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―GDP年率6%成長も個人消費は弱含み、実質賃金マイナスで強まる低価格志向―
消費者の節約志向が鮮明となっている。ガソリン価格の高騰をはじめ物価高が長期化するなか、防衛費などの財源確保に向けた増税の議論も進み、勤労世帯の消費余力が一段と低下するリスクが横たわっている。今回の株探トップ特集では、消費者の低価格志向が追い風となる生活防衛 関連銘柄のうち、株高基調の継続が見込める6銘柄を取り上げていく。
●春闘後も実質賃金はマイナス圏
内閣府が8月15日に発表した4-6月期の国内総生産(GDP)は、物価の影響を除いた実質の季節調整値で前期比年率6.0%増となった。伸び率としては2020年10-12月期の7.9%増以来の高さとなったが、中身を精査すると、国内経済に対して決して楽観視できない現状が浮き彫りとなっている。
自動車の生産回復で輸出は増加したものの、原油や新型コロナワクチンなどを中心に輸入が減少。輸出増と輸入減の2つの要因が純輸出を伸長させ、GDPを大きく押し上げた。半面、個人消費は3四半期ぶりのマイナスとなるなど、内需の弱さを印象づけている。総務省の家計調査をみても、2人以上の世帯の消費支出は最新のデータとなる6月まで4ヵ月連続で前年を下回っている。
今年の春闘では企業の賃上げ姿勢が例年になく強まったものの、賃上げ率を打ち消すほどのインフレの存在が、勤労世帯の消費意欲を減退させているようだ。厚生労働省が公表する毎月勤労統計調査によれば、物価の影響を除いた実質賃金は、6月は前年同月比1.6%減。15ヵ月連続の前年割れとなっており、一般消費者の「実入り」は減少の一途をたどっている。
●ゲオHDやしまむらなど好業績際立つ
消費者の財布の紐が一段と固くなるのであれば、生活防衛関連株が物色対象の候補として急浮上することとなる。その代表格ともいえる「業務スーパー」の神戸物産 <3038> [東証P]の月次売上高は2ケタの増収が続いている。しまむら <8227> [東証P]も8月既存店売上高は11ヵ月連続で増収。ゲオホールディングス <2681> [東証P]は中古衣料品の「2nd STREET」が好調で、24年3月期第1四半期(4-6月)の営業利益は前年同期比43.8%増の57億9000万円と大幅な増益となるなど、業績好調な銘柄が目立つ。
消費者の節約志向の強まりが業績面で追い風となる銘柄には、メルカリ <4385> [東証P]やジモティー <7082> [東証G]、トレジャー・ファクトリー <3093> [東証P]といったリユース 関連のほか、100円均一のセリア <2782> [東証S]やキャンドゥ <2698> [東証S]、「3COINS」のパルグループホールディングス <2726> [東証P]なども挙げられる。吉野家ホールディングス <9861> [東証P]、ゼンショーホールディングス <7550> [東証P]、松屋フーズホールディングス <9887> [東証P]といった牛丼チェーンや、インターネットイニシアティブ <3774> [東証P]など格安スマートフォンも、生活防衛関連銘柄のなかに位置づけられている。
生活防衛関連は実に多くの銘柄が存在するが、このうち中期的な成長性が強く、株高トレンドの継続が期待できる6銘柄に焦点を当てていく。
●上昇機運高まる生活防衛関連6銘柄
◎大光 <3160> [東証S]
業務用食品商社で、業務用食品スーパー「アミカ」を運営。24年5月期の最終利益は前期比29.6%増の5億5000万円と、18年5月期の過去最高の水準に肉薄する計画だ。一般消費者も対象とするアミカ事業は足もと好調で、ネット経由の販売も前期は2ケタの増収となった。実店舗も東海地区のドミナント化に加え、他地域への販路拡大を進める方針。直近の株価は上昇指向を感じさせる動きをみせつつあるが、600円台の水準はそれでもなお値ごろ感も意識させる。アミカ事業の成長に支えられる形で最高益を更新するシナリオを期待したい。
