MUSCAT GROUPのニュース
大久保代表が明かすMUSCAT GROUPのダブルミーニング 高い志で見据えるのはニッチトップ戦略の先にある世界
新morichの部屋 vol.27 株式会社MUSCAT GROUP 代表取締役 大久保遼様~

福谷学氏(以下、福谷):株式会社START UP STUDIO代表取締役の福谷です。今宵も「新morichの部屋」が始まりました。
森本千賀子氏(以下、morich):株式会社morich代表取締役社長の森本です。みなさまこんばんは。よろしくお願いします。
morich:今日はなんと、27回目ですね。
福谷:すごいですよね。3年目突入です。
morich:お互いに風邪も引かず、穴を開けずに今まで来ましたね。
福谷:毎月ですからね。最近はなんだか涼しくなったというか、過ごしやすくなりました。
morich:インフルエンザも流行っているみたいですよ。
福谷:体調のほうは大丈夫ですか?
morich:ぜんぜんオッケーです!
福谷:もしかしたら罹っているのかもしれないですが、気づいていないだけかもしれません(笑)。
morich:そうですね(笑)。
福谷:さて、本日は27回目を迎え、すごいゲストです!
morich:今までも(ゲストに関する情報の)シャワーを浴びてきていたのですが、人力でした。メディアに出ているゲストの記事を読みまくり、プレスリリースも読みまくり、ホームページも読みまくり、すごく時間がかかっていました。
そこでなんと、「morich AI」というものを作りました。
福谷:来ましたね! どのようなものですか?
morich:ゲスト名を入れると、本当にいろいろなメディア情報を拾ってきます。
福谷:すごい!
morich:そして出来上がりました。こちらが「あんちょこ」です(笑)。
福谷:なるほど! 「morichシャワー」が、ついにAIになりました。
morich:経歴から過去のインタビュー内容まであります。もう、5分でこれだけを読んでおけば、「ここを深掘りしたほうがいいね」とわかります。
福谷:これはみなさまも使えるのですか?
morich:使っていただけます。その代わりにロイヤリティを払っていただかなくてはいけません。サブスク課金システムです(笑)。
福谷:「morich AI」としてサービスになっているのですか!?
morich:なっています! もうサービスとしてあります。今回のようなインタビューなど、ビジネスとして経営者にお話を聞くような場合に使っていただけるのです。その代わり毎月課金です(笑)。
福谷:Chat GPTで調べるのであれば、morichさんに払ったほうがいいですね(笑)。
morich:もう「キュッ」と、まとまっています。
大久保代表の自己紹介

福谷:ゲストの方も「なんだそれは?」と思われていると思いますので、後ほど「morichシャワー」についてご説明いただければと思います。では、早速お呼びしましょう。
morich:本日のゲストは、株式会社MUSCAT GROUPの代表取締役、大久保遼さまです。
大久保遼氏(以下、大久保):よろしくお願いします。
福谷:MUSCAT GROUPですよ。
morich:以前は、株式会社ライスカレーという社名でした。「カレーライスじゃなくて、なぜライスカレーなのか?」そのへんも聞いていきたいと思います。
福谷:MUSCAT GROUP、気になりますね。若いですよね。
morich:見た目にもお若いです。非常にキラキラキャリアなのですが、簡単に少し自己紹介をお願いします。この後で深掘りしますので、さわりだけお願いします。
大久保:平成元年生まれで、現在36歳です。神奈川県横浜市青葉区出身で、横浜の中でも山のほうで育ちました。中学校、高校は山手駅にある聖光学院という、けっこうお勉強ができる学校を卒業して東京大学(以下、東大)に入りました。卒業してからはゴールドマン・サックス(以下、GS)に入社したという……。
morich:もう、キラッキラですよ!
大久保:経歴だけはキラキラですね(笑)。GSではM&Aのチームにいました。その後アドテクノロジーという分野で、Momentum株式会社という広告技術系の会社を立ち上げ、KDDIグループに売りました。
その後は現在の会社、旧ライスカレーを立ち上げました。MUSCAT GROUPと名前を変えたのですが、そのへんも聞いていただければご説明します。
もともとはto B向けにSNSマーケティングの支援から始まりました。もちろん現在もto B事業も行っていますが、「お客さまの支援をしているだけじゃなくて、自分たちもブランドを作ろう」と立ち上げ、それがうまくいき始め「ブランドプロデュースカンパニー、MUSCAT GROUP」というかたちで現在は事業を行っています。
ブランドはいろいろありますが、オーラル美容の「MiiS(ミーズ)」というホワイトニング商品や、菌活発想の口腔ケアタブレット・飲み込み型マウスウォッシュを展開するブランドなどですね。
morich:めちゃくちゃ人気がありますよね。
大久保:「mm flora*(エムエムフローラ)」という商品は、「TikTok」で800万回再生されました。
morich:バズりましたよね。うちの息子も使っていました。
大久保:本当ですか!? ありがとうございます。
morich:高校生の間でめちゃくちゃ流行っているらしいです(笑)。
大久保:そうですね。かなり「TikTokバズ」しました。
また、「MOVE.eBike(ムーブ イーバイク)」という電動アシスト自転車のブランドもあります。これは買収した会社ですが、恵比寿に店舗を作りe-Bikeを販売しています。他にも「bialne(ビアルネ)」というシャンプーなど、SNSマーケティングがうまく効きそうなブランドを自分たちで作ったり、買収してきて伸ばしたりしています。
去年は創業45年の株式会社松村商店を買収し、学生カバンをもう1回バズらせるなど、そのような仕事をしています。SNSマーケティングを起点に、いろいろなブランドを世に出しています。
morich:すばらしいです。マーケティング会社が行き着くところ、実はビジネスモデルとして目指していらっしゃる方は多いのですが、ブランドがここまで売れるということはなかなかありません。
大久保:10個ぐらい失敗していますからね。やはり隠れた、外に出していない数々の屍ブランドたちの上に今のブランドは成り立っています。
(一同笑)
morich:他社のマーケティングをすることと、自社で行うことは違いますものね。そのへんも掘っていきたいと思います。
福谷:いいですね。
神童と呼ばれた幼少期、まさかの中学受験失敗

morich:まず、このキラキラキャリアの方のご両親はどんな人なのか、お聞きしたいと思います。
福谷:ご両親からいきますか。
morich:めちゃくちゃ興味があります。しかも、実は私の息子もGSを目指しているのです。理由を聞くと「いや、なんかね、モテるんだって……」と言っていました(笑)。
大久保:モテる人が多い会社ですよね。みんながモテるわけじゃないですけどね(笑)。
morich:そうですよね(笑)。さて、お父さまのことを調べてきました。
大久保:うちの父親は歌人なのです。
morich:歌人ですか!?
