フジッコ、売上高は回復基調 下期は値上げ後の物量確保を最重要テーマとし、年末商戦では「丹波黒黒豆」の拡販に注力

投稿:2024/11/15 19:00

2024年度 経営方針

福井正一氏:代表取締役社長執行役員の福井です。初めに、私から上期のトピックスをご説明します。

今期は、経営方針として「守りから攻めへ」というスローガンを掲げ、以下の6つのテーマに基づいて進めてきました。1つ目は豆事業全体の浮上、2つ目は昆布事業のさらなる強化、3つ目は「成長の芽」の事業推進、4つ目はDXの推進、5つ目は稼ぐチカラの復元、6つ目は働きがい改革です。

守り(基盤固め)から攻め(飛躍)へ

守りから攻めへということで、トップラインを伸長させる目標を立てて、実行してきました。

トップラインは、回復基調になってきており、2022年度から2024年度へ向けて、20億円近く売上を伸長させました。

2019年度の水準には戻っていませんが、今期は豆製品の浮上に取り組み、成果が出ました。

煮豆においては、テレビCMを放映したこともあり、「豆小鉢」が大きく伸長しました。

蒸し豆や水煮などの素材豆は、増量企画を実施して、売上を伸長させてきました。

ヨーグルト製品の拡大については、「カスピ海ヨーグルト」の配荷率が上昇しており、継続して配荷が拡大しています。

また、パブリシティ活用により、大豆をまるごと使った「まるごとSOYカスピ海ヨーグルト」が、高位で安定しています。

さらに、昆布製品の安定成長ができています。圧倒的なブランド力によって「ふじっ子煮」が伸長し、塩こんぶは、大容量ときざみタイプが伸長しています。

豆事業全体の浮上 ~ 2つのPJ活動 ~

豆事業全体の浮上について、2つのプロジェクト活動を行いました。1つ目が、価値向上プロジェクトです。こちらは主に、商品の改善と改良に取り組みました。美味しさの革新のための技術開発、ロス削減に向けた工程の見直し、生産の平準化に向けて、賞味期限を延長しました。

また、環境負荷を抑えた製品の開発も手がけています。

2つ目は、販売強化プロジェクトです。プロモーション等と連携した店頭の露出度をアップさせる活動や、主にPOSデータを活用して、棚割提案を行ってきました。

そして、「丹波黒黒豆」の通年販売強化や、新たな食シーンの提案にチャレンジしています。

豆事業全体の浮上 ~ 豆フォーラム ~

「豆フォーラム」を今回は2回、大阪と東京で実施しました。「フジッコわくわくフォーラム」という名前で「お豆で“腸”元気!」をテーマに、ゲストを招いて実施しました。

内藤裕二先生は、主に腸内について研究している、京都府立医科大学 大学院の教授です。東京会場のゲストとして、ヴァイオリニストの廣津留すみれさま、大阪会場では、タレントの山之内すずさまを招き、パネルディスカッションに参加いただきました。

このイベントは、メディアでかなり取り上げられました。「YouTube」やSNSを通して、広く広報され、多くの視聴者にも好意的に見ていただいています。大阪では1,000名以上入る会場で行ったのですが、非常に盛況で、多くの方々に参加いただきました。

豆には、腸内で発酵する食物繊維やタンパク質が豊富に入っています。内藤先生も、大豆が健康に良いと勧めていることが、インパクトがあったようです。

豆事業全体の浮上 ~ 豆小鉢 ~

「豆小鉢」のテレビCMを6月に実施しました。今回は少し趣向を変えて、子どもたちを起用し、「ごはんづくりおたすけ隊」として、煮豆を提案しています。さらに、おかず畑の「おばんざい小鉢」も同様に訴求し、宣伝してきました。

さらに、9月には丹波の素材を活かした新商品を2品、上市しました。丹波の小豆と黒豆を「豆小鉢」として販売しました。「豆小鉢」とは、2段重ねの少量タイプの容器になっています。

こちらが功を奏し、煮豆については2桁成長、9月は130パーセントを超える成果を出すことができました。

豆事業全体の浮上 ~ 蒸し豆 ~

素材豆については、「20周年企画」として蒸し豆の増量を行い、市場シェアも35パーセントを超えました。第3四半期についても、シェアをしっかり確保していきます。

ヨーグルト製品の拡大

「カスピ海ヨーグルト」についてです。以前から好評いただいている「カスピ海ヨーグルト」のプレーンタイプ、脂肪ゼロタイプに加えて、4年ほど前から「まるごとSOYカスピ海ヨーグルト」を販売しています。

