【QAあり】日清オイリオ、中間期は計画通り 国内油脂は価格改定を着実に実行、加工油脂・化粧品油剤は海外展開で更なる成長を目指す
2024年度第2四半期(中間期)決算および2024年度(通期)業績予想サマリー
三木浩嗣氏(以下、三木):財務部長の三木です。はじめに、2024年度第2四半期決算および2024年度業績予想サマリーについてご説明します。
2024年度第2四半期決算のポイントの1つ目は国内油脂事業です。国内油脂は、業務用・加工用の販売数量は増加したものの、販売単価低下により減収となりました。また、汎用品を中心とした粗利単価低下およびオリーブオイルの原価上昇、物流費の増加もあり減益となりました。
2つ目は海外加工油脂事業です。海外加工油脂は、販売数量の増加に加え、販売単価の上昇により増収増益となっています。
3つ目は加工食品・素材事業です。加工食品・素材においても、チョコレートの販売数量増加、販売単価上昇およびMCTの適正価格での販売により増収増益となっています。
2024年度業績予想についてです。当中間決算期においては、概ね計画どおりに、順調に推移していますが、国内油脂の汎用品における市況低迷やカカオ相場上昇の影響もあり、下期はより厳しい環境を見込んでいます。
そのような中でも、国内での価格改定の実勢化に加え、ホームユースにおける販売数量回復を図るとともに、海外におけるチョコレート用油脂の拡販を行うことにより、計画達成を実現していきたいと思っています。
2024年度第2四半期(中間期)決算概要
2024年度第2四半期決算の概要です。連結業績は、売上高が2,611億円、営業利益が103億円、経常利益が89億円、親会社株主に帰属する中間純利益が75億円となり、増収減益となりました。
2024年度第2四半期(中間期)セグメント別実績(売上高・営業利益)
セグメント別の実績です。スライドに記載のとおり、油脂・油糧の売上高と営業利益は前年同期を下回り減収減益となっていますが、加工油脂をはじめ、他のセグメントでは増収増益となっています。
2024年度第2四半期(中間期)セグメント別 営業利益増減
セグメント別の営業利益の増減要因についてご説明します。油脂・油糧についてです。為替の円安やオリーブオイルの原価上昇等がコスト増加要因となりましたが、大豆・菜種の原料価格の低下等により、トータルでは52億5,000万円のコスト減少となっています。
一方で販売面においては、汎用品を中心とした販売単価低下が80億円の減益要因になっており、加えて物流費等の販管費の増加もあり、営業利益は88億円から52億円へと前年同期比で36億円の減益となっています。
2024年度第2四半期(中間期)セグメント別 営業利益増減
加工油脂についてです。Intercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.(以下、ISFマレーシア)における原料代と製造費他での34億円のコスト増加や、パーム油取引に関わる時価評価でのマイナス要因はありましたが、販売単価上昇および販売数量増加により増益となり、Intercontinental Specialty Fats (Italy) Co., Ltd.(ISF Italy)とIntercontinental Specialty Fats (Shanghai) Co., Ltd.(以下、ISF上海)も合わせて、海外加工油脂は前年同期比4億5,000万円の増益となりました。
さらに国内加工油脂の増益も加えて、営業利益は全体で21億円から29億円に増加しています。
2024年度第2四半期(中間期)セグメント別営業利益増減
加工食品・素材とファインケミカルについてです。加工食品・素材セグメントにおいては、チョコレートにおける大東カカオの販売数量増加および価格改定の実現、さらには機能素材・食品におけるMCTの適正価格での販売により、営業利益は全体で前年同期比13億円の増益となりました。
また、ファインケミカルセグメントにおいても、国内外における化粧品原料の販売数量増加により増益となっています。
連結貸借対照表・キャッシュフロー
スライドに連結貸借対照表とキャッシュフローを記載しています。以上が、2024年度第2四半期の決算概要です。
2024年度(通期) 業績予想