大久保:一応、歌人でした。今は亡くなっていますが、和歌をやっていました。小さい頃は、車に乗って桜並木などを通ると「遼、一首詠め」と言うのです。「五・七・五・七・七」を考えさせられたり、俳句を詠めと言われたり、謎の家で育ちました。
morich:実は今回いろいろと調べていて「すごいポエマーだな」と思ったんですよ!
福谷:おぉ!
morich:いろいろなメディアに出していらっしゃるキーワードが、めちゃくちゃポエムなのです。もう、エモい。
福谷:エモいんですね。
morich:たぶんそのDNAというのはお父さまから……。
福谷:なるほど、そういうことか!
morich:お母さまはなんと看護師ということで、このギャップはすごいですね。
大久保:学者として食える状態になるまでは時間がかかるじゃないですか。しかも、うちの父親は一度高校教師を経て、その後大学院に入り直して学者になったのです。最後は大学教授になりましたが、しばらくは稼げないですよね。
morich:講師をされる方もいますね。
大久保:非常勤講師をしていました。母親との出会いも非常勤講師時代です。
morich:お父さまは看護師学校で非常勤講師をなさっていたのですよね。
大久保:先生と生徒の恋愛でした。ですから、時間的にはけっこう父親が暇で、母親が忙しいという感じでした。小さい時はけっこう預けられていたため、どちらかというと「母親がバリバリ働いていて父親は暇だな」みたいな感覚で育ちましたね。
morich:そのような背中だったんですね(笑)。
大久保:「働く母の背中を見ながら、ちょっと暇そうな父親を見ている」というような状態です。
morich:やはり、小さい頃から勉強はできたのですか?
大久保:まぁ、「神童」と言われて……。
(一同笑)
morich:神童ですか!
大久保:正直、勉強はできました。
morich:それはガリ勉をしなくてもですか?
大久保:SAPIXという中学受験の有名な塾があるじゃないですか。小学校4年生の時に、その全国模試みたいなものを初めて受けて、算数で9位くらいでした。
morich:初めてですか!?
大久保:その程度には神童でした(笑)。
morich:ぜんぜん勉強していなくて、いきなりということですよね?
大久保:「公文式」をやっていたぐらいですね。
morich:いやいや、それはみんなやっています。我が家もそうです。それでは、本当にガリガリ努力するというよりも、授業を聞いていたらわかるような子だったのですね。
大久保:嫌味ですけど、めちゃくちゃ勉強をがんばったという印象はありません。
morich:嫌味ですね(笑)。でも、たまにそんな人に出くわします。
福谷:裏側ではめちゃくちゃ勉強してそうですけどね。
morich:そう思うじゃないですか? 本当に違うんですよ。神童ってそういうことなんですよね。では、進学校にはある意味、気がついたら入っていたような感じですか?
大久保:そうですね。しかし、そんなに全部うまくいったわけでもなく、聖光学院は神奈川県で一番かもしれませんが、開成中学校は落ちているのです。
morich:そうなんですか?
大久保:神童の油断。
(一同笑)
morich:良かったです。少し安心しました。
大久保:近所にめちゃくちゃしっかりと勉強する女の子が住んでいて、桜蔭学園という一番優秀な女子校に受かったんです。それを見て「やっぱり結局は努力が大事だな」と思いました。
morich:その時期に気づいて良かったですね!
大久保:「基礎トレ」というものがあり、小学校6年生の時に「毎日これを解きなさい」と言われました。私は「そんなのいいや」という感じで、ぜんぜん解かなかったのですが、その女の子はきちんと取り組んでいました。やはりその差が受験の結果に出たのだと思って、中学1年生からは真面目に勉強し始めました。
morich:そうするとさらに加速しますからね。そこで受かっていたら、今の大久保さんはいないかもしれませんよね。
大久保:そうですね。落ちて良かったですね。
morich:「神童でありながら努力もする」という、この掛け算は本当に今の大久保さんにつながっているのかもしれないですね。スポーツなどはやっていなかったのですか?
大久保:少年野球などはやりました。しかし、下手でしたね。
morich:それではあまりスポーツの道には進まなかったのですね。
大久保:私はたまプラーザという町で育ったのですが、おそらく5歳くらい下の代に、メジャーリーガーの松井裕樹投手という左ピッチャーのすごい有名人がいました。その松井投手を輩出した少年野球チームにいたんですよ。
別にセレクションなどはなく、近所に住んでいる人は全員入れるのですが、有名チームだったため、5駅くらい離れたところからわざわざ来るような方もいました。たまたま強いチームに入ってしまったので、私は試合など一生出られないんですよ。
(一同笑)
morich:なるほど、そういうことですね。
大久保:「野球はなんてつらいんだ」と思っていました。試合に出られないとつまらないですから。
morich:でも、もしかして別のチームに入っていたら「野球楽しいぜ!」と思えたかもしれないですよね。
大久保:たまたま「横浜高校目指そう!」みたいなチームに入ってしまったので、「これは勉強のほうがいいかな」と思いました。その後もスポーツは、趣味で野球や部活はしていましたが、ガチではやっていないですね。
金融業界への道と、起業家精神の芽生え

morich:当時は「将来こうなりたい」というものはあったのですか?
大久保:「将来について言わされていた時期はあるな」と思っています。
morich:お父さまなどにですか?
大久保:いや、東京近郊や神奈川県では、お勉強ができる人をとりあえずお医者さんにしようとするんですよ。
morich:なるほど。弁護士か医者かですね。
大久保:そうです。塾の先生などが質問してきます。私は算数ができたので、小学6年生の時は「将来の夢はお医者さん」と答えていました。
morich:それはなぜでしょう? 大人の期待に応えようということですか?
大久保:そのような感じはありましたね。エゴはそこになかったというか。
morich:あまり起業しようとか、起業家になろうなどとは考えていなかったですか?
大久保:まったく考えていませんでしたね。
morich:それでは、自然と東大への道を進んだのですか?
大久保:ただ、アメリカの大学も受けていましたので、東大に行こうとしたわけではなかったんです。アメリカの大学をいくつか受けましたが、MIT(マサチューセッツ工科大学)などは落ちてしまい、ミシガン大学という、まあまあなところに受かりました。
morich:いや、私もいろいろと調べていますが、なかなか受からないですよ(笑)。
福谷:簡単じゃないですよね。
大久保:合格はしましたが、奨学金はさらに選ばれし人しか受け取れませんので、そちらには落ちてしまいました。
たぶん、景気が良い時期であれば受かっているのですが、当時はリーマン・ショックの頃です。アメリカの大学は債券で運用しているため、リーマン・ショックでものすごい損失を出したのです。そのため予算が削減され、奨学金予算も削減されました。
morich:なるほど。枠が狭くなったのですね。
大久保:やはり中国の方や韓国の方はものすごく勉強ができますから、アジア枠の中で勝てず、奨学金は取れませんでした。アメリカの大学は非常に学費が高いので、奨学金がなければ通えません。
morich:なかなか難しいですよね。
大久保:それで、東大に行くことにしました。入学後、リーマン・ショックについて勉強し、「一企業の破綻が一留学希望者を左右するような、ここまでのインパクトを与えるとは、どういうことなんだろう?」と思うようになりました。
私は物事を批判する時に、体験をしなければ批判してはいけないと思っています。「リーマン・ショックでGSみたいな会社が、世間にいろいろと迷惑をかけたんだ」と批判するのは簡単ですが、「ちょっと入ってみないと分からないな」と思ったのです。そこで、自分としては金融業界を批判する気持ちでGSを受けました。
morich:そうだったのですか!? そんな人います?
