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ディア・ライフのニュース
*15:04JST DEAR・L Research Memo(4):プロジェクトの大型化が進展。セールスプロモーション事業を第2の柱に(1)
■ディア・ライフ<3245>の事業概要
1. リアルエステート事業
(1) 東京の不動産市況
a) コロナ禍後も不動産市況は活況
新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行し、抑制されていた個人の消費も持ち直してきた。不動産業界では、コロナ禍において影響を受けたホテルや商業施設、オフィスの一部など市況が回復傾向にある。住居(レジデンス)に関してはコロナ禍前から市況は継続して堅調である。(一財)日本不動産研究所「第48回不動産投資家調査」(2023年4月現在)においては、不動産投資家に「今後1年間の不動産投資に対する考え方」を質問したところ、96%が「新規投資を積極的に行う」と回答し、前回調査と同様に高い値を維持した。一方で「既存所有物件を売却する」は20%、「当面、新規投資を控える」は3%と少数派だった。不動産投資家の積極的な投資姿勢が依然として継続していることがわかる。
b) 世界の大都市と比較した“TOKYO”不動産の優位性
世界の大都市のなかで東京の不動産価格はまだ割安である(割高ではない)と言われている。日本不動産研究所「第20回国際不動産価格賃料指数」(2023年4月現在)によると、東京のレジデンス/高級住宅の専有面積あたりの分譲価格水準を100.0とした時に、香港(242.7)、ロンドン(181.7)、台北(156.9)、上海(155.8)、ニューヨーク(132.1)、シンガポール(129.8)、シドニー(109.6)などが上回っている。一方で、海外における世界大都市の魅力度ランキングで東京は1位を獲得するケースが多く、魅力度は折り紙付きである。さらに、グローバルに投資を展開する大手の投資家(ファンドなどを含む)にとっては、日本の相対的な低金利も有利な条件となる。海外投資家が日本において不動産投資を行う場合には、SPC(特別目的会社)を組成し、自己資本のほかにノンリコースローンで資金を調達する場合がある。この場合には日本の低金利は有利であり、総合的に高い投資利回りにつながる。昨今の円安傾向は、さらに“TOKYO”の割安感を高めている。
(2) 東京都心部の不動産の開発・投資に特化して競争力を磨く
a) 堅調な需要が見込める東京都心部
同社は創業以来、東京圏の単身者・DINKS向け都市型レジデンスを中心に不動産開発事業を展開している。人口減少期に入った日本でも、東京圏においては1世帯当たりの人数が減少しているものの、世帯数が増加中であり、さらには働き方やライフスタイルの変遷、アフターコロナにおける商業・サービス業界従業者の居住ニーズ等も加わり、好立地にある都心レジデンスの需要は堅調である。結果として、都心での用地の確保の難易度は上昇し、新築レジデンス供給戸数は頭打ち傾向が続き、レジデンス価格は上昇を続けている。同社の戦略は明確であり、23区のなかでも都心部を中心に投資をしている。同社取り組み物件(都市型レジデンス、収益不動産、開発プロジェクト)のうち27.7%は都心5区内に位置する。また、最寄り駅から5分以内の物件が58%、10分以内で99%となっており、利便性の高い物件への投資を徹底している。特に、飯田橋・神楽坂・市ヶ谷においては絶えず複数のプロジェクトが進行している。
b) 物件規模の大型化が進行
同社が取り扱う不動産の物件規模は、これまで5億円から10億円未満のプロジェクト規模が多かったが、2022年9月期以降は10億円以上の物件が増加している。2023年9月期もこの傾向は顕著であり、通期で21件の10億円以上の物件の仕入れを行っている。また、1件あたりのプロジェクト規模の拡大は、効率の良い営業スタイルを強化することにもつながる。
c) エリアに特化した用地取得と建築発注が強み
このような環境下で、需要の堅調な東京圏、特に神楽坂・飯田橋・市ヶ谷をはじめとする「職・食・住」の利便性が良好なエリアに事業エリアを特化することで、販売面だけでなく、用地取得や建築発注においても優位性を確立している。情報の非対称性が依然大きい不動産業界では、有益な用地・物件情報であればあるほど、フェイス・トゥ・フェイスの商談が重要になってくる。同社はエリアを限定することで、より効率的で密度の濃い仲介業者などとの業界人脈を構築できており、その情報取得力は高い。またエリアを限定することで継続的に工事発注できることから、ゼネコンなど建築業者とも良好な関係性を構築できており、品質の高い建築請負工事を実現している。
d) 多様な出口(売却先)がスピーディな仕入れを可能にする
