アステリア、ノーコードソフトでIT人材不足を解決 AI活用・ステーブルコイン対応など新技術にも注力
アステリア株式会社

平野洋一郎氏(以下、平野):みなさま、こんにちは。代表取締役社長/CEOの平野洋一郎です。私から、アステリアの会社説明をいたします。
アステリアは企業向けのソフトウェアメーカーで、1998年に創業しました。現在は東証プライム市場に上場しており、上場企業の中では非常に小さく、コンパクトであることが大きな特徴です。従業員は連結で140名と、少数精鋭のチームとなっています。
そのチームで何をしているかというと、スライドのソフトウェアをプロダクトとして開発し、世の中に届けています。特に、先端領域の技術を一般の企業や人々が使えるかたちで提供しているのが私たちです。
取り組んでいる業界は、ノーコード、ブロックチェーン、ウェルビーイングなど、いずれも先端の領域となっています。
代表取締役社長/CEO 平野洋一郎

平野:私個人について少しご説明します。熊本県出身で、もともと工学部で学び、エンジニアとしてのキャリアをスタートしました。その後、マーケティングを学び、現在のアステリア(当時:インフォテリア)を創業しました。
もともとみかん農家の長男ですが、現在はIT企業の代表を務めています。また、京都大学のMBAコースで、特命教授として教鞭をとっています。
上場(2007年)からの推移

平野:アステリアについてご説明します。当社は2007年に上場し、ソフトウェア事業として多様な製品を展開し、成長を続けてきました。2018年には東証一部に上場し、現在はプライム市場に位置しています。
ソフトウェア事業の売上は、昨年度30億円を突破しました。今年度は35億円を目指し、10パーセントの成長を計画しています。スライドのグラフに一部灰色の部分がありますが、これは以前に手がけていたデザイン事業を指しており、現在では売却済みです。
米国の上場株式に投資していた件については、上場後に株価が大きく下落し、当社の財務状態と業績に大きな影響を与えました。過去2年間赤字が続いた要因の1つですが、現在はその株式を売却完了しており、影響は解消されています。
直近の株価推移(7〜11月)

平野:直近のトピックとしては、株価の推移が挙げられます。この8月に、日本円建てステーブルコインである「JPYC」が金融庁の認定を受けました。当社は、JPYCの株主であるため、その影響もあり、大きな注目を集めました。
ただし、この株価の推移がJPYCの影響だけによるものかというと、そうではありません。スライドにあるとおり、当社がいくつもの新しい展開を行い、それが注目され評価された結果だと認識しています。
ビジネスの特徴

平野:私たちはソフトウェアメーカーであり、世界を目指す企業向けの製品を提供していることが特徴です。
「メーカー」という言葉には、私たちの特別な思いが込められています。それは、受託開発を一切行っていないということです。ソフトウェア製品を持ちながらも、受託開発の割合が半分以上を占める企業は多く、日本では受託開発がほとんどという企業も非常に多いのが現状です。
私たちは受託開発を行わないからこそ、売上総利益率が非常に高い、つまり粗利が高いという状況を実現しています。
IT業界の中のソフト開発の中の製品開発

平野:全体像からご説明します。IT業界には、ハードウェア、ソフトウェア、通信インフラなど、さまざまな分野がありますが、当社はその中でソフトウェア領域に位置しています。
重要な点として、ソフトウェアの中にも2種類の業態があるということです。当社は、先ほどお伝えしたように製品開発を行っていますが、日本の多くのソフトウェア開発企業は受託開発で売上を上げているという現状です。

平野:製品開発と受託開発の違いについてです。製品開発は、アステリアが行っている事業です。受託開発は、注文書を受け、その内容に基づいて開発を行い、注文を受けた会社に完成品を納めるという形態です。
製品開発とは、注文書を受け取ることなく自ら考え、設計し、開発を行い、完成したものを世の中に向けて「いかがでしょうか」と提供することを指します。

平野:同じソフトウェア開発でも、大きくモデルが異なります。みなさまがよくご存じの世界的な企業の多くは、製品開発を主としています。例えば、Google、Apple、OpenAI、Microsoft、Oracleなどが挙げられます。
一方で、受託開発を行う企業は日本に多く存在し、「○○システムズ」や「○○ソリューションズ」「○○データ」のような社名が付いていることが多いです。
製品開発 (ソフトウェアメーカー) と受託開発の違い

