【QAあり】サンリツ、今期も積極的な人材確保を継続、販管費増を見込むも利益率は維持 米国新倉庫本格稼働に伴い増収増益を計画
本日のご説明内容
三浦康英氏(以下、三浦):代表取締役社長の三浦です。本日はご足労いただき、誠にありがとうございます。それでは私から、2024年3月期決算のご説明をします。本日の説明内容はスライドのとおりです。
1-1. 2024年3月期決算概要
2024年3月期の決算概要です。売上高は前年比9億3,600万円減の193億9,800万円と減収、業績予想に対しては達成率94.6パーセントという結果です。売上高については、次の取扱製品群別のスライドで詳しくご説明します。
売上原価率は前年比マイナス2.2ポイントの77.5パーセントです。この背景として、海上運賃の下落により売上高が大きく下がり、それに伴い外注費が下がったことが挙げられます。これにより海上輸送の原価率が改善されたことが、1つ目の要因です。
もう1つの要因は、アメリカにある子会社の事業売上高が伸びており、こちらの利益率が高かったことです。これにより、原価率が下がったと考えています。
一方で販売管理費は前年比3億8,400万円増の35億800万円です。今期は、人材確保に注力してきました。長年にわたる人材不足により、当社従業員には長時間労働で苦労をかけてきたため、新卒採用・中途採用ともに積極的な人材確保に取り組みました。
人件費は前年比約2億円の増加となり、それ以外では新基幹システムが一昨年から本稼働しており、ランニングコスト、ソフトウェアの償却費・保守費が年間を通じて約5,000万円増えています。
また、営業利益は前年比1億5,300万円減の8億6,500万円と、減益です。営業利益率は4.5パーセントと、当初予想とほぼ同等でした。
経常利益は、2025年3月期に53億円という成田地区の事業への大きな投資があり、そのシンジケートローンの手数料として約2億円が今期の最後に発生しています。
それに伴い、当期純利益は前年比4億700万円減の5億7,200万円と、減益になっています。2023年3月期には、一関倉庫の売却による特別利益がありました。そのため、前年比では大幅な減益となっています。
1-2. 取扱製品群別売上高増減
取扱製品群別の売上高増減です。まず小型精密機器は、前期比1億2,400万円減の減収です。航空貨物の取扱いが、前年比で大幅に下がったことが要因です。
大型精密機器は、前期比2億3,600万円増の増収です。半導体製造装置の海外への出荷は停滞しましたが、成田近辺での保管業務が増えたことによって増収となりました。また、無線通信機器の取扱いも好調でした。
医療機器はほぼ横ばいで、大きく売上を下げたのは工作機械とその他の製品群です。こちらは先ほどお伝えしたように、海上運賃の下落がありました。
NVOCCという海上輸送事業がありますが、その売上が前年比で約13億4,400万円減っていることが、工作機械およびその他の減収要因です。
1-3. セグメント別実績
開示セグメント別の実績です。梱包事業は減収増益です。減収要因は、海上運賃の下落です。増益要因は、米国子会社の工作機械の取扱いが増え、利益率の高い売上が増えたことです。
運輸事業は増収減益です。増収要因は、小型精密機器を中心に、新規案件の取扱いが増えたことです。減益要因は、外注費の値上げがあり、お客さまへの価格転嫁の交渉を行いましたが、十分に補うことができなかったことです。
倉庫事業も増収減益です。増収要因は、先ほどご説明した出荷待ち製品の取扱いの増加です。減益要因は、当社の外部倉庫において、集約化がかかった中での空きスペースが出たことです。
賃貸ビル事業は減収減益となっています。
1-4. 地域別売上高
地域別売上高のうち、アメリカ・中国についてご説明します。
まず、アメリカの事業は売上を大きく伸ばしています。昨年10月に西海岸の新倉庫が本格稼働し始め、その売上規模に加えて、東海岸のノースカロライナの倉庫の稼働が順調に推移したことが、増収要因です。
中国では、前期に新型コロナウイルスによるロックダウンなどもあって大変厳しい状況となり、売上が大きく下がりましたが、今期は前期比2億4,800万円増の増収となっています。設備関係の梱包事業がスポットで取れたため、そちらの売上が寄与した結果です。
ちなみに昨年のレートについて、アメリカドルは1ドル131円だったため、10円ほど円安による増収も含まれています。中国人民元のレートは、ほぼ変わっていません。
