*12:42JST 加藤製作所 Research Memo(2):社会インフラ構築に欠かせない建設機械メーカーのパイオニア
■会社概要
1. 会社概要
加藤製作所<6390>は1895年の創業(個人事業)以来130年の歴史を持つ大手建設機械メーカーである。経営理念に「優秀な製品による社会への貢献」を掲げ、社会インフラ構築に欠かせない建設機械メーカーのパイオニアとして、現在は建設用クレーンや油圧ショベルを主力として事業展開している。顧客の要望に応えて「頑丈」「力強い」「操作しやすい」といった顧客視点の製品づくりを特徴としており、顧客から高い信頼を得ている。
2026年3月期中間期末時点の総資産は95,897百万円、純資産は42,211百万円、自己資本比率は44.0%、発行済株式数は11,743,587株(自己株式389,507株を含む)となっている。本社所在地は東京都品川区、国内製造拠点は茨城工場(茨城県猿島郡)、群馬工場(群馬県太田市)、坂東工場(茨城県坂東市)、及び立川事業所(東京都立川市)に展開している。グループは同社、連結子会社5社、非連結子会社1社及び関連会社6社で構成されている。連結子会社は中国の加藤(中国)工程机械有限公司、加藤中駿(厦門)建機有限公司、イタリアのKATO IMER S.p.A.(以下、KATO IMER社)、オランダのKATO EUROPE B.V.、米国のICOMAC,INC.である。KATO IMER社については2025年5月に同社が追加出資して出資比率を従来の51.0%から94.2%に引き上げた。
なお中国における油圧ショベル事業の見直しに伴い、2024年6~7月に中国子会社2社の解散及び清算を決議したが、このうち加藤(中国)工程机械有限公司については解散・清算を取りやめ、2025年10月に同社が保有する全持分の譲渡が完了した。加藤中駿(厦門)建機有限公司については現地の法律に従って必要な手続きが完了次第、清算決了の予定である。一方で、インド最大手のクレーン製造・販売企業であるAction Construction Equipment Ltd.(以下、ACE社)とインド国内での合弁会社設立に向けた協議を進めている。インドをアジア展開の拠点とする。
2. 沿革
1895年に個人事業として加藤鉄工所を創業し、1935年に加藤鉄工所を株式会社に改組して(株)加藤製作所を設立した。その後、トラッククレーン、油圧ショベル、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーンなど製造品目を拡大した。2016年にはIHI建機(株)を子会社化((株)KATO HICOMに商号変更、2018年にKATO HICOM を吸収合併)し、クローラクレーン、ミニショベル、クローラキャリアなど製品ラインナップを拡充した。海外は2000年代から中国、欧州、米国に展開している。株式関係では1962年に東京証券取引所(以下、東証)二部へ上場、1970年に東証一部へ指定替え、2022年4月に東証の市場区分見直しに伴ってプライム市場へ移行した。
■事業概要
建設用クレーンと油圧ショベルが主力の建設機械メーカー
1. 事業概要
建設用クレーンのラインナップはラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーン、クローラクレーンである。ラフテレーンクレーンは大型タイヤを装備し、1つの運転室で走行とクレーン操作の両方が可能な自走式クレーンである。不整地走破性と小回り性に優れている。オールテレーンクレーンは大型タイヤを装備し、走行用とクレーン操作用運転室がそれぞれ独立した構造となっている自走式クレーンである。トラッククレーン(トラックに運転室付きのクレーン装置を架装した特殊車両)とラフテレーンクレーンの利点を併せ持ち、高速走行性と不整地走破性を兼ね備えている。クローラクレーンは走行装置の上にクレーン装置を搭載した移動式クレーンである。公道を自走することはできないが、軟弱地盤でも安定的に使用できる。
油圧ショベル等のラインナップは油圧ショベル、ミニショベル、クローラキャリアである。油圧ショベルはクローラ式走行部を有する掘削機械で、不整地を自走できる。ミニショベルは小型の油圧ショベルで、小回りが効くため多様な現場で活用できる。クローラキャリアは不整地を自走できるクローラ式のダンプカー(不整地運搬車)である。土砂・木材運搬や整地作業などに使用され、作業効率が良く、多彩な現場で活用可能である。
そのほかの製品としては、道路上のゴミや塵芥を掃除機のように吸い込んで道路を清掃する路面清掃車、汚泥・汚水から粉粒体までを吸引して輸送する万能吸引車、除雪作業を行うスノースイーパなどがある。全社売上に対する構成比は低いものの、競合が少ない市場で幅広い特装車を製造・販売している。2024年10月には空港用ブラシ式除雪車スノースイーパを、いわて花巻空港(岩手県)に納車し、空港のスムーズな運航体制を支えている。