平野:この2つをビジネスモデルとして図に表すと、スライドのようになります。製品開発は、注文書がない段階でも開発を始めます。当然ながら、製品開発には1桁億円から2桁億円の資金が必要ですが、注文がない状態でまず開発を進めます。
そして、製品を市場に出しても、その開発にかかった金額で販売するわけではありません。例えば、私たちの主力製品である「ASTERIA Warp」は、開発に20億円を投じました。しかし、その20億円に利益を上乗せして、22億円で「ASTERIA Warp」を売るわけではなく、1本500万円で販売しています。
つまり、1本から10本程度ではまったく元が取れません。このように、製品開発は多くの製品を販売することで、利益を創出するというモデルです。重要なのは、損益分岐点を超えた後です。
スライドのグラフにもあるように、損益分岐点を超えることで、利益額だけでなく利益率も向上します。なぜなら、追加の開発が不要になるためです。
一方、受託開発では、注文書を受けて開発・納品し、再び注文書に基づいて開発・納品するというかたちになります。この形式では、どれだけ案件数を増やしても、利益率が上がることはありません。各案件が個別に依存しているためで、スケーラビリティ、つまり多方面への拡張性を確保するのが非常に難しいからです。
なお、当社の製品開発による「ASTERIA Warp」はすでに1万社以上で使用されており、粗利率は9割以上を実現している製品です。
IT人材不足は「人材育成」では追いつかない

平野:私たちの事業概要と製品についてご説明します。その背景として触れておきたいのが、IT人材不足です。IT人材不足といえば、世の中ではさまざまな分野で人材不足が指摘されています。
さまざまな産業の人材不足を解消するために、デジタル化やDXといった取り組みが進められていますが、それを実施するためのIT人材も不足しているのが現状です。ただし、これは今に始まったことではありません。
私たちが事業を開始した1998年の時点でも、今後5年でIT人材が20万人不足すると指摘されていました。このため、政府は不足するIT人材対策として新たな施策「ITコーディネーター制度」をスタートさせ、現在でも取り組みが続いています。
現状について、経済産業省のデータによると、2030年にはIT人材が41万人から79万人不足するという予測が出ています。このように、不足がまったく解消されていない状況です。人材育成の取り組みでは、現状の需要にはとても追いついていないということです。
現在、文部科学省は小学生からのプログラミング教育を導入し、大人にもリスキリングを通じて新たなIT知識を提供していますが、現時点では目標を達成するにはほど遠い状況です。
ノーコードはIT人材不足の救世主

平野:そこで、私たちが取り組んでいるのがノーコードです。ノーコードとは、エンジニアやIT人材でなくてもコンピューターを動かせる技術を指します。
スライドの「ノーコード」の左側に黒い四角を掲載していますが、これをよく見るとプログラムが書かれています。通常、コンピューターを動かすにはこのようなプログラムを何千行、何万行と記述して動作させる必要がありますが、ノーコードはそのプログラム(コード)が不要という点が特徴です。
コードが不要なため、IT技術者でなくてもシステム開発が可能になります。この技術は、日本全国のあらゆる産業で進むデジタル化やDXが、IT人材不足により進まないという課題に対する救世主としての解決策であると考えています。
ノーコードとは、プログラム不要になる技術革新

平野:当社の製品を用いて、実際の動きをご説明します。スライド右上のフローチャートは、当社の主力製品「ASTERIA Warp」を示しています。このフローチャートを用いて設定を行うと、データ連携がそのまま動作する仕組みです。
この製品は設計図としてではなく、設計した内容がそのまま動作する点が特長であり、ノーコードの仕組みとなっています。つまり、1行もコードを書く必要がありません。
スライド右下の「Platio」は、ノーコードでアプリ開発を行う製品です。この製品では、アプリの画面を作成し、データを設定するだけで、アプリの生成から配布までを実現することが可能です。
いろいろな企業がこの方法を利用することで、業務用アプリを3日間、もしくは3日以内で作成することができています。
エンジニアではなくてもシステム構築が可能

平野:ノーコードは、専門的な知識がなくても利用できる点が特徴です。また、特定のエンジニアに依存せず、属人化しない仕組みです。現場の人たちが即座に作成したり、変更したりすることが可能です。
スライドには、3名の事例が記載されています。左側は、中小企業の社長で、ITの経験がまったくない方です。中央は、京セラの入社2年目の社員で、倉庫に配属され、現場のアプリを作成されました。現在、このアプリは全国で活用されています。
右側は、リサイクル工場の工場長です。この方もITの経験がまったくありませんが、工場で使用するアプリを作成しました。このほかにも、多くの事例があります。
「ノーコード」かつ「つなぐ」ソフトウェア

