─トランプ氏再登板で国際情勢は激変、好需給の日本株に海外マネー流入の機運─
2025年はトランプ次期米大統領がマーケットを大きく揺らす1年となるだろう。米国の関税強化策に伴って、世界の経済成長が鈍化するリスクに多くの投資家が身構えるようになり、日本企業全体でみても業績のモメンタムは楽観視できない状況にある。一方で、東京市場では資本の有効活用に向けた上場企業の意識改革が進み、自社株買いは空前の規模となっている。良好な需給環境を支えに、難路があっても利益創出へ前進する企業や、進化に向けて「脱皮」する企業に対し、幅広い投資家層のマネーが集まりそうだ。
●再生と変革の1年
今年は、太平洋戦争が終了して80年の節目となる。終戦から40年後の1985年に日本経済を大きく揺るがせたのが、プラザ合意だ。ドル高を是正するために各国通貨の切り上げに向けた協調介入を行うことで先進5ヵ国が合意し、この年のドル円相場は年始の1ドル=250円近辺から一時200円を下回る水準まで円高が進行。円高不況が日銀の低金利政策を促し、バブル景気を引き起こした。
プラザ合意から40年となる今年はどうか。干支は「巳(み)」で、十二支のちょうど折り返し地点。再生と変革を象徴する年とされ、12年前の2013年にはアベノミクス元年、24年前の01年には米同時多発攻撃、89年には平成への改元があった。
内外の政治情勢をみると、今年が大転換年となることはもう間違いない。米国でのトランプ新政権の発足はもちろんのこと、ドイツやフランス、カナダの内政は混乱し、「非常戒厳」宣言後の韓国の政治情勢も予断を持って語ることができない状況だ。昨年の衆院選で自公両党が過半数を確保できず、少数与党での政権運営を迫られている日本では夏に参院選が行われる。情勢次第ではマーケットを大きく変動させるイベントとなるだろう。
●物価動向と金融政策にも不確実性
国際的な政治情勢の変化の根底には何があるのか? インフレである。消費者にとってインフレは増税と何ら変わりがない。マーケットはトランプ新政権による関税強化策が米国内でインフレ圧力を高めると読んでいるが、インフレが一段と進行した状況において、世論に配慮してトランプ氏が関税強化という剣を鞘に納めるといったシナリオも頭ごなしに否定することはできないはずだ。
とはいえ、米国のインフレが粘着性をもって高止まりする可能性が今のマーケットでは意識されており、米連邦準備制度理事会(FRB)は難しい舵取りを迫られている。日銀はFRBのスタンスと経済指標、為替相場をにらみながら、追加利上げのタイミングを計り、その地ならしとして市場と対話することを求められている。急ピッチな円安となれば、日銀も利上げに踏み切らざるを得なくなると予想される。もちろん、為替相場は金融政策だけで決まるものではない。
大局的に見て、上昇する通貨を持つ国には富が流入しているといえる。富の流入する国の一つに、生産性が高く、イノベーションを起こし続けている国がある。アメリカだ。翻って日本はどうか。日本生産性本部によると、就業者1人当たりの労働生産性は23年時点でOECD加盟国38ヵ国中32位。G7では最下位で、ポルトガルや韓国よりも低く、ハンガリーやスロバキアに次ぐ水準である。
●利益創出力の高い企業への注目度は一段と上昇へ
更に、日本の起業率は海外と比べて低水準である。東証では新規上場数が伸び悩む一方で、MBOなど非公開化に踏み切った企業が増え、東証の上場企業数は昨年、旧大証との市場統合後として初めて減少に転じた。これらの課題が横たわる限りにおいて、たとえ原発の再稼働が増えて化石燃料の輸入額が減少したとしても、円安圧力が消えてなくなることはないに違いない。
企業の生産性は利益創出力に直結する。現代の企業経営において調達が困難な人的リソースを補うのも、生産性である。もっとも、いくら生産性を高めたとしても、企業が立脚する業界によってはトップラインの拡大が難しい場合もある。リターンが見込めそうな投資先がなく、過剰な資本を抱えているのであれば、企業は株主還元に迫られることとなる。
東証の低PBR(株価純資産倍率)改善活動の効果もあって、昨年の上場企業の自社株買いは約17兆円と過去最高の水準となった。企業の内部留保の状況を踏まえると、今年の自社株買いの規模はこれを上回る可能性が高い。海外勢にとって日本株は、業績とは別に需給面で妙味のある投資対象となっており、世界経済に対する悲観的な見方が広がった場合、海外市場からの逃避資金が流入するシナリオも横たわっている。特に、利益創出力や成長への強い意志を持つ企業の株式は、日本経済の国際的なプレゼンスを再び向上させるための原動力になるとの観点でも、注目度が一段と高まることになるに違いない。その候補になり得る7銘柄を今回の新春特別企画では厳選して紹介していく。
●激動の2025年で躍進期待の「ニッポン再興7銘柄」
