-低消費・小型で、次世代通信インフラの基準信号源に対応-
セイコーエプソン株式会社(以下 エプソン)は、従来品「OG1409」シリーズ(以下 従来品)から56%減となる低消費電力化を実現した恒温槽付水晶発振器(以下 OCXO)『OG7050CAN』を開発しました。また、製品サイズは7.0 × 5.0 mm、高さ3.3 mm Typ.(Typical Value)と、従来品から体積比85%減を実現しています。 *1 当社従来品「OG1409」シリーズ(販売終了機種)と比較
基地局やデータセンターなど、有線・無線の基幹通信設備内の基準信号源には、精度や安定性などに厳しい基準が定められています。そのため基準信号源は、水晶発振器に恒温槽*2を組み合わせ、周囲の温度が変化しても水晶発振器の内部温度を一定にすることで、周波数変化が少ない高い安定性を有したOCXOが使用されています。
近年、第5世代通信システム(5G)/IoT(Internet of Things)の普及やデータセンターにおけるAI (Artificial Intelligence)活用、さらに第6世代通信システム(6G)サービスに向けて通信データトラフィックが増大し続けています。それらに伴い、基地局やデータセンターの電力消費量が急増することが予想されており、基準信号源として使用されるOCXOにも、低消費電力化が求められています。
これに対応するために、エプソンは自社で有している独自の水晶デバイスと半導体、さらには実装技術の融合により、従来品と比較し、56%減の低消費電力化と、体積比85%減の小型化を実現したOCXO を開発しました。
低消費電力の実現には、恒温槽の小型化が必要となります。そのための主要課題の一つは、恒温槽内部のSC(Stress Compensated)カット振動子の小型化です。
SCカット振動子は、一般的な水晶発振器に用いられるATカット振動子*3とは異なり、熱衝撃や振動に強いうえに高安定である一方、小型化が難しい側面を持ちます。そのため、従来品は直径6 mmの円形構造を採用していることから恒温槽自体が大きく、温度を一定に保つには多くの電力量が必要でした。そこで、円形構造から長方形構造に設計を見直すことで、性能は維持しつつ、少量の電力量で温度を一定に保つことが可能な、SCカット振動子の90%小型化に成功しました。これにより恒温槽部は従来品から96%の体積減を実現しました。
もう一つの課題は低消費電力構造の実現です。
SCカット振動子の温度を低電力で一定に保つための動作に最適な、発振ICとヒーターICを独自開発し、それらを恒温槽に搭載。この恒温槽をOCXOパッケージの中に低熱伝導接着剤で接着して内部断熱性を高めることで、ヒーターICの発熱損失を抑制し低消費電力構造を実現しました。また、SCカット振動子の温度制御方式を従来のアナログ方式からデジタル方式に変更することで、周囲温度が変動しても内蔵のSCカット振動子の温度をより高安定に保つことに成功し、OCXOの周波数温度特性を±50ppb*4から±3ppbに低減しました。
これらの開発により、従来品比56%減の低消費電力(25 ℃の環境下において0.2 W)と、体積85%減の小型化(7.0 × 5.0 mmサイズ)、かつ高精度なOCXO構造を実現しました。また、この消費電力低減により起動時のSCカット振動子の温度がより早く安定し、周波数の収束時間が従来品より5倍以上短縮しました。
本OCXOは、2025年4月からのサンプル提供を予定しています。
なお、本開発内容については、11月4日~7日にスペインで開催される「The International Timing and Sync Forum(ITSF 2024)」(下記 ウェブサイト参照)にゴールドスポンサーとして協賛し、講演を実施する予定です。
今後もエプソンは水晶デバイスのリーディングカンパニーとして、さまざまな電子機器や社会インフラのニーズに対応する水晶デバイス製品を提供してまいります。
■開発品の主な特長
・低消費電力:25 ℃(無風状態)の環境下において、0.2 W
・小型サイズ:7.0 × 5.0 × 3.3 mm Typ.