平野:「ASTERIA Warp」と「Platio」をご紹介しましたが、それ以外にも4つの製品ファミリーを展開しています。
「Handbook」は次世代型の情報共有の仕組み、「Gravio」「AIoT Suite」はAI及びIoTのデータ連携を行う製品です。「Artefacts」はこれから必要となるロボットの開発検証を支援する製品です。「Click」は、Windows、iOS、Androidのネイティブアプリを開発可能な製品です。
この度、アステリアでは日経コンピュータの顧客満足度調査において「業務効率化・内製支援ソフト/サービス」部門でNo.1を獲得しました。
ソフトウェア データ連携ツール「ASTERIA Warp」モバイルアプリ作成ツール「Platio」

平野:先ほど「ASTERIA Warp」と「Platio」についてご説明しました。これらは実際に何をするものかというと、システム間のデータ連携を行うのが「ASTERIA Warp」です。そして、先ほどもお伝えしたように、アプリを外注することなく自分で作成できるのが「Platio」です。
Warp 導入企業は10,000社以上(一例)

平野:「ASTERIA Warp」は、すでに導入企業が1万社を超えています。「ASTERIA Warp」については、100パーセント代理店経由で販売しており、スライドの緑色の枠内にある代理店が該当します。こちらには、みなさまもご存知の企業が多数含まれているかと思います。
顧客は1万社を超えていますが、その中の一部をピックアップしています。上場企業であれば、かなりの確率で「ASTERIA Warp」をデータ連携に利用しており、現在では中堅企業や中小企業にもユーザー層を拡大しているところです。
Warp あらゆる業界で様々なシステムを連携

平野:事例はかなり多くあります。ぜひWebサイトをご覧いただければと思いますが、あらゆる業界で事例が見られます。最近では、日本郵船が開発工数を6分の1に削減しました。京セラは年間で1,400時間の工数を削減し、「kintone」とつなげました。JR九州システムソリューションズは、人事DXを実現した事例などがあります。
Platio 幅広い業界に採用事例が拡大

平野:「Platio」も幅広い業界に採用事例が拡大しています。自治体、小売業、運輸・物流業、製造業、建設業、情報通信業、宿泊業など、幅広い業界とその現場で利用されています。大きなシステムではなく、現場で使われていることが「Platio」の特徴です。
Platio 様々な業界で現場のDXに貢献

平野:自治体の事例です。熊本県に小国町という町があります。こちらの森林組合では、以前は立ち会いによる入札が行われていましたが、それをPlatioによりスマホ上で可能にしました。スマホで可能になれば、リモートでも対応できるようになります。
鳥取県のLIMNOという企業は、工場を持ちながら、現場主導でアプリを次々に開発しています。これまでに70個ものアプリを作成しており、「第2回 日本ノーコード大賞」で大賞を受賞されています。
最近の例では、大阪・関西万博があります。清掃業務をダスキンが請け負っていますが、そのアプリをシーバイエスが「Platio One」を使用して作成しました。このような事例も多数あります。
ソフトウェア デジタル収納アプリ「Handbook X」ノーコードAI/IoTプラットフォーム「Gravio」

平野:3つ目、4つ目の製品をご紹介します。「Handbook X」は、さまざまなデジタルメディアをワンストップで1カ所に集めて閲覧や共有ができる、自律・分散・協調時代の情報共有ツールです。
さらに、これから到来するAIとIoTが融合したフィジカルAIと呼ばれる領域において、「Gravio」があらゆるものをつなぐことを実現しています。
アステリアの目指すこと

平野:ここまでお話ししてきましたが、気づかれた方はいらっしゃいますでしょうか? 私たちは「ノーコード」というテーマを挙げましたが、もう1つのテーマとして「つなぐ」ということがあります。
すべての製品が、なんらかのものをつなぐ役割を果たしています。そして、私たちの社名アステリアもつなぐという理念に由来しています。アステリアとは、ギリシャ語で星座という意味です。私たちは「つなぐ」ということをミッションとしています。
それを考えた時、人間にとって最も大きな「つなぐ」とは、星をつなぐことだという結論に至り、社名に星座を選びました。ギリシャ語で「アステリア」と呼び、そのような思いを持って、製品の開発・販売を行っています。
川合直也氏(以下、川合):「ASTERIA Warp」に関して教えてください。例えば、JR九州システムソリューションズのケースでいうと、人事データを連携させるのは「ASTERIA Warp」を使用しないとかなり難しいものなのでしょうか?
平野:大変な工数がかかるということです。ノーコードですので、コードを書く必要はありませんが、人事データを他のシステムとつなげる場合は、もし「ASTERIA Warp」を使わずに行うと、何千行、何万行のコーディングが必要となるため、数ヶ月の時間や多くの費用がかかることになります。

川合:スライドの図には「SmartHR」があり、それ以外にも人事データを連携するシステムがあるようです。これらを連携するために「ASTERIA Warp」が使用されるという理解でよろしいでしょうか?
平野:おっしゃるとおりです。
川合:同じデータが入力されるべき部分については、それをつなげていくというイメージでしょうか?
平野:おっしゃるとおりです。例えば、人事データの一部を営業の報告データに活用したり、工場管理データに使用したりすることが行われるわけです。
ステーブルコインとは?

