アイル Research Memo(8):2025年7月期も大幅増配予想、株主還元を強化

配信元:フィスコ
投稿:2024/10/10 12:08
*12:08JST アイル Research Memo(8):2025年7月期も大幅増配予想、株主還元を強化 ■アイル<3854>の成長戦略

2. 株主還元策
利益還元については、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、株主資本利益率や配当性向などを総合的に勘案して成果の配分を行うことを基本方針とし、配当性向35%以上、純資産配当率(DOE)10%以上を目標としている。2024年7月期より目標を引き上げた。2024年7月期の配当は前期比10.00円増配の年間41.00円(中間16.00円、期末25.00円)とした。配当性向は35.5%となる。2025年7月期の配当予想は前期比6.00円増配の47.00円(中間20.00円、期末27.00円)としている。2018年7月期から8期連続増配で、配当性向は36.1%となる。同社は余剰資金を活用して株主還元を強化する方針であり、収益拡大に伴って株主還元のさらなる充実が期待される。


人材投資を重視

3. サステナビリティ経営
同社は、ミッションに「Always free, love&dream with you. That is our responsibility. いつだってFREEを、LOVEを、DREAMを一緒に感じられるために。」を掲げ、事業による営利活動だけでなく、事業を通じてFREEを、LOVEを、DREAMを感じることができる事を大切にすることが社会的責任と考えている。またバリューには「“BX”を通じ、社会に夢を与える」(WITH SOCIETY)、「環境と両立した経営と、過剰在庫ゼロの世界を創る」(WITH ENVIRONMENT)、「社員一人ひとりが力を発揮できる風土・制度を発展させる」(WITH COWORKERS)、「透明・健全な経営を維持し、企業成長とともに企業価値を向上させる」(WITH SHAREHOLDERS)を掲げている。

「“BX”を通じ、社会に夢を与える」としては、「BX」を通じて「単純作業」からの解放を支援することで新たな価値創造のきっかけをつくり、より良い社会をつくるほか、テレワークなど多様な働き方の実現を助け、あらゆる人が活躍できる社会を目指す。また顧客やパートナーとの信頼を一義とし、単なる「取引先」の関係ではなく、二人三脚で成長できる共存共栄の関係を築く。「環境と両立した経営と、過剰在庫ゼロの世界を創る」としては、2022年7月の取締役会で決議したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)賛同と環境関連情報の開示を強化し、2030年度にGHG(温室効果ガス)排出量半減(2021年度比)、2050年度に実質ゼロを目指して活動する。また「BX」を通じて在庫管理・予測の精度を上げ、顧客とともにアパレルロス・フードロスといった社会問題の解決を目指す。

「社員一人ひとりが力を発揮できる風土・制度を発展させる」としては、社員の自律性を養い、夢をもって自由に取り組める風土づくりに取り組むほか、人種・性別・年齢・地位に関係なく「頑張った人」が報われる公平な評価制度を確立する。また働く時間や場所を拘束せず、子育て世代や介護、地方在住の社員も力を発揮できる環境を整備する。「透明・健全な経営を維持し、企業成長とともに企業価値を向上させる」としては、独立社外取締役5名体制(全14名中)により、多様な意見を反映させた健全な経営を維持する。また、ステークホルダー(株主、顧客、取引先、社員)との積極的な対話を通じ、経営に反映させる。

同社はバリューのうち「社員一人ひとりが力を発揮できる風土・制度を発展させる」を特に重視している。具体的には風土づくりとして、ガラス張りの経営、失敗を咎めず挑戦を称賛する文化、個人に合わせた多様な働き方、社長自ら行う新人研修を推進している。制度としては社長・役員会食や年間賞の設定、生理休暇の有給化やフレックス制度など女性が安心して働ける制度、「頑張った人が正しく評価される」公平な評価制度、社長や役員へ直接メッセージを発信できるメッセージメールを推進している。なお単体ベースでは、社員の平均年収(休職者を除く数値)は2020年7月期を100とすると2024年7月には109まで上昇した。これらの環境整備もあり、2024年7月期の離職率は3.4%(男性2.5%、女性5.0%)で、業界平均(同社調べ12.8%)に比べて非常に低い水準となっている。女性の産休復帰率は7期連続100%、男性の育休取得率は59.3%まで上昇している。そして2024年7月に実施したエンゲージメントサーベイでは、すべての項目で業界平均を上回る高いスコアとなった。ただし「自己成長」と「健康」のスコアが低いため、これを課題と捉えて今後も環境を向上させ、さらなる好循環を目指す。

サステナビリティへの取り組み事例としては、社会貢献活動の一環として2023年6月に開催された難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)の啓発活動を行う(一社)WITH ALSによるイベント「MOVE FES.2023 Supported by AIRU」にメインスポンサーとして協賛(2019年、2021年に続く3回目の協賛)した。同年10月には(独)日本学生支援機構が発行するソーシャルボンド(第73回日本学生支援債券)に投資した。2024年2月には、国際的な環境評価の情報開示システムを運用する国際的NGO団体CDPの気候変動調査でマネジメントレベル「B-」評価に認定された。また、Unipos(株)主催の「カル本アワード2023」においてベストカルチャー共創賞(事務局×経営陣部門)を受賞した。同年5月にはカスタマーハラスメントへの対応方針を策定した。同年7月には福利厚生の一環としてZERO(株)が提供するフードロス削減BOX「ZERO」を、大阪本社、東京本社、名古屋支社に設置した。社内での休憩時に手軽に軽食を購入できるとともに、フードロスの削減にも貢献する。さらに、國學院大學の体育連合会アルティメット部「TRIUMPH(トライアンフ)」のメインスポンサーに就任した。アルティメットの大学部活動でトップクラスの規模を誇る同チームの活動を支援する。

また地域支援(島根県松江市)の取り組みとして、2017年に開設した「アイル松江ラボ」では、島根大学や松江工業高等専門学校を中心とする現地採用や、オフィス1Fを「IT交流スペース」として開放し、ITのスキルや関心を高めるための活動を行っている。ブロックチェーン技術の実用化に向けた活動としては、EC業界における安全性と利便性を両立する次世代プラットフォームの実用化に向けて、出資先のシビラと共同で取り組んでいる。


利益率上昇基調を評価

4. 弊社の視点
同社の売上総利益率は2020年7月期の44.7%から2024年7月期は55.8%と11.1ポイント上昇し、営業利益率は同様に13.4%から24.4%と11.0ポイント上昇した。この要因は、同社が継続的に推進している人財育成・環境整備、製販一体体制による品質・生産性向上及びプロジェクト管理レベル向上、ストック売上高拡大という、地味ながらも着実な経営戦略の成果であり、この点を弊社では高く評価している。2024年9月に策定した中期経営計画は次の成長に向けたステップアップの3年と位置付けて、年平均2ケタ成長を維持しつつ、人財投資やプロモーション投資など成長投資の加速によって経営基盤の一段の強化を推進する方針だ。長期的な目標である営業利益率30%超の達成も視野に入っており、弊社では引き続き成長戦略の進捗状況や「BX」による成長加速の動向に注目したいと考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

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