大和ハウス工業のニュース
大和ハウス工業、24年度上期実績は増収増益、過去最高を更新 開発物件売却 • 米国戸建住宅事業が好調
2025年3月期 第2四半期 経営説明会 Index
芳井敬一氏(以下、芳井):代表取締役社長CEOの芳井です。資料に沿って進め、決算を含む内容をかいつまんでご説明したいと思います。
成長の軌跡
スライド下部のグラフは我々の歩みです。昨年度の5兆2,029億円まで到達した歩みで、第1次の中期経営計画を立てたスタート年から、このように成長してきました。棒グラフには主だったグループ参画企業を記載しています。
企業価値の向上
主だったM&Aです。こちらも当社を大きく成長させています。
1つは、大和ライフネクストです。当社にグループ入りしてから、約950億円の売上を伸ばしています。フジタも2013年に当社のグループに入り、売上を3,000億円強伸ばしています。
アメリカの3社のうち、Stanley Martin Holdings, LLC(以下、Stanley Martin社)は2017年に当社グループに入っていますが、売上で2,000億円くらい伸ばしています。Trumark Companies, LLC(以下、Trumark社)が入ったのは2020年です。4年で売上を約670億円伸ばしています。CastleRock Communities LLC(以下、CastleRock社)は2021年に入ったのですが、すでに売上を150億円くらい伸ばしています。
M&Aのチームならびに関わった部署の人たちが、現状維持ではなく成長する会社を求め、大和ハウスグループの売上を押し上げてくれていると考えています。
第7次中期経営計画の進捗状況
公表しているとおり、2024年度は売上高5兆3,700億円、営業利益4,400億円の達成を目指しています。そして、第7次中期経営計画の最終年度に当たる2026年度は、売上高5兆5,000億円、営業利益5,000億円の達成を目指しています。
達成への障害があるとすれば、油断、判断の遅れ、自分自身の勇気がなくなってしまうことくらいしか、今のところ考えられません。必ずこれは到達していきます。
売上高5兆3,700億円については、伸びを見れば前倒しで達成できるという気持ちがあり、ゴールそのものを前に持っていきたいと考えています。
2024年度上期実績
今回のハイライトです。前期まで連結子会社であったコスモスイニシアおよび大和リゾートの連結範囲変更により、売上高で600億円近く、営業利益で23億円の減少要因がありました。
このようなことがありながら、実績としては過去最高を更新したことについては非常に満足していますが、まだできることがあったとも考えています。
資本政策・株主還元
今回、配当を145円から147円に上方修正しました。ご承知のとおり、自社株式の取得を実行しているところで、毎月報告している内容になっています。
ポートフォリオ経営の実践
みなさまが最も興味を持たれているところだと思いますが、5ヶ年累計で2兆2,000億円を投資します。この上期が終わった時点が、5年間のちょうど中間地点となります。
進捗率36.3パーセントをどのように見るかについて、私としては順調に進んでいるのではないかと考えています。
新規事業への挑戦~CVC・社内起業制度
「Daiwa Future100」は「人的資本経営とはいったい何なのか?」と問われた時の回答の1つだと思っています。
グループ社員が自分で新しい事業を作って、それに3年間挑戦していくという取り組みがあります。本業から外れて行っていくもので、我々経営サイドでは、経営戦略上、300件から400件の応募があればよいと思っていましたが、結果として約900件集まりました。
現在約60組まで候補が絞られました。この60組のうち何組が合格するかわかりませんが、社外取締役が検討した後、最終的には私を除いた代表取締役が判断することになっています。
彼らは自分の会社を立ち上げて、これから3年間取り組んでいきますので、このようなことが将来の経営者を育てていく大きな軸になるのではないかと考えています。
海外事業 ~業容拡大とポートフォリオ戦略
海外事業についてお話しします。この第7次中期経営計画では、売上高1兆円を目標に掲げています。今年度は8,770億円の計画です。
将来をどのように見ているかということですが、アメリカで3兆円くらいの売上に到達できるのではないかと考えています。また、ヨーロッパで1兆円くらい、アジア、その他で1兆円くらいだと考えています。
当時、樋口会長から「海外は7兆円だ」と言われた答えにはなりませんが、そこまで見据えてきている状況だと考えています。