平野:最近のトピックについてご説明します。「ステーブルコイン」がキーワードとなっています。「Stable(ステーブル)」という言葉について、日本ではまだ一般的にカタカナ表記で浸透していませんが、ステーブルとは「安定している」という意味です。
ステーブルコインは「安定しているコイン」、もう少し具体的に言うと、価格が法定通貨に対して安定しているデジタルコインを指します。私たちは、この分野に対して早い段階から取り組んでいました。

平野:ステーブルコインとは、みなさまご存知の暗号資産(仮想通貨)の値動きが非常に激しい中で、価格が安定しているデジタル通貨のことを指します。スライド左側に表示しているのは、「ビットコイン」の直近1年間の推移です。暗号資産は、このように値動きが激しい特徴があります。
一方、安定したステーブルコインについては、スライド右側をご覧ください。こちらは、つい先頃発行された「JPYC」で、1年間を見ても価格が安定していることがわかります。この安定性の理由は、法定通貨に対してその価値が保障されているためです。
このように、法定通貨に対して価格が安定しているデジタルコインがステーブルコインです。
ステーブルコイン経済圏は急拡大

平野:ステーブルコインは、日本では始まったばかりですが、アメリカのUSドル経済圏ではすでに3,000億ドルの市場があると考えられています。今後5年後には、市場規模が1兆9,000億ドルから4兆ドルまで成長するとされています。
スライドは、Citigroupのデータですが、このほかの予想でも似たような数字が出ており、中にはこれより大きな数字を示すものもあります。
この世界において、USドル建ての市場は現時点で99パーセントを占めていますが、今後日本円建ての市場が形成された場合、どのように変化するかが注目されています。多くの予測では、約10パーセントが日本円建てになるだろうとされています。
Citigroupのデータによれば、その10パーセントは円換算で285兆円から600兆円に相当し、「JPYC」がその規模で発行・流通することになると予想されています。この新しく非常に大きな経済圏において、アステリアは、この流れを企業と個人の両方で受け止めていく唯一の日本企業となります。
ステーブルコインの歴史とアステリア

平野:今回の件で、急にステーブルコインというものを知った方も多いのではないかと思います。アステリアは、2017年からステーブルコインに取り組んでおり、JPYCの社長である岡部氏と協力し、日本で最初のステーブルコインの実証実験を行いました。
その際、発行したのは「JPYC」ではなく「JPYZ」で、実際に流通させることも実現しました。このコインは、金融庁のホワイトリストにも登録されていました。こうした実験を踏まえ、2020年に私が代表理事を務めるブロックチェーン推進協会(BCCC)でステーブルコイン部会を設立しました。
その後、岡部さんがJPYCという会社を設立され、私たちはこれに出資し、現在も株主となっています。その後、資金決済法がようやく改正され、ステーブルコインが法律上認定されました。
これを踏まえ、私たちは「ステーブルコインの日」の制定を行い、今年に入り「JPYC」が承認第1号となりました。
米国の動きはスライド左側に記載がありますが、2014年つまり10年以上前から始まり、すでに3,000億ドルの規模になっています。

平野:『日本経済新聞』によると、「JPYC」が承認された際に記載されていた金額は2,500億ドルでした。その後、さらに500億ドル増加しているとのことです。一方で、当時の2,500億ドルは99パーセントが米ドル建てでした。
「JPYC」は発行を開始しましたが、現時点での発行量はまだ少ない状況です。円建てのステーブルコインは、まだ空白地帯と言える状況です。
JPYCアダプターでJPYCの接続先が激増

平野:ここで、私たちは「JPYCアダプター」を投入します。「ASTERIA Warp」はすでに1万社以上で使用されていますが、「ASTERIA Warp」に「JPYCアダプター」を組み込むことで、「JPYC」がさまざまな企業システムとつながることになります。
スライドには、100種類以上の接続先が記載されています。基本的なデータベースから、さまざまなオフィスツール、クラウド、さらには少し前のメインフレームなども含まれ、直近ではAIにも「JPYC」を接続できるようになります。
「JPYCアダプター」が提供されることで、まさに「JPYC」が千手観音のような役割を果たします。これを実現するのが「ASTERIA Warp」と「JPYCアダプター」です。
企業でのJPYC活用の幅が広がる

