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テクマト Research Memo(9):大手サイバーセキュリティ事業者のFirmusを子会社化

配信元:フィスコ
投稿:2024/12/25 11:39
*11:39JST テクマト Research Memo(9):大手サイバーセキュリティ事業者のFirmusを子会社化 ■テクマトリックス<3762>の今後の見通し

2. Firmusの子会社化について
同社は中期経営計画のなかで取り組み方針の1つとして掲げていた「多様なアライアンス・M&A」の施策の1つとして、2024年11月にマレーシアのサイバーセキュリティ専業事業者で最大手となるFirmusを子会社化した。同社はペネストレーションテスト(不正侵入調査サービス)をはじめとする自社開発のセキュリティサービスを提供するとともに、最先端のセキュリティ対策製品の販売とマネージドサービスを提供しており、特にセキュリティサービスに強みを持っている。顧客も大手金融機関をはじめ日系企業も含めた民間企業を中心に200社以上を有しており、業績も順調に拡大している成長企業である。シンガポールに子会社を有し、マレーシア以外の周辺国にも事業エリアの拡大を進めている。2024年3月期の売上収益規模は円換算で22.0億円、営業利益で4.8億円となっており、営業利益率も21.9%と高収益成長企業と位置付けられる。

今回の買収では、Firmusの現在の収益力や今後の成長性を考慮した結果、Firmusの全株式を約51億円で取得した。Firmus自身、IPOを検討していたが、国内外の企業からM&Aの打診も複数あるなかで、同社のグループに入ることを決めたのは、同社が長期的な視点で経営を進めており安心感があったことやビジネス上のシナジーが期待できること、また、経営者同士が良好な関係を構築できたことが要因だったと見られる。

2025年3月期の連結業績には2024年11月からの業績が組み込まれる予定となっている。同社ではFirmusの中期的な売上成長率を15~19%程度と見ており、2028年12月期には2023年12月期比で約2倍の収益水準を目指しているものと見られ、2026年3月期以降の連結業績への貢献が期待される。なお、今後は両社が持つ自社サービスのクロスセルも進めていくことを検討している。時期に関しては未定だが、同社の運用・監視サービス「TPS」をマレーシアなどの東南アジア市場で、Firmusのぺネトレーションテストサービスを国内企業へそれぞれ販売していくことを想定している。


中期経営計画の初年度は順調な滑り出し。2026年3月期以降の業績目標は2025年5月に修正発表予定

3. 中期経営計画「Creating Customer Value in the New Era」
(1) 基本方針と戦略
同社は、2024年5月に新たな中期経営計画「Creating Customer Value in the New Era」(2025年3月期~2027年3月期)を発表した。新たな時代が到来するなかでも、同社グループは「目利き力」と「業務ノウハウ」を詰め込んだソリューションで社会課題を解決し、よりよい未来を創造する会社であり続け、より多くの顧客価値を提供することをテーマに取り組んでいくことを基本方針に掲げた。「目利き力」とは解決すべき社会課題を発見すること、また最先端のテクノロジーを見出すこと、「業務ノウハウ」とは専門性を要する特定の業界・業務に対して、顧客よりも深い業務の知見を有することを意味している。特に、国内においては顧客側でデジタル人材が慢性的に不足する状況にあり、「業務ノウハウ」を提供する価値は大きい。こうした取り組みを推進することで顧客の利便性、業務効率性の向上や安全・安心に暮らせる社会の実現を目指す。

新中期経営計画の目標として、「事業領域の拡大」「海外市場での事業の拡大」「データを活用したビジネスの創造」の3つのテーマを掲げ、これらを実現していくために多様なアライアンス・M&A、取扱製品の拡大や新規サービスの立ち上げ、AI活用、グループ間連携強化によるシナジーの創出、人材育成とリテンションなどに取り組む方針だ。

a) 情報基盤事業
情報基盤事業では、取扱製品・サービスを「目利き力」によって拡大するほか、代理店(パートナー)との協業により戦略アカウントの取引深耕を図る。また、セキュリティ運用・監視サービス「TPS」の拡販及び脅威情報分析サービスのワンストップ提供、中部・九州エリアでの営業強化により売上を拡大する。アジア地域での事業展開についてもFirmusの子会社化によって拡大していく計画だ。利益面では、運用・監視サービスの拡大に伴って顧客対応のサポート体制強化が必要となってくるが、生成AIを業務に活用することで効率化を進めていく考えだ。

b) アプリケーション・サービス事業
教育分野では、私立先進校に加えて公立校(地方自治体)への本格展開を推進する。サブスクリプション型となるため、利益ベースでの貢献は2028年3月期以降に持ち越しとなる見通しだが、教育分野におけるDXの潜在需要は大きく、今後3年間で収益化に向けての一定の基盤を構築していく考えだ。

CRM分野では、モビルスとの連携による生成AI機能の拡充によりサービスの付加価値を高め、顧客となるコンタクトセンターの業務効率向上を支援し、売上拡大を図る。また、ASEAN地域については引き続き現地企業との協業による事業拡大を目指す。

SE分野では、開発基盤の構築、導入支援サービスの提供(自動化、効率化)に加えて、自社開発製品の投入による開発データ分析事業にも参入する予定だ。ビジネスソリューション分野では、公共ビジネスのDXとCX向上ソリューションの開発・提供並びにアレクシアフィンテックによる電力取引リスク管理サービスの育成に注力する。

c) 医療システム事業
医療システム事業では、旧PSPのオンプレミス製品とクラウド型PACS「NOBORI」を2026年4月に統合する予定であり、クラウドシフトによるサブスクリプション課金の積み上げを進めるほか、個人向け医療関連情報提供サービスであるPHRによるBtoCのビジネスモデル構築に取り組んでいく。PHRについては段階的に機能の拡充(マイナポータルとの連携機能強化など)を進めており、利用者数は約29万人まで増えている。今後は同サービスを利用できる医療機関を増やしていくための営業体制の強化を図る。

また、自社開発AIの商品化やAI画像診断支援サービスの育成にも取り組んでいくほか、アジア市場ではいくつかの国に絞ってPHRサービスを展開していくことも視野に入れている。同社のPHRサービスに関心を示す現地の有力医療関連グループと協業して事業を育成する考えだ。

(2) 経営数値目標
中期経営計画の最終年度となる2027年3月期の経営数値目標は、売上収益で75,000百万円、営業利益で8,200百万円を掲げていたが、2025年3月期の業績を上方修正したことや、Firmusの子会社化などの影響も考慮して、業績数値目標を再度見直している。2025年5月の本決算発表と合わせて新たな業績目標も発表する予定にしている。



■株主還元策

2025年3月期の1株当たり配当金は32.0円と10期連続増配を予定

同社は株主還元策として配当金と株主優待制度を導入している。配当方針としては配当性向30%以上を基本方針として、内部留保充実とのバランスを考慮しながら決定することとしている。同方針に基づき、2025年3月期の1株当たり配当金は期初計画で前期比2.0円増配の30.0円を予定していたが、業績の上方修正を受けてさらに2.0円増額し、32.0円(配当性向31.3%)に引き上げた。業績が計画をさらに上回り配当性向で30%を下回る水準になれば再増配する可能性もある。

株主優待に関しては毎年9月30日時点で500株以上保有の株主を対象に実施している。500株以上1,000株未満で1,500円相当の商品または寄付を、1,000株以上保有で4,000円相当の商品または寄付を選択できる内容となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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配信元: フィスコ
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