日神グループHD、中間期は増収増益で黒字転換 配当性向50%で株主還元強化、証券化事業・投資物件開発推進に意欲
AGENDA
神山隆志氏:日神グループホールディングス代表取締役社長の神山です。本日はご多用の中、2025年3月期第2四半期決算説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございます。
本日のご説明内容はスライドに記載の6点です。順を追ってご説明します。
日神グループHDの概要
まず、当社のことを初めて知る方に向けて、エグゼクティブサマリーとして、当社グループの事業構成、特徴、中期経営計画で目指している姿など全体像についてご説明します。
当社グループは、総合不動産・建設業として建設事業・不動産管理事業・不動産事業の3事業の推進を通じて、不動産の川上から川下まで、バリューチェーンを網羅したグループ体制となっています。
2024年3月期におけるセグメント別の売上構成と利益構成は、スライド右側の円グラフのとおりです。セグメント別売上構成比が大きいのは建設事業、不動産事業の2つで、全体の約86パーセントを占めています。その次に、不動産管理事業が約13パーセントを占める構成となっています。
一方で、セグメント別利益構成比を見ると、不動産事業が52パーセント、不動産管理事業が27パーセント、建設事業が20パーセントという構成になっています。
事業内容について、それぞれ簡単にご説明します。建設事業については、創業100年以上の社歴を持つ多田建設が担っています。主にマンション建設において強みのある会社で、当社グループ内のマンション建設を請け負うほか、グループ外のマンション建設が全体の9割程度を占める構成となっています。
直近2年ほどは、資材高騰や人件費上昇などの影響を受けまして、利益率が一時的に低下しましたが、価格転嫁など利益体質の改善を通じて、採算性の向上に取り組んでいます。
不動産管理事業については、日神管財が担っており、自社で販売した不動産物件の管理事業およびグループ外の不動産管理事業を行っています。管理事業そのものが継続性のあるストック収益になり、比較的営業コストがかからない構造になっていますので、利益率としても高いのが特徴です。ストック収益のさらなる積み上げ強化に取り組んでいます。
不動産事業については、関東1都3県を中心に住宅不動産の開発・販売を行っています。日神不動産、日神不動産投資顧問、日神住宅流通、リコルドの4社が担っています。具体的には、分譲マンションの企画・開発・販売や、中古マンションの買取・リノベーション・再販事業、戸建販売の企画・販売、投資用不動産の証券化事業など幅広く手がけています。
中期経営計画(1/2):新中期経営計画の位置付け
今年7月に発表した中期経営計画について簡単に概要をお伝えします。2030年にグループ全体で売上高1,000億円、営業利益65億円の目標を掲げ、その中間地点として、3年後の2027年3月期の売上高880億円、営業利益50億円を目指しています。
中期経営計画(2/2)事業ポートフォリオの現状と目指す姿
収益性を上げるための具体的な事業ポートフォリオの現状と、目指す姿についてご説明します。
スライド左側の前中期経営計画の事業ポートフォリオをご覧ください。横軸に営業利益率、縦軸に売上高成長率で3つの事業をプロットしています。水色の不動産管理事業が最も営業利益率が高く、青色の建設事業の営業利益率が最も低い状態にあることがご確認いただけるかと思います。この状況から、今後の3年間でスライド右側のポートフォリオになるように取り組んでいきます。
まず、不動産管理事業が、営業利益率においても売上高成長率においても、最も高い状態になるように取り組んでいきます。また、建設事業についても、売上高成長率、営業利益率の改善に取り組みます。不動産事業については、売上構成比等は大きいものの、成長率と利益率の面からは大きな変化はありません。
したがって、当社の中期経営計画の進捗を見る上では、不動産管理事業および建設事業の成長や利益率に注目していただくのがポイントとなります。
中期経営計画(2/2):計画を実現するための施策
中期経営計画を実現するための重要KPIと実行施策について整理したスライドです。建設事業においては特命案件比率、セグメント利益率の向上、不動産管理事業においては管理物件数・管理戸数、自社投資用アパート開発、不動産事業においては投資用物件比率、証券化事業の開発がポイントとなっていきます。