平野:具体的な実装は、スライドのとおりです。A社が「ASTERIA Warp」と「JPYCアダプター」を導入すると、社内にある各種クラウドシステム、財務会計システム、ERPなどの基幹システムとつながります。すでにつながっているものだけでなく、新たに接続することも可能です。
また「JPYCアダプター」を介して、「JPYC」の経済圏に接続することができます。当社が口座を保有することで、取引先との資金決済が可能になり、ECサイトを運営して「JPYC」を受け付けることも可能です。
このシステムはDeFi(分散型金融)にも対応しており、次世代の中央集権型ではないWeb3やWeb4の金融システムに自動的に接続することが可能です。
企業がこの仕組みを利用するためには、セキュリティが不可欠です。そのため、当社は日本でWeb3関連の監査件数が最も多いTECHFUND社と提携し、システムのセキュリティ監査を実施することにしています。
川合:「JPYC」の使われ方についておうかがいします。「JPYC」ウォレットの残高を他のシステムで照会できるようになるという理解で合っていますか?
平野:「JPYC」の残高を照会したり、「ASTERIA Warp」を利用して送金の指示を出したり、入金を確認して営業システムに反映させることが可能です。
川合:「JPYC」を送金するためのフロントシステムのようなものが、別に必要ということでしょうか?
平野:「ASTERIA Warp」にて、その機能が利用可能です。
川合:「ASTERIA Warp」上で、そのような操作も可能ということでしょうか?
平野:各種指示が可能です。「ASTERIA Warp」だけでなく、クラウド側でボタンを押すことで「JPYC」が送金される仕組みに対応しています。もちろん、その間にワークフローを組み込むこともできます。
川合:社長は、10年ほど前から協会を立ち上げ、ブロックチェーンに取り組んでこられました。その成果の1つとして、このようなものができたということですが、当初からこうした活用が見込まれていたのでしょうか?
平野:ブロックチェーンをよくご存じの方ならおわかりだと思いますが、ブロックチェーンの始まりは「ビットコイン」です。「ビットコイン」を提唱したサトシ・ナカモト氏の論文には、このことがまさに書かれています。
つまり、サトシ・ナカモト氏は「ビットコイン」を作って「どんどん値上がりするぞ」といったことは一切言及していません。彼の狙いは、中央機関を必要としないデジタルキャッシュを作ることでした。そのため、これまでの技術では流通が難しかったのです。
投機・投資対象とされていたものの、このステーブルコインで、ようやく流通や資金移動、決済が実現できるようになりました。これをもとに、私たちはさまざまな活動を続けてきたという状況です。
川合:「JPYCアダプター」利用の課金モデルについては、どのようにお考えでしょうか?
平野:課金については、1つ購入していくらといったかたちではなく、「JPYC」の利用量に応じて比例するかたちと考えています。そのため、導入コストは非常に低く抑えられる仕組みです。つまり、「JPYC」の流通量が増えるほど、当社の売上にもつながるモデルとなっています。
川合:ステーブルコインという観点では、「JPYC」が認可された点や信託型、メガバンクの取り組みなど、さまざまな動きがあると思います。今後、これらは接続されていくイメージなのでしょうか?
平野:私たちのミッションは「つなぐ」ことですので、さまざまなものが出てきた際には、それらをつないでいきます。まずはステーブルコインが認知され、普及することが非常に重要です。
いくつか仕様の異なるものが登場した際に競合するのではなく、ステーブルコインが社会にとって当たり前の存在になることを目指しています。これにより、企業の会計がリアルタイム化し、企業活動のスピードが一段と向上する世界を目指しています。
そのため、他のステーブルコインが登場した場合も、それらをつないでいきたいと考えています。ただし、私たちはJPYCの株主でもあるため、つなぐだけでなく、「JPYC」の普及推進にも取り組むことが方針です。
川合:ドル建てのステーブルコインとして、大きなものが2つあると思いますが、それらの接続は可能でしょうか?
平野:「USDT」と「USDC」という大きなものがありますが、同じようにつなぐことが可能です。まだ正式には発表していませんが、ステーブルコインの普及推進するため、遠くない未来に対応していきます。
MikoSea株式会社の買収を完了

平野:新たなトピックです。11月25日に、私たちはMikoSeaを買収しました。MikoSeaは、「Click」というノーコードツールを提供しており、すでに7万件を超えるアプリが作成されています。現在、買収を完了し、当社の100パーセント子会社になっています。
ノーコード開発ツール「Click」70,000を越えるアプリ開発を実績