◎東映アニメーション <4816> [東証S]~「ドラゴンボール」の成長力に評価余地
アニメ 制作を展開。「ドラゴンボール」や「ワンピース」など数々の有力IP(知的財産)コンテンツを抱え、前期の映画「スラムダンク」の大ヒットの反動を受けながらも25年3月期第2四半期累計(4-9月)の営業利益は約50%増と好調を維持している。IPコンテンツはヒットすればキャッシュ創出力が大きく、今後の日本経済においても成長のエンジン役とみなされている。サウジアラビアでは「ドラゴンボール」のテーマパークの建設構想があり、新たな情報発信があれば多くの投資家の関心を集めることとなりそうだ。好調な版権事業を支えに業績の上振れも期待される。
◎GENDA <9166> [東証G]~攻める日本企業の代表格へ急浮上
アミューズメント施設「GiGO」や、カラオケチェーン「カラオケBanBan」、映画配給会社「GAGA」などを展開。申真衣社長はゴールドマン・サックス証券出身。同社に出資した投資ファンド、ミダスキャピタル代表の吉村英毅氏とは東京大学経済学部において、ゼミの先輩・後輩の間柄という。M&Aを駆使した非連続的な成長への意志と実行力は目を見張るものがあり、長期投資家で知られる米キャピタル・リサーチ・アンド・マネージメントも株主に名を連ねる。40年に世界一のエンターテインメント企業を目指す同社は昨年、米国での無人ゲームコーナー事業の運営会社を買収するなど、海外展開も加速中。プライム市場への区分変更を巡る思惑も広がった状況にある。
◎テラスカイ <3915> [東証P]~DX化追い風に量子コンピューターで成長機運
米セールスフォース
◎アイビス <9343> [東証G]~お絵描きアプリで驚異の成長力
同社が主力とするモバイルペイントアプリ「ibisPaint(アイビスペイント)」は昨年、世界累計でダウンロード数が4億を突破した。同アプリは200以上の国と地域で利用されている。日本企業発のモバイルアプリとして驚異的な成長を遂げており、海外で稼ぐアプリ開発企業として特異な存在感を併せ持つ。24年12月期の売上高は2ケタの伸びで、営業利益は2.7倍と急増の見通し。アクティブユーザーはZ世代が中心で、ペイントアプリ市場そのものも成長の余地が大きく、長期にわたる事業拡大が期待できる。
◎村田製作所 <6981> [東証P]~MLCC最大手の安定感で評価余地大
積層セラミックコンデンサー(MLCC)の世界最大手で、好財務体質のブルーチップ(国際優良株)。25年3月期営業利益率は約18%と収益性は高水準を維持する見通しだ。MLCCの技術の源泉にあるのは清水焼。良質な素材と繊細な温度管理が必要な日本の陶磁器技術は、その歴史の長さゆえ、容易に他国の追従を許さない強みを持ち、村田製も世界最小のMLCCを開発するなど、技術力で市場を席巻している。生成AI 向けサーバーに使われるMLCCは従来比で8倍を超えるとの見方があり、同社の部品についても今後は着実に採用が拡大しそうだ。株価は割安感を強めており、海外勢からバーゲンハント的な資金が流入する余地もあるだろう。
◎日東紡績 <3110> [東証P]~AI・半導体向けスペシャルガラスで躍進続く
同社が長年、研究開発を進めてきたスペシャルガラスは、半導体パッケージ基板やAIサーバーなどでの採用拡大が見込まれており、実際に足もとでもデータセンター向けの旺盛な需要を支えに好調に推移している。繊維企業の多くが苦境に立たされてきた歴史を持つが、同社の25年3月期営業利益は前期比8割近く増加し過去最高益の更新を見込むなど、変貌を遂げた。スペシャルガラスの生産能力拡張に迫られている同社ではあるが、顧客の需要に対応した投資活動は中期的なトップラインの伸びと競争力の強化に直結するだけに、今年も多くの投資家の注目を集めそうだ。
◎ヤマハ発動機 <7272> [東証P]~ブランド力高くEV事業に期待膨らむ
インドやインドネシアなど「グローバルサウス」諸国の経済成長を背景に、主力の二輪 事業が堅調に拡大している。二輪だけでなく、ボートなどでも強いブランド力を持つ同社はF1用のエンジンを供給した実績を持ち、日本企業が失いかけている「チャレンジ精神」を成長の原動力としてきた企業だ。トランプ次期政権下における関税強化策が自動車などの生産に悪影響を及ぼすとの懸念が強まる環境において、新興国での底堅い二輪需要が見込める同社株が、セクター内での逃避資金の受け皿となるシナリオも想定できるだろう。電気自動車(EV)のF1とされるフォーミュラEへの参戦による技術的な蓄積をもとに、小型低速EVを野心的に発展させ、ヤマハ発ブランドの自動車が普及する将来を描きたい。
株探ニュース
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