当社の事業状況や成長の姿を理解する上で、特にこれらに注目いただくことで、中期経営計画に沿った進捗状況をご理解いただきやすくなります。
2025年3月期 中間決算概要
中間決算の概要についてご説明します。上期の業績としては、建設事業、不動産管理事業が予定どおり成長した結果、前年同期比で増収増益となりました。なお、売上・利益の構成比率が高い不動産事業については、例年、物件の引き渡しが第4四半期に集中し、下期偏重となる傾向があります。
売上高は、前年同期比6.9パーセント増の269億4,300万円です。営業利益は4億7,500万円、経常利益は3億100万円、当期純利益は1億5,400万円となり、昨年は中間決算の段階で赤字でしたが、今期は黒字化しました。
セグメント別売上高については、建設事業が前年同期比12.7パーセント増の177億7,600万円、不動産管理事業が前年同期比15.1パーセント増の43億9,000万円、不動産事業が前年同期比14.7パーセント減の47億6,700万円となりました。
2025年3月期 中間決算進捗状況
通期業績予想に対する進捗状況についてです。スライドの棒グラフのとおり、売上高は通期予想に対して32.9パーセント、営業利益は12.8パーセント、経常利益は8.9パーセント、当期純利益は7.0パーセントとなっています。この状況だけを見ると、通期業績予想に対してビハインドしているように感じられるかもしれません。
ただし、当社グループの業績を毎年見てくださっている方はご理解いただけると思いますが、例年、第4四半期に売上や利益が集中するため、中間期における業績の進捗率が50パーセントを超えていなくても、必ずしも問題ありません。
今期は中間期時点で、昨年よりも増収増益となっており、成長しています。また、通期見通しに対しても、おおむね計画どおりの進捗状況であると認識しています。
2025年3月期 中間決算概要
半期の業績推移についてご説明します。スライドの棒グラフは、2021年3月期以降の上期・下期の売上高の推移を表しています。スライドのとおり、下期の売上高は、中間決算である第2四半期の売上高の2倍前後となっています。
昨年の中間決算との比較では7パーセント成長しており、内訳としては、特に不動産管理事業と建設事業が伸びています。
セグメント利益については、スライド右側の表の下段をご覧ください。建設事業の利益は9億3,300万円となっており、前年同期比で赤字から黒字へと大きく利益回復しています。不動産管理事業の利益は4億2,300万円、前年同期比5.5パーセント増と着実に成長しています。
不動産事業の利益については、マイナス6億4,500万円と前年同期比で減少していますが、中間決算期時点で引き渡した物件数で左右されてしまうため、この時点で前年より減少していたとしても、必ずしも業績が悪化しているわけではありません。あくまでも、現時点における状況と捉えていただいてけっこうです。
通期業績に対して、おおむね計画どおりという認識です。
2025年3月期 BSサマリ
B/Sの状況についてです。下期および来期への仕込みのため、有利子負債を増やし、そのお金を販売用不動産の在庫積み増しに充当しています。そのため、一時的に負債比率が上がっていますが、それでも自己資本比率は53パーセント以上で、健全な財務体質となっています。
不動産事業を成長させ、規模のあるかたちで展開するためには、不動産開発に対する先行投資など、先行投資に耐えられる資金力・財務基盤が重要です。
先行投資の規模を大きくしていくためにも、自己資本比率と自己資本の積み増しが重要だと考えています。資本コストや株主還元とのバランスを考えながら、安定的な財務基盤となるように努めています。
事業の特徴・ビジネスモデル
各事業の特徴と状況について、それぞれご説明します。まずは建設事業です。建設業界の市場環境としては、2024年の働き方改革の問題により、工期の長期化や人件費などのコスト増加が、業界全体の構造として発生しています。
具体的には、建設に携わる人材の不足、労働人口の高齢化、長時間労働の常態化といった業界独自の課題があったところに対して、政府の施策として、残業時間の上限の設定、時間外労働賃金の増加、インボイス制度の3つが加わりました。
外部委託先のサプライチェーンにその施策が幅広く徹底される流れを受け、これまでは突貫工事で一気に建築可能だったものができなくなり、標準的な工期スケジュールが延びています。それに伴い、新たな案件を受注できないキャパシティ問題が建設業界で発生しています。
