ドリーム・アーツ Research Memo(7):クラウド事業へのビジネスモデル転換が加速(2)

配信元:フィスコ
投稿:2025/03/25 13:07
*13:07JST ドリーム・アーツ Research Memo(7):クラウド事業へのビジネスモデル転換が加速(2) ■ドリーム・アーツ<4811>の業績動向

2.事業セグメント別動向
(1) クラウド事業
a) ホリゾンタルSaaS
ホリゾンタルSaaSで提供している「SmartDB」「InsuiteX」導入企業数は161社(前期比21社増)と順調に増加した。加えて、既存顧客へのアップセルが好調に推移し、売上高は2,926百万円(同32.6%増)となり、クラウド事業の成長をけん引した。マーケティング活動の強化により「SmartDB」の認知度が上がり、新規案件も顧客企業の部署単位での採用からERPフロントシステムなど全社で利用するシステムへの採用が増えるなど大型化した。KPIである平均月額利用料(ARPA※)は2024年12月期第4四半期で1,669千円と2020年12月期第4四半期以降高い水準を維持し、NRRは117.5%となった。なお、「SmartDB」はホリゾンタルSaaS売上高の81.9%(2024年12月期第4四半期)を占め、ホリゾンタルSaaSの成長をけん引している。

※ ARPA:Average Revenue Per Accountの略。四半期末月の月額利用料の合計を同時点での利用企業数で除して算出。

導入実績としては、日本経済新聞社がERPシステムを刷新したことに伴い、ERPフロントシステムとして財務会計の周辺業務にかかる経理業務のデジタル化に活用している事例、2022年11月より「SmartDB」を導入しているダスキン<4665>が、基幹となる会計業務のフロントシステムとして本格利用を開始した事例、インターネット企業であるグリーホールディングス<3632>が20社近くあるグループ会社を横断する契約管理業務に2024年4月より本格導入し、今後は契約管理業務以外の範囲で業務デジタル化の検証を予定している事例、同年5月より(株)博報堂テクノロジーズが博報堂DYホールディングス<2433>のグループ全体約23,000名の利用を見据えた社内申請のプラットフォームとして導入した事例、同年10月より東急<9005>が本社の約2,000名が利用する稟議・法務相談業務に導入している事例など、ERPフロントシステムとして利用されるケースから、グループ会社全体を統合するシステムとして利用されるケースまで、案件が全社規模サイズで大型化しているのが特徴だ。また、システム開発要員を多く抱えるグリーに評価された実績は特筆されよう。

b) バーティカルSaaS
バーティカルSaaSで提供している「Shopらん」の導入企業数は163社(前期比11社減)と小規模チェーンの解約があったものの、大規模チェーンストアでの導入が進み、売上高は784百万円(同5.4%増)と堅調に推移した。2024年8月には「Shopらん」「店舗matic」の導入実績が60,000店舗を突破した。ARPAについては新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け鈍化していたが、2021年12月期第3四半期の301千円で底打ちし、店舗数の多いチェーンへのシフトにより2024年12月期第4四半期には406千円まで増加した。導入事例としては、首都圏を中心に約140店舗の保険薬局を展開する薬樹(株)での利用が挙げられる。薬樹は全社DXを推進すべく2022年12月より全店舗で「Shopらん」を利用しているが、回答率や作業実施率が改善されるなどの効果があったことから、2023年9月より「フレッシュマニュアル機能」(マニュアル上に店舗独自のやり方やアイデアを店舗メモとして付箋付けできる機能)を活用することにした。同様な事例では、全国に約300店舗のスーパーセンターを展開するトライアルカンパニー(株)が2023年11月より全店舗で「Shopらん」を利用していたが、2024年3月より「フレッシュマニュアル機能」の利用を開始した。こうした機能面での継続的なアップデートは、多店舗展開するチェーンストアから高く評価されているようだ。また、2024年10月より全国に約800店舗の調剤薬局を展開する総合メディカル(株)が全国の店舗で本格導入を開始している。

c) DCR
「DCR」の売上高は180百万円(前期比2.5%増)となった。特定顧客の個別要件に基づいて開発したシステムをクラウド基盤上で運用しており、契約企業数は3社(同変動なし)であった。既に提供を開始しているサービスの利活用の促進により、ユーザー数の増加や運用の安定化を確保している。

(2) オンプレミス事業
オンプレミス事業の売上高は558百万円(前期比6.5%減)、セグメント利益は228百万円(同15.4%減)となった。パッケージ・ソフトウェアライセンスは、新規顧客への提供を停止しており、既存顧客の社員増加に伴う追加ライセンス受注があるのみで、売上高は21百万円(同53.1%減)となった。ソフトウェアメンテナンスはクラウドへの移行などに伴い解約が進行し、売上高は536百万円(同2.6%減)となった。ただし、クラウドへの移行タイミングは基幹システムの更新のタイミング、予算などにより顧客によって区々となるため、解約は同社の想定した水準を下回っている。

(3) プロフェッショナルサービス事業
プロフェッショナルサービス事業の売上高は584百万円(前期比18.4%減)、セグメント利益53百万円(前期比51.9%減)となった。前期に「SmartDB」をERPフロントシステムとして導入する大型プロジェクトを受注したことの反動減に加え、顧客にクラウド移行など最新プラットフォームへの移行提案を積極的に推進したため、無償稼働が増加し減収減益となった。

3. 財務状況
2024年12月期は、税金等調整前当期純利益766百万円に加えて、クラウド事業の成長に伴い契約負債が192百万円増加し、営業活動によるキャッシュ・フローは1,001百万円の収入となった。クラウド事業においては、一定期間の利用料を前受で受領し、契約未履行分を契約負債として計上しており、事業の成長がフリーキャッシュ・フローの増加に直結している。無形固定資産の取得などで投資活動によるキャッシュ・フローは201百万円の支出、配当金の支払などで財務活動によるキャッシュ・フローは77百万円の支出となり、その結果、2024年12月期末の現金及び現金同等物は前期末比735百万円増加し、3,551百万円となった。社債は300百万円発行しているが返済財源は十分にあり、借入金に依存せずに成長投資に振り向ける流動性資金を潤沢に確保する財務構造を作り上げている。親会社株主に帰属する当期純利益551百万円から配当金77百万円を差し引いた473百万円が利益剰余金として増加するなど、純資産合計は前期末比485百万円増加した。自己資本比率は48.8%と前期末を2.6ポイント上回り、財務の安全性は問題なく担保されている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)

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