アスコットのニュース
アスコット、物件の利幅が厚く、営業利益は開示予算比約1億円の上振れ、将来収益の源泉となる物件取得が想定以上に加速
2023年9月期 業績ハイライト
中林毅氏:株式会社アスコットの中林です。本日は、2023年9月期決算状況についてご説明します。当社は2023年9月期で25期目となり、四半世紀が過ぎたところです。
まずは業績ハイライトです。2023年9月期の売上高は192億7,300万円、営業利益は20億400万円、経常利益は10億900万円、親会社株主に帰属する当期純利益は8億9,800万円で着地しました。
開示予算比で、売上高は約32億円下回っているものの、個別の物件の利益率が相当高かったため、営業利益はプラス約1億円と上振れました。
一方で、経常利益は開示予算比で9,000万円下回っています。後ほどご説明しますが、要因として、2023年9月期は積極的に物件の仕入れを行った結果、支払利息が増えたことが挙げられます。
連結貸借対照表をご覧ください。総資産は、2022年9月期末の約525億円から2023年9月期末は約678億円と約152億円増加しました。積極的に物件を取得したことが数字に表れています。
2022年9月にTHEグローバル社が連結から外れたため、同社に対して行っていた株式投資や貸付金の回収が進み、2022年9月期末は自己資本比率が47.6パーセントまで向上しました。こちらの財務指標の良化を背景に積極的に物件の購入を行い、これに対して金融機関からも融資いただいた結果、総資産は1年間で約152億円増加しました。
2023年9月期末の自己資本比率は37.4パーセントと、2022年9月期末より10ポイントほど減少したものの、依然として健全な自己資本比率を維持していることを付け加えさせてください。
連結損益計算書
PLについて、THEグローバル社を除いた2022年9月期と2023年9月期を比較しています。先ほどは開示予算との比較でしたが、こちらは実績との比較です。
売上高は2022年9月期と比較して9億円ほど減少しているものの、売上総利益率は2022年9月期の18.8パーセントに対して、2023年9月期は21.9パーセントと、かなり上昇しています。
その結果、営業利益率も2ポイント強向上し、営業利益は、2022年9月期の約16億円から2023年9月期は約20億円と、約4億円の増益となりました。
一方、営業外費用は、ほとんどが支払利息で占められています。先ほどご説明したとおり、物件の取得に伴い借入金が増えており、2022年9月期の約6億円から2023年9月期は約10億円と、年間で3億6,000万円増加しています。
当期純利益は、2022年9月期に特別利益を約3億円計上した関係で、2022年9月期の7億2,000万円から2023年9月期は8億9,000万円と、1億6,800万円の増益となりました。
2023年9月期 【報告セグメント】
セグメントごとにご説明します。スライド上段の不動産開発事業は、創業以来行っているマンション開発事業です。売上高は約96億円、営業利益は約21億円と、こちらのセグメントは全体の利益の中で、かなり大きな部分を占めています。
その下に戦略開発事業、不動産投資事業、不動産ファンド事業、国際事業とありますが、これらは、2020年12月に110億円の増資を行い、その資金を使って新規事業部門を立ち上げることとなった事業部門です。2023年9月期は実質的な事業の立ち上げの2期目となります。
一部、不動産ファンド事業の損益がマイナスとなっているものの、それ以外の各事業は黒字転換しました。
それぞれ特徴的な事業を展開しています。基本的に、私どもは東京での開発案件がほとんどですが、戦略開発事業では、福岡で一部借地権を利用したオフィス開発を行っており、高収益の案件に取り組んでいます。
不動産投資事業は物流施設の開発事業を行っています。期末に1物件竣工即販売ということで、営業利益約4億円を計上しています。
また、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分の5県で分譲マンション事業を行っている子会社の事業となりますが、現在、九州開発事業が非常に好調です。約5年前に、福岡の分譲マンション事業者を買収したのちに立ち上げ、売上高は約45億円、営業利益は8億円弱と非常に好調で、当社の収益を支える事業に成長しています。
連結貸借対照表
連結貸借対照表です。数字の詳細は次のスライドでご説明します。
棚卸資産(補足)
各事業部について、スライドの棒グラフの青色が2022年9月末、オレンジ色が2023年9月末の数字を示しています。事業部門ごとに青色とオレンジ色の棒グラフがあり、すでに完成して販売できる販売用不動産、現在進行中の仕掛販売用不動産と、2組ずつ記載しています。
不動産開発事業部は、販売用不動産、仕掛販売用不動産ともにかなり伸びています。
戦略開発事業は、一部完成在庫を売却したため、左側の販売用不動産は青色に対してオレンジ色が凹んでいるものの、新しく開発案件を仕込み、今後の収益に結びつけるような準備体制が整っているということです。
国際事業は、特にアジア圏のお客さま向けに、新たな収益物件を積極的に仕入れていることがおわかりいただけるかと思います。
