*16:08JST セレコーポレーション Research Memo(8):長期経営ビジョン「ビジョン2030」を策定
■セレコーポレーション<5078>の成長戦略
1. 「ビジョン2030」の策定
同社では、2025年2月期を始期として長期経営ビジョン「ビジョン2030」を策定し、2030年に向けて「ありたい姿」を定め、今後のさらなる持続的な成長と、中長期的な企業価値の向上の達成に向けた方針や戦略を明確にした。同計画は、次世代の経営者へのバトンタッチを視野に入れ、さらに長期の経営ビジョンである「CEL未来戦略」の実現に向けた通過点の位置付けである。「ありたい姿」を「企業価値の極大化と物心両面の幸せの実現」としており、アパート専門メーカーのニッチトップとして高付加価値追求による粗利益率の向上を推進する。また、同社では、企業価値の向上において人的資本は経営の根幹であると捉えている。計画においても「ありたい姿」をいかに実現するかという観点から、人財戦略を策定・実行して持続的な企業価値向上を目指す。定量目標に関しては、2030年2月期に売上高400億円、営業利益40億円、営業利益率10.0%、ROE10.0%、PBR1.0倍を掲げている。収益構造については、ストック事業の比率を2023年2月期と同様に40.0%で維持し、全社コストをストック事業の利益で賄う方針だ。数字ありきではなく、理念・戦略ありきの計画であり、計数目標の達成と社員の物心両面の幸せの実現を両輪で推進することで、中長期的な企業価値の向上やステークホルダーのより深い満足につながると弊社では見ている。
2. 全社戦略
「ビジョン2030」の全社戦略として、「入るを量りて出ずるを制す」を念頭に、限りある経営資源を選択と集中によって絞り込み、圧倒的な差別化により付加価値を提供する。「セレフィロソフィ」の原理原則である「ニッチャーであれ」に基づき、「ゲスト」「エリア」「構造」「対象」を選択と集中により絞ったニッチ戦略を進める。ゲストとなるターゲットを、住まいにこだわりを持つ「未来を担う若者たち」に絞り込み、東京圏(1都3県)に事業エリアを限定する。開発においては、東京都城南・城西地区の角地に特化し、耐震性を兼ね備えた、自社工場生産により高品質が保てる鉄骨造に限定する。加えて、「My Style vintage」による差別化商品の展開を進め、リスクが低く市場成長率が高い「収益不動産」を重視する。これらのニッチ戦略により経営資源を集中させ、圧倒的な差別化による付加価値の提供を実現する。各施策の実行に際しては、取締役常務執行役員が委員長となり、下部組織に分科会を設けて改革を推進する。
3. 重点施策
「ビジョン2030」の重点施策として、「収益力の改善」「生産性の向上」「アパート経営に派生する新規ビジネスモデルの構築」を掲げている。収益力の改善に向けては、「My Style vintage」の商品構成比100%を目標に、同社独自の賃貸・建物管理メニューを拡充する。また、足元では「My Style vintage」の最上位グレード商品「vintage-Gran」の新設が予定されている。コンセプトに沿った高級感を重視した内装を計画しており、従来製品と比較して同社のブランド価値をさらに向上させる狙いがあると考えられる。生産性の向上に向けては、デジタル化による効率化や技術改革による工期短縮、ロボット等による自動化推進、共通部材による生産の効率化を進める。アパート経営に派生する新規ビジネスモデルの構築に向けては、請負・開発・管理以外のシナジーの効いた事業による多面的経営の展開を検討する。付加価値向上による収益力強化と効率性重視による費用削減を両輪で推し進め、高利益体質を創出していく。また、各施策の目的・手段・効果・目標を設定し、改革・改善により課題解決を目指す。
4. 投資計画
同社では、「ビジョン2030」で作成した定量目標を達成するため、損益バランスを考慮しつつ、2030年2月期までに総投資額55億円規模の投資計画を定めた。内訳として、セレアカデミーの運営や働き方改革等の人財開発に7.5億円、設計施工や生産の技術改革に7.5億円、プロセス改善による効率化を図るべくデジタル改革に5億円、M&Aや資本提携による多面的経営展開に向け35億円の投資を見込んでいる。同社の投資計画は、現状の資金残高や不動産事業資金、2年分の内部留保、運転資金を総合的に勘案したものであり、損益バランスに考慮した実現可能性の高い投資計画であると弊社では見ている。
5. 人的資本経営
同社では、人的資本を企業価値の向上や経営の根幹であると捉えている。「ビジョン2030」では、「人財の活性化」「人財育成」「人財獲得」「待遇・制度整備」の観点において、企業価値を最大限に創造するための施策を実行する。具体的な施策について、「人財の活性化」においては、役職定年制を導入するとともに、従業員のエンゲージメント向上に向けた各種施策、時間や場所にとらわれない働き方を推進する。「人財育成」においては、セレアカデミーの運営を通じて、経営陣・社員が持つべき判断基準・行動指針を明確にする。また、キャリアパスを定め次世代経営者の育成を進めるとともに、リスキリング(学び直し)の推進により専門性の高い人財を育成していく。「人財獲得」においては、企業価値の創造を支える専門性の高い多様な人財を採用する方針である。新卒・中途を含む採用戦略の策定や新卒者の育成体制の確立を進め、次世代を担う若手の採用にも注力する。また、ジョブ型雇用についても促進する。「待遇・制度整備」においては、平均年収900万円を目標に、ベースアップや業績配分の総原資見直しを行う。週休3日制導入についても検討を進めていく。