平野:「Click」は無料版も提供されており、多くの方に利用されています。最近では、大企業で利用される事例も増加しています。さまざまなコンテストで、グランプリや準グランプリ、特別賞を受賞するなど、非常に評価の高いツールです。
多種多様な企業・団体・個人をカバー

平野:こちらを先ほどご紹介した「Platio」と組み合わせ、現在は「Platio Canvas」という新製品も提供しています。こちらは、9月に発売済みです。
これまで「Platio」は現場での利用が主で、中堅・中小企業くらいの規模で使われることが多かったのですが、「Click」はさらに個人やコミュニティ向けです。ただ、これには非常に高い自由度が備わっています。
特に「Click」は画面設計の自由度が高いことが特徴です。大企業では、画面設計を非常に自由かつ柔軟に行いたい、そしてモバイルで活用したいというニーズがありました。このため、「Platio」と「Platio Canvas」の組み合わせ、また先ほど「ASTERIA Warp」でお見せしたチャネルを通じて、大企業にもこうしたニーズに応える力を提供していきたいと考えています。
ClickがJPYCと連携し普及促進へ

平野:さらに、私たちは「JPYC」を推進していきます。その一環として、「Click」で「JPYC」に対応しました。個人が使用するアプリにおいて、スマホ上で「PayPay」などと同じようにボタンを押すだけで「JPYC」での支払い、または「JPYC」を受け取ることが可能です。
これが「Click」の新版の特徴です。先週すでにリリースしており、「JPYC」の流通量拡大の起爆剤になると考えています。
個人・企業をステーブルコインに結びつける唯一の企業

平野:アステリアは、個人と企業の双方をステーブルコインに結びつける唯一の企業です。個人向けのアプリについても、スマホアプリだけでなく、Webアプリも含めて結びつけることができる企業がアステリアです。
ソフトウェア事業の転換点を掴む

平野:「JPYC」やステーブルコインの普及は、ソフトウェア事業そのものの転換も促しています。ソフトウェア事業は、この30年ほどの間におけるクラウドの普及に伴い、売り切り型からサブスクリプション型へと移行してきました。
それが「JPYC」やステーブルコインによって、より小さな単位でリアルタイム決済が可能になります。現在、サブスクリプションも年単位や月単位での課金が主流ですが、ステーブルコインは使用した分だけ支払う仕組みです。
10円や20円といった単位で必要な分だけ支払うことができます。AIやIoTが発展するなか、例えばAIエージェントに対して「10分で100円を支払う」といった10円、1円、あるいは0.1円単位でのリアルタイムな従量課金の自動化が可能になります。これは、ステーブルコインだからこそ実現可能な仕組みです。
こうした仕組みにより、銀行経由では実現不可能な新たな領域が生まれてきます。これに伴い、ソフトウェア事業の課金手法や、どのように、どこに対してソフトウェアを提供していくのかといった視点も変わっていきます。5年後が非常に楽しみです。
業績ハイライト

平野:業績についてご説明します。業績ハイライトです。売上は増収、営業利益は大幅な増益となりました。中間利益は、前期が赤字だったため黒字転換しています。売上総利益率(粗利)は9割に迫り、ストック売上は77パーセントに達しました。自己資本比率は79パーセントで、極めて健全な状態にあるとご理解いただけると思います。
増収・増益

平野:スライドのグラフをご覧いただくとわかるように、営業利益は前年同期比で7倍と大きく伸びています。
業績予想に対する進捗率

平野:業績予想に対する進捗率についてご説明します。売上収益予想は35億円で、進捗率は46パーセントです。ストック売上は全体の7割以上を占めており、右肩上がりで成長していくモデルとなっています。そのため、進捗率46パーセントは順調であると考えています。
営業利益についてです。営業利益も徐々に上がっていくモデルではありますが、予想額は8億5,000万円で、すでに進捗率は62パーセントとなっています。「なぜ予想を修正しないのか」というご意見をいただくことがありますが、現在精査中です。
IR活動を強化

平野:これらの業績を踏まえ、多くの方々に当社の取り組みを知っていただくため、IR活動を強化しています。この場もその一環ですが、実際には北海道から九州まで各地でIR説明会を開催しています。
さらに、国外ではシンガポールなどを拠点に、機関投資家やファミリービジネスの方々に向けたIR活動も行っています。
株主優待・配当

平野:株主還元について、私たちには株主優待制度があります。配当は1年半ほど前に方針を変更し、大幅な増配を実現しました。今年の配当は8.0円でしたが、すでに来年の配当を8.5円に増配することを決定しています。
累進配当を方針として発表しており、配当が下がることはないという方針です。同水準か増配を目指す方向で設定しています。
新政権の方向性は追い風か?

