紀文食品 Research Memo(2):健康食として注目される水産練り製品のトップメーカー

配信元:フィスコ
投稿:2025/01/10 15:02
*15:02JST 紀文食品 Research Memo(2):健康食として注目される水産練り製品のトップメーカー ■会社概要

1. 会社概要
紀文食品<2933>は、蒲鉾や竹輪、さつま揚、はんぺん、カニカマ(カニ風味蒲鉾)など、健康志向の食品として国内外で需要が拡大する水産練り製品のトップメーカーである。国内食品事業では、スーパーマーケットやコンビニエンスストアを主販路に水産練り製品を販売しているほか、簡便・即食ニーズに対応した中華惣菜や健康志向の麺状製品「糖質0g麺」なども提供している。海外食品事業では、主にタイで製造した水産練り製品をアジアや欧米で販売している。食品関連事業はチルド物流サービスを中心に展開しており、競合企業を含め外部売上が8割程度を占める。同社は、魚肉・大豆・鶏卵・鶏肉畜肉の4つのタンパク特性の研究を基盤とする商品開発力、独自ノウハウを積み上げたチルド物流サービス、小売との信頼関係に基づく販売力などに強みを持つ。

同社の前身は、1938年に保芦邦人(ほあしくにひと)氏が創業した「山形屋米店」である。その後、築地場外に「紀国屋果物店」(後に「紀文」に改名)を開店し、1941年に海産物卸売業に進出した。1947年に戦後の再建支援のため山久蒲鉾(株)(後の釜文蒲鉾(株))に出資、また1948年には水産物類の製造・加工及び販売を目的に(株)紀文商店を設立し、水産練り製品の製造を開始した。1957年には製販一体で事業を展開するため(株)紀文を設立、その後は商品バリエーションを拡充する一方、製造拠点や営業拠点の全国展開を進めた。海外事業の拡大にも注力しており、1978年に米国、1982年にアジア(香港)、2018年には欧州(オランダ)に進出し、1993年にはタイに海外市場向け製品の生産拠点を設けている。


国内需要は安定推移、海外は急拡大

2. 業界環境
水産練り製品とは蒲鉾や竹輪、さつま揚、はんぺんなどを総称した食品で、主原料の魚肉をすり潰し、調味料などを加えて練り加熱したものである。アジア各地で古くから作られてきたが、原材料となる魚が各地で異なることから国内でも様々な種類の水産練り製品が存在する。同社によると、水産練り製品の生産量はピークの100万トン強からは減ったものの、2010年代以降、良質なタンパク質が取れる手軽な惣菜として注目され、40万トン台で安定して推移しているようだ。同社は日本各地の水産練り製品を取り込んでいち早くフルライン化し、さらにチルド物流や販売手法を確立したことで、約3,000億円と言われる国内水産練り製品市場でトップシェアを獲得するに至った。一方、健康食である魚食の1つとして海外で需要が急拡大していることを受け、海外事業にも注力している。



■事業概要

主要業務は水産練り製品などの製造販売や仕入販売

1. 事業内容
同社グループは、同社及び連結子会社14社(国内7社、海外7社)、非連結子会社1社(国内1社)、持分法適用関連会社3社(国内1社、海外2社)で構成されている(2024年中間期末)。水産練り製品や惣菜などの食品製造販売と食品の仕入販売を主な業務とし、国内食品事業、海外食品事業、食品関連事業の3事業にセグメント分けされており、2025年3月期中間期の売上高構成比は、それぞれ67.4%、12.1%、20.6%となっている。

