居心地の良いベンチを明らかに
フクビ化学工業株式会社において屋外家具ブランド「Fandaline(ファンダライン)」の開発・販売を行っているまちづくり事業推進室(以下、フクビ化学工業株式会社)は、早稲田大学 人間科学部の佐野友紀研究室(以下、早稲田大学)と2023年度から居心地の良いベンチを明らかにするための共同研究を開始しました。初年度は、ベンチのレイアウト変更に伴う利用者の着席位置や利用行動の変化を明らかにするものであり、研究結果は2024年8月27日~30日に開催された日本建築学会大会にて発表いたしました。今年度(2024年度)についても、新たな視点を加えて引き続き共同研究を実施しています。
近年ベンチは、設置すると“治安が悪くなる”という認識から、“人々の集える場所になる”という認識へ変わりつつあり、設置場所が増えています。しかし、通路や建物沿いにあるベンチの置き方は、壁に背を付ける形式が一般的であり、利用者の中には歩行者と視線が合い座りづらいという意見があります。
フクビ化学工業株式会社は、「まち」の1階に人が自由に居られる場所を提供し、「ひと」と「まち」との関係が親しくなることをブランドミッションとした屋外家具ブランド「Fandaline(ファンダライン)」を2021年に発売し、ベンチなどの屋外家具を通じて居心地の良い空間づくりに貢献してきました。一方、早稲田大学は、都市・建築空間における群集行動の観察を通して、空間が人々に対してどのような影響を与えているかについて研究してきました。また、2022年からはウォーカブルなまちづくりのためにベンチを置く取り組みについて研究を開始していました。
フクビ化学工業株式会社がベンチや調査地、今までベンチを取り扱ってきた知見を提供し、早稲田大学が研究的視点・分析方法を提供することによって、居心地の良いベンチを明らかにすることができると考え、共同研究を開始しました。
【2023年度に実施した共同研究の概要・結果】
一般的な通路に対して横並びの「並行」、歩行者と対面する形となる「垂直」、2つのベンチを内向きにした「ハの字」、同じ方向へ斜めに向いた「斜め」の4通りに設定し、新田町ビル(東京都港区芝5丁目34-6)にて、2023年8月22日~25日に観察を行いました。
常設されているため認知度もあることから、4日間の合計利用者数は約600名でした。ベンチが並ぶ通りの店にはコンビニやカフェがあるため購入した商品を飲食する方が多く、昼食時は4日間ともほぼ満席状態でした。研究では、滞在時間や座る場所、ベンチで行う行動を集計し、滞在時間や多い利用方法を中心に好まれるベンチの要素を明らかにしました。結果、斜め配置は席ごとに開放感・囲まれ感・視線に違いが生まれる一方、並行・垂直は席ごとの特性が均一であり、行動内容に適した座席の特性に合わせて、着席選択が行われることが明らかとなりました。
また、滞在時間別人数割合を調べた結果、ベンチ利用者の56%が10分未満の滞在でした。10~20分未満は26%、20~30分未満は10%、30分以上は8%と短時間の利用者が半数以上であるものの、30分以上利用される方もいました。
ベンチで行われた行動を9つ(PC利用・スマホ利用・飲食・座らず荷物を置く・会話・何もせずに休憩・睡眠・電話・読書)に分類して集計した結果、4日間の行動別人数割合はスマホ利用と飲食がそれぞれ全体の30%、休憩が15%、会話と電話がそれぞれ5%でした。
並行や垂直、ハの字配置は、柱に囲まれた2基のベンチ位置が対称である一方、斜め配置は、柱に近い席(青丸)、前の座席や植栽が視界に入る席(緑丸)、前の座席や植栽が視界に入る光の当たりやすい席(赤丸)とそれぞれ囲まれ感の異なる配置となりました。そのため斜め配置のとき、行動の行われる場所が一定でした。PCは最も囲われ感の強い青丸席、電話や会話は、周辺歩行者とある程度距離を取りやすい緑丸席、読書は、前の座席や植栽が視界に入るも、光が当たって開放感を感じられる赤丸席を選んでいたことから、行動内容に適した座席を選択していることが明らかとなりました。
【2024年度以降の検討内容について】
今年度については、田町センタービル2階レベルのペデストリアンデッキにて調査・研究を行っております。屋根のないより人通りの多い場所で、2023年度と同様のベンチレイアウトを再現して行動観察を行うとともに、上空からの撮影も加えてベンチレイアウトが人流に及ぼす影響についても評価を行っています。
フクビ化学工業株式会社は早稲田大学との共同研究を継続して行うことでベンチの効果を定量的学術的に解明し、より良い公共空間を生み出す提案力を強化し、持続可能なまちづくりに貢献していきます。
参考文献
中村友紀, 佐野友紀.都市内歩行者通路におけるベンチの斜め型レイアウトが着席位置・行動内容に与える影響.日本建築学会大会学術講演梗概集. 2024. p.727-728
■ファンダラインとは
「ファンダライン」は、自然と人々を迎えいれてくれる普遍的でやさしいデザインを心掛け、大きな広場から建物の軒先まで、さまざまな「まちの1階」に人が自由にいられる場所を提供することを目標にした新しい屋外家具ブランドシリーズです。
「ファンダライン」を通じて、魅力あふれる街並みや公共空間に人々の休息の場を提供し、日常のまちを活性化させることを目指します。
商品情報や他の取り組みについては、Fandaline のウェブサイトをご覧ください。