2-1. 中期経営計画の概要
3年間の中期経営計画の進捗についてご説明します。
まず、中・長期ビジョンです。「オペレーションからソリューションへ」ということで、この場でも何回かお伝えしていますが、従業員には「価値を創出しなさい」と伝えています。
当社には強いオペレーション力があり、現場力が強いことが特徴です。それに加えて、お客さまの潜在化した真のニーズを引き出し、そこに「価値を生みなさい」ということです。
また、社会から期待されていることに対しての価値創出を、ソリューションとして価値を生み、当社の物流サービスに付加していきます。そして、独自の強みに持っていこうということが、この「オペレーションからソリューションへ」というビジョンの内容です。
2-2. 中期経営計画の概要(経営目標)
中期経営計画の目標です。2026年3月期までの目標ということで、当期で2年目に入っています。
2023年3月期と比較して、売上高は8.2パーセントの伸び率、営業利益は7.9パーセントの伸び率、営業利益率はほぼ同等の5.0パーセントという計画目標を立てています。
2-3. 中期経営計画の概要(国内海外比較)
中期経営計画目標の国内海外の比較表です。2023年3月期では、売上高の海外比率が約9パーセントでした。こちらを、最終年度には12パーセントまで引き上げていこうという計画値です。
先ほどからお伝えしているように、国内よりも海外の利益率が高いことも現れています。海外の営業利益率は10パーセント近くになっている一方で、国内では4パーセントから5パーセント弱程度です。
2-4. 中期経営計画の進捗
計画値の進捗です。大きく3つの事業戦略を掲げています。
まずは、シームレスな国際一貫物流サービスの推進です。アメリカ西海岸の新倉庫が稼働しました。日本からの一貫物流事業に加え、アジアからアメリカに入る事業を一貫物流のサービスとして提供しており、現在は輸出入案件の拡大を進めています。
2つ目の戦略である顧客理解度深化によるソリューション提案には、2件の進捗があります。
1件目は、同業他社と協力し、成田のディストリビューションセンターの業務を受注しており、今期10月以降に開始されます。製品群としては、小型精密機器(制御システム)の取り扱いです。 2件目は、主要顧客である電力変換装置のお客さまが持つ外部倉庫の集約提案です。別々にあった約10ヶ所の外部倉庫を集約することを提案しました。
こちらは自社ではありませんが、府中に新しく1万坪の倉庫が立ち上がります。その半分を当社として賃貸し、提供していこうとしていうことです。10月からの府中の新しい倉庫の開設へ向け、準備中です。 3つ目の戦略は、成田地区の事業拡大です。こちらには、53億円の投資を行います。スライド下に写真と主要スペック・設備を記載しています。成田の新滑走路として2028年までに第2滑走路の延伸と第3滑走路の新設があるため、貨物量が約1.5倍になることが予想されます。
当社の新倉庫では、まずは半導体関連として、半導体の製造設備および関連する部品関係の取り扱いを目指すことになります。2026年6月の竣工を予定しており、現在は倉庫の詳細説明をターゲット企業に対して進めている状況です。
2-5. 中期経営計画の進捗
収益性の向上については、現在も適切な値上げの交渉を進めています。2024年問題も含めて、賃上げについては当社としても挙げています。まずはお客さまのご理解を求める交渉となります。 また、プロセスを分け、各セグメントで採算性をチェックしています。低採算の案件については撤退も視野に入れてお客さまと交渉し、人的資本をしっかり集めていこうと考えています。 設備投資について、成田新倉庫では53億円程度の投資です。省力化、DXの投資設備については、今期に1億円の投資を予定しています。
DX戦略について、「ロジメーター」とは現場作業の見える化です。スライド右下のモニターの写真が、ロジメーターのシステムです。現在は一つひとつの作業を分析していかに効率的に現場を回せるかを見るために、6部署に導入しています。
成田倉庫では保税を取り扱っており、保税システムと自動検尺システムを導入しています。スライド下の中央の写真が、自動検尺システムです。自動検尺システムによる効率化は、作業工数約70パーセントの削減に結びついています。