また、人的資本経営の一環として、業務プロセスや統制を自動化・外注化し、高度な専門性を持つ人財の比重がより高い配置構成とすることで、高付加価値創造体制への構築強化を図る。
2025年2月期中間期においては、主要分野で着実な進捗が見られた。人財の活性化においては、働き方改革と従業員のwell-being(幸せ)の両輪を強化する取り組みを推進している。働き方改革では、職場環境の改善と柔軟な働き方の導入を通じて、従業員の生産性と満足度を向上させることを目指している。この一環として、10月に従業員アンケートを実施し、従業員の意識調査に基づいたさらなる改善策を検討している。人財育成の観点では、セレアカデミーの開校準備が順調に進められている。2026年2月期にスモールオープンを予定しており、学部や学科の体系的な構築が進行中である。人財獲得面では、2024年9月までに18名の採用を達成し、10月以降も引き続き新規採用を予定している。エージェントとの密な連携とレスポンスの速さを重視する採用戦略が奏功しており、人財確保における実効性が確認できる。また当期より導入されたジョブ型の新人事制度は、個々の従業員の専門性と成果に基づいた評価を行い、より公正かつ透明性の高い制度設計を実現している。この制度は、従業員のモチベーション向上に寄与し、優秀な人財の定着を図る重要な役割を果たしている。さらに、待遇と制度の整備に関しては、年間休日を前期の120日から126日へと増加させたことに加え、有給休暇取得率は85%を維持しており、従業員の休暇取得を推奨する企業の姿勢が反映されている。加えて、当期の利益計画が達成された場合はさらに休日を増やす予定であり、従業員の働きやすさを重視する企業文化の一端を示している。各部署において業務の優先度を明確化することで、業務効率を図っており、働き方改革による労働環境の改善が一層進んでいることが読み取れる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
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1. 「ビジョン2030」の策定
同社では、2025年2月期を始期として長期経営ビジョン「ビジョン2030」を策定し、2030年に向けて「ありたい姿」を定め、今後のさらなる持続的な成長と、中長期的な企業価値の向上の達成に向けた方針や戦略を明確にした。同計画は、次世代の経営者へのバトンタッチを視野に入れ、さらに長期の経営ビジョンである「CEL未来戦略」の実現に向けた通過点の位置付けである。「ありたい姿」を「企業価値の極大化と物心両面の幸せの実現」としており、アパート専門メーカーのニッチトップとして高付加価値追求による粗利益率の向上を推進する。また、同社では、企業価値の向上において人的資本は経営の根幹であると捉えている。計画においても「ありたい姿」をいかに実現するかという観点から、人財戦略を策定・実行して持続的な企業価値向上を目指す。定量目標に関しては、2030年2月期に売上高400億円、営業利益40億円、営業利益率10.0%、ROE10.0%、PBR1.0倍を掲げている。収益構造については、ストック事業の比率を2023年2月期と同様に40.0%で維持し、全社コストをストック事業の利益で賄う方針だ。数字ありきではなく、理念・戦略ありきの計画であり、計数目標の達成と社員の物心両面の幸せの実現を両輪で推進することで、中長期的な企業価値の向上やステークホルダーのより深い満足につながると弊社では見ている。
2. 全社戦略
「ビジョン2030」の全社戦略として、「入るを量りて出ずるを制す」を念頭に、限りある経営資源を選択と集中によって絞り込み、圧倒的な差別化により付加価値を提供する。「セレフィロソフィ」の原理原則である「ニッチャーであれ」に基づき、「ゲスト」「エリア」「構造」「対象」を選択と集中により絞ったニッチ戦略を進める。ゲストとなるターゲットを、住まいにこだわりを持つ「未来を担う若者たち」に絞り込み、東京圏(1都3県)に事業エリアを限定する。開発においては、東京都城南・城西地区の角地に特化し、耐震性を兼ね備えた、自社工場生産により高品質が保てる鉄骨造に限定する。加えて、「My Style vintage」による差別化商品の展開を進め、リスクが低く市場成長率が高い「収益不動産」を重視する。これらのニッチ戦略により経営資源を集中させ、圧倒的な差別化による付加価値の提供を実現する。各施策の実行に際しては、取締役常務執行役員が委員長となり、下部組織に分科会を設けて改革を推進する。
3. 重点施策
