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STIフードホールディングスのニュース
*12:35JST STIフードHD Research Memo(5):製造技術、一貫生産体制、フードロスとコストの削減に強み
■STIフードホールディングス<2932>の事業概要
3. 同社の強み
同社の強みは(1) 製造技術、(2) 一貫生産体制、(3) フードロスとコストの削減にあり、コロナ禍や原材料高を乗り越える原動力にもなった。祖業が商社のため、海外を含め同社自ら検品や買付を実施していることから調達面での強みも持っている。また、小売最大手であるセブン-イレブンとの間で構築してきた関係も強みと言える。水産食材・食品は、行楽需要やイベント需要、世界の漁獲高などにより、需要供給ともに大きく変動する。こうした需給変動があっても全国の店舗で欠品が生じないよう、日々需給をチェックし適正在庫の確保に努めているが、同社では小売最大手のセブン-イレブンが収集するデータや知見を利用できるうえ、マーケティングに強いセブン-イレブンの協力によって市場変化に合わせた商品開発も可能となっている。一方セブン-イレブンにとっても同社との取引は、健康志向や少子高齢化に向けた品揃え強化の面からも、本格的な水産系食品・食材を生産できる水産系ベンダーが同社以外にない面からも、ファミリーマートやローソンといったコンビニエンスストア他社との差別化要因になっている。結果として、同社の業容拡大とセブン-イレブンの品揃え強化というWin-Winの関係が、今後も続いていくものと考えられる。
(1) 製造技術・特許の強み
水産資源は鮮度が命と言われる。また、塩や砂糖、味噌、醤油、酒といった基礎調味料だけで、素材のおいしさを十分に引き出せるとも言われているが、近年の工業化の中で、鮮度やうま味の維持のため殺菌剤や鮮度保持剤など基礎調味料以外の補助材料を使うようになった。しかし、同社には鮮度の微差さえ見逃さない機械以上に精密な鼻と目を持ったプロがいるため、補助材料を安易に採用せずに新しい技術・製法を開発することができ、結果として高い参入障壁を築いてきた。現在でも、常時20~30の新技術をテストしマーケティングを行っているため、3年に1回程度、以下のような大きな技術革新を実現、さらに特許も積極的に取得している。
1997年8月に生鮮イクラの静菌管理技術を開発したことより本物のサーモン卵のおいしさを引き出すことに成功し、同社はコンビニエンスストア向けおにぎり用味付イクラのパイオニアとなった。静菌管理技術は現在の成長につながる技術基盤と言える。2014年5月には三段階焼成・ガス置換パック技術を開発した。なかでもガス置換パック技術は密封した包装から99.7%空気を除去して窒素を充填することによって、家庭での焼きたてのおいしさをパックに封じ込める技術で、保存料を使わずに消費期限を従来の約3日間から約10日間へと延長可能となった。
2018年1月にはホットパック技術を開発した。サーモンフレーク(特許取得済み)は一般家庭で焼いて手でほぐしたフレークとほぼ変わらない食感と形状で、焼きタラコ(特許出願中)はオーブントースターやグリルなどで焼成した焼きタラコと変わらない食感、うま味、風味をもっており、同社食材の全国展開に弾みがつく商品となった。2021年4月にはカップサラダ・ガス置換技術を開発し、商品のパッキングにガス置換の技術を利用することで、薬品を使わずに鮮度を保持できるようになり、塩や酒の浸透力だけで素材の「うま味」を生かす「パウチ惣菜」の開発につながった。こうした技術を利用した「たことブロッコリーバジルサラダ」は、セブン-イレブンの人気商品となっている。現在も商品開発の深化を追求しているほか、賞味期限をさらに延長する新技術の開発に取り組んでいる。
(2) 一貫生産体制による「味」品質の向上
同社は、一貫生産体制によって技術力を効果的に生かしている。一貫生産と徹底した温度管理により、冷凍・解凍の回数を1回に削減する(産地で冷凍、工場で解凍、一気に製品化)ことで、おいしさの品質向上を図っている。分業を前提とする大手メーカーの生産体制では、分業に比例して冷凍・解凍の回数が増えてしまい、うま味成分の漏出などおいしさに重大な影響を与えることになる。一貫生産と分業生産という考え方の違いが根本にあるため、差別化以前の参入障壁とも言える。また、一貫生産によって、素材の鮮度、素材の大きさ、肉づきなどの基準を明瞭化し、鮮魚の裁断や切り身づくりの工程を工業部品のように標準化することで、旬や漁場、船、流通、調理によって1つ1つが異なる自然の水産素材を、品質の安定性や量産化、効率化を図りながら生産することができる。なお、20年近くにわたるプロの鼻と目による分析の蓄積により、おいしさの根拠となるアミノ酸や脂肪分、水分、油分、塩分、Brix、pH、色味、硬さ、粘度、歯ごたえなど、舌や歯で感じる「味」をすべて数値化している。一方、コンビニエンスストア向けの惣菜製造には労働集約的な側面があるが、同社では待遇や労働条件などの面で高いスキルを継承する体制を構築している。
(3) フードロスとコスト削減の両立
一貫生産は、素材を使い切ることによって徹底したフードロス対策になっている。チリで大型サイズに限定して集荷し頭部をカットした後に冷凍して日本に運ばれてきた素材は、同社工場搬入後、唯一の解凍工程を経た後、徹底した温度管理の下で調理されるため、すべて無駄なく使うことができる。現在では、切り身(背側・ハラミ)を焼魚やおにぎり具材に、中骨を缶詰に、カマ・ハラス・ヒレ・端材も焼魚(カマ・切り身)に商品化され、廃棄は1%に満たず、ほぼ全身が商品化されている。このため、フードロスを削減すると同時に、原材料コストの削減にもつながっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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3. 同社の強み