海外事業 ~米国エリア
東海岸ではStanley Martin社、テキサスではCastleRock社、そして西海岸ではTrumark社、この3社を据えて成長戦略に乗っています。
3社がどのように成長するのか、トランプ政権下で金利が上がってどうなるのか、ということが言われています。どのようにカバーすればよいかは当然、これから課題として出てくると考えています。
海外事業 ~米国エリア(アライアンス社とのシナジー)
スライドには、私どもが35パーセントを出資するAlliance Residential Company(以下、Alliance社)の事業エリアを示しています。我々が今、戸建住宅を展開している会社のエリアと、Alliance社のマルチファミリーのエリアが重なっています。
今後は戸建住宅に加えて、ローン金利が上がっていく時には必ずマルチファミリーが増えていくことになります。そのようなことも含めて、このAlliance社に対して、我々のグループに入って一緒になってくれないか、と思っていました。
Alliance社とのシナジーは、各会社がいずれ1兆円ずつ売り上げていくための、大きな礎になると思っています。
海外事業 ~その他のエリア(非住宅系)
海外の非住宅の部門です。特筆すべきは、すでにコールドチェーンも含め、ワンストップですべて対応できる物流施設を作っていることです。こちらはしっかり進めていきます。
フジタは今、ODA事業に注力しています。ODAをしっかりと行っていけば、海外戦略の非住宅部門も伸びていくと考えています。
リブネス事業
リブネス事業です。第7次中期経営計画では4,000億円を目標にしていますが、2023年で3,500億円という状況です。
戸建住宅や賃貸住宅だけではなく、我々が作ってきた物流施設のような大きな物件もリブネス事業の対象となっています。スライド右側のグラフには2030年代のところに「1兆円規模に」と記載していますが、この目標はかなり早い段階で達成できるのではないかと期待しています。
開発・請負事業
開発・請負事業は今、非常に伸びています。この事業に期待することは、売上高(トップライン)の伸ばし方ですが、今、順調に伸びてきています。
一方で、儲ける力、いわゆる営業利益率をどのように伸ばすのかも大切です。これが一番ROEに効いてくるためです。原価も含めて、しっかりと進めていきたいと思っています。
また、営業利益を上げて応えることが、自分自身はROEを上げていく「一丁目一番地」だと考えています。
複合開発・再開発事業
今まで大型団地を始め、大型の開発をずいぶん行ってきましたが、さらに大規模な九州大学のプロジェクトを、住友商事、その他各社とともに進めていくことになりました。
長期にわたってその場所で仕事ができるため、安定的な受注、ひいては利益が出せると考えています。
ストック事業 ~商業施設・ホテル運営
ホテル事業の展開についてです。スライド右上のグラフのとおり、大和リアルティマネジメントのホテル事業の実績は順調に伸びています。
入居率などが将来、どのようになっているかわかりませんが、今後も商業施設の面積も増やしながら、成果を上げていきたいと思っています。ダイワロイネットホテルで、リゾート型のホテルを含め、2030年には国内外で100施設超の運営を目指しています。
以上、いろいろとお話ししました。私が伝えたいのは「当社は順調ですが、まだまだできる」ということです。
最後に、動画をご覧ください。
(動画が流れる)
こちらの動画は、フジタが実際にケニアで行っている道路事業です。
我々は道路だけではなく、この先に何を作るかを常に考えています。その答えは、データセンターであるかもしれませんし、工業団地であるかもしれません。データセンターの周りに住宅を設けるかもしれませんし、工業団地の周りに設けるかもしれません。または、商業施設の中に工業団地を作るかもしれません。
このようなものを大きなかたちで安定的に行っていきます。ODAと我々の都市開発も含めて、各地で行っていけたらと考えています。
近い未来の話ですが、このようなことがすべてできるグループになっていることが目指すところです。これからもまだ成長し続けたいと思いますので、よろしくお願いします。
質疑応答:ROE改善の施策について
質問者:第7次中期経営計画最終年度の目標として掲げる当期純利益 3,400億円やROE13.0パーセントの達成に向けた考えを教えてください。