2023年3月には、「大豆で作ったヨーグルト」の発酵菌をクレモリス菌に変えることで、よりおいしく、粘りが強く、健康的な商品に改良し、非常に好調に推移しています。「カスピ海ヨーグルト」シリーズのブランド価値向上に、今後も注力していきたいと考えています。

昆布事業のさらなる強化

昆布事業のさらなる強化についてです。昆布事業では、主力の「ふじっ子煮」が、好調に推移しています。4月から6月、そして9月から10月にかけてテレビCMを実施しました。

スライドのグラフを見ると、2月に少し前年を下回ってしまっていますが、こちらは、2023年3月の値上げ前の駆け込み需要の反動減によるものです。

9月に値上げを実施しましたので、売上をやや落としたものの、10月にはすでに100パーセント以上に回復しています。したがって、今後はこの商品が再び、牽引していくことを期待しています。

昆布事業のさらなる強化 ~ 生昆布の利活用➀ ~

昆布製品については、新商品として「MIRAI」シリーズを展開しています。

「MIRAI」シリーズの原料には生昆布を使用しており、乾燥させていない昆布を使って、佃煮を作っています。

他の「ふじっ子煮」商品よりもコリコリした食感があり、消費者からも非常においしいとの感想をたくさんいただいています。

そしてなにより、生産者の方々から非常に感謝されています。なぜなら、生昆布には乾燥工程がありませんので、生産者や漁師の方々が、以前よりも楽ができます。腰を痛めなくて済むようになり、生産者の健康にも役立つ商品となっています。

この商品はSDGsに対応した商品であり、エシカル消費も含めた需要が今後も見込まれるのではないかと考えています。

現在は「わさび生昆布」「うま辛生昆布」「梅入り生昆布」の3品を市場に導入しています。

昆布事業のさらなる強化 ~ 生昆布の利活用➁ ~

生昆布は他の商品にも利活用しています。今回、9月にテスト販売を実施しました。無限に利用できるという意味の「MUGEN-KOMBU」という名前をつけて、さまざまな食べ方をご提案しています。

生昆布で作った昆布ペーストで、「プレーン」「しその実生姜」「青唐山椒」の3つのタイプで、現在、市場への導入を図っています。

実験的に大阪・梅田の阪急百貨店の地下にて、試食販売を実施しました。大々的に展開し、1週間ほど継続して販売したところ、1日に平均300個程度を販売しました。

1個700円と安くはない単価ですが、1日300個ほど売れたということは、テスト販売とはいえ、非常に良い結果を得たと思っています。今後は高価格帯のスーパーや百貨店のような店頭で、このような商品を広げていきたいと考えています。

「成長の芽」の事業推進

「成長の芽」の事業推進についてです。通信販売事業と素材事業の2つが「成長の芽」の核となります。今期、紅麹の問題によって、サプリメント業界全体が落ち込みました。

通信販売事業は、機能性素材の市場が一時的に冷え込んだことや、広告宣伝の効果が出ず、当社製品の中で一番ボリュームが大きい「善玉菌のチカラ」が落ち込みました。

今後の取り組みとしては、宣伝広告を実施しながら「善玉菌のチカラ」を継続して販売していきます。加えて、自社の通販サイトだけではなく、ECモールの販売強化を行います。

また、「元気のおまもり」もリニューアルして上市しています。

素材事業では、機能性素材の新規採用数が伸び悩みました。既存採用先の売上もダウンしたことが課題となっています。

今後の取り組みとしては、フジフラボンでは肌がきれいになる「肌機能」の提案強化、クロノケアでは「抗疲労」の提案強化、昆布ミネラルでは「新製品」の開発と拡販強化に挑戦していきます。

稼ぐチカラの復元

稼ぐチカラの復元が1番の課題です。スライドのグラフでお示ししているように、営業利益が年々、落ち込んでいます。スライドは上期の実績ですが、2018年の23億円に対し、今年度は2億5,700万円、約10分の1まで落ち込んでしまいました。営業利益をなんとか回復していくために、今後もフジッコの経営改革を進めていかなければいけません。

