*11:37JST ヤマノHD Research Memo(7):2027年3月期に既存事業で売上高145億円、EBITDA4億円を計画
■中長期の成長戦略
1. 成長戦略の枠組み
ヤマノホールディングス<7571>の成長戦略は、2030年ビジョン「従業員が投資したくなる会社へ」の実現に向けて、2段階の中期経営計画として構築されている点に特徴がある。2025年3月期から2027年3月期までを「つなげる」をテーマとする第1フェーズ、2028年3月期から2030年3月期までを「ひろげる」をテーマとした第2フェーズと位置付けている。
前半の「つなげる」フェーズでは、将来の成長を可能にするための経営基盤の強化を最優先課題としている。具体的には、「人財」「事業」「資本」の3つの側面から改革を進め、人的資本を起点とするGoodサイクルを確立することで、持続的成長の土台を固める段階と位置付けられている。
一方、後半の「ひろげる」フェーズでは、この基盤を前提として、事業承継型M&Aの加速、新規事業領域の拡張、事業ポートフォリオの高度化を通じて、成長スピードを引き上げる構想である。同社の成長戦略は、短期的な規模拡大ではなく、基盤構築→成長加速という時間軸を明確に意識した段階的アプローチを採用している点に戦略的合理性がある。
2. 「中期経営計画-Tsunageru2027」の重点取り組み
「中期経営計画-Tsunageru2027」において、同社は以下の3つを重点取り組みとして掲げている。
第1は、「事業ポートフォリオの最適化」である。従来の「既存事業の収益安定化」という枠組みから一歩踏み込み、コアバリューとニューバリューの役割分担を明確にしたポートフォリオマネジメントを進めている。コアバリューセグメントでは、美容事業や和装宝飾事業を中心に、構造改革や業務改善を通じて利益体質の強化を図っており、店舗運営の生産性向上、販売プロセスの見える化、DXによる間接業務の効率化、不採算領域の整理などが着実に進展している。一方、ニューバリューセグメントでは、M&Aによる成長投資を通じて事業領域の拡大を図っており、教育事業、リユース事業、フォト事業といった新領域が収益基盤として育成されつつある。2026年3月期中間期は、「コアで稼ぎ、ニューバリューで育てる」という戦略が、実績面にも表れ始めた局面と評価できる。
第2は「人的資本をより活かす経営」である。M&Aを通じて多様なバックグラウンドを持つ人財が集積している同社において、その多様性を単なる人員の集合体にとどめず、競争力へと転換することが最大の課題であるとの認識に立っている。この方針の下、インナーブランディングの強化、グループ横断でのCHRO機能の整備、人事評価制度や育成体系の見直しを進め、個々の能力が有機的につながる組織への転換を図っている。2026年3月期中間期においては、階層別のスキル可視化を通じて社員一人ひとりの強みや課題を明確化するとともに、研修制度の強化を実行し、社員の成長と組織力の底上げを推進した。これにより、人的資本経営は構想段階にとどまらず、既に実行フェーズに入っている点が確認できる。
第3は「資本コストや株価を意識した経営」である。同社は、ROEが株主資本コストを安定的に上回る状態を実現することを明確な経営目標に据え、収益性の改善、資本効率の向上、IR活動の強化を一体で進めている。2026年3月期中間期においては、機関投資家との対話を積極的に行い、経営方針や中期経営計画に対する市場の受け止め方を把握するとともに、そのフィードバックを経営戦略の検討に活用している。これは、事業運営と資本市場対応を切り離さず、経営判断の軸に資本市場の視点を組み込む姿勢をより一段と明確にした動きと言える。
このように、「Tsunageru2027」に掲げた重点取り組みは、2026年3月期中間期時点で既に具体的な成果を伴いながら進捗しており、人的資本、事業ポートフォリオ、資本市場対応の三位一体での改革が、同社の成長基盤を着実に強化している段階にある。
3. 定量目標
同社は「Tsunageru2027」において、利益指標としてEBITDAを重視し、既存事業とM&Aの両輪による成長を掲げている。
2027年3月期の目標として、既存事業では売上高145億円、EBITDA4億円を計画しており、売上高の年平均成長率1.6%に対し、EBITDAは年平均22.2%成長を見込む。これは、規模拡大よりも収益性改善を優先する姿勢を明確に示すものである。M&Aについては、売上高30~40億円、EBITDA3~4億円規模の積み上げを計画している。
財務目標としては、2027年3月期にEBITDAマージン5.0%以上、ROE15.0%、エクイティスプレッド7.0%以上、PBR2.5倍以上を掲げており、事業収益力の向上と資本市場からの評価向上を同時に実現する構想である。なお、PBR2.5倍以上は既に達成している。