これに対して、当社グループの多田建設は、創業以来100年以上のノウハウと、マンション建設に特化した効率性を兼ね備えており、マンション建設の受注を継続的にいただいています。
マンションに特化しているという点について少し詳しくご説明すると、マンションはオフィスに比べると建築物の中の部屋の区画割りが細かくなり、その分、水回りの設計や、必要となる部材の量が増えます。マンション特有の設計ノウハウを持っていることや、規模の経済で必要な材料をボリュームディスカウントできるなどの特徴があります。
建設業界においては、構造的にキャパシティの限界から、需要は強くあります。その中でも、多田建設はマンション建設に特化したポジショニングで、実績と信頼を積み重ねてきており、採算性を重視した案件を獲得しやすくなっています。
このため、受注単価の上昇や付加価値の向上による粗利率の向上が見込みやすい状況にあり、今後数年かけて、売上高の成長と利益率の改善を図る方針です。
建設事業セグメント業績
建設事業セグメントの業績についてです。スライド左側のグラフは、建設事業の売上高と利益率の推移を表しています。売上高は前年同期比で12.7パーセント成長しました。利益率についても、昨年は赤字だったところから、5.3パーセントまで回復しました。建設業界の構造の課題と、多田建設の特徴を活かした採算性改善の施策・方針の効果が現れつつあります。
スライド右側の表で特にご注目いただきたいのは、売上総利益の改善です。前年までは、インフレによるコスト高騰と人件費の上昇を吸収しきれず、粗利率が低下していました。今期に入ってからは、コストの見通しを考慮した上で、採算性の高い案件から受注する方針を取っており、粗利率が改善する傾向が出てきています。
主要KPIの推移:受注残高の推移
主要KPIである、受注残高の推移についてです。受注残高は、受注キャパシティに対して適正な水準で推移しています。また、新規受注のうち、相見積もりなどなく、1社指名で受注できる特命案件の比率が82パーセントを超える状況となっています。
引き続き、建設工事の施工管理を適切に行うことで、下期の業績達成に向けて進めていきます。
建設事業の中期経営計画進捗状況
建設事業における中期経営計画の進捗状況についてご説明します。営業利益向上のための各施策は、おおむね計画どおりに推進しており、中期経営計画初年度の半期においては順調な状況となっています。
人的資本に関しては、建築関連の資格者数の増加を掲げている点について、わずかに減少していますが、計画全体に大きな影響を与えるものではありません。資格者数の増加については、中途採用や既存社員の資格取得促進制度などを通じて、中長期的に実現していく方針です。
建設事業トピックス
建設事業におけるトピックスとして、施工例のご紹介です。埼玉県の武蔵浦和のマンションの施工が、2024年5月に完了しています。また、最近では、マンション以外にも工業用不動産や、小学校などの公共施設の施工例がありました。新たな建設需要の取り込みに向けた取り組みとしてご紹介します。
事業の特徴・ビジネスモデル
不動産管理事業についてご説明します。不動産管理事業は、グループ内の不動産事業セグメントから年間約400から500戸の管理戸数増加を取り込みながら、グループ外の管理案件の獲得も進めており、管理戸数の積み上げを図ることでストック収益の拡大を図っています。
また、独自の不動産開発、販売も行っています。こちらは、比較的規模の小さな1棟当たり12部屋程度のアパートを開発しており、販売後の賃貸管理事業のストック収益につなげています。
ストックとしての積み上がりは大きくないものの、不動産販売による一時的な収益が大きくなるため、売上や利益の推移を見る上では、ストック収益の成長と不動産販売の割合を分けて見ることで、適切に成長性をご確認いただけます。 また、不動産管理事業においては、7つの事業を展開しており、それぞれのシナジーを活かしながら、幅広い収益機会の創出と、最終的にはストック収益の拡大に向けて取り組んでいます。
不動産管理事業セグメント業績
不動産管理事業のセグメント業績についてご説明します。スライド左側に記載のグラフをご覧ください。不動産管理事業における売上高と利益率の推移を表していますが、売上高は前年同期比15.1パーセントの成長となり、利益率も10パーセント前後を維持し推移しています。
なお、2021年、2022年の中間期よりも売上が低下しているように見えますが、これはストック収益としての管理収益だけではなく、過去には上半期に不動産販売があったのに対し、2023年度、2024年度はなかった影響によるものです。