http://fandaline.jp
フクビ化学工業株式会社において屋外家具ブランド「Fandaline(ファンダライン)」の開発・販売を行っているまちづくり事業推進室(以下、フクビ化学工業株式会社)は、早稲田大学 人間科学部の佐野友紀研究室(以下、早稲田大学)と2023年度から居心地の良いベンチを明らかにするための共同研究を開始しました。初年度は、ベンチのレイアウト変更に伴う利用者の着席位置や利用行動の変化を明らかにするものであり、研究結果は2024年8月27日~30日に開催された日本建築学会大会にて発表いたしました。今年度(2024年度)についても、新たな視点を加えて引き続き共同研究を実施しています。
近年ベンチは、設置すると“治安が悪くなる”という認識から、“人々の集える場所になる”という認識へ変わりつつあり、設置場所が増えています。しかし、通路や建物沿いにあるベンチの置き方は、壁に背を付ける形式が一般的であり、利用者の中には歩行者と視線が合い座りづらいという意見があります。
フクビ化学工業株式会社は、「まち」の1階に人が自由に居られる場所を提供し、「ひと」と「まち」との関係が親しくなることをブランドミッションとした屋外家具ブランド「Fandaline(ファンダライン)」を2021年に発売し、ベンチなどの屋外家具を通じて居心地の良い空間づくりに貢献してきました。一方、早稲田大学は、都市・建築空間における群集行動の観察を通して、空間が人々に対してどのような影響を与えているかについて研究してきました。また、2022年からはウォーカブルなまちづくりのためにベンチを置く取り組みについて研究を開始していました。
フクビ化学工業株式会社がベンチや調査地、今までベンチを取り扱ってきた知見を提供し、早稲田大学が研究的視点・分析方法を提供することによって、居心地の良いベンチを明らかにすることができると考え、共同研究を開始しました。
【2023年度に実施した共同研究の概要・結果】
一般的な通路に対して横並びの「並行」、歩行者と対面する形となる「垂直」、2つのベンチを内向きにした「ハの字」、同じ方向へ斜めに向いた「斜め」の4通りに設定し、新田町ビル(東京都港区芝5丁目34-6)にて、2023年8月22日~25日に観察を行いました。
常設されているため認知度もあることから、4日間の合計利用者数は約600名でした。ベンチが並ぶ通りの店にはコンビニやカフェがあるため購入した商品を飲食する方が多く、昼食時は4日間ともほぼ満席状態でした。研究では、滞在時間や座る場所、ベンチで行う行動を集計し、滞在時間や多い利用方法を中心に好まれるベンチの要素を明らかにしました。結果、斜め配置は席ごとに開放感・囲まれ感・視線に違いが生まれる一方、並行・垂直は席ごとの特性が均一であり、行動内容に適した座席の特性に合わせて、着席選択が行われることが明らかとなりました。
また、滞在時間別人数割合を調べた結果、ベンチ利用者の56%が10分未満の滞在でした。10~20分未満は26%、20~30分未満は10%、30分以上は8%と短時間の利用者が半数以上であるものの、30分以上利用される方もいました。
ベンチで行われた行動を9つ(PC利用・スマホ利用・飲食・座らず荷物を置く・会話・何もせずに休憩・睡眠・電話・読書)に分類して集計した結果、4日間の行動別人数割合はスマホ利用と飲食がそれぞれ全体の30%、休憩が15%、会話と電話がそれぞれ5%でした。
並行や垂直、ハの字配置は、柱に囲まれた2基のベンチ位置が対称である一方、斜め配置は、柱に近い席(青丸)、前の座席や植栽が視界に入る席(緑丸)、前の座席や植栽が視界に入る光の当たりやすい席(赤丸)とそれぞれ囲まれ感の異なる配置となりました。そのため斜め配置のとき、行動の行われる場所が一定でした。PCは最も囲われ感の強い青丸席、電話や会話は、周辺歩行者とある程度距離を取りやすい緑丸席、読書は、前の座席や植栽が視界に入るも、光が当たって開放感を感じられる赤丸席を選んでいたことから、行動内容に適した座席を選択していることが明らかとなりました。
【2024年度以降の検討内容について】
今年度については、田町センタービル2階レベルのペデストリアンデッキにて調査・研究を行っております。屋根のないより人通りの多い場所で、2023年度と同様のベンチレイアウトを再現して行動観察を行うとともに、上空からの撮影も加えてベンチレイアウトが人流に及ぼす影響についても評価を行っています。
フクビ化学工業株式会社は早稲田大学との共同研究を継続して行うことでベンチの効果を定量的学術的に解明し、より良い公共空間を生み出す提案力を強化し、持続可能なまちづくりに貢献していきます。
参考文献
中村友紀, 佐野友紀.都市内歩行者通路におけるベンチの斜め型レイアウトが着席位置・行動内容に与える影響.日本建築学会大会学術講演梗概集. 2024. p.727-728
■ファンダラインとは
「ファンダライン」は、自然と人々を迎えいれてくれる普遍的でやさしいデザインを心掛け、大きな広場から建物の軒先まで、さまざまな「まちの1階」に人が自由にいられる場所を提供することを目標にした新しい屋外家具ブランドシリーズです。
「ファンダライン」を通じて、魅力あふれる街並みや公共空間に人々の休息の場を提供し、日常のまちを活性化させることを目指します。
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