三洋化成 Research Memo(6):2025年3月期通期も大幅増益(最終黒字転換)でV字回復予想

配信元:フィスコ
投稿:2024/12/27 12:06
*12:06JST 三洋化成 Research Memo(6):2025年3月期通期も大幅増益(最終黒字転換)でV字回復予想 ■今後の見通し

● 2025年3月期通期の業績見通し
三洋化成工業<4471>の2025年3月期通期の連結業績予想(2024年9月27日付で各利益を上方修正)は、売上高が前期比9.1%減の145,000百万円、営業利益が同84.2%増の9,000百万円、経常利益が同22.1%増の10,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が4,000百万円(前期は特別損失計上で8,501百万円の損失)としている。上期の状況を鑑みて、前回予想(2024年5月14日付の期初公表値、売上高145,000百万円、営業利益8,000百万円、経常利益9,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が2,500百万円)に対して、売上高を据え置いたが、営業利益を1,000百万円、経常利益を500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を1,500百万円それぞれ上方修正した。親会社株主に帰属する当期純利益については、高吸水性樹脂事業などからの撤退に伴って計上する特別損失が期初の想定を10億円程度下回ることも寄与する。

前期比では、売上高は高吸水性樹脂事業などからの撤退により減収だが、各利益は潤滑油添加剤や永久帯電防止剤など高付加価値製品の拡販効果や、高吸水性樹脂事業などからの撤退による収益性改善効果により大幅増益(最終黒字転換)予想としている。なお修正後の通期予想に対する上期の進捗率は売上高が53.1%、営業利益が49.5%、経常利益が49.9%である。親会社株主に帰属する当期純利益の進捗率は上期に特別損失を計上したため23.5%にとどまっているが、下期はその影響が一巡する。2024年3月期をボトムとして、2025年3月期以降は収益のV字回復が期待できると弊社では考えている。



■成長戦略
経営方針「WakuWaku Explosion 2030」を推進
1. 2030年のありたい姿と「新中期経営計画2025」
同社は2022年3月に、2030年のありたい姿に向けた経営方針として「WakuWaku Explosion 2030」を策定した。グループスローガンを「変える。」から「WakuWaku」へ刷新するとともに、不連続な成長を目指すという強い想いを「Explosion」という言葉に込め、環境に調和した循環型社会、健康・安心にくらせる社会、一人ひとりがかがやく社会を目指している。一方、2030年のありたい姿に基づいて、2024年のあるべき姿として同社の事業活動を「新たな成長軌道」「基盤事業からの展開」「基盤事業の見直し」に再整理した。「新たな成長軌道」では化学の枠を超えたイノベーションで環境・社会課題の解決に貢献し、「基盤事業からの展開」では強みを活かした事業領域の拡大や深耕による成長を目指す。「基盤事業の見直し」では構造改革の加速と環境視点での事業転換を推進している。

また、2030年のありたい姿に基づいて、2023年5月に「新中期経営計画2025 −ありたい姿に向けた変革の加速−」(2024年3月期〜2026年3月期)を策定した。基本方針としては、事業戦略では「基盤事業からの展開」「基盤事業の見直し」「グローバル展開」を、将来に向けては「新たな成長軌道」「社会課題の解決」「成長を支える仕組み」を掲げた。具体的な施策として、「基盤事業からの展開」では高付加価値製品群(カーボンニュートラルおよびQOL(生活の質)の向上に貢献する注力5製品群=特殊繊維用薬剤、特殊電子部品用薬剤、潤滑油添加剤、永久帯電防止剤、医療・医薬関連)への設備投資と拡販の加速、「基盤事業からの見直し」では基盤製品群の収益改善、「ものづくり大改革」によるサプライチェーン全体での効率化と収益改善、ウレタン事業とSAP事業の構造改革、「グローバル展開」では海外での拡販を推進している。

業績目標としては、最終年度2026年3月期の売上高2,000億円、営業利益150億円を掲げている。営業利益目標達成(2023年3月期比66億円増)に向けた計画としては、外部環境変化(需要回復)で35億円増、サプライチェーン全体の改革(ナフサ連動適正価格化、「ものづくり大改革」による効率化と収益改善)で30億円増、構造改革(ウレタン事業とSAP事業の構造改革)で10億円増、高付加価値製品群の拡販で25億円増、固定費の増加で34億円減としている。

「基盤事業からの展開」で掲げた高付加価値製品群(注力5製品群)の拡販については、2025年3月期の目標を売上高345億円、営業利益53億円、営業利益率15.3%としている。中間期の実績は売上高173億円、営業利益28億円、営業利益率16.5%で順調な進捗となっている。特殊繊維用薬剤は風力発電用風車の需要回復で炭素繊維集束剤が復調、特殊電子部品用薬剤は自動車の電装化・EV化によりアルミ電解コンデンサ用電解液「サンエレック」が増加基調、潤滑油添加剤は自動車関連産業全般が不調な状況でも同社の粘度指数向上剤「アクルーブ」は売上拡大基調、永久帯電防止剤は半導体関連の需要回復で好調、医療・医薬関連は大腸内視鏡検査用用途での需要が拡大している。なお粘度指数向上剤「アクルーブ」については、新車市場よりも規模の大きいアフター市場が存在すること、エンジン車に比べて「アクルーブ」使用量の多いHV車・PHV車の増加に伴って需要が拡大基調であることに加え、ディーゼル車用、EV用、航空機用など新規需要への展開による拡販も推進している。

また「基盤事業の見直し」では、ポリプロピレングリコール(PPG)生産に関する共通課題解決を目的に、2023年5月に三井化学<4183>と共同(折半出資)で有限責任事業組合(LLP)「ジャパンポリオール(責)」を設立した。生産協力による合理化や原料調達協力及びさらなる連携の可能性を検討する。また同年10月には、サプライチェーン全体での価値向上を実現すべくSCM統括本部を新設した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)


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