◎マーケットエンタープライズ <3135> [東証P]
個人向けリユース事業として「高く売れるドットコム」を展開する。モバイル事業では業界最安級の5G対応モバイルWi-Fiルーター「カシモWiMAX」を手掛けている。24年6月期の営業利益予想は前期比8.5倍の8億円。採用や育成遅れを主因に中期計画で示した水準を下回る見込みとなり、押し目の形成を余儀なくされたが、それでも今期は大幅増益で4期ぶりに過去最高益となる見通しだ。ストック型収益をもたらすモバイル事業は堅調に推移しており、リユース事業の中期的な成長モメンタムも不変。PER(株価収益率)は17.3倍と直近の株価調整でバリュエーション面での割高感は解消された。人的リソース面での課題克服を見据えて下値を積極的に拾いたい。
◎大黒天物産 <2791> [東証P]
西日本を中心にディスカウントストア「ラ・ムー」や「ディオ」を運営する。24年5月期の営業利益は前期比35.6%増の61億円を見込む。今期はグループで新規に15店を出店するほか、既存の6店の改修を計画。昨年夏に稼働を始めた京都府内の製造・物流センターが今期はフルで収益性向上に貢献する見込みだ。業績見通しを好感した買いが入り7月に株価は急騰し、21年の上場来高値(8990円)と22年の安値(3795円)の半値戻しを達成した。信用倍率は0.23倍と売り長の状況で、売り方の買い戻しが加速すれば株高に一段と弾みがつきそうだ。
◎ハニーズホールディングス <2792> [東証P]
レディースアパレル「Honeys」などを展開。24年5月期の売上高予想は前期比3.8%増の570億円、営業利益は同4.8%減の73億円と増収減益の計画ながら、営業利益率は12.8%の見通しと収益性の高さが目を引く。新製品の企画から約40日で店舗に商品を陳列できる体制を構築。売れ残りゼロを実現する物流システムなど数々の強みを持つ。ミャンマーでの第3工場の建設なども進め、更なる事業成長の基盤整備に努めている。同業のしまむらと比べると株価の出遅れ感は否めないが、配当利回りは3%台とあって、再評価の余地は大きい。EC事業の強化策が奏功すれば、利益率の更なる上昇に大きく寄与しそうだ。
◎カクヤスグループ <7686> [東証S]
酒類販売店「なんでも酒やカクヤス」が主力事業の同社の24年3月期第1四半期(4-6月)連結決算は、最終損益が3億3200万円の黒字(前年同期は1億5000万円の赤字)となった。コロナ禍後の人流回復で酒類需要が増加するなか、テレビCMによる認知向上も家庭用販売を上向かせており、4-6月期決算発表の段階で通期の業績予想を上方修正している。家庭向けではプライベートブランドの積極的な拡大に取り組んでおり、節約志向の消費者の支持を集めることが期待される。今期は最高益の計画とあって株価は上場来高値近辺で推移するものの、中期的な1株利益(EPS)拡大に裏付けられた株高ストーリーも意識され、押し目買いスタンスで臨みたい。
◎ハードオフコーポレーション <2674> [東証P]
リサイクル店「ハードオフ」や「オフハウス」を主力とする。7月国内既存店売上高は前年同月比5.3%増。23ヵ月連続で前年を上回るなど、成長軌道をまい進する。24年3月期は前期に続き過去最高の売上高と利益を見込む。フランチャイズ加盟店を含め今期末の店舗数を976店と前期末比で45店増やす計画を掲げており、成長へのアクセルを緩める気配はない。加えて、配当利回りは4%台と高水準で下値不安は比較的乏しい。7月11日の年初来高値1567円を上抜けた後は、16年2月の高値1770円が次のフシ目となりそうだ。
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