スライド右側の表をご覧ください。特にご注目いただきたいのは、セグメント利益の成長です。利益率そのものは、前年同期比で若干の減少となっているものの、これは先ほど不動産管理事業に7つの事業があるとご説明したように、ストック収益以外の一過性の売上の影響によるもので、ストック収益そのものは順調に積み上がっている状況です。
主要KPIの推移:管理戸数の推移
そのストック収益の状況をご確認いただけるのが、こちらのスライドです。主要KPIとして、管理戸数の推移を表しています。管理戸数は確実に積み上がっており、この上半期で271戸の増加となりました。
また、グループ外の案件比率も高まってきています。ただし、当社グループ内の不動産事業においては、第4四半期に引き渡しが集中するため、下半期にグループ内からのさらなる管理戸数の積み上がりが見込める予定です。
不動産管理事業の中期経営計画進捗状況
不動産管理事業の中期経営計画に対する進捗状況についてです。おおむね計画どおりの進捗状況ですが、不動産管理事業において最も重要なのが、管理戸数の積み上げです。
2027年3月までに1,000棟、4万戸の管理戸数を目指しています。今期は下期も含め、12棟から13棟、600戸から700戸の増加見込みとなっており、現状の管理戸数である約3万5,000戸からすると、積み上げペースは若干弱い状況です。来期以降のさらなる積み上げ増加を目指して取り組んでいきます。
その他、マンション開発で2棟20億円の販売、自社投資用アパートで7棟11億円の販売を下期に見込んでいます。
不動産事業セグメント業績
不動産事業についてご説明します。不動産事業のセグメント業績です。スライド左側のグラフは不動産事業における売上高と利益率の推移を表しています。前年同期比14.7パーセントの減収となり、セグメント利益率についてもマイナス13.5パーセントとなりました。
不動産事業については、当初より昨年度より業績が多少弱くなることを織り込んでいたため、減収・減益とはなったものの想定の範囲内であり、今期の通期の業績見通しに対してビハインドしている認識はありません。
また、繰り返しお伝えしているとおり、第4四半期に引き渡しが集中し、利益が大きくなる季節性があります。
主要KPIの推移:販売戸数と未完成在庫数の推移
不動産事業における主要KPIとして、販売戸数の推移と、未完成在庫の推移をご説明します。スライド左側が販売戸数の推移、右側が未完成在庫の推移を表しています。
販売戸数については、当初より分譲販売できる在庫数が減少していた関係から、上期においては低調な推移となりました。
一方で、未完成在庫については積み上がってきている状況であり、今後完成し、分譲販売を進めることで、将来の収益となります。直近3年間で最も未完成在庫が積み上がっている状況となっています。
不動産事業の中期経営計画進捗状況
不動産事業の中期経営計画進捗状況についてご説明します。スライドの表のとおり、一部、三角が目立つ状況となっています。
その一番の大きな要因として、不動産開発の初期工程である土地の取得に難航している点が挙げられます。当社のみならず、業界全体で土地の取得が難しい状況となってきており、特にマンション建設に適した土地の取得が進んでいない状況ですが、過去にもこのようなケースは経験しています。今後もずっと土地の取得が難しいということではないため、中長期の見通しで、まだ心配する状況ではないと認識しています。
それ以外では、証券化事業の物件開発、収益拡大に向けたウエアハウジング機能強化、人的資本投資の推進など、各項目において進展が見られる状況です。
不動産事業セグメントトピックス
不動産事業セグメントのトピックスです。すでに完成しているものや、2025年の完成に向けてマンションの分譲販売を開始したものなどを紹介しています。関東の1都3県を中心に需要の高いマンションを展開しています。
配当性向50%に引き上げ、株主還元を強化
最後に、株主還元についてのご説明です。当社では、株主還元の強化のため、配当性向50パーセントを目安に引き上げる方針を打ち出しています。今期の予想は23円を予定しており、期初予想から変更はありません。
今後もさらなる企業価値向上に向けて取り組んでいきますので、引き続きご支援のほどよろしくお願いします。以上で、2025年3月期中間決算の説明を終了します。ありがとうございました。
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