総じて同社の成長戦略は、人的資本を起点とした基盤強化を経て、事業承継型M&Aを成長エンジンとして拡張していく2段階モデルであり、安定性と成長性を両立させる設計となっている点に特徴がある。
■株主還元策
配当に配慮しつつ成長投資を推進し、時価総額100億円を目指す
1. 配当方針
安定的かつ継続した株式配当を基本としつつも、それを最優先とするものではなく、成長投資とのバランスを意識しながら実行する姿勢が明確である点に特徴がある。
実際の配当実績を見ると、2022年3月期は1.0円、2023年3月期は1.5円の配当を実施した一方、2024年3月期は業績低迷を受けて無配とし、その後、2025年3月期には1.0円へと復配している。2026年3月期については1.5円の配当を予定しており、業績回復に応じて段階的に株主還元を再開・拡充する姿勢がうかがえる。配当性向は年度ごとに振れが大きいものの、これは同社が形式的な配当政策よりも、実態としての収益力や投資余力を重視していることの表れと言える。
2. 時価総額100億円超えに向けた成長シナリオ
同社が株主還元において第一義としているのは、配当そのものではなく、業績向上を通じた企業価値の向上である。中期経営計画においても、事業ポートフォリオの最適化、人的資本への投資、事業承継型M&Aの推進といった成長投資を優先課題として掲げており、配当はそれらの成果が着実に積み上がった先で実施するという位置付けが明確である。
このようなスタンスは、短期的な利回りを追求する株主にとっては物足りなさが残る可能性がある一方で、中長期的な企業価値の拡大を志向する投資家にとっては合理的な選択と評価できる。特に同社は現在、収益構造の改善と成長軌道への回帰という転換期にあり、内部留保を活用した投資が企業価値向上に直結しやすい局面にある。
中期経営計画策定時に掲げていたPBR目標を既に達成している現状を踏まえ、当面は時価総額100億円の達成を重要なマイルストーンとして掲げ、その成長シナリオとして中期経営計画の着実な実行を最優先している段階である。収益性の改善が進み、EBITDAやROEといった指標が計画どおりに推移すれば、結果として株価上昇を通じた株主価値の向上が期待できる。
このように、同社の株主還元方針は、配当を意識しつつ、成長投資を通じた企業価値向上を第一義とする戦略的なスタンスであり、その進捗が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
<HN>
1. 成長戦略の枠組み
ヤマノホールディングス<7571>の成長戦略は、2030年ビジョン「従業員が投資したくなる会社へ」の実現に向けて、2段階の中期経営計画として構築されている点に特徴がある。2025年3月期から2027年3月期までを「つなげる」をテーマとする第1フェーズ、2028年3月期から2030年3月期までを「ひろげる」をテーマとした第2フェーズと位置付けている。
前半の「つなげる」フェーズでは、将来の成長を可能にするための経営基盤の強化を最優先課題としている。具体的には、「人財」「事業」「資本」の3つの側面から改革を進め、人的資本を起点とするGoodサイクルを確立することで、持続的成長の土台を固める段階と位置付けられている。
一方、後半の「ひろげる」フェーズでは、この基盤を前提として、事業承継型M&Aの加速、新規事業領域の拡張、事業ポートフォリオの高度化を通じて、成長スピードを引き上げる構想である。同社の成長戦略は、短期的な規模拡大ではなく、基盤構築→成長加速という時間軸を明確に意識した段階的アプローチを採用している点に戦略的合理性がある。
2. 「中期経営計画-Tsunageru2027」の重点取り組み
「中期経営計画-Tsunageru2027」において、同社は以下の3つを重点取り組みとして掲げている。
第1は、「事業ポートフォリオの最適化」である。従来の「既存事業の収益安定化」という枠組みから一歩踏み込み、コアバリューとニューバリューの役割分担を明確にしたポートフォリオマネジメントを進めている。コアバリューセグメントでは、美容事業や和装宝飾事業を中心に、構造改革や業務改善を通じて利益体質の強化を図っており、店舗運営の生産性向上、販売プロセスの見える化、DXによる間接業務の効率化、不採算領域の整理などが着実に進展している。一方、ニューバリューセグメントでは、M&Aによる成長投資を通じて事業領域の拡大を図っており、教育事業、リユース事業、フォト事業といった新領域が収益基盤として育成されつつある。2026年3月期中間期は、「コアで稼ぎ、ニューバリューで育てる」という戦略が、実績面にも表れ始めた局面と評価できる。