2024年度の通期業績予想についてご説明します。業績予想に変更はなく、売上高が5,350億円、営業利益が210億円、経常利益が200億円、親会社株主に帰属する当期純利益が145億円となっています。
2024年度(通期)セグメント別予想(売上高・営業利益)
セグメント別の予想については記載のとおりです。
2024年度(通期)セグメント別 営業利益増減
営業利益の増減要因についてご説明します。
油脂・油糧についてです。為替の円安やミール販売での販売単価の低下、さらにはオリーブオイルの原価上昇等がコスト増加要因になると見込んでいますが、大豆・菜種の原料代低下により、トータルでは59億5,000万円のコスト減少を計画しています。
一方、販売面においては、販売数量を増益要因と見込んでいますが、中間期と同様に、販売単価の低下と販管費の増加を想定しており、営業利益は109億円としています。
2024年度(通期)セグメント別 営業利益増減
加工油脂についてです。ISFマレーシアにおいて、原料代と製造費他で150億円のコスト増加を見込んでいますが、販売単価上昇と販売数量増加を計画しており、加えてパーム油取引に関わる時価評価の影響もあり、海外加工油脂では前期比22億5,000万円の増益を計画しています。
さらに、国内加工油脂の増益も加えて、営業利益はこのセグメント全体で45億円から68億円へと増益を計画しています。
2024年度(通期)セグメント別 営業利益増減
加工食品・素材とファインケミカルについてです。加工食品・素材セグメントについては、MCTの適正価格での販売等により増益を計画しています。ファインケミカルセグメントについても、化粧品原料の販売数量増加、さらには適正価格での販売により増益を計画しています。
経営指標の状況
久野貴久氏(以下、久野):代表取締役社長の久野です。私から中期経営計画の進捗状況についてご説明します。
はじめに、経営指標の状況をお示しします。スライドにあるとおり、2021年度から2024年度の目標に沿ってしっかりと進めていきます。
成⻑性 BtoC 国内 ホームユース
領域ごとの市場環境、上期の取り組み状況、そして次年度につながる下期以降の課題・取り組みをご説明します。
国内のホームユースの領域です。市場環境としては、食品やエネルギー価格の上昇等に伴う家計負担増による節約志向・生活防衛意識の高まりが顕在化しています。
そのような中で家庭用食用油市場は、金額ベースで拡大するものの数量面ではクッキングオイル市場が減少傾向となっています。
上期の取り組み状況としては、オリーブオイルの問題があり、安定供給および適切な価格形成に取り組んできました。加えて、クッキングオイルの価格改定についても、7月に「10月1日から」と発表していますが、こちらの実勢化に向けた取り組みを推進してきています。
また、メディアによる健康情報の後押しを受けて大きく拡大したアマニ油市場の取り込みも上期のテーマでした。
これらを受けた下期以降の課題・取り組みですが、筆頭はオリーブオイルです。主力ブランドの「BOSCO」とオリーブブレンド油の活用によるオリーブオイルの販売数量回復を目指していきます。数量面では、上期は市場全体で前年の71パーセントという状況ですので、ここの回復に向けて取り組んでいきます。
クッキングオイルについては、価格改定の実勢化と販売数量回復への取り組みを強化していきたいと考えています。
加えて、「日清サラダ油」発売100周年で上市した酸化対策のサビないオイル、「日清ヘルシークリア」のプロモーション強化と店頭露出アップに向けた取り組みをさらに進めていきます。
そして、拡大を続けるアマニ油市場の定着化のために、継続的な仕掛けを実践していこうと考えています。
成⻑性 BtoB 国内 業務用・加工用・加工油脂
国内の業務用・加工用・加工油脂の領域です。
まずは市場環境についてです。外食市場は、国内の人流回復に加えてインバウンド需要も大きく寄与し、徐々に回復しています。中食市場は、業態間の格差はあるものの、量販店惣菜を中心に堅調に推移しています。
一方で、外食産業では人手不足、エネルギーコスト高騰などが大きく影響しています。そして、バルク物流を中心に「2024年問題」が顕在化しています。
上期の取り組み状況としては、先ほどの国内のホームユース領域と同様に、価格改定の実勢化に向けて取り組みを推進しているところです。