芳井:まずは売上高と営業利益を成長させることが重要だと考えています。利益率の面では、7次中計策定時から想定した以上のコストの上昇がありましたが、現場の努力により、コストの上昇影響を最小限に抑えられていると考えています。現在、資材価格が落ち着きつつある点やお客さまの価格転嫁への理解の高まりを鑑みると、今後、利益率を高めていける余地は十分にあると考えています。
次に、資産の回転率を高めていくことも重要と考えています。物流施設は売却が順調に推移し、回転率が高まっている一方、分譲住宅等、他のアセットの回転率はまだ改善の余地が十分にあると考えています。
利益率が伸び悩んでいる部門については、ポートフォリオの入れ替えも選択肢に入れながら、利益率の改善を図っていきます。
ROEの目標達成の手段として、自己株式の取得や配当の実施など、自己資本の圧縮についても検討していきます。
財務の健全性も重要な経営指標であるため、優先順位は低いですが、財務レバレッジを更に効かせていくことも検討していきます。
質疑応答:海外事業への資金投下について
質問者:海外事業について、米国では、今回発表したAlliance社の持分取得などの積極的な事業拡大により、利益成長している一方、他のエリアでは、利益のボラティリティがあるなど、米国と比較し成長率が低い印象です。今後の海外事業拡大に向けたお考えを教えてください。
芳井:ASEANでは、インドネシアの物流施設など、当初計画から売却が遅れている案件はありますが、NOIも順調に回っており、今後の売却に向け、売却先候補であるシンガポールリート等と協議をしていきます。
中国の分譲マンション事業は、現在、常州Ⅲ・蘇州Ⅱの販売を進めており、当初想定していたスピード感ではないものの、常州Ⅲは10月から引渡しが開始となり、販売も少しずつ伸びています。蘇州Ⅱについても建物が竣工すれば、販売が進むと考えています。
欧州では、モジュラー建築の販売拡大に向け、工場に投資し、生産体制を強化しています。
米国における事業ポートフォリオ最適化の観点から、今回Alliance社への出資を通じて、賃貸住宅事業を強化しました。定期的に開催している大和ハウスと米国3社の合同会議に今後Alliance社も参加することで、協業などのチャンスを検討していきたいと考えています。
質疑応答:今後のM&Aの方針について
質問者:今回Alliance社への出資割合は35パーセントとなっており、持分法適用関連会社となる予定です。今後のM&Aにおいても、同様に少数持分を取得することも積極的に検討しますか?
芳井:M&Aにおける出資割合について、当社の今後の成長やリスクを鑑みながら、都度どのような形での出資が最適か検討していきます。
質疑応答:中期経営計画の前倒しと次期中期経営計画について
質問者:7次中計策定当初から事業環境は大きく変化しましたが、約2年残る中計を前倒しで終了し、新たな中計を発表する可能性はありますか?
芳井:6次中計までは、3か年計画で発表していましたが、中計が開始するやいなや次期中計の検討を始めるという非常に慌ただしいスケジュールであったこともあり、この7次中計は5年間で策定しました。
しかし、コロナ影響もありますが、5年という長さによる多少の中だるみは感じています。現中計をどうするかについては、株主のみなさまにご納得いただけるような今後の業績や経営戦略などをしっかり検討した上で、然るべき時が来ましたらお話しします。
質疑応答:M&Aの成功例について
質問者:M&A時に最も重視している点はありますか? また、過去にM&Aをしたグループ会社が、業績拡大を実現できた要因等あれば教えてください。
芳井:M&Aを検討する際に最も重視していることは、いかにお客さまを大切にしているか、ということです。これは創業者が言い続けてきたことでもあります。また成長意欲も重視しています。グループ入り後も、大和ハウスに経営を任せるのではなく、彼ら自らが会社を成長させるという意欲を持ち、成長ストーリーを明確に持っていることも重要なことの1つです。
当社としては、相手先と充分に話し込むことも非常に大切にしています。例えば、米国のStanley Martin社とは、グループ入りするまでに数年かけて対話しています。結果、双方にとって良いM&Aになったと思っています。またCastleRock社のCEOは、グループ入りする前に、Stanley Martin社のCEOと対話したと聞いています。
香曽我部武氏(以下、香曽我部):その他は、企業文化・企業理念の親和性も重要です。M&Aは企業成長の1つの手段だと考えていますので、今後も検討していきます。
質疑応答:投資計画に対する進捗について
質問者:プレゼンテーションの中で、7次中計の不動産開発の投資計画2兆2,000億円に対して進捗は36.3パーセントにとどまっている中、投資自体は順調であるとのことでしたが、その背景と今後の投資の方向性について教えてください。