世界初のハイブリッドラフターなど時代に合わせた新製品を開発
2. 研究開発・新製品の動向
研究開発については、建設業界における人材不足への対策として、自動運転による省人化・効率化及び生産性の向上に貢献するとともに、地球環境負荷の軽減にも資する新技術・新製品の開発を推進している。2022年11月には同社、(株)ソリトンシステムズ、協立電子工業(株)の3社が協同し、ラフテレーンクレーンでのクレーン遠隔操作システムの実証試験を行った。機体搭乗による同社現行機のクレーン操作フィーリングのレベルには達していないものの、遠隔操作の実用化が可能であることがわかったため、今後も遠隔操作技術の要素研究を推進する。
2023年5月には全旋回式クローラキャリア「IC70R」の販売を開始し、全旋回式クローラキャリア市場へ新規参入した。徹底した安心・安全の低重心設計、堅牢設計、過積載監視テレマシステム、滑らかな操作フィーリングなど先進テクノロジーを駆使した製品である。なお「IC70R」は2024年8月に日刊工業新聞社主催の「第54回機械工業デザイン賞IDEA」において審査委員会特別賞を受賞、同年10月に(公財)日本デザイン振興会主催の2024年度グッドデザイン賞を受賞した。
2025年3月には世界初のハイブリッド式ラフテレーンクレーン「SR-250HV」を販売開始した。ディーゼルエンジンでの走行と電動モーターによる作業のアシストにより、走行燃費及びクレーン作業燃費の向上を図ることでCO2排出量を削減するとともに、走行騒音及び作業騒音を低減する。中期経営計画で掲げている環境配慮型機種の第1弾として本製品の製造・販売により環境保全の一翼を担っていく。また同年4月には75t吊りラフテレーンクレーン「SR-750Rf III」の販売を開始、同年10月には全旋回式クローラキャリア「IC110R」の販売を開始、同年10月にはオールテレーンクレーン「KA-1100R」の販売を開始した。いずれも最新の排出ガス規制(欧州Stage V)に適合した環境配慮型エンジンを搭載している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)
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1. 会社概要
加藤製作所<6390>は1895年の創業(個人事業)以来130年の歴史を持つ大手建設機械メーカーである。経営理念に「優秀な製品による社会への貢献」を掲げ、社会インフラ構築に欠かせない建設機械メーカーのパイオニアとして、現在は建設用クレーンや油圧ショベルを主力として事業展開している。顧客の要望に応えて「頑丈」「力強い」「操作しやすい」といった顧客視点の製品づくりを特徴としており、顧客から高い信頼を得ている。
2026年3月期中間期末時点の総資産は95,897百万円、純資産は42,211百万円、自己資本比率は44.0%、発行済株式数は11,743,587株(自己株式389,507株を含む)となっている。本社所在地は東京都品川区、国内製造拠点は茨城工場(茨城県猿島郡)、群馬工場(群馬県太田市)、坂東工場(茨城県坂東市)、及び立川事業所(東京都立川市)に展開している。グループは同社、連結子会社5社、非連結子会社1社及び関連会社6社で構成されている。連結子会社は中国の加藤(中国)工程机械有限公司、加藤中駿(厦門)建機有限公司、イタリアのKATO IMER S.p.A.(以下、KATO IMER社)、オランダのKATO EUROPE B.V.、米国のICOMAC,INC.である。KATO IMER社については2025年5月に同社が追加出資して出資比率を従来の51.0%から94.2%に引き上げた。
なお中国における油圧ショベル事業の見直しに伴い、2024年6~7月に中国子会社2社の解散及び清算を決議したが、このうち加藤(中国)工程机械有限公司については解散・清算を取りやめ、2025年10月に同社が保有する全持分の譲渡が完了した。加藤中駿(厦門)建機有限公司については現地の法律に従って必要な手続きが完了次第、清算決了の予定である。一方で、インド最大手のクレーン製造・販売企業であるAction Construction Equipment Ltd.(以下、ACE社)とインド国内での合弁会社設立に向けた協議を進めている。インドをアジア展開の拠点とする。
2. 沿革
