株式会社CICS(リゾートトラスト株式会社の連結子会社)、国立研究開発法人 国立がん研究センター、住友重機械工業株式会社、ならびにステラファーマ株式会社とBNCTの治験に係る契約を締結
リゾートトラスト株式会社の連結子会社である株式会社CICS(代表取締役社長:古川哲也、本社:東京都江東区、以下「CICS」)は、国立研究開発法人 国立がん研究センター(東京都中央区、以下「がん研究センター」)、住友重機械工業株式会社(東京都品川区、以下「住友重機械工業」)ならびにステラファーマ株式会社(大阪市中央区、以下「ステラファーマ」) と、標準治療※1実施困難かつ切除不能な再発の胸部固形悪性腫瘍※2患者に対する、BNCT(Boron Neutron Capture Therapy:ホウ素中性子捕捉療法)の第I/II相バスケット試験※3(以下「本治験」)に係る契約(以下「本契約」)を締結しました。
本治験は、CICSの中性子照射装置(CICS-1)とステラファーマのホウ素薬剤(SPM-011)を用いたBNCTの安全性及び有効性を評価することと、住友重機械工業のFBPA合成装置(MPS200FBPA)で合成された薬剤「FBPA」の安全性および「FBPA-PET検査」によるBNCT施行の適否判定の有用性を探索的に評価※4することを目的としています。対象は、標準的な放射線療法や薬物療法が実施困難かつ切除不能な再発の胸部固形悪性腫瘍患者様です。
BNCTはホウ素化合物「BPA」ががん細胞に特異的に取り込まれるという原理を利用して、がん細胞を選択的に死滅させる治療法です。現在は、BPAをPET検査で用いる薬剤に応用した「FBPA」という薬剤を用いて、がん細胞を狙い撃ちするために必要なBPAががん細胞にどれだけ集積するかを確認する検査「FBPA-PET」※5の開発も進められています。本治験ではBNCT施行前にすべての被験者を対象としてFBPA-PET検査を実施します。
本治験はBNCTとして世界初の複数のがん種を対象とした治験となります。複数の胸部固形悪性腫瘍を対象とすることで、中性子が照射される病巣周囲の正常組織を共通化することができるとともに、個別のがん種に対する治験と比較して開発期間が短縮されることを、期待しています。また、FBPA-PET検査によるBNCTの適否判定を施行前に行うことで、患者様にあわせた最適な治療を検討することが可能になるものと期待しています。
胸部固形悪性腫瘍は初回治療で標準治療が施行された場合、再発時には薬物療法のみが選択され、選択可能な局所治療がない状況となっています。そうした状況の中、BNCTがいまだに治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズを満たすことが出来るよう、開発を進めてまいります。
なお、本契約の契約期間は、2028年10月31日までとなります。本件に関する今期当社連結業績への影響は、軽微です。
リゾートトラストグループは、1994年にメディカル事業に参入し、会員制医療倶楽部の運営を開始。山中湖クリニックにて当時研究用装置であった陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography、以下「PET」)をがん検診に導入しました(FDG-PET)。国内のPET普及に大きく貢献したほか、大学病院と画像診断や先制医療等の研究活動も推進してきました。現在は検診はもちろん、治療におけるソリューションを拡大し、当社グループでがん先端免疫治療の施設も運営支援しています。
リゾートトラストグループは、「ご一緒します、いい人生」というブランド・アイデンティティのもと、「人生100年時代の健康長寿・ウェルビーイングへの貢献」をスローガンに掲げています。また、「がんで大切な人を亡くさない社会を作りたい」という思いから、がん検診・治療に関わってまいりました。BNCTへの取り組みを通じて、より豊かでしあわせな時間(とき)を創造するお手伝いをするとともに、がん治療に新たな光をもたらしていきたいと考えています。
※1 標準治療:科学的根拠に基づき、現在利用できる「最良の治療」であることが示され、多くの患者様に行われることが推奨される治療
※2 胸部固形悪性腫瘍:食道がん、非小細胞性肺がん、乳がん、胸部に発生する悪性軟部肉腫、悪性胸膜中皮腫など
※3 バスケット試験:複数の疾患等に対して単一の治療法の有効性及び安全性を評価する試験
※4 探索的評価:次の段階の試験などに向けてさまざまな評価を行うこと。仮説を検証する検証的評価の前段階となるもので、仮説を立てるための評価
※5 FBPA-PET:BNCT に使用するホウ素化合物L-4ボロノフェニルアラニン(BPA)の標的腫瘍内への選択的ホウ素集積量を測定するFBPA(2-フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン)を用いたPET検査
【BNCTについて】
BNCTは放射線治療の一種であり、新しいがんの治療方法です。
患者様にホウ素化合物を投与すると、ホウ素(10B)ががん細胞に集まります。その後、患部に体外から中性子線を照射します。照射する中性子線は、非常にエネルギーが小さく、人体への影響はほとんどありませんが、ホウ素(10B)とぶつかると核反応を起こし、放射線(アルファ線と7Li核)が発生します。BNCTは、この放射線によってがん細胞を選択的に破壊する治療法です。
また、原則1回の中性子線の照射で治療が完了し、身体への負担が少ない治療法として期待されています。
【CICS-1について】
CICSが開発した加速器型の中性子捕捉治療装置です。RFQ(高周波四重極)直線加速器で加速した陽子をリチウムターゲットに衝突させることで中性子を生成するもので、人体への悪影響の大きい高速中性子の混在が少ないことが特徴です。また生成する中性子のエネルギーが800keV以下と低いため、BNCTに適した10keV程度のエネルギーに減速するための減速体系の小型化が可能となりました。
■機器に関するお問い合わせ先
株式会社CICS
〒135-0063 東京都江東区有明3-5-7 TOC有明ウエストタワー17F
Mail:tec@cics.jp
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