同社の物件の出口(売却先)は現在では非常に多様であり、それが仕入れを加速できる原動力になっている。売却先の属性は約7割が不動産会社ではあるが、投資用レジデンス会社だけでなく、ハウスメーカー系や電鉄系、ファミリーレジデンス系、ファンド・コンサルティング系(不動産小口化商品の開発・販売を含む)など多様化が著しい。また、住居だけでなく商業やオフィス等の不動産を求める先とパイプがあるため、迅速で的確なプランニングができるという好循環が生まれる。
e) 専門性の高い内部人材がもう1つの強み
エリア限定の強みに加え、社内に一級建築士をはじめ専門性の高い人材を抱えていることも大きなアドバンテージとなっている。用地取得に関しては、素早く情報をキャッチすると同時にその開発ポテンシャルを素早く的確に算定し、競争力のある価格提示を迅速に行える能力が不可欠である。また建築技術等に詳しい人材がいればコスト抑制策での創意工夫が進みやすく、ゼネコンなどとの折衝力が高まる。
f) 若手社員の成長力が特徴
同社では、若手社員の成長力が高いこともリソースの1つである。早い段階から若手に重要なポジションを与えて成長を促す環境を整えているため、一般的に20年はかかると見られる不動産ビジネスに必要な総合的な判断力が5年で習得でき、若手の成長スピードが速いことが同社の特徴となっている。具体的には、土地の仕入から最終的な売却までのプロセスを担う、プロジェクトマネジャーに若手を積極的に任命しており、入社2年目の社員が登用されるケースもあるという。土地購入の際の企画・開発、ニーズに関わる部分を総合的に判断し、プロジェクトの完了までにはほかの企画・開発にも携わるため、不動産ビジネスのノウハウを一気通貫で習得することができる。
g) 分譲事業には参入せず資産効率、生産性を重視
同社は分譲事業には参入しておらず、1棟売り(卸売)することで資金回収を早め、資産効率を高めている。売却先は寮・社宅などのニーズを持つ事業会社、分譲や賃貸運営目的の不動産会社、国内外の不動産投資ファンド、個人富裕層を中心とする投資家など幅広い。開発面では東京圏特化で効率性と競争力を高めている反面、販売面では自前の販売人員を抱えることなく広く可能性を探っている。2023年9月期は東京圏に立地する自社開発の都市型レジデンスと、不動産活用・運用のニーズの多様化に対応したADR事業(土地の開発適地化)で43件、収益不動産案件(稼働率向上や管理コストの見直しなどにより収益価値を向上)で27棟売却した。リアルエステート事業を中心とした単体の従業員数は37名(2023年9月30日時点)と少数精鋭であり、従業員1人当たりの売上高が1,063百万円(通期ベース)、従業員1人当たりの営業利益186百万円(通期ベース)と労働生産性がずば抜けて高い。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
<AS>
1. リアルエステート事業
(1) 東京の不動産市況
a) コロナ禍後も不動産市況は活況
新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行し、抑制されていた個人の消費も持ち直してきた。不動産業界では、コロナ禍において影響を受けたホテルや商業施設、オフィスの一部など市況が回復傾向にある。住居(レジデンス)に関してはコロナ禍前から市況は継続して堅調である。(一財)日本不動産研究所「第48回不動産投資家調査」(2023年4月現在)においては、不動産投資家に「今後1年間の不動産投資に対する考え方」を質問したところ、96%が「新規投資を積極的に行う」と回答し、前回調査と同様に高い値を維持した。一方で「既存所有物件を売却する」は20%、「当面、新規投資を控える」は3%と少数派だった。不動産投資家の積極的な投資姿勢が依然として継続していることがわかる。
b) 世界の大都市と比較した“TOKYO”不動産の優位性
世界の大都市のなかで東京の不動産価格はまだ割安である(割高ではない)と言われている。日本不動産研究所「第20回国際不動産価格賃料指数」(2023年4月現在)によると、東京のレジデンス/高級住宅の専有面積あたりの分譲価格水準を100.0とした時に、香港(242.7)、ロンドン(181.7)、台北(156.9)、上海(155.8)、ニューヨーク(132.1)、シンガポール(129.8)、シドニー(109.6)などが上回っている。一方で、海外における世界大都市の魅力度ランキングで東京は1位を獲得するケースが多く、魅力度は折り紙付きである。さらに、グローバルに投資を展開する大手の投資家(ファンドなどを含む)にとっては、日本の相対的な低金利も有利な条件となる。海外投資家が日本において不動産投資を行う場合には、SPC(特別目的会社)を組成し、自己資本のほかにノンリコースローンで資金を調達する場合がある。この場合には日本の低金利は有利であり、総合的に高い投資利回りにつながる。昨今の円安傾向は、さらに“TOKYO”の割安感を高めている。
(2) 東京都心部の不動産の開発・投資に特化して競争力を磨く
a) 堅調な需要が見込める東京都心部