1895年に個人事業として加藤鉄工所を創業し、1935年に加藤鉄工所を株式会社に改組して(株)加藤製作所を設立した。その後、トラッククレーン、油圧ショベル、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーンなど製造品目を拡大した。2016年にはIHI建機(株)を子会社化((株)KATO HICOMに商号変更、2018年にKATO HICOM を吸収合併)し、クローラクレーン、ミニショベル、クローラキャリアなど製品ラインナップを拡充した。海外は2000年代から中国、欧州、米国に展開している。株式関係では1962年に東京証券取引所(以下、東証)二部へ上場、1970年に東証一部へ指定替え、2022年4月に東証の市場区分見直しに伴ってプライム市場へ移行した。
■事業概要
建設用クレーンと油圧ショベルが主力の建設機械メーカー
1. 事業概要
建設用クレーンのラインナップはラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーン、クローラクレーンである。ラフテレーンクレーンは大型タイヤを装備し、1つの運転室で走行とクレーン操作の両方が可能な自走式クレーンである。不整地走破性と小回り性に優れている。オールテレーンクレーンは大型タイヤを装備し、走行用とクレーン操作用運転室がそれぞれ独立した構造となっている自走式クレーンである。トラッククレーン(トラックに運転室付きのクレーン装置を架装した特殊車両)とラフテレーンクレーンの利点を併せ持ち、高速走行性と不整地走破性を兼ね備えている。クローラクレーンは走行装置の上にクレーン装置を搭載した移動式クレーンである。公道を自走することはできないが、軟弱地盤でも安定的に使用できる。
油圧ショベル等のラインナップは油圧ショベル、ミニショベル、クローラキャリアである。油圧ショベルはクローラ式走行部を有する掘削機械で、不整地を自走できる。ミニショベルは小型の油圧ショベルで、小回りが効くため多様な現場で活用できる。クローラキャリアは不整地を自走できるクローラ式のダンプカー(不整地運搬車)である。土砂・木材運搬や整地作業などに使用され、作業効率が良く、多彩な現場で活用可能である。
そのほかの製品としては、道路上のゴミや塵芥を掃除機のように吸い込んで道路を清掃する路面清掃車、汚泥・汚水から粉粒体までを吸引して輸送する万能吸引車、除雪作業を行うスノースイーパなどがある。全社売上に対する構成比は低いものの、競合が少ない市場で幅広い特装車を製造・販売している。2024年10月には空港用ブラシ式除雪車スノースイーパを、いわて花巻空港(岩手県)に納車し、空港のスムーズな運航体制を支えている。
世界初のハイブリッドラフターなど時代に合わせた新製品を開発
2. 研究開発・新製品の動向
研究開発については、建設業界における人材不足への対策として、自動運転による省人化・効率化及び生産性の向上に貢献するとともに、地球環境負荷の軽減にも資する新技術・新製品の開発を推進している。2022年11月には同社、(株)ソリトンシステムズ、協立電子工業(株)の3社が協同し、ラフテレーンクレーンでのクレーン遠隔操作システムの実証試験を行った。機体搭乗による同社現行機のクレーン操作フィーリングのレベルには達していないものの、遠隔操作の実用化が可能であることがわかったため、今後も遠隔操作技術の要素研究を推進する。
2023年5月には全旋回式クローラキャリア「IC70R」の販売を開始し、全旋回式クローラキャリア市場へ新規参入した。徹底した安心・安全の低重心設計、堅牢設計、過積載監視テレマシステム、滑らかな操作フィーリングなど先進テクノロジーを駆使した製品である。なお「IC70R」は2024年8月に日刊工業新聞社主催の「第54回機械工業デザイン賞IDEA」において審査委員会特別賞を受賞、同年10月に(公財)日本デザイン振興会主催の2024年度グッドデザイン賞を受賞した。
2025年3月には世界初のハイブリッド式ラフテレーンクレーン「SR-250HV」を販売開始した。ディーゼルエンジンでの走行と電動モーターによる作業のアシストにより、走行燃費及びクレーン作業燃費の向上を図ることでCO2排出量を削減するとともに、走行騒音及び作業騒音を低減する。中期経営計画で掲げている環境配慮型機種の第1弾として本製品の製造・販売により環境保全の一翼を担っていく。また同年4月には75t吊りラフテレーンクレーン「SR-750Rf III」の販売を開始、同年10月には全旋回式クローラキャリア「IC110R」の販売を開始、同年10月にはオールテレーンクレーン「KA-1100R」の販売を開始した。いずれも最新の排出ガス規制(欧州Stage V)に適合した環境配慮型エンジンを搭載している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)
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