大久保:面接の時にも伝えました。
morich:それを迎え入れるGSもすごいです!
大久保:度量がある会社です。
morich:ありますね。もともと理系で東大に進み、途中で経済学部に変わっているのですね。
大久保:理科二類に入って、大学3年生の時に変更しました。父親が研究者だったので私も研究者になりたかったのですが、やはり研究者になる人は相当勉強が好きなんです。私は勉強が好きというよりは、良い順位を取るのが好きというタイプでした。「学問の本質に迫る」みたいな父親の血は受け継いでなかったんですよね。
morich:途中で気がついちゃったんですね(笑)。
大久保:「これは違うな」と。母親は看護師として虎の門病院で働いていた時に、いつも看護師人気ランキングの1位を目指していたと言っていました。
morich:それは、お母さまの血ですね。
大久保:「そっちの血があったんだ!」と思いました。ちょっと研究者は違うなということで、リーマン・ショックの話も記憶にあったため、経済をやってみようと文転したのです。
morich:その時にはGSをターゲットにしていたのですか?
大久保:就活の時には「GSに行こう」と考えていました。やはり一番のところに行かないとわからないなと思ったわけです。
morich:なるほど。金融狙いだったのですね。
大久保:金融しか受けていなかったです。落ちたら大学院に行こうかなと思っていました。
福谷:いやいや、何かいろいろとおかしいなと思っています(笑)。
morich:常人ではないということはわかります。入社後の環境としては、思っていたような感じだったのですか?
大久保:まず、めちゃくちゃ働いたのですが、それが今となってはすごく良かったです。投資銀行部門というM&Aのチームにいました。
morich:一番の花形ですよ。すべての大学生が狙っていますよね。
大久保:人気でしたね。そこでは、いろいろな会社の事業計画などを見ることになりますので、だんだんと自分でやりたくなってきたというのはあります。
福谷:そこで起業への思いが芽生えたのですね。
大久保:M&Aはしっかりと歴史なども調べるため、「創業者がこういう風に作ってきた会社を、こういう気持ちで売却するんだ」というような背景があるわけじゃないですか。そのようなものにいろいろと触れていく中で、アドバイザーみたいな立場よりも自分でもやりたいと考えるようになりました。
morich:でも、マネーゲームにはまっていくということではなかったんですね。
大久保:私は今でもあまりマネーゲームに対してはポジティブではなく、やはり事業を作る側のほうが自分の性に合っていましたね。
morich:とはいえ、たぶんGSはそれなりの報酬でしたよね?
大久保:サラリーマンとしてはめちゃくちゃいいですよ。
morich:20代でそこまではなかなかありません。しかも、合コンの席ではキラキラとしていて……。それをすべて捨てるわけですからね。
大久保:でも、GSって、「運動もできて、見た目も良くて、勉強もできて」みたいな人が行くんですよ。
morich:イメージはそうですよね。
大久保:ただ、全員そうしちゃうと……。ダイバーシティを大事にしているので。
(一同笑)
morich:やはりアメリカの会社ですからね。
大久保:多様性を大事にしていますので、「運動はできないし、見た目もそんなにでもないし、勉強はできるかな」というような「オタク枠」が、毎年1名ぐらいあるのです。
morich:それは厳選ですね。逆にすごいです(笑)。
大久保:厳選1名のオタク枠に入れたということですので、それほどモテなかったです。あまり恩恵は受けていません。
morich:他のきっかけとしては、オイシックス・ラ・大地の髙島社長に憧れていたそうですね。
大久保:起業したきっかけはGSでの経験もあったのですが、最初に遡ると、聖光学院在学時に卒業生である髙島社長の講演を聞いたことだったのです。
高校2年生くらいの時、私たちに将来を考えさせるためにいろいろな職業の方が来てくださって、その中に髙島社長がいました。当時はおそらく創業3、4年くらいだったと思います。「今、売上はどのくらいなんですか?」という先生の質問に「10億円です」と答えていました。
現在はもうとんでもない会社になっていますから、本当に駆け出しの時なのですが、髙島社長がボソッと「10億円なので、まあまあです」って答えたんですよ。高校生にとっては10億円という金額はとてつもないわけじゃないですか。これを「まあまあです」と一言で片付けており、「起業ってものすごい世界だな」と思いました。
morich:しっかりと覚えていたのですね。
大久保:それがずっと頭の片隅にありました。大学3年生、4年生頃にも「起業っぽいことをやってみようかな」と思った時期があり、GSの仕事が一番やりたい仕事かというとそうでもありませんでした。髙島社長に感じたインパクトみたいなものがやはり少し引っかかっていて、やろうかなと思いました。
スケジュールアプリで起業するも、アドテクノロジー領域へピボット

morich:最初に起業されたのは、社会人何年目の時ですか? 事業ドメインはどのように決めたのでしょうか?
大久保:3年目の時に起業しました。GSでは電通や博報堂などのM&Aチームにおり、アメリカの会社を日本に持ってくるということを行っていました。シリコンバレーの最先端の広告技術に触れていたので、それを日本で作るというかたちで、「これならいけるかな」と思って起業しました。
というのが、世の中に出ている記事などで回答した内容で、外向けのお話です。
morich:なるほど、メディア向けですね。
大久保:これも嘘ではないのですが、最初は全然関係ないスケジュールアプリを作ったんですよ。
morich:そうなんですか!?
大久保:めちゃくちゃアホというか、ミーハーでした。M&Aによるイグジットで「Sunrise Calendar」というカレンダーアプリが、アメリカでMicrosoftに何十億円というものすごい金額で買収されたんですよ。
当時はまだ「Google カレンダー」など、Googleのアプリがそこまで浸透していなかったため、そのような新しいアプリにすごいバリュエーションがついていた時代でした。そこで安直に「日本でスケジュールアプリを作ろう」という話になりました。
私はけっこう遅刻魔なので、位置情報を読み取り、逆算するという……。
morich:逆算して「何時に出ないと」と、わかるのですね。
大久保:今は「Google アシスタント」などがありますが、当時はなかったので、「そろそろ出ないと遅刻しますよ」というような通知が来るアプリを作ったのです。
しかし、まったく流行らず……。ちょっと早すぎました。
(一同笑)
morich:でも、アプリとしては完成できたのですね。
大久保:GSの先輩にお金も入れてもらったのですが、ぜんぜんダメでした。「このままだと明日の飯も食えんぞ」という状態です。
morich:それは1人で作ったのですか?