同社は創業以来、東京圏の単身者・DINKS向け都市型レジデンスを中心に不動産開発事業を展開している。人口減少期に入った日本でも、東京圏においては1世帯当たりの人数が減少しているものの、世帯数が増加中であり、さらには働き方やライフスタイルの変遷、アフターコロナにおける商業・サービス業界従業者の居住ニーズ等も加わり、好立地にある都心レジデンスの需要は堅調である。結果として、都心での用地の確保の難易度は上昇し、新築レジデンス供給戸数は頭打ち傾向が続き、レジデンス価格は上昇を続けている。同社の戦略は明確であり、23区のなかでも都心部を中心に投資をしている。同社取り組み物件(都市型レジデンス、収益不動産、開発プロジェクト)のうち27.7%は都心5区内に位置する。また、最寄り駅から5分以内の物件が58%、10分以内で99%となっており、利便性の高い物件への投資を徹底している。特に、飯田橋・神楽坂・市ヶ谷においては絶えず複数のプロジェクトが進行している。
b) 物件規模の大型化が進行
同社が取り扱う不動産の物件規模は、これまで5億円から10億円未満のプロジェクト規模が多かったが、2022年9月期以降は10億円以上の物件が増加している。2023年9月期もこの傾向は顕著であり、通期で21件の10億円以上の物件の仕入れを行っている。また、1件あたりのプロジェクト規模の拡大は、効率の良い営業スタイルを強化することにもつながる。
c) エリアに特化した用地取得と建築発注が強み
このような環境下で、需要の堅調な東京圏、特に神楽坂・飯田橋・市ヶ谷をはじめとする「職・食・住」の利便性が良好なエリアに事業エリアを特化することで、販売面だけでなく、用地取得や建築発注においても優位性を確立している。情報の非対称性が依然大きい不動産業界では、有益な用地・物件情報であればあるほど、フェイス・トゥ・フェイスの商談が重要になってくる。同社はエリアを限定することで、より効率的で密度の濃い仲介業者などとの業界人脈を構築できており、その情報取得力は高い。またエリアを限定することで継続的に工事発注できることから、ゼネコンなど建築業者とも良好な関係性を構築できており、品質の高い建築請負工事を実現している。
d) 多様な出口(売却先)がスピーディな仕入れを可能にする
同社の物件の出口(売却先)は現在では非常に多様であり、それが仕入れを加速できる原動力になっている。売却先の属性は約7割が不動産会社ではあるが、投資用レジデンス会社だけでなく、ハウスメーカー系や電鉄系、ファミリーレジデンス系、ファンド・コンサルティング系(不動産小口化商品の開発・販売を含む)など多様化が著しい。また、住居だけでなく商業やオフィス等の不動産を求める先とパイプがあるため、迅速で的確なプランニングができるという好循環が生まれる。
e) 専門性の高い内部人材がもう1つの強み
エリア限定の強みに加え、社内に一級建築士をはじめ専門性の高い人材を抱えていることも大きなアドバンテージとなっている。用地取得に関しては、素早く情報をキャッチすると同時にその開発ポテンシャルを素早く的確に算定し、競争力のある価格提示を迅速に行える能力が不可欠である。また建築技術等に詳しい人材がいればコスト抑制策での創意工夫が進みやすく、ゼネコンなどとの折衝力が高まる。
f) 若手社員の成長力が特徴
同社では、若手社員の成長力が高いこともリソースの1つである。早い段階から若手に重要なポジションを与えて成長を促す環境を整えているため、一般的に20年はかかると見られる不動産ビジネスに必要な総合的な判断力が5年で習得でき、若手の成長スピードが速いことが同社の特徴となっている。具体的には、土地の仕入から最終的な売却までのプロセスを担う、プロジェクトマネジャーに若手を積極的に任命しており、入社2年目の社員が登用されるケースもあるという。土地購入の際の企画・開発、ニーズに関わる部分を総合的に判断し、プロジェクトの完了までにはほかの企画・開発にも携わるため、不動産ビジネスのノウハウを一気通貫で習得することができる。
g) 分譲事業には参入せず資産効率、生産性を重視
同社は分譲事業には参入しておらず、1棟売り(卸売)することで資金回収を早め、資産効率を高めている。売却先は寮・社宅などのニーズを持つ事業会社、分譲や賃貸運営目的の不動産会社、国内外の不動産投資ファンド、個人富裕層を中心とする投資家など幅広い。開発面では東京圏特化で効率性と競争力を高めている反面、販売面では自前の販売人員を抱えることなく広く可能性を探っている。2023年9月期は東京圏に立地する自社開発の都市型レジデンスと、不動産活用・運用のニーズの多様化に対応したADR事業(土地の開発適地化)で43件、収益不動産案件(稼働率向上や管理コストの見直しなどにより収益価値を向上)で27棟売却した。リアルエステート事業を中心とした単体の従業員数は37名(2023年9月30日時点)と少数精鋭であり、従業員1人当たりの売上高が1,063百万円(通期ベース)、従業員1人当たりの営業利益186百万円(通期ベース)と労働生産性がずば抜けて高い。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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