*13:03JST 日本ヒューム Research Memo(3):基礎事業、下水道関連事業、太陽光発電・不動産事業を展開
■日本ヒューム<5262>の事業概要
1. 事業概要
報告セグメント区分は、基礎事業(コンクリートパイル製造・販売・杭打工事など)、下水道関連事業(ヒューム管などコンクリート製下水道関連製品の製造・販売、コンクリート製道路関連製品の製造・販売、下水道関連工事など)を2本柱として、太陽光発電・不動産事業(太陽光発電、不動産賃貸・管理など)、その他事業(下水道関連工事用機材レンタル、鋼材事業など)も展開している。
(1) 基礎事業
基礎事業は、様々な土木・建築物を支える基礎工事に使用されるコンクリートパイルの製造・販売・施工などを行っている。コンクリートパイルは、工場において鋼製の円筒形型枠に鉄筋かごを配置した後、ミキサーで練り混ぜたコンクリートを投入し、遠心力を利用してコンクリートを締め固めて成形する。同社は大手メーカーとして、地盤や上部構造など各種条件に対応した豊富な種類の杭を取り揃えており、工事施工の面では排出残土の少ない中掘工法などを強みとしている。また2024年1月に連結子会社化した鋼商が北海道を拠点に鉄鋼・鉄鋼二次製品の加工販売やコンクリート二次製品の製造販売を展開している。
(2) 下水道関連事業
下水道関連事業は、ヒューム管、合成鋼管、セグメントなどのコンクリート製下水道関連製品の製造・販売を中心に、壁高欄などのコンクリート製道路関連製品の製造・販売、さらに下水道関連の管渠更生工事などを行っている。ヒューム管は工場において遠心力を利用して成形し、上・下水道、農業・工業用水、雨水管、電線・ケーブルを通すための地中管など、様々な分野で幅広く使用されている。なお、コンクリート製品の製造方法には、遠心力を利用する遠心力製法のほか、振動と圧縮の作用を利用するバイコン製法などもあるが、同社は遠心力製法を特徴・強みとしている。また、オリジナル工法であるPCウェル工法等のプレキャスト事業にも注力している。PCウェル工法は、工場で製作した鉄筋コンクリート造の単体ブロックを施工現場で接続・一体化し、内部をハンマグラブなどにより掘削・排土しながらグランドアンカーなどを反力として注入・沈設する工法である。適用ができる構造物には、橋梁下部構造(基礎と橋脚)、擁壁、工場施設、建築物、人工地盤などの基礎構造をはじめ、人孔・立坑やポンプ井などの内空を利用する地中構造物がある。大深度(実績75m)の施工も可能で、1968年の実用化以来2,500基を超える実績がある。
(3) 太陽光発電・不動産事業、その他事業
太陽光発電・不動産事業は、同社が手掛ける保有不動産を活用した賃貸事業及び太陽光発電事業(NH東北太陽光発電所、NH岡山太陽光発電所)のほか、子会社のヒュームズが不動産管理、環境改善計画が環境関連機器販売・コンサルティングなどを展開している。
基礎事業と下水道関連事業が2本柱
2. セグメント別推移
過去4期(2021年3月期~2024年3月期)及び2025年3月期中間期のセグメント別売上高・営業利益・営業利益率の推移は以下のとおりである。なお、公共工事関連の売上・利益は年度末にあたる1月~3月期(同社の第4四半期)に集中する傾向がある。
基礎事業は売上高が減少傾向だったが、営業活動の強化などにより2022年3月期をボトムとして売上高・営業利益とも拡大基調となっている。営業利益率は2022年3月期の1.4%、2023年3月期の1.6%から、2024年3月期には5.3%、さらに2025年3月期中間期には9.7%まで急上昇した。売価改善進展や生産性向上も寄与して収益性が大幅に向上した。下水道関連事業は売上高・営業利益ともおおむね横ばいで推移している。2024年3月期は減収・大幅減益の形となったが、これは高付加価値製品の発注遅延という一時的要因によるもので、2025年3月期中間期は回復基調となった。なお、基礎事業と下水道関連事業の営業利益率に大きな差があるが、これは、基礎事業は民間建築工事が中心であり、下水道関連事業は公共工事が中心のためである。民間中心の建築関連工事の利益率が公共工事中心の土木関連工事に比べて低いという傾向は、同社だけでなく建設関連業界全般に共通した傾向である。太陽光発電・不動産事業は大きな変動がなく、規模は小さいものの利益率の高い安定収益源となっている。