平野:よくいただくご質問の内容についてお答えしたいと思います。
現在、日本の政治は大きな変化の途上にあります。新政権が発足し、さまざまな施策が打ち出されていますが、新政権の方針が追い風となっているかどうかについて、多くのお問い合わせをいただくため、ここでお話ししておきたいと思います。
スライドに記載の「『世界で最もAIを開発・活用しやすい国』を目指して、データ連携等を通じ、AIを始めとする新しいデジタル技術の研究開発及び産業化を加速させます。」は、高市首相の所信表明演説の一節です。
この文だけを見ても、当社が取り組んでいる事業が非常に追い風であることがわかります。当社はAI専業の子会社を持ち、宇宙開発に貢献するソフトウェア及びデータ連携に27年間にわたり取り組んでいます。
現在、データ連携は「JPYC」だけでなく、AIにさまざまなデータを学習させるハブとして機能し始めています。そして、サイバー領域も非常に重要です。当社では、セキュリティや宇宙関連にも取り組んでおり、今年6月からサイバーセキュリティ大手の現役副社長である大三川氏が新たに社外取締役として就任しました。
ステーブルコインは新しいデジタル技術であり、経済安全保障の観点からも注目されています。特に海外のものではなく、日本のものを見直していく必要があります。企業に向けた積極的な財政政策が追い風となり、IT投資の促進が進んでいます。
アステリア(証券コード:3853)まとめ