第2は「人的資本をより活かす経営」である。M&Aを通じて多様なバックグラウンドを持つ人財が集積している同社において、その多様性を単なる人員の集合体にとどめず、競争力へと転換することが最大の課題であるとの認識に立っている。この方針の下、インナーブランディングの強化、グループ横断でのCHRO機能の整備、人事評価制度や育成体系の見直しを進め、個々の能力が有機的につながる組織への転換を図っている。2026年3月期中間期においては、階層別のスキル可視化を通じて社員一人ひとりの強みや課題を明確化するとともに、研修制度の強化を実行し、社員の成長と組織力の底上げを推進した。これにより、人的資本経営は構想段階にとどまらず、既に実行フェーズに入っている点が確認できる。
第3は「資本コストや株価を意識した経営」である。同社は、ROEが株主資本コストを安定的に上回る状態を実現することを明確な経営目標に据え、収益性の改善、資本効率の向上、IR活動の強化を一体で進めている。2026年3月期中間期においては、機関投資家との対話を積極的に行い、経営方針や中期経営計画に対する市場の受け止め方を把握するとともに、そのフィードバックを経営戦略の検討に活用している。これは、事業運営と資本市場対応を切り離さず、経営判断の軸に資本市場の視点を組み込む姿勢をより一段と明確にした動きと言える。
このように、「Tsunageru2027」に掲げた重点取り組みは、2026年3月期中間期時点で既に具体的な成果を伴いながら進捗しており、人的資本、事業ポートフォリオ、資本市場対応の三位一体での改革が、同社の成長基盤を着実に強化している段階にある。
3. 定量目標
同社は「Tsunageru2027」において、利益指標としてEBITDAを重視し、既存事業とM&Aの両輪による成長を掲げている。
2027年3月期の目標として、既存事業では売上高145億円、EBITDA4億円を計画しており、売上高の年平均成長率1.6%に対し、EBITDAは年平均22.2%成長を見込む。これは、規模拡大よりも収益性改善を優先する姿勢を明確に示すものである。M&Aについては、売上高30~40億円、EBITDA3~4億円規模の積み上げを計画している。
財務目標としては、2027年3月期にEBITDAマージン5.0%以上、ROE15.0%、エクイティスプレッド7.0%以上、PBR2.5倍以上を掲げており、事業収益力の向上と資本市場からの評価向上を同時に実現する構想である。なお、PBR2.5倍以上は既に達成している。
総じて同社の成長戦略は、人的資本を起点とした基盤強化を経て、事業承継型M&Aを成長エンジンとして拡張していく2段階モデルであり、安定性と成長性を両立させる設計となっている点に特徴がある。
■株主還元策
配当に配慮しつつ成長投資を推進し、時価総額100億円を目指す
1. 配当方針
安定的かつ継続した株式配当を基本としつつも、それを最優先とするものではなく、成長投資とのバランスを意識しながら実行する姿勢が明確である点に特徴がある。
実際の配当実績を見ると、2022年3月期は1.0円、2023年3月期は1.5円の配当を実施した一方、2024年3月期は業績低迷を受けて無配とし、その後、2025年3月期には1.0円へと復配している。2026年3月期については1.5円の配当を予定しており、業績回復に応じて段階的に株主還元を再開・拡充する姿勢がうかがえる。配当性向は年度ごとに振れが大きいものの、これは同社が形式的な配当政策よりも、実態としての収益力や投資余力を重視していることの表れと言える。
2. 時価総額100億円超えに向けた成長シナリオ
同社が株主還元において第一義としているのは、配当そのものではなく、業績向上を通じた企業価値の向上である。中期経営計画においても、事業ポートフォリオの最適化、人的資本への投資、事業承継型M&Aの推進といった成長投資を優先課題として掲げており、配当はそれらの成果が着実に積み上がった先で実施するという位置付けが明確である。
このようなスタンスは、短期的な利回りを追求する株主にとっては物足りなさが残る可能性がある一方で、中長期的な企業価値の拡大を志向する投資家にとっては合理的な選択と評価できる。特に同社は現在、収益構造の改善と成長軌道への回帰という転換期にあり、内部留保を活用した投資が企業価値向上に直結しやすい局面にある。
中期経営計画策定時に掲げていたPBR目標を既に達成している現状を踏まえ、当面は時価総額100億円の達成を重要なマイルストーンとして掲げ、その成長シナリオとして中期経営計画の着実な実行を最優先している段階である。収益性の改善が進み、EBITDAやROEといった指標が計画どおりに推移すれば、結果として株価上昇を通じた株主価値の向上が期待できる。
このように、同社の株主還元方針は、配当を意識しつつ、成長投資を通じた企業価値向上を第一義とする戦略的なスタンスであり、その進捗が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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