同社の強みは(1) 製造技術、(2) 一貫生産体制、(3) フードロスとコストの削減にあり、コロナ禍や原材料高を乗り越える原動力にもなった。祖業が商社のため、海外を含め同社自ら検品や買付を実施していることから調達面での強みも持っている。また、小売最大手であるセブン-イレブンとの間で構築してきた関係も強みと言える。水産食材・食品は、行楽需要やイベント需要、世界の漁獲高などにより、需要供給ともに大きく変動する。こうした需給変動があっても全国の店舗で欠品が生じないよう、日々需給をチェックし適正在庫の確保に努めているが、同社では小売最大手のセブン-イレブンが収集するデータや知見を利用できるうえ、マーケティングに強いセブン-イレブンの協力によって市場変化に合わせた商品開発も可能となっている。一方セブン-イレブンにとっても同社との取引は、健康志向や少子高齢化に向けた品揃え強化の面からも、本格的な水産系食品・食材を生産できる水産系ベンダーが同社以外にない面からも、ファミリーマートやローソンといったコンビニエンスストア他社との差別化要因になっている。結果として、同社の業容拡大とセブン-イレブンの品揃え強化というWin-Winの関係が、今後も続いていくものと考えられる。
(1) 製造技術・特許の強み
水産資源は鮮度が命と言われる。また、塩や砂糖、味噌、醤油、酒といった基礎調味料だけで、素材のおいしさを十分に引き出せるとも言われているが、近年の工業化の中で、鮮度やうま味の維持のため殺菌剤や鮮度保持剤など基礎調味料以外の補助材料を使うようになった。しかし、同社には鮮度の微差さえ見逃さない機械以上に精密な鼻と目を持ったプロがいるため、補助材料を安易に採用せずに新しい技術・製法を開発することができ、結果として高い参入障壁を築いてきた。現在でも、常時20~30の新技術をテストしマーケティングを行っているため、3年に1回程度、以下のような大きな技術革新を実現、さらに特許も積極的に取得している。
1997年8月に生鮮イクラの静菌管理技術を開発したことより本物のサーモン卵のおいしさを引き出すことに成功し、同社はコンビニエンスストア向けおにぎり用味付イクラのパイオニアとなった。静菌管理技術は現在の成長につながる技術基盤と言える。2014年5月には三段階焼成・ガス置換パック技術を開発した。なかでもガス置換パック技術は密封した包装から99.7%空気を除去して窒素を充填することによって、家庭での焼きたてのおいしさをパックに封じ込める技術で、保存料を使わずに消費期限を従来の約3日間から約10日間へと延長可能となった。
2018年1月にはホットパック技術を開発した。サーモンフレーク(特許取得済み)は一般家庭で焼いて手でほぐしたフレークとほぼ変わらない食感と形状で、焼きタラコ(特許出願中)はオーブントースターやグリルなどで焼成した焼きタラコと変わらない食感、うま味、風味をもっており、同社食材の全国展開に弾みがつく商品となった。2021年4月にはカップサラダ・ガス置換技術を開発し、商品のパッキングにガス置換の技術を利用することで、薬品を使わずに鮮度を保持できるようになり、塩や酒の浸透力だけで素材の「うま味」を生かす「パウチ惣菜」の開発につながった。こうした技術を利用した「たことブロッコリーバジルサラダ」は、セブン-イレブンの人気商品となっている。現在も商品開発の深化を追求しているほか、賞味期限をさらに延長する新技術の開発に取り組んでいる。
(2) 一貫生産体制による「味」品質の向上
同社は、一貫生産体制によって技術力を効果的に生かしている。一貫生産と徹底した温度管理により、冷凍・解凍の回数を1回に削減する(産地で冷凍、工場で解凍、一気に製品化)ことで、おいしさの品質向上を図っている。分業を前提とする大手メーカーの生産体制では、分業に比例して冷凍・解凍の回数が増えてしまい、うま味成分の漏出などおいしさに重大な影響を与えることになる。一貫生産と分業生産という考え方の違いが根本にあるため、差別化以前の参入障壁とも言える。また、一貫生産によって、素材の鮮度、素材の大きさ、肉づきなどの基準を明瞭化し、鮮魚の裁断や切り身づくりの工程を工業部品のように標準化することで、旬や漁場、船、流通、調理によって1つ1つが異なる自然の水産素材を、品質の安定性や量産化、効率化を図りながら生産することができる。なお、20年近くにわたるプロの鼻と目による分析の蓄積により、おいしさの根拠となるアミノ酸や脂肪分、水分、油分、塩分、Brix、pH、色味、硬さ、粘度、歯ごたえなど、舌や歯で感じる「味」をすべて数値化している。一方、コンビニエンスストア向けの惣菜製造には労働集約的な側面があるが、同社では待遇や労働条件などの面で高いスキルを継承する体制を構築している。
(3) フードロスとコスト削減の両立
一貫生産は、素材を使い切ることによって徹底したフードロス対策になっている。チリで大型サイズに限定して集荷し頭部をカットした後に冷凍して日本に運ばれてきた素材は、同社工場搬入後、唯一の解凍工程を経た後、徹底した温度管理の下で調理されるため、すべて無駄なく使うことができる。現在では、切り身(背側・ハラミ)を焼魚やおにぎり具材に、中骨を缶詰に、カマ・ハラス・ヒレ・端材も焼魚(カマ・切り身)に商品化され、廃棄は1%に満たず、ほぼ全身が商品化されている。このため、フードロスを削減すると同時に、原材料コストの削減にもつながっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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