(1) 国内食品事業
水産練り製品、惣菜、水産珍味といった食品の製造販売を主力に、農畜水産品の輸出入や国内仕入販売を行っている。食品の製造販売は水産練り製品と惣菜、正月商品に分けられ、水産練り製品は蒲鉾や竹輪、さつま揚、はんぺん、カニカマなど、惣菜は肉餃子など中華惣菜や「糖質0g麺」といった麺状製品、玉子加工商品などである。また、同社オリジナル商品として「チーちく(R)」や「魚河岸あげ(R)」、正月商品として伊達巻や正月セットを販売している。製造は、自社工場である「恵庭工場(北海道)」「東京工場(千葉県)」「船橋工場(千葉県)」「横浜工場(神奈川県)」「静岡工場(静岡県)」をはじめ、子会社の(株)紀文西日本※が展開する「岡山総社工場(岡山県)」や関連会社の海洋食品(株)(沖縄県)で行い、日本全国に安定供給する生産体制を構築している。一方、水産珍味は主に海産物を使用した珍味で、子会社の(株)北食※(北海道)で製造・加工した商品を同社が仕入販売している。輸出入及び国内仕入販売は、(株)紀文産業がすり身や冷凍魚などの水産品、卵、穀物、大豆、胡麻といった農畜産物、水産練り製品を、グループ内外の食品加工メーカーや食品商社に販売している。

※ 経営資源の効率化を進め、生産拠点の最適化と増強、マーケティング・商品開発機能の強化などを図るため、紀文西日本は2025年4月、北食は同年1月に同社に吸収合併される予定である。

(2) 海外食品事業
海外では、水産練り製品などの食品の製造販売のほか、農畜水産品の輸出入及び仕入販売を行っている。食品の製造販売は子会社KIBUN (THAILAND) CO.,LTD.のほか、関連会社のYILIN KIBUN CORPORATION(台湾)及びPULMUONE-KIBUN CO.,LTD.(韓国)が行っており、近年海外でも健康感の高い食材として人気のカニカマなどを、海外の各拠点を通じて北米やアジア、オセアニア、欧州向けに販売している。一方、農畜水産品の輸出入及び仕入販売は子会社のKIBUN FOODS (U.S.A.),INC.が行っており、アラスカで調達したすり身を日本及びアジアの同社工場に供給する一方、北中米を中心に穀物、大豆、胡麻といった農産物などを販売している。KIBUN HONG KONG COMPANY LIMITED及びKIBUN FOODS SINGAPORE PTE.,LTD.は香港とシンガポール及び周辺地域で、主としてグループ企業から仕入れた水産練り製品などの輸入販売を行っている。KIBUN KOREA INC.は、韓国で同社商品を製造するPULMUONE-KIBUN CO.,LTD.へのすり身の供給を行っている。KIBUN EUROPE B.V.はEUで、KIBUN CHINA CO.,LTD.は中国で、同社グループから仕入れた水産練り製品や各地の仕入商材の輸入販売を行っている。

(3) 食品関連事業
物流・情報サービス、品質衛生サービス、食に関する広告宣伝や保険サービスなど、グループ内の業務で培ったノウハウを外販する事業で、収益面や効率面で本業をサポートしている。物流・情報サービスは、食品関連事業の売上高の大半を占める(株)紀文フレッシュシステムが展開する。物流サービスでは、自社物流センターとパートナー企業とともに構築したチルド物流ネットワークを生かし、荷主から物流を一貫して請け負う3PL(Third Party Logistics:物流業務の委託事業)ビジネスや、1車両に複数の顧客の商品を混載して配送する共同配送事業などを行っている。日本のチルド物流の先駆けとして、高品質かつ環境負荷に配慮したサービスを提供しているため、物流サービスのグループ外売上高は80.3%(2025年3月期中間期)に達し、同業も含めた多くの食品メーカーに利用が拡がっている。また、情報サービスに関しては、全国に配置した物流センター間でネットワークを構築しており、各センターを拠点に配送のサポートを行っている。物流・情報サービスのほかでは、(株)紀文ビジネスクリエイトが生産設備・自動車などのリースや飲食、広告宣伝、オフィスサービスといった事業を、(株)紀文BC保険サービスが損害保険・生命保険の代理業を、(株)紀文安全食品センターが食品安全衛生検査受託事業を展開している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

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