶことが第1の使命であり、第2が、経営陣が的確な戦略を迅速に遂行することを監督することにある。

・取締役のスキルマトリックスを通して、本当のコンピテンシー(能力)を知りたい。社内取締役だけでCEOの能力が評価できるか。自らの評価と他者の評価はとかく違っているので、社外取締役の目も入れてチェックしていく必要がある。

・しかも、ある局面では適任であっても、同じCEOがずっと適応していくことは難しい。一方で、社外取締役に社内に埋もれている優秀な人材を発掘する力があるのか。

・指名委員会を実効性のあるものにするには、相当の課題がある。それでも実践しないことには組織能力は育ってこない。CEOが安心して、次の後継者選びを任せられるようにしていくには不断の努力を要する。実際、うまく機能している会社があるのだから見習ってほしい。

・ある監査役設置会社の社長は、当面、指名委員会等設置会社には移行しないという。指名委員会のメンバー(社外取締役)が十分でない。十分でないまま任せても、最適な人選にならないので、もう一段社外取締役を強化する必要があると述べた。

・自分がやりやすいという意味ではない。自らも信頼できる仕組みに仕上げていく気概をもって取り組んでいる。

・資本効率(ROE)の次は人材効率である。人材投資をどのように実践し、それが付加価値の創出にいかに結び付いているか。個人の能力と共に、組織の能力を高めていく必要がある。財務戦略と同時に、人材戦略をしっかり遂行していく必要があろう。

・会社の人事制度は、抜擢ができるようになっているか。ポジションごとの役割がはっきりして、その成果に報酬が見合っているか。こうした仕組みが社内で機能していないと、経営人材を選任する指名委員会だけが機能するというのは難しい。

・プライム企業の9割以上が指名・報酬諮問委員会を設置しているが、本当に機能しているのか。単に追認する形式にとどまっているようでは、成果は期待しにくい。

・優秀な経営陣が選ばれ、中長期の企業価値向上に見合って、株式報酬が組み込まれているならば、投資家としても信頼できる。そういう企業を見定めて、投資していきたい。

日本ベル投資研究所の過去レポートはこちらから

配信元: みんかぶ株式コラム
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