大久保:高校の友達と作りました。
morich:なるほど。それはもう道連れにしながら。
大久保:2人で「これは、ピボットしよう」と言う時に、GS時代の話を思い出しました。
morich:それで先ほどのロジックになるのですね。ちなみにそのアプリはどれぐらい売れたのですか?
大久保:マネタイズなどもぜんぜんしていなかったので、本当に1,000ダウンロードぐらいしかされませんでした。めちゃくちゃしょぼかったです。
morich:それが1万ダウンロードされていたら、今は別のビジネスだったかもしれないということですか?
大久保:それが当たっていたら、もっとお金持ちだったかもしれないですね(笑)。
morich:それで、もう1回立ち戻ったのですね。
大久保:ものすごく未来を考えたというよりは、「もう、すぐお金にしなきゃいけない。稼げそうなものにしよう」ということで、アドテクノロジーの領域にしましたね。
morich:そこからは順調に行ったのですか?
大久保:2年でイグジットできたので順調でしたね。
morich:イグジット以外にも、例えば自社でIPOするということも考えられるじゃないですか? その中でなぜ売却にしたのですか?
大久保:IPOに大事なことは、やはり「風」なんですよ。「マーケットの風」のようなことです。
少し技術的な話になりますが、アドテクノロジーの業界が当時どのような技術に支えられていたかというと、ブラウザのCookie情報というものを使って、その情報を元に広告を当てていました。今もそうですが、これが基本的な技術です。しかし、プライバシー規制などが激しくなっていき、Cookie情報を使う道がどんどん狭まっていきました。
もう1つは、アプリの台頭ですね。「YouTube」や「Instagram」「Facebook」などのアプリが台頭していくと、もうMetaしか情報が取れないです。スマホのアプリにはCookieという概念がありません。これは逆風だと思いました。IPOはそのマーケット自体が伸びていないといけないので、厳しいと感じて「売っちゃえ」と判断しました。
morich:なるほど、そのように感じたわけですね。
大久保:売ってしまってその会社がなくなったら悲しいですが、今でもあるんですよ。KDDIが慧眼で、意外とその後もブラウザのアドテクノロジーは残ったのです。
morich:KDDIのグループ会社になっているのですか?
大久保:正確にはKDDIのグループ会社のグループ会社というような、孫会社のような感じです。今はまったく関わりはなく、私の知らない方が社長です。
morich:でも、なんだか嬉しいですよね。
大久保:そうなんですよ。やはりさすがKDDIというか、たぶん投資回収したと思います。
morich:当時、社員はいなかったんですか?
大久保:4人くらいのスモールチームでした。
morich:それでは売却時に彼らも一緒に移られたのですか?
大久保:そうですね。高校の友達が共同創業者のナンバー2で、そちらのモメンタムのほうに残り、私は抜けました。
morich:そういうことですか。そこは揉めなかったのですか?
大久保:ナンバー2に家族ができ、人生のフェーズとして少し安定したいということもあったようでした。私は「もうちょっとやるぞ」という感じだったので、うまくタイミングが噛み合ったということはありましたね。
morich:とはいえ、売却先を探すのは大変でしたか?
大久保:大変でした。現在のようにM&A仲介会社が発達しているわけでもなかったので、けっこう探しましたね。
morich:自分たちで探されたのですね。でも、シリアルアントレプレナーとしてある程度の資金は得られたということですか?
大久保:かなり得られたと思います。やはり一度行うといろいろとわかってきます。特に組織作りのところは学びましたね。
morich:次に活かせたということですね。
大久保:例えば、1社目の時にはビジョンなどどうでもいいと思っていたんですよ。GS出身なので、「株式会社の仕事は株主と従業員、経営者などステークホルダーたちのバランスを取りながら、最適のかたちで会社を伸ばし、それが間接的に社会に貢献されればいい」という考えでした。
morich:歌人のお父さまからすると「それはどうやねん」って話じゃないですか(笑)?
大久保:やはり、人の心はビジョンが必要ということですね。自分自身のモチベーション的にも「なんでやっているんだ?」というようなことを、うまく話せるといいなと思いました。ですから、2社目の時は最初からある程度ビジョンみたいなものは掲げていましたね。
「ライスカレー」から「MUSCAT GROUP」へ

morich:次の事業は、1社目の事業とまったく違うドメインというわけでもないですよね?
大久保:かなり重なっています。結局、企業の広告予算などはアドテクノロジーのWebからSNSに移っていったため、最初は「Instagram」のマーケティング支援から始めました。1社目の新規事業として行ってもいいような内容でした。
morich:そこはやはり、まったく違った非連続のマーケットで行うということではなくて、成功確率が高そうなところに進まれたのですか?
大久保:当たり前ですが、1社目で分かったことは、やはりきちんと事前にリサーチができており、研究していなければうまくいかないということでした。思いつきではだいたいうまくいかないですよね(笑)。
morich:成功するのは本当に天才的なケースですよね。
大久保:もちろん思いつきでうまくいった企業家もいるのですが、あまり再現性がありませんよね。天が味方しなきゃいけない。私はめちゃくちゃ天が味方するようなタイプではありません。あまり強運の持ち主ではないので、わりと手堅く考えました。
morich:では、リサーチをして「ああ、やっぱりここだな」ということですね。最初はまた1人から始めたのですか?
大久保:自分が詳しいところでやろうと思いました。創業メンバーは何人かいましたが、どちらかというと意思決定者は1人というかたちで始めました。
morich:その時につけた社名が「株式会社ライスカレー製作所」ですね。なぜまた(笑)? 「カレーライスでもいいじゃん」と思ってしまいました。
大久保:創業チームのメンバーの中に画家のゴッホが好きな人がおり、ゴッホにちなんだ名前にしようということになったのです。
morich:ちょっとポエム的な要素が出てきました。
大久保:ゴッホを「Google」で調べると絵画が出てきますが、「Instagram」で調べたらカレーの写真が出てきたんですよ。
morich:それは知らなかったです!
大久保:お店がなくなってしまったので、今は調べても出てきません。京王井の頭線池ノ上駅に「ゴッホ」という名前のおいしいカレー屋さんがあったのです。カレー好きの人たちにとっては「ゴッホと言えばカレー」でした。しかし、普通の人々にとっては「ゴッホと言えば絵」です。このギャップがおもしろいなと思ったんですよね。
morich:深いですね!
