中国発“ブラック・マンデー”の真相は【ミンスキー・モーメント】にあり

著者:津田隆光
投稿:2015/08/27 18:44

中国の“真の”第2四半期GDPは・・・-3%!?

週初、世界中のマーケットに激震を与えた“チャイナ・ショック”。
中国共産党機関紙と言える新華社が、今週24日のフラッシュ・クラッシュ相場を正式に“ブラック・マンデー”と命名しましたが、その背景には今回発生した資産価格の瞬間崩落が中国発であるとの“汚点”を出来るだけ隠蔽し、要因は他にあるとの思惑(責任転嫁?) が見え隠れします。
俯瞰的に世界経済を見渡してみると、この見解はあながち明後日の方向を向いているものでもなく、後述する金融経済のライフサイクルでは起こるべくして起こった現象とも言えますが、やはり昨今の中国経済の不安定さは否定しようのない事実。

先週の当コラムにおいても、中国経済の実態をほぼ正確に表していると言われている国内電力消費量と銅価格の動向について言及しましたが、裏を返せば当局発表数値の信憑性は限りなく低く、直言すると「羊頭狗肉」モノと言っていいほど。

例えば、中国の失業率(中国の正式名称は「登記失業率」)は、2003年のデータ公表以降(2008年のリーマン・ショックを挟んでも)不動の4.1%前後、また先月15日に発表された第2四半期GDPは見事に前回値と同じ7.0%。(事前予想は6.8%)
そもそもですが、GDP数値は輸入の伸び率とシンクロするのが一般的見方ですが、中国の今年1月から7月までの輸入伸び率実績は前年比14%減であるにも関わらず、正の関係にあるGDPだけが第1四半期と変わらずということ自体摩訶不思議な世界。
一説には中国第2四半期GDPはリーマン・ショック後の米国同様-3%程度では?とも言われている中、今後も中国の公式発表数値に対する不信感がマーケット変動要因の一つとなりそうです。

今般のフラッシュ・クラッシュは金融経済ライフサイクルの“一瞬間”?

そんな中、中国経済の低迷・混乱のみが世界的パニック相場のA級戦犯とされているような感がありますが、景気循環理論から判断すれば、【ミンスキー・モーメント】の一要素と捉えることも可能です。

【ミンスキー・モーメント】とは、「長い繁栄と借金による投機を促す投資価値増大の後にやって来る現象」のことで、いわば金融中心の経済におけるライフサイクルの“一瞬間”のこと。

そのサイクルを見てみると、好調な経済環境下でリスクを積み増しした投資家に何らかのショックが襲い掛かり、慌てふためいた投資家が資産を売却→資産価格の暴落(=ここが“チャイナ・ショック”?)→投資家の債務超過・破産→投資家に融資していた銀行の破綻→中央銀行による銀行救済(=ここが【ミンスキー・モーメント】)→安定経済回復に伴う投資家のリスクテイク復活・・・という循環。(中国においては、「銀行」部分が「シャドー・バンキング」に当たるという見方も・・・。) 

いずれにしても、今回の“チャイナ・ショック”は金融経済サイクルの中間地点における事象という認識を持ちつつ、エクスポージャー(リスク資産)の縮小やキャッシュポジション(余剰資金)の積み増しこそが資産防衛の一丁目一番地と考えますが、いかがでしょうか?
津田隆光
マネースクエア チーフマーケットアドバイザー
配信元: 達人の予想