平野:最後に、私の話をまとめます。1つ目に、日本には多くのソフトウェア開発企業がありますが、アステリアは受託開発を一切行わないソフトウェアメーカーです。そのため、利益率が高く、粗利率つまり売上総利益率は約9割に達しています。
2つ目に、ノーコードについてです。現在、あらゆる業界で人材不足が原因でデジタル化やDXが遅れていますが、ノーコードはこの課題を解決する手段となり得ます。そして、この需要はますます拡大しています。
3つ目に、MikoSeaの買収が完了しました。これは、先ほど述べたノーコードをさらに拡大する戦略です。
4つ目に、多くの方が関心を寄せている「JPYC」についてです。「JPYC」は、株主として広げるだけでなく、ステーブルコインが社会に寄与するかたちを目指し、企業や個人をつなぐ世界を展開していきます。
以上、アステリアのご説明を終了します。ご清聴いただき、誠にありがとうございました。
質疑応答:顧客ニーズの変化を踏まえた製品戦略の方向性について
荒井沙織氏(以下、荒井):「データ連携市場で、国内シェアNo.1の「ASTERIA Warp」をはじめ、つなぐ製品群を展開されています。最近の顧客ニーズの変化、例えばクラウド移行や複数のクラウド利用などを踏まえた製品戦略の方向性について教えてください」というご質問です。
平野:クラウド移行から始まり、現在ではクラウドサービスとつなぐ需要が非常に増えています。例えば「kintone」との連携といった例が典型的ですが、クラウドへの移行だけでなく、まだ規模は小さいものの、さまざまな場所からAIのためのデータを集める取り組みも進めています。
質疑応答:ステーブルコイン対応及びM&Aの成長シナリオへの影響について
荒井:「ステーブルコイン対応やM&Aなど、最近のトピックスが今後の成長シナリオの中でどの程度のインパクトを持つと見ているのか、収益面・技術面の両方から教えてください」というご質問です。
平野:ステーブルコインについては、非常に大きな市場になると考えています。そのため、当社ではソフトウェアを1本いくらという形式ではなく、経済圏が拡大するに伴い、ソフトウェアの価値に対して対価をいただくかたちを採用しています。
これにより、現在の「ASTERIA Warp」や他の製品よりも大きく成長することは間違いないと考えています。実際に、先ほどの予測のような市場規模に達すれば、5年後には追い越している状況になるのではないでしょうか。
M&A戦略については、当社のノーコード戦略をさらに拡張するため、今後も継続して取り組んでいきます。
質疑応答:中長期的なコアコンピタンスについて
荒井:「オンプレからクラウド、さらにノーコード、ローコードへとつながるかたちが多様化する中で、御社が中長期的に守りつつ攻めていく、コアコンピタンスは何かをあらためて教えてください」というご質問です。
平野:コアコンピタンスは「つなぐ」ということと「ノーコード」です。AIの進化によってローコードは不要になりますが、ノーコードは誰でも使える、つまりエンジニアでなくても利用できる点がローコードとの大きな違いです。
今後ともAI技術を活用しながら、より多くの人々に利用していただけるよう取り組んでいきます。また、もう1つの基盤となる理念として、自律・分散・協調の社会を作るという目標を掲げています。それに向けて、さまざまな新しい製品を展開していきます。
質疑応答:ストック売上の伸長理由について
川合:「ストック売上について、現在7割を超えており、これが粗利率の高さにも寄与していると考えます。この収益構造が今後も続くのかどうか、またこれまでストック売上が伸びている理由についてもおうかがいできますでしょうか?」というご質問です。
平野:ストック売上が伸びている理由については、1つに私たちが経営として注力していることがあります。経営の安定成長を目指してきた結果です。
また環境要因として、企業が利用するソフトウェアがますますクラウド化してきています。それに伴い、周辺のソフトウェアや基幹となるものも含めて、サブスクリプション型の課金形態に移行しているため、この波に合わせてストック売上が増加しているという背景があります。
質疑応答:ステーブルコイン決済の価格設定について
川合:ステーブルコインの決済に応じた従量課金が実現した場合、おっしゃるとおり、非常に需要があるのではないかと思います。プライシングは、御社が自由に決められるのでしょうか?
平野:おっしゃるとおりです。実際には、競争力のあるプライシングをしなければなりません。高額であればよいというわけではありませんし、特に「JPYC」の場合、移動コストが非常に安いという点が売りです。そのため私たちは、薄利多売のビジネスモデルを採用し、付加価値の部分を薄く広くいただくことを考えています。
川合:1件当たりいくらといったかたちもあり得ますし、パーセンテージでの設定も考えられるということですね。
平野:1件当たりやパーセンテージなどさまざまな方法がありますが、こちらについてはまだ発表していません。
川合:決済がスタートするタイミングで、リリースを出されるようなイメージですか?
平野:おっしゃるとおりです。「JPYCアダプター」に関しては、もちろんリリースに含まれます。
質疑応答:ノーコード市場でアステリアが選ばれる理由について
川合:「ノーコード市場の競合が増えていると思いますが、アステリアが選ばれ続けている一番の理由を個人投資家向けに教えてください」というご質問です。
平野:競合が増えているというよりも、ノーコードで可能な領域が広がっています。私たちがノーコード製品を初めて出した2002年には、データ連携以外の領域はありませんでしたが、その後どんどん増え続けています。これは、非常に喜ばしいことで、ノーコードを使用することが当たり前になってきています。
当然、ノーコード市場での競合も存在します。例えば、当社の主力製品「ASTERIA Warp」が担うデータ連携の領域などです。しかし、圧倒的なシェアNo.1としての安心感、日本中のSIerやパートナーが存在し、このエコシステムが当社の非常に大きな強みとなっています。
これらが、「ASTERIA Warp」が選ばれる理由だと考えています。
川合:接続先を増やしていくところは、かなり大変なのでしょうか?
平野:非常に大変です。エンジニアの方からは「APIがあるからいいのではないか」という意見もありますが、エンジニアではない方はアプリケーションをプログラミングすることができません。そのため、ノーコードで対応できるように増やしていくことが非常に重要なのです。
私たちだけでなく、現在では他のサードパーティの方もアステリア用のアダプターを開発し、接続を実現するような取り組みが行われています。
質疑応答:MikoSeaと製品展開の拡張性について
川合:MikoSeaについて、独自のポジショニングをされているとのことでしたが、御社のビジネスにおける拡張性、「ASTERIA Warp」とのつながりなど、どのようなインパクトがあるのか教えてください。
平野:非常にありがたい質問です。今回発表している内容は「Platio」との関連のみですが、MikoSeaの「Click」には画面設計を非常に柔軟に行えるという特長があります。
例えば、「ASTERIA Warp」のフロントを設計する際、これまでは「Webサイトを使用してください」と案内していたものや、「Gravio」のフロントにおいて「BIツールを使用してください」と言っていたものが、私たちの製品だけで完結できるようになってきました。
そのため、MikoSeaの「Click」は、「ASTERIA Warp」や「Platio」以外にも、さらなる拡張が可能となります。
平野氏からのご挨拶
平野:本日は、アステリアの会社説明をお聞きいただき、誠にありがとうございます。
本日お話しした内容は、アステリアの挑戦のほんの一部にすぎません。私たちは「つなぐ」ということを基盤に、データだけでなく、さまざまな企業を未来へつなぐことをミッションとして挑戦しています。
これからも投資家のみなさまと伴走しながら、未来を創造していきたいと考えています。引き続き、ご指導、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。本日は、誠にありがとうございました。
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