大久保:ニッチトップ戦略などにもつながってくるのですが、ある切り取られたコミュニティの中でメジャーな情報があり、それを活用してマーケティングしていくようなことが、アドテクノロジーのCookie情報でターゲティングしていることと少し似ていると思ったのもありました。
「『ゴッホ』と『カレー』を結びつけるのっておもしろいよね」という話になりました。最初は「カレーライス製作所」にしようとしたのですが、確か「curryrice.co.jp」みたいなドメインが先に取得されていたので「ライスカレー」にしました。
「製作所」をつけたのは、私が村田製作所を好きだからです。日本の大企業の中でも、いい会社だと思っています。
morich:ある講演で一緒に登壇したことがありますが、めちゃくちゃいい会社でした。
大久保:めちゃくちゃいいですよね。実はiPhoneなどには積層セラミックコンデンサが入っています。「実はムラタが入っている」というようなところがすごくいいなと思っていて、そういう「裏側で実は活躍している」というのが好きだったんです。
morich:そこから来ているんですか!? 村田製作所は絶対に知らないですよ。
大久保:その後いろいろあって「ライスカレー」という名前に絞るのですが、「製作所」をつけると、さすがに「カレー屋だな」という印象がありました。
morich:100人中、99人がたぶん食べ物屋さんだと思いますよね(笑)。
大久保:銀行窓口などで「どこのお店なんですか?」と聞かれましたからね(笑)。
morich:名刺交換した瞬間に、裏側にお店の場所が書いてないか見てしまいます(笑)。
大久保:そうなんですよ。それで上場前に社名を「ライスカレー」だけにしたのです。
morich:そういうことだったんですね。起業のタイミングで上場は視野に入れていたのですか?
大久保:そもそも2社目はIPO狙いで起業しました。
morich:そうですか! 有言実行でしたね。
大久保:市場の逆風などもあり、タイミングは別に良くはなかったと思いますが、結果として9年でIPOは悪くはないかと思います。
morich:IPOするまでは、基本的にはマーケティング支援を行っていたのですか?
大久保:最初の4、5年ぐらいがマーケティング支援です。その後ブランド事業が始まりました。「MiiS」など現在の主力となるブランドや、その裏側で10個の失敗などがあり、最終的にはBtoBが7割、BtoCが3割ぐらいでIPOしました。
「自社で在庫を持って売っているからこそ、お客さまの支援もできる」というように、バランス型の事業運営をしているところが、他のマーケティング会社との差別化になっているということで、IPOにつながりました。
福谷:「10個の失敗」がめちゃくちゃ気になります。
大久保:やはり事業は安直に行ってはいけないのですが、インフルエンサーブランドブームがあったので……。
morich:今もまだ少しありますよね。
大久保:しっかりと考えている会社は、インフルエンサーブランドを集めてIPOなどをするのですが、私たちは当時けっこう安易に考えていました。「とりあえずインフルエンサーが何か作れば売れるだろう」といった気持ちで、「数を打てば当たる」といっぱい作り、もう全部ダメでしたね。
morich:最初に作ったのは何だったのですか?
大久保:ほぼアパレルです。
morich:すべてアパレルなのですか?
大久保:インフルエンサーがものづくりをする時は、基本的には服なんですよ。なぜかというと、服はロットが少ないからです。最初の投資金額が少ないということと、パッと考えやすいというか、自分の個性を反映しやすいのです。
インフルエンサーの方も服を作りたがるのですが……、まぁ、失敗しました。
morich:ぜんぜん売れなかったということですか?
大久保:売れなかったり、売れたなと思っても続かなかったりですね。やはりそのブランドのコンセプトとなるコアのビジョンがないんですよ。まさに軸がないのです。そうすると最初はおもしろいと買ってくれるのですが、結局「なぜその服を着ているんだ?」ということになります。機能性が高いわけでもないので、難しいですね。
morich:やはり、ブランド作りはめちゃくちゃ深いんですね。
大久保:ブランドは自分の価値観を反映するようなものでもあります。
薬機法的に記載してはいけないと思いますが「痩せるサプリ」というものがあったとしましょう。「痩せたい」ということは1つの価値観です。別に痩せる必要はないのですが、自分はそうしたいわけです。自分の価値観の意思表示がブランドだと思います。
インフルエンサーブランドでもうまくいっているブランドは、そこが作れています。「この服をどういう人に着てほしいのか」「どんな気持ちになってほしいのか」ということが、しっかりと作り込まれています。しかし、単に「自分が着たいものを作る」だとうまくいかないですね。それは作り手の価値観にしか合ってないので、顧客に届いていません。
SNS時代のブランド戦略と「MUSCAT」に込めた思い

morich:大久保さんがいろいろなメディアで語られているメッセージの中で、いくつか気になるものがありました。その1つが「SNSから生まれる共感こそが新しいブランドの起点」というものです。コミュニティから自然発生的に立ち上がるブランド作りを重視されているということです。
福谷:ちょっといいですか? 「morich AI」のデータはすごい量です!
morich:そうでしょう。いろいろなところから引っ張ってきていますからね。
大久保:お話を聞いていて「あのインタビューで答えたやつかな?」と思いました。いろいろなところでお話したことが統合されています(笑)。
morich:これは『経営者通信Online』というメディアでお話されていました。「morich AI」は私が好きそうなお話を選んでくれています(笑)。
大久保:昔は違ったのですが、「共感ブランド」とSNSとの相性は良いと思っています。例えば「CHANEL」は、時代を作るほどの超カリスマがいて、大天才にしか出せないコンセプトの商品を作り上げました。言い方は悪いですが、それに誰もがひれ伏して買うような状態です。
morich:そうですね。
大久保:当時は「さすが『CHANEL』」という感覚で、共感して買ってはいませんでした。どちらかというと、畏怖の念を持って購買するという考えです。
しかし、SNSは個人個人が自信を持っている状態です。「あの人も着ているし、同じ価値観だよね」という感覚があります。服でもコスメでも、同じブランドを使っている人はライフスタイルや価値観がたぶん似ています。
フラットな目線で消費していくという中で、宣伝媒体としてうまく入り込んでいるのがインフルエンサーだと思います。ブランドの消費のされ方が、縦型じゃなくて横型になっており、SNSはそれをさらにブーストさせているのだと思います。
morich:すごく美人で、自分とは距離のある人というよりも、近い人のほうが爆発的なインフルエンサーになりますもんね。
大久保:おっしゃるとおりです。ただ、その代わりに恐ろしいのが、しっかりとした軸がないと一過性で終わるということです。ものすごい速度で終わっていきます。
morich:なるほど。
大久保:人は、ずっとは共感できないのです。
morich:その共感を作り続けるということもやはりすごく難しいですね。
また、気になっているのは先ほどからキーワードとして出ている「ニッチトップ」です。そこにめちゃくちゃフォーカスされていますよね。
大久保:そうですね。天邪鬼なので、全員がやることはあまり好きじゃないんです。例えば「マスに打って出て、大きいものを作らなきゃいけない」というようなことです。VCなどはよく言うじゃないですか。株式市場でも、私は「MUSCAT GROUPはニッチトップ」と言っていますが「いや、マスに行けよ」と思っている投資家もいらっしゃると思います。
morich:いらっしゃいますね。そのほうがトップラインとしては一気に大きくなりますからね。
大久保:ただ、全員がそれをやっていたら、おもしろくないですよね。
福谷:なるほどですね。
morich:ぶつかりますしね。
大久保:結局、日本で仕事をしている時点で、成長市場では仕事をしていないと思います。現在はAIなどがそうですが、やはりマスマーケットで大きくなるためには、ものすごい成長市場じゃないといけないんですね。そのようなマーケットではなくて、一見もう完成されている成熟市場の中で、ニッチに切り出してあげるということです。
例えば「MiiS」であれば、オーラルビューティーという切り口です。「健康のために歯を磨こう」「虫歯対策しましょう」「口臭対策しましょう」というオーラルケアはもうマスマーケットじゃないですか。しかし、「化粧品みたいな感覚で歯を磨きましょう」「ホワイトニングしましょう」というように、審美としてのオーラルケアは、市場としてはまだ伸びています。
ニッチな、伸びる市場が隠れているんですよね。その中でトップを目指していきましょうという仕事はあまり行っている人がいません。日本で仕事をしているだけで、すでにもう先進国の成熟市場じゃないですか?
