*16:13JST 日本電技 Research Memo(3):環境好転で空調計装の新設工事の好調が続く
■日本電技<1723>の業績動向
1. 事業環境
2023年5月に新型コロナウイルス感染症が感染症法上5類に位置付けられるなどアフターコロナの時代に入った現在、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)以前の経済状態に戻ってきたようだ。このため空調計装関連事業の新設工事の事業環境が短期的に好転したわけだが、官公庁案件も堅調で、加えて中期的に全国的な広がりを見せる都市再開発や国内生産へとシフトする半導体工場、AIやクラウド向けに需要が拡大するデータセンターなどの案件の好調が続き、長期的にも案件の長期化や大型化が見込まれている。既設工事も、中長期的に想定された更新需要が動き出したことに加え、脱炭素社会の実現に向けた省エネニーズなどに伴う改修案件が増加している。産業システム関連事業も、ターゲットである食品工場や製薬工場の人手不足に伴う自動化や、スマートファクトリー実現に向けた製造設備改修・システム更新に対するニーズが広がっている。しかし、既設工事と産業システム関連事業は、想定以上に好調な空調計装の新設工事に向けて人員支援をしているため、需要に比べてやや勢いを欠いた展開となっている。
空調計装の新設工事中心に採算が大きく改善
2. 2025年3月期第2四半期の業績動向
2025年3月期第2四半期の受注高は25,417百万円(前年同期比12.6%増)、売上高は14,987百万円(同3.8%減)、営業利益は2,318百万円(同32.6%増)、経常利益は2,409百万円(同32.1%増)、親会社株主に帰属する中間純利益は1,646百万円(同33.3%増)となった。売上高は新設工事で前年同期に大型の首都圏再開発物件の完成が複数あったため、営業利益は採算改善を背景に想定以上の伸びとなった。
日本経済は、世界的な金融引き締めによる海外景気の減速や物価上昇など不透明な状況が続いているものの、コロナ禍からの経済社会活動の正常化が進み、緩やかな回復基調で推移した。建設業界においては、公共投資で関連予算の執行もあり底堅い推移が続き、民間設備投資でも特に半導体工場関連投資や情報化投資、脱炭素に向けた環境対応投資などを中心に大きく持ち直す動きが見られた。
同社の受注状況は、新設工事は半導体などの工場が好調を継続、都市再開発案件も地方を含めて大型の案件の盛り上がりが見えてきた状況である。また、既設工事は省エネやCO2排出量削減効果を目的とした改修が堅調で、物件も大型化してきている。そのような環境のなかで、大型工事の施工が可能な業者は同社を含め限られるため、より採算が良く、長年収益が積み上がるストックとなる既設工事につながる新設工事を、戦略的に選別受注する状況となっている。一方、人繰りについては、「2024年問題※」への対応を既に完了したものの、新設工事では既設工事や産業システム関連事業から人員支援を受けても残業規制後の遵守ベースで見ればフル稼働状態にある。こうした状況への対策として、DX推進室を設置して業務の効率化と生産性の向上を推進するとともに、さらなる人手不足対策に着手した。
※ 「働き方改革関連法」によって様々な業種で常態化した長時間勤務などの労働環境を改善する動きだが、一方で中長期的に人手不足が懸念されるという問題。
このように繁忙状態のなか、空調計装関連事業新設工事を中心に受注は順調に積み上がる一方、売上高は、前年同期に大型の首都圏再開発物件の完成が複数あったため減収となった。利益については、特に売上総利益率は、原材料価格の高騰、待遇改善などによる労務コストや外注費の増加の一方、選別受注が進んだこと及び高採算工事が増えたことで大きく改善した。足元の事業環境から、かつて時折発生していた不採算工事・低採算工事もなく、こうした高採算の状況はしばらく続きそうだ。販管費は、DXの進展や現場事務所(サテライトオフィス)の活用などにより業務の効率化を進めたが、人手不足対策としてベースアップなど待遇改善や新卒採用など人員増を進めたため人件費の増加が先行した。営業利益については、売上高が減少し販管費が増加したが、売上総利益率の改善により想定以上の大幅な伸びとなった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 事業環境