芳井:最近では、ダブルツリーbyヒルトン大阪城はじめ、借地での開発案件が増えており、足元では関西のデータセンター用の借地案件の検討も新たに進めています。借地料は不動産開発投資の実績には含まれませんが、開発案件は積み上がっており、今後建設投資などが進んでいくと見ています。
山田裕次氏(以下、山田):不動産開発投資の2兆2,000億円には含まれてはいませんが、棚卸資産は想定以上に増えており、特に米国における土地確保のための先行投資が進んでいます。そのため、固定資産と棚卸資産をトータルすると、不動産への投資進捗は決して遅くないと考えています。
質疑応答:中長期的な株主還元のイメージについて
質問者:7次中計でROE13パーセントを達成した後の株主還元の考え方について、中長期の視点で教えてください。
山田:次期中計の還元については、次の中計が将来にわたってどのような位置づけになるかも勘案して考えることになると思います。株主還元については常に意識していますが、将来のビジネスチャンスを見据えて、例えばデータセンター用地を積極的に取得するなど成長投資に資金を充てるという判断もあると思います。
次期中計を考える中で、中長期の視点で成長投資と株主還元のバランスを議論していきます。
質疑応答:物流施設への投資スタンスについて
質問者:物流施設のリーシングが難しくなっているという報道もある中、御社の新たな物流施設開発への投資のスタンスはいかがでしょうか。また、現在取り組んでいる冷凍冷蔵倉庫やデータセンターの今後の成長性についても教えてください。
芳井:ゼネコンの確保等の問題により、新たな物流施設用地の取得を検討するプレーヤーは以前より少なくなっている印象があります。当社はグループ会社にゼネコンのフジタがいる強みもありますので、成長機会を逃さぬよう、引き続き、良いと判断した案件には積極的に投資していきます。
冷凍冷蔵の物流については、当社グループの若松梱包運輸倉庫が強みを持っており、彼らの力が活かせると考えています。直近では、大阪の南港での開発を始めましたが、冷凍冷蔵機能を備えた物流施設への需要の高まりを確認しておりますので、期待している分野です。
データセンターについては、用地の確保や行政との打ち合わせ、という点が物流施設と大きく違います。また、電力確保の問題もクリアできれば、相当数の引き合いをいただけると見ています。データセンターは約5兆円から6兆円もの市場規模がありますので、専門部署を作り、強化していきたい考えです。
質疑応答:D/Eレシオの水準について
質問者:ROE13パーセント達成への手段として、レバレッジを上げることも検討するという話がありましたが、ビジネスモデルが変わってきている中で、D/Eレシオの水準の検討状況について教えてください。
香曽我部:D/Eレシオは、企業の財務健全性を見る重要な指標として、当社が設定しているわけですが、当社のビジネススキームは、以前の請負事業中心から大きく変わってきています。ですから、現在のAA格を維持していくために、格付会社に対しては、先行投資が必要となる分譲事業の比率が徐々に高まっていることや、今後の成長に向け積極的な不動産開発投資を進めていること等を丁寧に説明しています。
今後については、次期中計を検討していく中で、財務部門も交えて、適正なD/Eレシオの水準を検討していきます。
質疑応答:リブネス事業の業績について
質問者:リブネス事業について、2030年代までに売上高1兆円規模に成長させる道筋を教えてください。また、リブネス事業は幅広い事業領域で展開していますが、利益率の足元の状況と今後の見通しを教えてください。
芳井:リブネス事業はこれまで、戸建住宅・賃貸住宅・マンションなど住宅系が中心になっていましたが、足元大きく成長しているのは流通店舗系です。テナントが入居されている建物の賃貸借契約が満期を迎え、事業規模に合わせて建物を変えるといったケースもあります。
例えばドラッグストアでいえば、従来から業容が大きく変わり、幅広い商品を取り扱うようになったことで、より広い面積が求められるようになりました。そのような変化に当社が関与し、店舗の建替えやリノベーションなど手掛けていきたいと考えています。
また、今後大型の商業施設を買い取り、バリューアップ工事やリーシングをして再販するといった案件も増えてくると売上高は更に伸びていくと見ており、1兆円規模になるのは2030年代より早く達成できるのではないかと期待しています。
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