morich:そうですね。人口は増えませんしね。
大久保:「成長市場で勝負しなきゃいけない」と考えると、「日本で、東京で起業している時点で、成長市場で起業してないじゃん」と思うんですよ。では、東京で起業する意味はないのかというと、そんなことはないはずだと思っています。それは隠れている市場を切り出していくようなことなんです。そして、MUSCAT GROUPの名前の由来でもあります。
morich:ここにつながるということが「morich AI」にも書いてあります。
福谷:MUSCATって、そういうことか!
大久保:これはダブルミーニングです。熟すといえばぶどうじゃないですか。そのぶどうの中からシャインマスカットという突然出てきた国産品種があります。マスカットはもちろん昔からありますが、シャインマスカットが出てきて、今はグローバルブランドになっていますよね。
「成熟から生み出された成長」ということです。誰もが諦めていたぶどうという成熟マーケットの中からシャインマスカットが出てきたように、私たちがそのような存在を作るのだということで「MUSCAT GROUP」としました。
そして、ダブルミーニングとして「マス」マーケットを「カット」インするのだということです。
福谷:今、うわーっとなりました。鳥肌が立ちました。
morich:深いですね。そこはやはり、歌人のお父さまのDNAじゃないですか?
福谷:いやいや、神童ですから。
morich:そのような背景があったのですね。
M&Aの現場で目にした「heart-to-heart」の大切さ

morich:上場も含めて順風満帆に見えていますが、その中でもハードシングスはなかったのですか?
大久保:いや、ずっとハードです! 今もハードです(笑)。
morich:今もですか(笑)?
大久保:それこそ「100億円のサイズでIPOしないと」と言われるじゃないですか。当社は今30億円弱しかないので、ここから3倍、4倍にしていくとなると、成長速度は求められますよね。私たちがかなり積極的にM&Aを成長戦略に入れているのはそのためです。
ニッチトップブランドをずっと作り続けることで、100億円、500億円、1,000億円まで目指すことはできると思いますが、たぶん20年、30年かかってしまいます。それはそれですばらしいことだと思いますが、株式市場というのはそれを許しません。
そのような場でゲームをしているということですので、やはり「来年は売上が倍になるんですか?」というような話になるんですよね。そうするとM&Aをやらざるを得ません。しかし、単なる売上を足し算するためのM&Aというよりは、買われた側の人にとっても良いものにしたいと思っています。
例えば松村商店という45年の歴史がある会社は、今や「TikTok」で300万再生する学生カバンを作るメーカーに生まれ変わりました。松村商店はずっと安定したキャッシュフローがあり、働いている人にとってもいい会社でしたが、社長が引退するということで当社が買うことになったのです。
morich:事業承継の案件ですね。
大久保:現在は社員の方々が「TikTok」などにもすごく詳しくなり、かなりモチベーションも高いので、それはけっこういいことをしたなと思います。
morich:どのような経緯で見つけたのですか?
大久保:上場後に「メーカー業を買ってブランド化する」という成長戦略の中で、いろいろな業者さんにピックアップしてもらいました。
morich:0を1にする起業というよりも、1を100にするということですね。
大久保:本当は10、20になるかもしれない3を買ってくるようなイメージです。もちろん自分たちで作ることもしており、そこは両輪ですね。
morich:その中でもハードシングスというのは、やはりソーシングすることがとても難しいのですか?
大久保:ソーシングというよりは、買ってきた後のことですね。例えば松村商店は紙で仕分けをしていました。
morich:そういうレベルの会社だったのですか!?
大久保:そうです。「Google Meet」でミーティングした時に拍手が起きたらしいです。
(一同笑)
大久保:私はその現場にいなかったのですが、「つながった!」「すごい!」となったそうです。「初めてのIT文明との出会い」みたいな。
morich:会社名からなんとなく想像はつきましたけど、そうなんですか!?
大久保:ハードシングスというか、おもしろいですけどね(笑)。
morich:よく融合されましたね!
大久保:そうですね。松村商店でけっこう自信がつきました。できなかったことができるように、環境がどんどん整っていくことは、やはり働く方にとっても嬉しいんですよね。
morich:でも、抵抗勢力もあるでしょうし……。
大久保:松村社長が超カリスマ社長だったんですよ。「カリスマ社長の引退って意外とうまくいくんだ」と思いました。
morich:そうなんですか? トップダウンだからでしょうか?
大久保:松村社長レベルまで長く経営されていると、もう仕組みが完成されているので現場にはほとんど入りません。言い方は良くないかもしれませんが、「裏側にいる皇帝」のような状態になっており、チームには「組織の言うことを聞いて遂行するんだ」ということだけがマインドとして残っています。
したがって、誰が上に来たとしてもビシッと機能します。一方で、「全員が頭を使って考えていくぞ」といった優秀すぎるチームは意外とM&Aで揉めます。
福谷:「なんでだ?」という思いがありますもんね。
大久保:「納得しないと仕事をしない」ということです。しかし、M&Aの最初は上下関係が大事です。異文化交流ですから、納得できないこともたくさんあるわけじゃないですか。その時に、「納得できなくてもとりあえずやってみよう」というマインドを持っている会社の方がうまくいきやすいです。
morich:これからの日本のビジネス界において、ものすごいノウハウですね。
福谷:大事なところですね。
morich:成長戦略でいうと、絶対に0から1というよりも、1から100ですね。
大久保:当社は松村商店のM&Aがうまくいったこともあり、M&Aを成長戦略にすることにしました。
morich:それはGSの時の思いみたいなものと、シンクロしているのですか?