収益認識控除・販促広告費が増加していることも1つの課題となっています。また、人件費の増加、トータル固定費の増加により、コストや経費がどんどん増加していることも課題です。

営業利益の改善に向けて、経営幹部で定期的に会議を実施しています。これからの年末商戦に向けて、しっかりと販売強化していきますので、どうか私たちに応援のほど、よろしくお願いします。

連結損益計算書(前年との比較)

尾西輝昭氏:上席執行役員経営企画本部長の尾西です。私からは、中間決算の概要と通期の見通しについてご説明します。

まず、中間期の業績の確認です。売上高は280億5,500万円で5億8,900万円の増収、増減率2.1パーセント増となりました。ただし、原価率・販管費率ともに上昇した結果、営業利益は2億5,700万円で4億300万円の減益、増減率61パーセント減となっています。

経常利益は4億4,900万円、中間純利益は若干の特別利益があったため3億7,800万円で2億100万円の減益、増減率34.7パーセント減という結果となりました。

1株当たりの純利益は13円29銭で、約7円の減少となっています。

営業利益の増減要因分析(前年との比較)

営業利益の増減要因の分析です。積極的な広告宣伝投資により物量確保を目指しましたが、販売諸経費の増加により限界利益が減少し、ベースアップに伴う人件費の増加の負担も大きくなりました。結果として、6億6,000万円の営業利益が2億5,700万円と、前年を4億円下回っています。

スライドに、その他固定費の増加とお示ししていますが、こちらもコストダウンがなかなかうまく進まなかったというのが、中間期の結果でした。

連結製品分類別売上高(前年との比較)

製品分類別売上高です。惣菜製品が減収となりましたが、それ以外の製品は増収となりました。

惣菜製品は、テレビCM放映を実施した「おばんざい小鉢」が、単体では前年を上回る結果となっています。

一方で、日持ちのしない日配惣菜と連結子会社のフーズパレットが製造販売している中華惣菜は、ともに前年割れが続く結果となりました。惣菜製品全体では2億2,400万円の減収となっています。

昆布製品は、テレビCM放映と需要創造企画の実施により、主力品である佃煮「ふじっ子煮」が好調に推移し、2億5,300万円の増収となりました。

豆製品は、「豆小鉢」のテレビCM放映に連動した店頭露出アップにより、前年を上回っています。「豆小鉢」単体で見ると、前年比115パーセントということで、豆製品全体が久しぶりに前年を上回る大きな要因となりました。豆製品全体では、2億2,400万円の増収となっています。

続いてヨーグルト製品です。こちらは「カスピ海ヨーグルト脂肪ゼロ」「SOYカスピ海ヨーグルト」に添付企画を実施し、好調に推移しています。

ヨーグルト製品は、量販のカスピ海ヨーグルト製品と通販サプリがありますが、通販サプリは「善玉菌のチカラ」が、紅麹問題により中間期は非常に苦戦しました。その結果として、ヨーグルト製品全体では1億1,300万円の増収となりました。カスピ海ヨーグルトの量販だけで見ますと、前年比113パーセントと好調であり、通販サプリが非常に厳しかったことがうかがえます。

連結損益計算書(期初予想との比較)

期初予想との比較です。売上高は288億円の期初予想でしたが、7億4,400万円のマイナスで2.6パーセント減という結果です。営業利益は前年並みの期初予想でしたが、2億5,700万円でこちらも4億1,200万円のマイナス、61.5パーセント減でした。その結果、経常利益も8億円の期初予想に対し3億5,000万円のマイナス、中間純利益も5億6,000万円の期初予想に対し1億8,100万円のマイナスと、非常に厳しい内容になっています。

営業利益の増減要因分析(期初予想との比較)

期初予想に対する営業利益の増減要因の分析です。人件費は、最低賃金の引き上げを期初予想の段階で見込んでおり、期初予想以内に収束はできました。テレビCM等積極的な広告宣伝を実施しましたが、なかなか売上高を追い上げることができず、期初予想に届かない結果となりました。またコストダウンもうまく進まなかったということで、6億7,000万円の営業利益予想に対し、4億1,200万円下回る2億5,700万円で終わっています。

連結製品分類別売上高(期初予想との比較)

製品分類別の売上高、期初予想との比較です。全体で7億4,500万円のマイナスとなりました。内訳としては、すべてのところで減少し、とりわけ惣菜製品は4億400万円の減少となりました。惣菜製品の「おばんざい小鉢」については、前年実績はクリアしているものの、伸長を期待した期初予想には達することができませんでした。