2023年5月に新型コロナウイルス感染症が感染症法上5類に位置付けられるなどアフターコロナの時代に入った現在、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)以前の経済状態に戻ってきたようだ。このため空調計装関連事業の新設工事の事業環境が短期的に好転したわけだが、官公庁案件も堅調で、加えて中期的に全国的な広がりを見せる都市再開発や国内生産へとシフトする半導体工場、AIやクラウド向けに需要が拡大するデータセンターなどの案件の好調が続き、長期的にも案件の長期化や大型化が見込まれている。既設工事も、中長期的に想定された更新需要が動き出したことに加え、脱炭素社会の実現に向けた省エネニーズなどに伴う改修案件が増加している。産業システム関連事業も、ターゲットである食品工場や製薬工場の人手不足に伴う自動化や、スマートファクトリー実現に向けた製造設備改修・システム更新に対するニーズが広がっている。しかし、既設工事と産業システム関連事業は、想定以上に好調な空調計装の新設工事に向けて人員支援をしているため、需要に比べてやや勢いを欠いた展開となっている。
空調計装の新設工事中心に採算が大きく改善
2. 2025年3月期第2四半期の業績動向
2025年3月期第2四半期の受注高は25,417百万円(前年同期比12.6%増)、売上高は14,987百万円(同3.8%減)、営業利益は2,318百万円(同32.6%増)、経常利益は2,409百万円(同32.1%増)、親会社株主に帰属する中間純利益は1,646百万円(同33.3%増)となった。売上高は新設工事で前年同期に大型の首都圏再開発物件の完成が複数あったため、営業利益は採算改善を背景に想定以上の伸びとなった。
日本経済は、世界的な金融引き締めによる海外景気の減速や物価上昇など不透明な状況が続いているものの、コロナ禍からの経済社会活動の正常化が進み、緩やかな回復基調で推移した。建設業界においては、公共投資で関連予算の執行もあり底堅い推移が続き、民間設備投資でも特に半導体工場関連投資や情報化投資、脱炭素に向けた環境対応投資などを中心に大きく持ち直す動きが見られた。
同社の受注状況は、新設工事は半導体などの工場が好調を継続、都市再開発案件も地方を含めて大型の案件の盛り上がりが見えてきた状況である。また、既設工事は省エネやCO2排出量削減効果を目的とした改修が堅調で、物件も大型化してきている。そのような環境のなかで、大型工事の施工が可能な業者は同社を含め限られるため、より採算が良く、長年収益が積み上がるストックとなる既設工事につながる新設工事を、戦略的に選別受注する状況となっている。一方、人繰りについては、「2024年問題※」への対応を既に完了したものの、新設工事では既設工事や産業システム関連事業から人員支援を受けても残業規制後の遵守ベースで見ればフル稼働状態にある。こうした状況への対策として、DX推進室を設置して業務の効率化と生産性の向上を推進するとともに、さらなる人手不足対策に着手した。
※ 「働き方改革関連法」によって様々な業種で常態化した長時間勤務などの労働環境を改善する動きだが、一方で中長期的に人手不足が懸念されるという問題。
このように繁忙状態のなか、空調計装関連事業新設工事を中心に受注は順調に積み上がる一方、売上高は、前年同期に大型の首都圏再開発物件の完成が複数あったため減収となった。利益については、特に売上総利益率は、原材料価格の高騰、待遇改善などによる労務コストや外注費の増加の一方、選別受注が進んだこと及び高採算工事が増えたことで大きく改善した。足元の事業環境から、かつて時折発生していた不採算工事・低採算工事もなく、こうした高採算の状況はしばらく続きそうだ。販管費は、DXの進展や現場事務所(サテライトオフィス)の活用などにより業務の効率化を進めたが、人手不足対策としてベースアップなど待遇改善や新卒採用など人員増を進めたため人件費の増加が先行した。営業利益については、売上高が減少し販管費が増加したが、売上総利益率の改善により想定以上の大幅な伸びとなった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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