大久保:GSの時もM&Aはもっと大きな規模で行っていましたが、M&Aはけっこう「heart-to-heart」だと思います。
morich:そのような言葉が出てくるんですね。安心しました。
福谷:やはり「人」だったと。
(一同笑)
大久保:やはり創業一族の思いなど、熱いものがあって……。
morich:そうですよね。
大久保:規模の大小は関係なく、やはり自分の作品ですからね。GSの時に「こういうところで揉めるんだ」という光景を見てきました。非常に頭の良い人たちが、めちゃくちゃ優秀な人たちが、ぜんぜん感情的に動くんですよ。
morich:やはりロジックどおりにはいきませんよね。
大久保:それは頭に入っていたので、今でもすごく気をつけています。他には自分の気持ちが乗るかどうかをすごく大事にしていますね。要は買う側の気持ちも乗っていないといけません。私がワクワクするようなM&Aでなければ行うべきじゃないと思っています。
morich:なるほど。そこですね。
大久保:どんなに「儲かりますよ」と言われても、心が動きません。
morich:デジタル上で「ここの組み合わせは絶対いける」と言われても、心がポジティブに動くかどうかですね。
福谷:やはりAIが介入できない部分ですね。
大久保:いや、もしかしたら将来はAIが、「こういう案件だとあなたの心が動くかも」と、分析して出してくるかもしれません(笑)。
morich:なんだか嬉しいですね。「東大」「GS」と聞くと、「どんな嫌味な人なのか」と思ったら……。
(一同笑)
morich:やはり感情があるということが大事だということですね。
大久保:やはり、一番大事ですよ。
morich:それでは、現在松村商店の中にいらっしゃる方はめちゃくちゃテンションが高い状態ですか?
大久保:かなりモチベーションが高いですね。
福谷:いいですね!
morich:やはり変わりましたか?
大久保:労働に対する前向きさが、ぜんぜん違いますね。「もっとこうしたほうがいいと思っていた」ということも出てきています。
福谷:そうすると、また新たな雇用にも結びつきますね。
morich:ハードシングスというよりも、むしろサクセスストーリーでしたね。
大久保:最後にサクセスストーリーになるものが、ハードシングスですから(笑)。
morich:そうですね!
大久保:そのまま終わっていったハードシングスは、過去の屍として(笑)。
ロールモデルの究極系はLVMHグループ

morich:これから先はどのようにしていくのですか? ここまでのお話を聞いていると、もう本当にサクセスしかないですが、やはりM&Aを増やしていくということでしょうか?
大久保:だんだん会社の規模が大きくなってくるにつれて、M&Aのインパクトも変わってきます。
例えば10億円の会社にとって、売上が5億円足し算されるM&Aは大きなインパクトです。30億円の会社で5億円も、まあまあ大きいかもしれません。しかし、50億円の会社にとっての5億円では「10パーセントか」となるわけです。
すべての動きの規模を大きくしていかなければいけません。もちろんM&Aだけでは全部足し算するわけにはいかないですし、買ってきた会社をどのように伸ばすかというところだけでなく、やはり0から1の部分もしっかりと生み出せるかどうかです。したがって、今がハードシングスかもしれません。
morich:なるほど。それがテーマですね。
大久保:マーケットが求める速度にしっかりとついていかなければ追いていかれるので、そうならないように今がんばっているというイメージです。
morich:基本的に、事業ドメインは変えずに継続しますか?
大久保:ブランドプロデュース事業については、しばらく変えません。もしかしたら、また時代によってブランドプロデュースの方法などは変わるかもしれませんが、現在は少なくともSNSマーケティングを差別化と したブランドプロデュースです。
morich:ちなみに、大久保さんがベンチマークやロールモデルにしているブランドはありますか?
大久保:非常に大きなブランド、世界一のブランドですが、LVMHは本当にすごいと思います。だって、ティファニーを買ったんですよ?
morich:確かに! あのティファニーですもんね。
大久保:あの『ローマの休日』の、あれだけの歴史ある会社をです。LVMHはかなりロジカルで、ファンドのような動きをしています。そして、あのプライドの高いティファニーのチームを入れて再生させています。
さらに、LVMHグループになってから、『ティファニーで朝食を』でオードリー・ヘプバーンが食事をしたようなカフェをニューヨークや東京にも作っています。そのようなことがめちゃくちゃ上手で、いろいろなブランドを買ってくるのですが、すべてロジックが通っているんですよね。それは究極系だと思っています。
morich:それもただ再現しているというよりも、それぞれのブランドの歴史と思いみたいなものを体現していますよね。
大久保:うまく活かしながらも、けっこうシビアでロジカルなことを行っており、そのバランスがすごいと思います。
morich:そういう意味では、ファーストキャリアで選んだ道が今につながっていますよね。
大久保:それはあると思いますね。結果的にですけどね。
morich:それでは「MUSCAT GROUPはLVMHを追いかける」という感じですかね。
福谷:目指してほしいですよね。
大久保:だいぶ遠いですよね。
(一同笑)
morich:いやいや、でもやはり目指さないとそれ以上にはなりませんから!
大久保:5代目ぐらい後かもしれないです(笑)。やはり一番うまくいっている人たちから学ぶことは多いので、巨人から学んだほうがいいなと思います。
morich:やはり、「本当にブランドを愛する社員もいて」ということですよね。
大久保:そうですね。私は自分で商品開発はしません。買い物はあまり好きじゃないんですよ。
morich:そうなんですか!? アパレルやファッションが好きなわけではないんですね。
大久保:ぜんぜん好きじゃないです。あまり物欲もありません。ですから、物を買うことに興味がない人が、物を買う人の気持ちなんてわかるわけがありません。
morich:それは難しいですね。
大久保:私は、どの市場がいいか、どのドメインがいいかというところまでは選べます。例えば、「オーラルケアの中で、オーラル美容は伸びるぞ」というところまでは、ロジカルに分析することができます。
しかし、そこからブランドを作り、「この商品の、パッケージのこの部分にときめくんだ」といったことはわかりません。
morich:ユーザーとしての体験がないのですね。
大久保:買い物でときめくとか本当にわからないですね。まったくときめかない。意味がわからないんですよ。
(一同笑)
morich:本当ですか!? ブランド作りをしていながらも(笑)?
大久保:そうです。当社はある意味で冷静な私と、その下に情熱を持ったチームがしっかりといます。それは私が学んだことですね。自分にできないことは、やらないということです。
morich:なるほど。その人たちはやはり情熱を持って、ブランドを作っているのですね。
大久保:「それが私の人生だ」というほど、しっかりと気持ちを入れてくれています。
次なる挑戦は「グローバルニッチ」

福谷:個人的なビジョンなどはいかがですか?