コンクリートパイルとヒューム管の両方の分野で市場シェア上位は同社のみ
3. 特徴・強み
同社の強みは時代のニーズに合った新製品・新工法を開発する技術力である。1925年に日本で初めて遠心力を利用して下水用ヒューム管の製造を開始し、その技術を活用して事業領域をコンクリートパイルのほか、大口径分野や道路分野を含む各種プレキャストコンクリート製品へ広げ、下水道分野では老朽化対策の管更生事業やマンホール耐震化等の社会インフラのストックマネジメント事業へ拡大した。
地震対策や社会インフラ老朽化対策では、各種コンクリート製品の機能・強度向上に努めているほか、施工面でも下水道管路・マンホール耐震化工法や管渠更生工法等の社会インフラの維持更新を目的とした事業を行っている。近年は、施工効率化に向けてICTを活用した施工管理「Pile-ViMSys(パイルヴィムシス)(R)」、カーボンニュートラルに向けた低炭素型高機能コンクリート「e-CON(R)」など、次世代に向けた新技術・新製品の開発を強化している。
事業環境に関しては、下水道関連事業ではヒューム管の需要が過去10年間減少傾向だが、同社は一定規模の出荷量を確保し、2025年3月期中間期の同社の市場シェア(出荷量ベース)は持分法適用関連会社(出資比率40%)である東京コンクリート工業(株)を含めて24.3%(1位)である。基礎事業で主に使用されるコンクリートパイルの需要は過去10年間横ばいだが、2025年3月期中間期の同社の市場シェア(同)は9.6%(3位)である。ヒューム管専業あるいはコンクリートパイル専業が多い業界にあって、ヒューム管とコンクリートパイルの両方の分野で市場シェア上位を獲得しているのは同社のみである。このことは同社の技術力や品質力の高さを示している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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1. 事業概要
報告セグメント区分は、基礎事業(コンクリートパイル製造・販売・杭打工事など)、下水道関連事業(ヒューム管などコンクリート製下水道関連製品の製造・販売、コンクリート製道路関連製品の製造・販売、下水道関連工事など)を2本柱として、太陽光発電・不動産事業(太陽光発電、不動産賃貸・管理など)、その他事業(下水道関連工事用機材レンタル、鋼材事業など)も展開している。
(1) 基礎事業
基礎事業は、様々な土木・建築物を支える基礎工事に使用されるコンクリートパイルの製造・販売・施工などを行っている。コンクリートパイルは、工場において鋼製の円筒形型枠に鉄筋かごを配置した後、ミキサーで練り混ぜたコンクリートを投入し、遠心力を利用してコンクリートを締め固めて成形する。同社は大手メーカーとして、地盤や上部構造など各種条件に対応した豊富な種類の杭を取り揃えており、工事施工の面では排出残土の少ない中掘工法などを強みとしている。また2024年1月に連結子会社化した鋼商が北海道を拠点に鉄鋼・鉄鋼二次製品の加工販売やコンクリート二次製品の製造販売を展開している。
(2) 下水道関連事業
下水道関連事業は、ヒューム管、合成鋼管、セグメントなどのコンクリート製下水道関連製品の製造・販売を中心に、壁高欄などのコンクリート製道路関連製品の製造・販売、さらに下水道関連の管渠更生工事などを行っている。ヒューム管は工場において遠心力を利用して成形し、上・下水道、農業・工業用水、雨水管、電線・ケーブルを通すための地中管など、様々な分野で幅広く使用されている。なお、コンクリート製品の製造方法には、遠心力を利用する遠心力製法のほか、振動と圧縮の作用を利用するバイコン製法などもあるが、同社は遠心力製法を特徴・強みとしている。また、オリジナル工法であるPCウェル工法等のプレキャスト事業にも注力している。PCウェル工法は、工場で製作した鉄筋コンクリート造の単体ブロックを施工現場で接続・一体化し、内部をハンマグラブなどにより掘削・排土しながらグランドアンカーなどを反力として注入・沈設する工法である。適用ができる構造物には、橋梁下部構造(基礎と橋脚)、擁壁、工場施設、建築物、人工地盤などの基礎構造をはじめ、人孔・立坑やポンプ井などの内空を利用する地中構造物がある。大深度(実績75m)の施工も可能で、1968年の実用化以来2,500基を超える実績がある。