・周波数温度特性 ±3ppb
・周波数が±20ppb以内に安定するまでの起動時間 30秒
・PLL*5機能搭載により、IC内部の設定で1 MHz ~ 170 MHzの出力周波数に対応可能
・ジッタ低減機能装備でPLLによるノイズ悪化を抑制
■ITSF(The International Timing and Sync Forum)概要
世界最大級の時刻同期をテーマにしたフォーラムで、世界中の業界関係者が一堂に会し、3日間にわたって講演やソリューション展示、ネットワーキングが行われます。講演にはエンドユーザーやオペレーター、機器ベンダーなどの著名人が登壇し、さまざまな業界における最新の時刻同期ソリューションの進歩や課題が紹介されます。
・ウェブサイト:https://itsf2024.executiveindustryevents.com/Event/
【お客様のお問い合わせ窓口】
セイコーエプソン株式会社 MD営業部MD営業グループ
・ウェブサイト:https://www.epsondevice.com/crystal/ja/contact/
【開発品の概仕様】
*1 当社従来品「OG1409」シリーズ(販売終了機種)
*2 恒温槽:槽内の温度を一定に保つために設計された装置
*3 ATカット振動子:水晶原石からATカットと呼ばれる切断角度で作り出された水晶振動片を内蔵した水晶振動子。メガヘルツ(MHz)帯をカバーし、水晶振動子の中で最もポピュラーに使用されている。常温付近に変極点を持った3次関数の周波数-温度特性を持っており、温度特性に優れている
*4 ppb:10億分の1
*5 PLL:Phase Locked Loop(位相同期ループ)の略で、特定周波数のクロック信号をベースに任意の出力周波数を作り出す
以上
セイコーエプソン株式会社(以下 エプソン)は、従来品「OG1409」シリーズ(以下 従来品)から56%減となる低消費電力化を実現した恒温槽付水晶発振器(以下 OCXO)『OG7050CAN』を開発しました。また、製品サイズは7.0 × 5.0 mm、高さ3.3 mm Typ.(Typical Value)と、従来品から体積比85%減を実現しています。 *1 当社従来品「OG1409」シリーズ(販売終了機種)と比較
基地局やデータセンターなど、有線・無線の基幹通信設備内の基準信号源には、精度や安定性などに厳しい基準が定められています。そのため基準信号源は、水晶発振器に恒温槽*2を組み合わせ、周囲の温度が変化しても水晶発振器の内部温度を一定にすることで、周波数変化が少ない高い安定性を有したOCXOが使用されています。
近年、第5世代通信システム(5G)/IoT(Internet of Things)の普及やデータセンターにおけるAI (Artificial Intelligence)活用、さらに第6世代通信システム(6G)サービスに向けて通信データトラフィックが増大し続けています。それらに伴い、基地局やデータセンターの電力消費量が急増することが予想されており、基準信号源として使用されるOCXOにも、低消費電力化が求められています。
これに対応するために、エプソンは自社で有している独自の水晶デバイスと半導体、さらには実装技術の融合により、従来品と比較し、56%減の低消費電力化と、体積比85%減の小型化を実現したOCXO を開発しました。
低消費電力の実現には、恒温槽の小型化が必要となります。そのための主要課題の一つは、恒温槽内部のSC(Stress Compensated)カット振動子の小型化です。
SCカット振動子は、一般的な水晶発振器に用いられるATカット振動子*3とは異なり、熱衝撃や振動に強いうえに高安定である一方、小型化が難しい側面を持ちます。そのため、従来品は直径6 mmの円形構造を採用していることから恒温槽自体が大きく、温度を一定に保つには多くの電力量が必要でした。そこで、円形構造から長方形構造に設計を見直すことで、性能は維持しつつ、少量の電力量で温度を一定に保つことが可能な、SCカット振動子の90%小型化に成功しました。これにより恒温槽部は従来品から96%の体積減を実現しました。
もう一つの課題は低消費電力構造の実現です。
SCカット振動子の温度を低電力で一定に保つための動作に最適な、発振ICとヒーターICを独自開発し、それらを恒温槽に搭載。この恒温槽をOCXOパッケージの中に低熱伝導接着剤で接着して内部断熱性を高めることで、ヒーターICの発熱損失を抑制し低消費電力構造を実現しました。また、SCカット振動子の温度制御方式を従来のアナログ方式からデジタル方式に変更することで、周囲温度が変動しても内蔵のSCカット振動子の温度をより高安定に保つことに成功し、OCXOの周波数温度特性を±50ppb*4から±3ppbに低減しました。
これらの開発により、従来品比56%減の低消費電力(25 ℃の環境下において0.2 W)と、体積85%減の小型化(7.0 × 5.0 mmサイズ)、かつ高精度なOCXO構造を実現しました。また、この消費電力低減により起動時のSCカット振動子の温度がより早く安定し、周波数の収束時間が従来品より5倍以上短縮しました。
本OCXOは、2025年4月からのサンプル提供を予定しています。
なお、本開発内容については、11月4日~7日にスペインで開催される「The International Timing and Sync Forum(ITSF 2024)」(下記 ウェブサイト参照)にゴールドスポンサーとして協賛し、講演を実施する予定です。
今後もエプソンは水晶デバイスのリーディングカンパニーとして、さまざまな電子機器や社会インフラのニーズに対応する水晶デバイス製品を提供してまいります。
■開発品の主な特長
・低消費電力:25 ℃(無風状態)の環境下において、0.2 W
・小型サイズ:7.0 × 5.0 × 3.3 mm Typ.
・周波数温度特性 ±3ppb
・周波数が±20ppb以内に安定するまでの起動時間 30秒
・PLL*5機能搭載により、IC内部の設定で1 MHz ~ 170 MHzの出力周波数に対応可能
・ジッタ低減機能装備でPLLによるノイズ悪化を抑制
■ITSF(The International Timing and Sync Forum)概要
世界最大級の時刻同期をテーマにしたフォーラムで、世界中の業界関係者が一堂に会し、3日間にわたって講演やソリューション展示、ネットワーキングが行われます。講演にはエンドユーザーやオペレーター、機器ベンダーなどの著名人が登壇し、さまざまな業界における最新の時刻同期ソリューションの進歩や課題が紹介されます。
・ウェブサイト:https://itsf2024.executiveindustryevents.com/Event/
【お客様のお問い合わせ窓口】
セイコーエプソン株式会社 MD営業部MD営業グループ
・ウェブサイト:https://www.epsondevice.com/crystal/ja/contact/
【開発品の概仕様】
*1 当社従来品「OG1409」シリーズ(販売終了機種)
*2 恒温槽:槽内の温度を一定に保つために設計された装置
*3 ATカット振動子:水晶原石からATカットと呼ばれる切断角度で作り出された水晶振動片を内蔵した水晶振動子。メガヘルツ(MHz)帯をカバーし、水晶振動子の中で最もポピュラーに使用されている。常温付近に変極点を持った3次関数の周波数-温度特性を持っており、温度特性に優れている
*4 ppb:10億分の1
*5 PLL:Phase Locked Loop(位相同期ループ)の略で、特定周波数のクロック信号をベースに任意の出力周波数を作り出す
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