九州開発事業は、2023年9月末で完工済みの物件がほぼすべて売却し、左側のオレンジ色部分がほぼゼロに近いかたちとなっています。売れ行き好調ということで、2024年9月期はオレンジ色部分を売却中ですが、3物件中、来年7月竣工の1物件はすでに完売という状況で順調な進捗です。
以上が、決算の概況です。
不動産開発事業
トピックスです。スライドにあるように、不動産開発事業では「新たなアイディアも駆使し、当社の中心事業を牽引」しています。
新たなアイディアの事例を2つご紹介します。1つ目に、ESGを意識し、DBJ Green Buildingの認証や意匠権の取得に取り組んでいます。左側の写真が「FARE御徒町」で、DBJ Green Building認証を取得しています。右側の「ASTILE目黒」は、非常に特徴的な外観デザインで、2023年2月に建築物の意匠権を取得しています。
不動産開発事業
2つ目に、「ASTILE studio経堂」に紐づく取り組みです。こちらは近年力を入れている防音マンションで、生活空間としての居住性を維持しつつ、防音性を高めたマンションを自社で開発し、販売しています。
防音性として100デシベル程度までは対応できるということで、かなり大きな声で話したり、ステレオを大音響で聴いたりしても外に音が漏れません。楽器演奏を楽しむ音楽愛好家以外に、例えばゲームやeスポーツ等、あるいは「YouTube」編集のような音が出る作業に対して防音性を高め、スタジオ的な活用ができるという大きな特徴があります。
一方で、スタジオとしてだけでは居住性が損なわれるため、スライド中央の写真にあるように、間伐材をアップサイクルし、無機質になりがちな防音空間を温かみのある空間に変えるような取り組みをしています。
当然ながら超高速のインターネット環境を整備していますし、上層階にピアノを運べるようなエレベーターの設置等もしています。
不動産ファンド事業
不動産ファンド事業は投資家から資金をお預かりし、アセットマネジメントをする事業です。従来、私どもはデベロッパーで、土地を購入し建てて売ることを事業の中心としていましたが、このビジネスモデルはアクイジション、さらに期中の管理、ディスポジションということで、投資家からそれぞれフィーをいただきながら、物件の管理あるいはバリューアップに取り組んでいます。
こちらも2022年9月期からビジネスがスタートしており、2023年9月期も引き続きAUMの積み上げを行い、現在のAUM残高は契約ベースで300億円に到達しました。
アセットマネジメントしている物件の事例を2つご紹介します。
星野リゾートのブランドを冠したホテル「OMO(おも)3浅草 by 星野リゾート」は、浅草駅から徒歩で4分ほど、西側に浅草寺、さらに東側にスカイツリーが見える好立地に位置し、約100室あるホテルです。
2023年7月に営業開始し、現在は高稼働となっています。私どもは、マンション中心にアセットを持っていますが、このようなホテルのアセットマネジメントにも取り組んでいます。
また、2023年10月にクロージングした案件ですが、米国系のデベロッパーとともに、関西では初となる賃貸マンションの投資を行い、大阪で2物件、さらに同じポートフォリオとして、東京で2物件取得しています。このような取り組みからエリアの拡張も行っているところです。
不動産投資事業
不動産投資事業です。こちらは、主に物流施設開発を行っており、現在、累計で4物件のプロジェクトに取り組んでいます。第1号案件である埼玉県加須の物流施設が完成し、2023年9月に売却しました。
現在、物流業界は従業員を確保するのが大変で、各社非常に苦労されています。この物件は、住宅地に隣接する地域に建設されているため、環境面にも配慮しています。さらに、特に女性の従業員の方が働きやすいように、施設内のトイレにパウダースペースを設けるといった取り組みも行っています。
また、加須は鯉のぼりの産地として有名な場所ですので、外観は鯉の鱗をイメージしたデザインにし、周囲の住宅街との調和を図っている点が特徴的な物件です。
第2号案件は宮城県仙台市の扇町に建設中の物件で、2024年夏に竣工予定です。
加須、仙台の案件もラストワンマイルを狙っており、消費地の近隣にある1,000坪から1,500坪の土地を活用し、約8,000平米の物流施設を作るプロジェクトです。
戦略開発事業
戦略開発事業の定期借地権を活用した事例です。福岡市天神のエリアで、かつて駐車場として使われていた場所に超長期の定期借地権を得て、1フロア60坪程度の中小企業が入るような、おしゃれなオフィスを開発しています。
あわせて福岡では、賃貸レジデンスの開発も行っています。スライド左下に「子会社のノウハウを活用した賃貸マンション開発」とありますが、九州開発事業を担っているシフトライフ社と共同し、福岡市地下鉄七隈線別府駅徒歩3分の好立地に、ファミリー向けの1戸60平米から70平米のマンションを建て、高級賃貸レジデンスとして提供しようというプロジェクトです。
総戸数は約40戸ですが、すでにリーシングが好調です。福岡市内で比較的高い賃料を獲得する新しい取り組みであり、スタートは非常に順調です。