業務用の取り組みにおいて特徴的なことをお話しすると、容器に関しては従来の斗缶からピローオイルへの切り替えの推進、あるいは長持ち機能を有するフライ油など、いわゆるソリューション型商品が堅調に推移しています。
加えて、各ユーザー固有の課題に対応した機能性油脂の提案です。例えば、炊飯油や麺さばき油など、業態ごとの課題を解決するための提案をさらに積極的に進めています。
このような中での下期以降の課題・取り組みですが、価格改定の実勢化が1つです。加えて、ソリューション提案のさらなる継続、ユーザーサポート機能、カスタマーサポート機能の発揮による潜在需要の掘り起こし・開拓、そして業務用お役立ちサイト活用による当社機能の認知拡大から実績化に向けた取り組みをさらに推進していきます。
また、5月にスタートした「インキュベーションスクエア」のB棟のような、お客さまとの共創の場をフルに活用しながら、取り組みを推進していこうと考えています。
成⻑性 BtoB チョコレート用油脂
BtoBのチョコレート用油脂の領域です。市場環境については、ご存知のとおりココアバターの価格が高騰しており、代替としてチョコレート用油脂の需要が堅調です。また、パーム油相場についても底堅く推移しています。そして、物流費およびユーティリティコストの上昇が市場環境として挙げられます。
上期の取り組み状況については、既存顧客へのファーストサプライヤーとしての地位向上・堅持に資する取引拡大を狙った取り組みを推進しています。さまざまな製品供給に向けた取り組みを、より積極的に推進しています。
ISFマレーシアにおいては、チョコレート用油脂の増産設備工事を決められた期限の中で推進しています。ISF上海ではチョコレート用油脂の販路を拡大しており、着実に数量と金額の積み上げが行われています。
下期以降の課題・取り組みについては、カカオ原料高騰による不可逆的な市場変化に対応したチョコレート用油脂の拡販と投資効果の最大化を実現するため、すでに決定している投資を着実に進めていきたいと思っています。
そして、欧州顧客との戦略的取り組みによるグローバルサプライチェーンの強化と、欧⽶市場でのさらなる成⻑のベースとなる生産拠点の拡充について、いよいよ計画化されていく中で、準備を始めています。
加えて、製品ラインナップ拡充および技術サポート体制強化により、中国・ASEAN市場への付加価値品の拡販をさらに進めていきます。
いずれにしても、引き合いが強い中で、あらゆる面で供給能力を高めていくことが、足早に進めるべき課題・取り組みだと認識しています。
成⻑性 BtoB 化粧品油剤
化粧品油剤の領域です。市場環境については、中国において化粧品市場の成長に減速傾向も見られますが、EC向け化粧品の販売は堅調です。
国内においては、化粧品需要はコロナ禍明けから回復基調が継続しています。また、これは対面業界の変化が影響していると思いますが、国内外のいわゆるファブレスブランドが拡大しています。
これに対しての上期の取り組み状況ですが、中国において上海・広州でのセミナーあるいは展示会の開催、テクニカルサポートセンターを活用したソリューション提案や顧客の囲い込み等に注力しています。
国内のメイクアップ向け高付加価値製品の販売が堅調に推移していることや、スキンケア・ヘアケア用途の製品の販売が好調に推移しているといった状況が挙げられます。
下期以降の課題・取り組みです。日本と上海のテクニカルサポートセンターの技術連携による既存顧客への拡販を図っていきます。また、市場成長に連動するだけではなく、さらに収益性の高い製品を拡販することで、プラスアルファの収益を狙っていきます。
加えて、主要製品のメイク向け需要が海外で拡大してきており、先ほどのチョコレート用油脂と同様に、下期から次年度に向けて生産力のさらなる増強を計画・検討する段階に差し掛かっているところです。
成⻑性 BtoBtoC 機能素材・食品 MCT
BtoBtoC領域における機能素材・食品、特にMCTに関連する内容をスライドに特記しています。
市場環境については、家庭用食用油におけるMCTの市場規模が継続的に拡大しており、市場規模は約34億円です。MCT認知度は、高い水準で推移しています。我々は、中期経営計画中に50パーセントを目標にしていました。あくまでも当社調べになりますが、約58パーセントと比較的高い数字を維持しています。