大久保:それは悩みかもしれません。人生には「利他」のフェーズと「利己」のフェーズがあります。小学生の時に「将来の夢はお医者さん」と言わされていたようなことは、ある意味で利他のフェーズだと思います。自分がなりたいものよりも、周囲が期待するものになろうとするようなことです。
上場は利他のフェーズに入ることだと思います。上場を目指すことは、いろいろな人を巻き込んで自己実現をするような、かなり利己的なことです。しかし、上場後はどちらかというと、自分がこうしたいというよりも、投資家の期待やマーケットの欲求に応えることになります。
それが仕事だと思いますし、それが公な器になるということだと思っています。しかし、1年以上行ってきて、そろそろ「利己」もほしいです。
morich:ほしいと思い始めているんですね(笑)。大久保さんの「利己」って何でしょうか? めちゃくちゃ気になりますね。
大久保:自分の中では、まだうまく言語ができてないのですが、ゾワゾワっと心が燃えてくるというか、そういうものがほしいですね。
福谷:早く教えてほしいです(笑)!
morich:ワクワクしたりする瞬間はないんですか?
大久保:あります。しかし、ワクワクの度合いもだんだんとハードルが上がってくるのです。0から1を作ることなども、過去に経験したことと同じことをしてもワクワクはしません。今までは「5億円の売上を作る新規事業です」にワクワクしていましたが、今はしないですよ。
morich:もう超えていますからね。
大久保:「さすがに3年で20、30億円ぐらいになるようなビジネスじゃないとやりたくない」というように感じてしまいます。
morich:売上規模ではないとみなさま言いますよね。
大久保:しかし、ある程度の規模でなければ、ワクワクしなくなってくる自分がいます。
morich:影響力みたいなことですかね?
大久保:そうですね。今少し考えているのは、M&Aや株価を上げるという仕事をしながらも、ロジカルじゃないことに取り組みたいです。
ロジカルじゃないと言ったら変ですが、海外進出などはやりたいと思っています。IRでもお話ししているのですが、海外進出したい理由は私のエゴかなと思っています。
morich:まだまだ日本の中で事業をしたほうが安全ということですか?
大久保:それはそうだと思います。しかしある程度、海外に行くリスクも取ったほうがいいかなと思っているのは、自分のエゴだと思いますね。やはりミーハーなのでニューヨークが好きです。
morich:よかった! ミーハーな部分もあったのですね。
大久保:ニューヨークで売上を立てたいというような、ミーハーな部分はあります。
morich:うれしいですね。そのような非連続の成長をしようと思うと、ロジックでは語れないロマンみたいなものはやはり必要だと思います。
大久保:その時々の人生に合わせて、利己と利他のバランス取っていくということだと思うんですよね。今は少し、利己が足りていないと思っています。
(一同笑)
morich:日本でここまで成功して、やはり海外の人々の気持ちをつかむというか、そのような商品作り、ブランド作りをしてほしいですよね。メイドインジャパンで。
大久保:日本のいいものを海外に持って行くことについて、最初はすごくいいなと思ったのですが、途中で「これは作り出していないな」と気づきました。結局、日本のアセットをそのまま外に出しているだけなんです。
morich:そうですね。移植しているだけですもんね。
大久保:例えば、シャインマスカットは、日本のいいものが外に行ったというよりは、シャインマスカットという明らかに世の中が求めているジャンルを作り上げたじゃないですか。結果的に「最初からグローバルだった」というような。
morich:シャインマスカットといえば、グローバルでめちゃくちゃ人気がありますからね。
大久保:いろいろな国に模倣され尽くすぐらいの品種になったわけじゃないですか。それが「日本のいいものを外に出そう」って発想だったら、シャインマスカットは生まれていないと思います。
今は最初からグローバルでヒットするようなものを作ろうという、かなり高い志でプロジェクトに取り組むことを自分に課しています。
morich:MUSCAT GROUPの意味がここでシンクロしましたね。
福谷:完全に腑に落ちましたね。
morich:シャインマスカットを超える、日本発の世界で戦えるブランドですね。
大久保:そうです。最初からそのくらい大きなもの見てやらないと、と思います。
morich:エンタメなどは日本発のものもありますが、もの作りで言うと、アパレルにしても、まだあまり日本発のものはないですね。
大久保:ユニクロなどはすごいですけどね。話は変わりますが、私は日本電産(現ニデック)という会社が好きなんです。
morich:村田製作所に続き、日本電産ですね。もともと理系でいらっしゃいますもんね。
大久保:日本電産は「グローバルニッチ」という概念を持っています。私たちのニッチトップ戦略は「日本のニッチ市場のトップを目指しましょう」ですから、小さいかもしれませんが、実はニューヨークでも同じ概念でニッチトップが存在しています。
ロサンゼルスにもロンドンにもニッチトップがあり、すべてを足し算したら「グローバルニッチ」です。それはマスマーケットぐらいの規模になるわけですね。私も日本でニッチトップのブランド作りをある程度確立させた後は、グローバルニッチのブランドを作ることが1つの目標としてあります。
morich:それは、めちゃくちゃ楽しみですね! 村田製作所も海外売上が8割といわれています。
大久保:積層セラミックコンデンサという実にニッチな部品があるのですが、村田製作所はそのセラミックコンデンサを極め抜いた集団です。
morich:どのスマートフォンにも入っているんですよね。
大久保:ある意味グローバルニッチとして、すべての電化製品に入っているということですね。
morich:もう海外の人も含めて、生活の中でMUSCAT GROUPの何かを身にまとっているようなイメージですね。
大久保:そうです。
福谷:期待しています! まだまだお話を聞きたいのですが、もう1時間経ってしまいました。
morich:「morich AI」 による取材メモが、3ページ中1ページ分しか終わっていません(笑)。今日は本当に大久保社長への興味が強くなりました!今日聞いていただいた方々は、めちゃくちゃおもしろかったと思います。そうすると大久保社長を通してMUSCAT GROUPのファンになるわけですよ。
福谷:なりますね。
大久保:なっていただきたい。
morich:そうするとですね……。
福谷:なんと株価が上がるそうです!
大久保:出来高が大事ですからね。
(一同笑)
morich:実は嬉しいことに、投資家の方も「新morichの部屋」を観てくださっているという話を最近うかがいました。証券コードもお知らせいただくといいかなと思います。
大久保:195A、MUSCAT GROUPです!
福谷:今日もいろいろと深いお話や学びになるお話、夢のお話など盛り沢山でした。
morich:就職活動中の学生もご覧になっていると思います。やはりみなさま「GSはモテる」「GSは収入が高い」などで選んでいるようなところがあると思いますが、そうではないということですね。
大久保:それに、オタク枠がありますから。
(一同笑)
morich:諦めそうになっている人たちには、そこを狙っていってくださいということですね。
大久保:「俺は違うかな」と思っている人たちには「オタク枠で受かった人もいるぞ」「少年野球で、小学校6年間ずっとベンチでもGS行けるぞ」と、ぜひ挑戦していただきたいと思います。
morich:「カッコよくなくてもいけるぞ」と、希望あるメッセージですね(笑)。本当にありがとうございます!
福谷:非常に貴重なお時間をいただきました。本日はお忙しい中お越しいただき、本当にありがとうございました。
大久保:ありがとうございました。
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