特に七隈線にある別府駅では、2023年3月頃に線路が延伸されました。この七隈線で天神南と博多駅が直結することから、人気のエリアに高級賃貸マンションを開発しているプロジェクトとなります。
国際事業
国際事業におけるプロジェクトを2つご紹介します。
1つ目は、2023年9月にアジアの投資家の方に売却した「ASTILE日本橋浜町」です。収納スペースの中にワーケーションができる施設を設け、リモートワークが可能な物件にしています。
2つ目は、「コートアネックス麻布永坂」です。こちらは分譲マンションの一室を借り、高級家具なども据えつけてプレミアム住戸としてリノベーションして販売する新たな取り組みです。
麻布十番駅から徒歩3分の立地で、広さは140平米超あります。スライドの写真からもおわかりのとおり、前建てが非常に抜けており、東京タワーもよく見えます。こちらを海外の富裕層の方々に購入いただくことを視野に入れてリノベーションしています。
九州開発事業
九州開発事業として、シフトライフ社の開発実績を記載しています。福岡、佐賀、長崎、熊本、大分の5県で供給実績がありますが、基本的に福岡市内では大手の競争がかなり厳しいため、むしろ福岡市内からやや離れた外縁部のベッドタウン的な地域での開発が中心となっています。これまでに、約30棟1,400戸程度の供給を行っています。
スライドに赤字で記載しているとおり、2023年9月期は、佐賀県武雄で物件を供給し、長崎県諫早と時津で2物件が竣工完売した状況です。2024年9月期も引き続き好調であり、現在は特に福岡の飯塚および福津でのプロジェクトに取り組んでいます。
その他のトピックス
その他のトピックスです。私どもは創業以来、マンションデベロッパーとして事業を行っており、現在もそちらが中心ですが、新たに金融事業にも取り組み始めています。
まず、資金調達サイドでクラウドファンディングを利用しています。「Funds」および「Bankers」のクラウドファンディングプラットフォームを活用して、毎月合計1億円から3億円程度の資金調達を重ねており、これまでに合計22本、調達金額40億円程度を調達しました。
クラウドファンディングの活用先としては、不動産事業と並行して、不動産金融事業も挙げられます。金融子会社として貸金業の免許を取得し、コーポレートレンディング事業を同業他社に対し開始している状況です。
こちらもいわゆるキャピタルゲインによる収益を得るビジネスモデルで、補完的にリカーリングレベニューを増やしていく取り組みの一環です。アセットマネジメント事業および不動産の長期保有物件に加え、不動産金融事業は利息収入を獲得する新たな収入源の1つとなります。
サステナビリティ/ESG
私どもはパーパスとして「人と社会、環境との共生と調和を実現する」と掲げており、このパーパスのもと、さまざまなESGの取り組みを行っています。
サステナビリティ/ESG
例えば先ほど国際事業でご紹介した日本橋浜町の案件では、本来ならば廃棄される予定のタイルをアップサイクルし、エントランスの装飾に利用しています。また、2023年10月には健康優良法人「銀の認定」を取得しています。
サステナビリティ/ESG
「Governance 透明性の確保」ということで、スライドに記載のとおり、新しいアセットタイプでは従来の賃貸レジデンスのほか、オフィスや物流に取り組んでいます。
また、新しいビジネスモデルにも取り組んでおり、従来の開発以外にも、ファンドマネジメントや賃貸収益の向上に努めています。
さらに新規事業では金融や国際に取り組んでいますが、このような複合的な取り組みをしていると、将来のBSやPL、CFなどが見えづらくなってしまいます。可能な限り透明性の高い経営マネジメントを行うためにも、DX化を行い、将来の数値をより正確に把握することが非常に重要であると認識しているため、現在は経営の見える化システムの開発も行っています。
サステナビリティ/ESG
経営ビジョンの実現に向けたビジネスモデルの模式図です。個別のプロジェクトは収支表にまとめられています。プロジェクトに関する物件の概要や立地、条件だけでなく、建物の概要や費用、将来的に売却できた際の賃貸収入、利回り、管理手数料、税金なども含まれた収支表が、1物件に対し1枚ずつあります。
従来は30件程度のプロジェクト数でしたが、現在では100件を超えるプロジェクトが立ち上がり、その上、従来の土地を購入し建てて売るようなデベロッパー以外のビジネスモデルも増えてきていることから、そのような複雑な状態をどのように正確に管理するのかが課題となっていました。
そこで、それらをデータベースとして1ヶ所にまとめ、経営見える化システムを通じてリアルタイムにBSやPL、CFの予測値を算出する取り組みを進めています。この取り組みによって、リスク管理や、物件の売れ行きをリアルタイムで把握することも実現していこうとしています。
サステナビリティ/ESG
サイバーセキュリティにも注力しています。情報セキュリティ基本方針のもと会社を運営し、管理規程を設けるとともに社内体制を盤石にすべく、可能な限りセキュリティ上の事故を未然に防ぐことができる体制をとっている段階です。
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