豆製品も、先ほど「豆小鉢」が前年実績を大きくクリアしたとお伝えしましたが、伸長を期待した期初予想には届きませんでした。

ヨーグルト製品も、「カスピ海ヨーグルト」は大きく伸長したものの、通販サプリ「善玉菌のチカラ」の落ち込みが誤算でした。

四半期会計期間の売上・営業利益の増減推移(前期比)

四半期会計期間の売上・営業利益の増減の推移です。第1四半期も非常に厳しい利益の状況でした。第2四半期の8月、9月で5億円の取り戻しを社内で取り組んできましたが、このような結果となってしまいました。

営業利益は前同期比で半減し、累計でも前同期比39パーセントとなっています。売上に関しては、きっちり前年並みの水準はクリアできました。稼ぐチカラの復元ということが、ここでも課題として浮き彫りになりました。

連結貸借対照表(前期末との比較)

連結貸借対照表です。総資産は802億9,200万円で、3月期末とほぼ変わらない状況でした。自己資本比率も85.4パーセントで、こちらも3月期末とほぼ変わりません。

下期の施策

通期業績の見通しです。下期の施策としては9月に値上げを実施し、値上げ後の物量確保を最重要テーマとしています。

テレビCM放映の集中投下による物量引き上げが大きな課題です。すでに「ふじっ子煮」のほか、昨日までは「豆小鉢」「おばんざい小鉢」のテレビCMを放映しており、そして今は「カスピ海ヨーグルト」のテレビCMを放映している最中です。これらの既存の一般商品で、物量を引き上げていくことが課題です。

下期の施策

そして、「丹波黒黒豆」の拡販で年末商戦を成功させるため、12月21日から12月31日まで、今年も全国でCMを行います。そしてスライドのような売場を多面的に展開し、より多くの売場を作っていくことが課題です。

連結業績予想(前年との比較)

業績予想の前年との比較です。売上高は585億円ということで予想は変えていません。10月23日に業績予想の修正も行いましたが、こちらは中間期のみで、通期の予想は変更しないことをお知らせしました。

売上高は585億円、営業利益も当初の予定どおり20億円、経常利益は22億5,000万円、当期純利益は15億5,000万円です。1株当り当期純利益は54円45銭、配当金も46円で当初の予想を変えていません。

営業利益の増減要因分析(前年との比較)

通期予想の営業利益の増減要因です。前年の営業利益が15億3,000万円であるため、前年を4億6,900万円上回る予想です。継続する円安基調の影響による原材料価格の上昇はあるものの、包括値上げの実施により、限界利益は13億円の増加を見込んでいます。給与水準の改善、物流費の高騰を組込みつつ、販売量確保に向けた戦略的投資の実施によって増収増益に持ち込む見込みです。

連結製品分類別売上高(前年との比較)

製品分類別の売上高の予想です。合計で前期から27億8,500万円の増収、前期比105パーセントを見込んでおり、中身としてはすべての製品分類で増収を見込んでいます。惣菜製品については、「おばんざい小鉢」の追加テレビCM放映に加え、日配惣菜とフーズパレットの再拡大が予想の根拠です。昆布製品についても主力の佃煮「ふじっ子煮」の物量の引き上げや、先ほどの「MUGEN-KOMBU」の拡販などを行っていきたいと考えています。

豆製品は、値上げ後の「丹波黒黒豆」の物量確保、つまり12月商戦をきちんと成功させることが、売上高予想到達の最大の要因になるかと思います。そしてヨーグルト製品は、「カスピ海ヨーグルト」の追加テレビCM放映があり、この11月のテレビCMできちんと売上高を作り、その後ベースアップを図るという算段です。

※ご参考:連結製品分類別売上高(期初予想との比較)

参考までに期初予想との比較も付けています。ご確認ください。

連結設備投資額と減価償却費の推移

最後に、連結設備投資額と減価償却費の推移です。設備投資は、概ね計画どおりに進捗しています。上期は16億円の計画に対し14億2,600万円という結果でした。通期は期初予想どおり43億円を見込んでいます。上期の主な設備投資は、「おばんざい小鉢」ラインの増設でした。通期の減価償却費も、前期と同水準の34億円前後で推移すると見込んでいます。

配信元: ログミーファイナンス

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