このような中における、上期の取り組み状況です。機能性表示食品「日清MCTオイル」は、体脂肪やウェスト周囲径を減らすことに加え、日常活動時の脂肪燃焼を高めるといった、いわゆるWヘルスクレーム商品としてリニューアルしています。
新たな機能性表示として、さまざまな前提は付いていますが、脚の筋力を維持するということで届け出をし、公表しています。また、低栄養の課題を解決します。こちらは商品開発でもありますが、少量高エネルギー食品の販売を拡大してきています。トータルの数字はまだ小さいのですが、伸び率は顕著に上がってきています。
下期以降の課題・取り組みとしては、先ほどのWヘルスクレーム商品について、美容痩身に加え、脂肪燃焼体質化をフックとしたMCTオイルの間口を拡大していきます。
また、主要EC販売先(通販サイト)のチャネルを活用した少量高エネルギー商品の在宅介護市場の需要喚起・購入促進を進めていきたいと考えています。そして、フレイル市場をターゲットとした潜在需要開拓に向け、市場開発ストーリーの構築を進めていくことを考えています。
地球環境/信頼でつながるサプライチェーン
持続性、地球環境・信頼でつながるサプライチェーンについてご紹介しています。特にCO2削減を着実に進めており、成果を上げつつあります。
質疑応答(要旨)①
質問者:10月からの価格改定について、現在の市況の環境と合わせて足元の進捗や課題があれば教えてほしい。
久野:足下の状況については、2022年の価格改定の状況と比べると若干苦労している。今回価格改定に踏み切った要因は、国内の物流費の上昇が大きい。またユーティリティコストの上昇、為替の影響もある。
為替については昨年以前と比較し円安水準であるが、価格改定を発表した当時と比べると円高に振れたこともあり、なかなか価格改定が浸透していないことを課題として認識している。今後も引き続き、当社を取り巻くコスト環境について顧客へ丁寧に説明することにより、価格改定の浸透をしっかりと図っていきたい。
質疑応答(要旨)②
質問者:国内油脂・油糧事業において、機能性商品の伸びが実現できているが要因は何か?
久野:中食市場を中心に、お客さまサイドで従来以上においしさ・食べやすさ・見た目等への要求が進んでいる。当社は、このような課題をお客さまと一緒に解決していくユーザーサポート機能を有しているが、この機能が軌道に乗り始めている。
加えて、5月に磯子事業場内にインキュベーションスクエアが稼働し、お客さまと共創の取り組みを進めている。例えば、感応度をデータ化し、それを活用してサンプルを作成している。また、昨年度後半からカスタマーサポート機能を強化し、当社製品導入後のお客さまへのサポートを丁寧に実行している。
このように、商品そのものの機能を高めることと、その商品を定着させ長期的にお使いいただくためのサービスの両面での取り組みにより、実績化とさらなる伸長につながっている。
質疑応答(要旨)③
質問者:チョコレート用油脂における見通しを教えてほしい。
久野:チョコレート用油脂全体的に需要が増大している。その中でも、CBEはココアバターの価格高騰に伴い代替としての需要が強まっており、価格改定(新たな価格の均衡点)が徐々に実現できている状況である。
上期においても価格改定は進んでおり、特に第4四半期以降に価格改定の影響が顕著に出てくるのではないかと考えている。
質疑応答(要旨)④
質問者:「ビジョン2030」で掲げる営業利益300億円の水準について、どのような点が利益貢献するのか教えてほしい。
久野:考え方としては、各中期経営計画の期間中の連結営業利益平均値をしっかりと上げていくことが最重要と考えている。それに向けて、成長の利益貢献の基盤となるのはチョコレート用油脂のさらなる拡販、およびこれを下支えするサプライチェーンの構築と生産力の増強である。
加えて、ファインケミカル事業における化粧品油剤の拡販も重要であり爆発的にとはいかないが、着実に収益を上げていきたい。また、BtoB領域においてはすでに国内では成果が出始めているが、お客さまとの共創の中でさらなる価値の追求を行っていく。
また、北米も含む国外においてもこの価値の追求を事業展開の1つの骨格としながら、次期中期経営計画を組み立てていく。
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