(3) 太陽光発電・不動産事業、その他事業
太陽光発電・不動産事業は、同社が手掛ける保有不動産を活用した賃貸事業及び太陽光発電事業(NH東北太陽光発電所、NH岡山太陽光発電所)のほか、子会社のヒュームズが不動産管理、環境改善計画が環境関連機器販売・コンサルティングなどを展開している。
基礎事業と下水道関連事業が2本柱
2. セグメント別推移
過去4期(2021年3月期~2024年3月期)及び2025年3月期中間期のセグメント別売上高・営業利益・営業利益率の推移は以下のとおりである。なお、公共工事関連の売上・利益は年度末にあたる1月~3月期(同社の第4四半期)に集中する傾向がある。
基礎事業は売上高が減少傾向だったが、営業活動の強化などにより2022年3月期をボトムとして売上高・営業利益とも拡大基調となっている。営業利益率は2022年3月期の1.4%、2023年3月期の1.6%から、2024年3月期には5.3%、さらに2025年3月期中間期には9.7%まで急上昇した。売価改善進展や生産性向上も寄与して収益性が大幅に向上した。下水道関連事業は売上高・営業利益ともおおむね横ばいで推移している。2024年3月期は減収・大幅減益の形となったが、これは高付加価値製品の発注遅延という一時的要因によるもので、2025年3月期中間期は回復基調となった。なお、基礎事業と下水道関連事業の営業利益率に大きな差があるが、これは、基礎事業は民間建築工事が中心であり、下水道関連事業は公共工事が中心のためである。民間中心の建築関連工事の利益率が公共工事中心の土木関連工事に比べて低いという傾向は、同社だけでなく建設関連業界全般に共通した傾向である。太陽光発電・不動産事業は大きな変動がなく、規模は小さいものの利益率の高い安定収益源となっている。
コンクリートパイルとヒューム管の両方の分野で市場シェア上位は同社のみ
3. 特徴・強み
同社の強みは時代のニーズに合った新製品・新工法を開発する技術力である。1925年に日本で初めて遠心力を利用して下水用ヒューム管の製造を開始し、その技術を活用して事業領域をコンクリートパイルのほか、大口径分野や道路分野を含む各種プレキャストコンクリート製品へ広げ、下水道分野では老朽化対策の管更生事業やマンホール耐震化等の社会インフラのストックマネジメント事業へ拡大した。
地震対策や社会インフラ老朽化対策では、各種コンクリート製品の機能・強度向上に努めているほか、施工面でも下水道管路・マンホール耐震化工法や管渠更生工法等の社会インフラの維持更新を目的とした事業を行っている。近年は、施工効率化に向けてICTを活用した施工管理「Pile-ViMSys(パイルヴィムシス)(R)」、カーボンニュートラルに向けた低炭素型高機能コンクリート「e-CON(R)」など、次世代に向けた新技術・新製品の開発を強化している。
事業環境に関しては、下水道関連事業ではヒューム管の需要が過去10年間減少傾向だが、同社は一定規模の出荷量を確保し、2025年3月期中間期の同社の市場シェア(出荷量ベース)は持分法適用関連会社(出資比率40%)である東京コンクリート工業(株)を含めて24.3%(1位)である。基礎事業で主に使用されるコンクリートパイルの需要は過去10年間横ばいだが、2025年3月期中間期の同社の市場シェア(同)は9.6%(3位)である。ヒューム管専業あるいはコンクリートパイル専業が多い業界にあって、ヒューム管とコンクリートパイルの両方の分野で市場シェア上位を獲得しているのは同社のみである。このことは同社の技術力や品質力の高さを示している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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