サステナビリティの取り組みについては、後ほど説明します。 事業運営の基盤強化では、人材育成計画を策定しています。現在は、当社の中核である梱包事業の人事制度の見直しの検討を進めています。
2-6. その他の取り組み
その他の取り組みについて、まずは2024年問題への取り組みです。
当社の自社トラックは約20台と、多くは保有していません。そのような中、2024年問題で一番問題視されているのが、トラックの待機時間です。現在は、当社が受け入れるトラックの待機時間の減少を図っています。
成田事業所では、トラック予約受付システムを導入しています。成田では、1日100台近いトラックが納入しています。事前にドライバーから入場時間を予約していただき、効率よく荷下ろしすることで、待機時間を減らしながら効率化を図り、年間約500万円のコスト削減に結び付けています。この予約受付システムは、他の事業所にも展開していこうと考えています。 さらに、環境への対応です。昨年、「アスエネ」というCO2の見える化を図る新しいシステムを導入しました。1年間のデータの蓄積ができたため、今期はScope1とScope2に対応します。 まず、Scope1では、燃料の温室効果ガスのCO2の削減・可視化をして、顧客へもデータを提供していきます。Scope2は、電力です。こちらも同じく可視化をして、削減に結び付けていきたいと考えています。
3-1. 連結業績予想
2025年3月期の業績予想です。売上高は前期比11億100万円増の205億円と、増収の計画です。売上原価は昨年下がりましたが、さらに0.1ポイント下げる計画です。 販売管理費は、前年比で2億3,100万円増えています。販売管理費には、新卒採用3年間の人件費を見込んでいます。ここ数年は積極的に新卒採用に取り組んでおり、3年で約30名の採用となります。また、昇給にも取り組んでいます。当社としては今期4.2パーセントの昇給率と捉え、実施予定です。 営業利益は9億2,000万円、利益率4.5パーセントの計画です。販管費が増えていますが、営業利益率は維持していく考えです。 当期純利益は6億2,000万円、設備投資は6億8,100万円の計画です。各拠点の修繕関係および海外に対する投資をしっかり見通していく中での投資計画となっています。
3-2. 取扱製品群別売上予想
取扱製品群別の売上予想です。小型精密機器については、昨年大きく下がった航空貨物の取り扱いが回復する見込みです。また、制御システムである成田のディストリビューションセンター開設と新たな受注による増収を計画しています。
大型精密機器については、府中倉庫の電力変換装置への取り扱いが増加します。医療機器については、一部CT・MRIにおいて国内の病院への納入があります。こちらは、今期は減産であるという予想です。 工作機械については、半導体関連も含め、現時点ではまだシクリカルな底辺という位置づけです。今期いつ浮上してくるかは、まだ不透明さが拭えない状況です。特に工作機械に関しては、アメリカでのさらなる受注拡大を目指していきたいです。西海岸の新倉庫のフル稼働も、増収要因に入れています。
3-3. 地域別業績予想
地域別の業績予想です。先ほどお伝えしたとおり、アメリカについては西海岸の新倉庫のフル稼働も含め、前期比2億3,900万円増の増収を計画しています。
中国についてはスポットでつないでいますが、主要顧客である機械系メーカーが依然として苦戦しているため、減収を予想しています。
3-4. 配当方針
配当方針です。2024年3月期の配当は1株あたり31円、配当性向は30パーセントで総会に提案予定です。2025年3月期も配当性向30パーセントを維持し、1株あたり34円の配当を予想しています。
4-1. サステナビリティ基本方針の策定
最後に、サステナビリティへの取り組みについてご説明します。
まずは基本方針です。当社の企業理念は、「美しく魅力のある会社サンリツの実現を目指します」としています。これを踏まえ、誠実な事業活動を通じて社会の持続的成長に貢献していきたいと考えており、5つの基本方針を出しています。
4-2. 環境への取り組み
基本方針に対する、環境への取り組みです。昨年、世界包装機構主催のパッケージングコンテストにおいて、ワールドスター賞を受賞しました。今回で5回目の受賞ですが、大変権威のある賞だと捉えています。
今回は、緩衝材の強度を保ったまま、材質をプラスチック系からコートボール系・ダンボール系へと変更し、さらに梱包開梱の容易さも追求したことで、ワールドスター賞を受賞しました。お客さまからも、大変好評をいただいています。