「ビジョン2030」の重点施策として、「収益力の改善」「生産性の向上」「アパート経営に派生する新規ビジネスモデルの構築」を掲げている。収益力の改善に向けては、「My Style vintage」の商品構成比100%を目標に、同社独自の賃貸・建物管理メニューを拡充する。また、足元では「My Style vintage」の最上位グレード商品「vintage-Gran」の新設が予定されている。コンセプトに沿った高級感を重視した内装を計画しており、従来製品と比較して同社のブランド価値をさらに向上させる狙いがあると考えられる。生産性の向上に向けては、デジタル化による効率化や技術改革による工期短縮、ロボット等による自動化推進、共通部材による生産の効率化を進める。アパート経営に派生する新規ビジネスモデルの構築に向けては、請負・開発・管理以外のシナジーの効いた事業による多面的経営の展開を検討する。付加価値向上による収益力強化と効率性重視による費用削減を両輪で推し進め、高利益体質を創出していく。また、各施策の目的・手段・効果・目標を設定し、改革・改善により課題解決を目指す。
4. 投資計画
同社では、「ビジョン2030」で作成した定量目標を達成するため、損益バランスを考慮しつつ、2030年2月期までに総投資額55億円規模の投資計画を定めた。内訳として、セレアカデミーの運営や働き方改革等の人財開発に7.5億円、設計施工や生産の技術改革に7.5億円、プロセス改善による効率化を図るべくデジタル改革に5億円、M&Aや資本提携による多面的経営展開に向け35億円の投資を見込んでいる。同社の投資計画は、現状の資金残高や不動産事業資金、2年分の内部留保、運転資金を総合的に勘案したものであり、損益バランスに考慮した実現可能性の高い投資計画であると弊社では見ている。
5. 人的資本経営
同社では、人的資本を企業価値の向上や経営の根幹であると捉えている。「ビジョン2030」では、「人財の活性化」「人財育成」「人財獲得」「待遇・制度整備」の観点において、企業価値を最大限に創造するための施策を実行する。具体的な施策について、「人財の活性化」においては、役職定年制を導入するとともに、従業員のエンゲージメント向上に向けた各種施策、時間や場所にとらわれない働き方を推進する。「人財育成」においては、セレアカデミーの運営を通じて、経営陣・社員が持つべき判断基準・行動指針を明確にする。また、キャリアパスを定め次世代経営者の育成を進めるとともに、リスキリング(学び直し)の推進により専門性の高い人財を育成していく。「人財獲得」においては、企業価値の創造を支える専門性の高い多様な人財を採用する方針である。新卒・中途を含む採用戦略の策定や新卒者の育成体制の確立を進め、次世代を担う若手の採用にも注力する。また、ジョブ型雇用についても促進する。「待遇・制度整備」においては、平均年収900万円を目標に、ベースアップや業績配分の総原資見直しを行う。週休3日制導入についても検討を進めていく。
また、人的資本経営の一環として、業務プロセスや統制を自動化・外注化し、高度な専門性を持つ人財の比重がより高い配置構成とすることで、高付加価値創造体制への構築強化を図る。
2025年2月期中間期においては、主要分野で着実な進捗が見られた。人財の活性化においては、働き方改革と従業員のwell-being(幸せ)の両輪を強化する取り組みを推進している。働き方改革では、職場環境の改善と柔軟な働き方の導入を通じて、従業員の生産性と満足度を向上させることを目指している。この一環として、10月に従業員アンケートを実施し、従業員の意識調査に基づいたさらなる改善策を検討している。人財育成の観点では、セレアカデミーの開校準備が順調に進められている。2026年2月期にスモールオープンを予定しており、学部や学科の体系的な構築が進行中である。人財獲得面では、2024年9月までに18名の採用を達成し、10月以降も引き続き新規採用を予定している。エージェントとの密な連携とレスポンスの速さを重視する採用戦略が奏功しており、人財確保における実効性が確認できる。また当期より導入されたジョブ型の新人事制度は、個々の従業員の専門性と成果に基づいた評価を行い、より公正かつ透明性の高い制度設計を実現している。この制度は、従業員のモチベーション向上に寄与し、優秀な人財の定着を図る重要な役割を果たしている。さらに、待遇と制度の整備に関しては、年間休日を前期の120日から126日へと増加させたことに加え、有給休暇取得率は85%を維持しており、従業員の休暇取得を推奨する企業の姿勢が反映されている。加えて、当期の利益計画が達成された場合はさらに休日を増やす予定であり、従業員の働きやすさを重視する企業文化の一端を示している。各部署において業務の優先度を明確化することで、業務効率を図っており、働き方改革による労働環境の改善が一層進んでいることが読み取れる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
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