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アーバネット Research Memo(6):好調な外部環境を追い風に、販売戸数の拡大が業績をけん引

配信元:フィスコ
投稿:2022/03/03 15:16
■業績動向

1. 過去の業績推移
過去の業績推移を振り返ると、主力である投資用ワンルームマンションにおける販売戸数の拡大がアーバネットコーポレーション<3242>の業績をけん引してきた。2008年のリーマンショックの影響などによる金融引き締めを背景として、2011年6月期にボトムをつけたものの、金融緩和の動きとともに、順調に開発物件を積み上げることで業績は回復から拡大基調をたどっており、2020年6月期は2期連続で過去最高業績を更新した。2021年6月期は一旦減収となったものの、2022年6月期は再び増収基調へと回帰する見通しである。特に、投資用ワンルームマンションの売れ行きが好調であることや、海外投資家や事業会社等への1棟一括直接販売による販売単価の上昇もあいまって、経常利益率も10%前後の水準で推移してきた。

一方、財務面では、開発物件の積み上げなどに伴い有利子負債残高も増加傾向をたどってきたが、内部留保の蓄積に加え、2015年6月の公募増資(約13億円)や2019年12月の公募増資等(約20億円)により、自己資本比率は30%を超える水準となっている。なお、2014年6月期以降、その他(固定資産)が拡大しているのは、安定収益源の確保や融資担保となる賃貸収益物件の取得を進めてきたことや、研究開発として取り組んでいるホテル事業によるものである。用地取得の困難な状況や物件厳選の方針により、2019年6月期以降、棚卸資産(販売用不動産と仕掛販売用不動産の合計)の伸びは若干抑え気味となっているが、固定資産(自社保有ホテルや賃貸収益物件の取得等)の増加などにより資産残高は拡大してきた。


2022年6月期上期は減収減益となるも、下期偏重型の業績見込みにつき想定内の進捗
2. 2022年6月期上期の業績概要
2022年6月期上期の業績は、売上高が前年同期比23.5%減の6,236百万円、営業利益が同64.1%減の400百万円、経常利益が同68.9%減の309百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同72.5%減の184百万円と減収減益となった。また、通期計画に対する進捗率も低い水準にとどまっているが、予定していたプロジェクトの売上計上が第3四半期にずれたことや、前期よりも下期偏重の業績バランスとなっていることが理由であり、実態として業績の下振れを示すものではない。

売上高は、主力の「不動産事業」が減収となった。その内訳を見ると、1)「不動産開発販売」の販売戸数が4棟199戸(前年同期は7棟244戸)と期ずれ分を含めて減少した。また、2)「不動産仕入販売」についても、中古マンション等の買取再販が2戸(前年同期は5戸)にとどまった。一方、3)「その他(不動産仲介及び不動産賃貸事業)」は、賃貸収益物件の安定稼働や新規取得※により着実に伸びている。

※賃貸用として、中古マンションを戸別に数戸取得したようだ。


なお、自社開発ホテル「ホテルアジール東京蒲田」のオープンに伴い、前期から新たにセグメント化された「ホテル事業」については、コロナ禍の影響が一旦落ち着いた10月~11月には稼働率の一定の改善(60%程度)※が見られたものの、上期を通じて損益分岐点を上回る水準には至らなかった。もっとも、研究開発の一環として保守的な計画としており、業績の下振れ要因とはなっていない。なお、同ホテルは2022年3月1日発表の楽天トラベル主催「楽天トラベルアワード2021」において、「楽天トラベル ブロンズアワード2021」を受賞した。楽天トラベルアワードは、日本全国約40,000軒(2021年9月時点)の登録宿泊施設の中から過去1年間において、高い評価を得られた宿泊施設を表彰する制度。

※メインターゲットとしているインバウンド需要(ファミリー利用等)については、コロナ禍の影響により未だ取り込めていないものの、好立地によりビジネス利用が増えているようだ。今後も稼働率の向上と客室単価の適正化を進めていく方針。


利益面でも、減収による収益の下押しに加え、利益率の低下により営業減益となった。特に売上総利益率が16.5%(前年同期は22.3%)に低下したのは、1)用地価格の高騰や工事原価の上昇、2)前年同期は利益率の高いプロジェクトがあったことによる反動、3)コロナ禍の影響を最小限に抑えるべく、早期契約を推進したことなど、複合的な要因によるものであり、2)及び3)は一過性として見ることができる※。また、販管費は経費削減努力により減少したものの、売上総利益率の低下とともに営業利益率も6.4%(前年同期は13.7%)に低下した。

※ここ数年の売上総利益率の推移を見ると、18/6期が17.8%、19/6期が17.4%、20/6期が17.4%、21/6期が18.1%で推移しており、17%~18%がこれまでの巡航時水準と言える。


財政状態については、積極的な用地購入により「仕掛販売用不動産」が増加したほか、賃貸収益物件の取得により固定資産が増加したものの、「現金及び預金」が減少したことから、総資産は前期末比374百万円減の34,801百万円と僅かに減少した。一方、自己資本についても配当金の支払いなどにより前期末比119百万円減の11,916百万円に減少したことから、自己資本比率は34.2%(前期末も34.2%)と横ばいで推移した。

キャッシュ・フローの状況についても、1)積極的な用地購入(営業キャッシュ・フローのマイナス)、2)賃貸収益物件の取得(投資キャッシュ・フローのマイナス)、3)有利子負債の返済や配当金支払い(財務キャッシュ・フローのマイナス)により、「現金及び現金同等物」は前年同期末比1,242百万円減の5,921百万円に減少したが、依然として手元流動性は十分に確保されており、財務の安全性に懸念はない。

3. パイプラインの状況
2021年12月末のパイプライン(開発物件)の状況は、2022年6月期下期の販売予定分528戸に加え、2023年6月期以降の販売予定分として1,000戸超を確保しており、しばらくは高い業績水準を維持していくことが可能であると弊社では評価している。都心部における用地の取得競争はさらに激化しており、困難な仕入環境が続いているが、同社では土地仕入要員を増強し、積極的に好立地の用地取得を進めていく方針である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)


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配信元: フィスコ
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