4-3. ダイバーシティ・職場環境の向上
続いてダイバーシティについてです。プロジェクトを発足し、2年目に入りました。
当社では、「全員活躍」を目指しています。まず課題として挙げられるのは、男女平等です。なぜならば、当社の現場では重量物の扱いなどがあり危険が伴うため、これまでは男性が現場職、女性が事務職と属人化してきている面がありました。そこで、まずは女性従業員へのヒアリングを行ったほか、昨年は交流会も実施しました。
さらに、今期は男性従業員へもヒアリングを行い、「それぞれの思いや考えを共有していきましょう。そして一体感を持って、働きやすく、やりがいのある職場、全員が活躍できる職場を作っていきましょう」ということで、現在もダイバーシティの取り組みを進行中です。
職場環境アンケートの実施も例年行っています。依然として暑い現場や寒い現場などもあることから、できるだけ従業員のコミュニケーションが取れる休憩所などへの投資を行い、今後も職場環境改善に取り組んでいきます。
4-4. サンリツ卓球部の活動
卓球部についてです。一昨年はJTTLの内閣総理大臣杯で優勝しましたが、昨年度は残念ながら3位でした。ただ、社会貢献という目的で「第2回サンリツ・三浦杯」を開催しています。将来はオリンピックを目指す小学生が集う大会を開くことで、卓球を通じた社会貢献をしています。
今後については模索中ですが、卓球を通じて社会に貢献できるよう、十分に検討しながら進めていきたいと考えています。
最後に、スライドに記載がありませんが、当社の主力事業の梱包のステータスが少しずつ上がる動きが出てきています。物流業界・梱包業界でも、人材不足・高齢化が急速に進んでいます。
また、現在は外国人の技能実習生の雇用を各梱包業者で受け入れていますが、3年後にはこの技能実習制度がなくなるという指針が経産省から出ており、特定技能制度だけが残ることになります。
工業包装という中に「梱包」が位置付けられてきましたが、今回、この工業包装の中から、「梱包」という産業分類を新たに認めていただきました。ここに至るまでには業界全体による働きかけがあり、私も業界のNo.2として経産省ならびに議員の方々に梱包の説明をして新しく産業分類に入れていただきましたが、これは異例中の異例と言えます。このことで、今後「梱包」という種目は必ずステータスが上がっていくと捉えています。
説明は以上ですが、当社は2028年には創立80周年を迎えます。ここはあくまでも通過点だと私は捉えており、100年継続できる長寿企業を目指しています。
そのためには、やはり成長は欠かせません。「いかに成長戦略を実行できるか。その基盤をいかに作れるか」が、私の使命だと考えています。今後とも、この点について十分なIRを通じて外部に発信していきたいと考えていますので、引き続きご理解いただければと思います。
質疑応答:梱包の人事制度の見直しについて
質問者:中期経営計画の進捗率についてのスライドのうち、人材育成計画の欄に「梱包の人事制度の見直し検討」という記載があります。具体的にお話しいただける部分があれば、教えてください。
三浦:梱包現場の従業員は、技術を要した職人のようなものです。そのような梱包現場において、オールマイティーではなくプロフェッショナルという意味合いで、梱包の人材を育てていき、梱包事業をしっかり継続していこうと考えています。
ドライバー制度はすでに一般とは別にありますが、それと同じ考えで、梱包の人事制度の改定を進めているところです。
質疑応答:成田倉庫での新しい制御システム案件について
質問者:成田倉庫での新しい制御システム案件について、もう少し詳しくご説明いただきたいと思います。輸入された貨物の国内流通のようなイメージでしょうか? また、成田のDC業務は、御社の既存施設で展開されるのでしょうか?
三浦:まず、制御システムの製品は、国内製造品の輸出貨物の取り扱いです。
現在、この制御システムのお客さまは、甲府の工場で生産されています。物流業務も甲府で行われていましたが、航空貨物で輸出されるため、製造工場が手狭ということもあり、物流業務を外へ出そうというものです。それを自社倉庫ではなく、成田の同業者との共同で提案をしており、そこでのオペレーションとなります。
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