スパークス・グループ、AUM3兆円へ向けた今後の戦略について回答 現在は4本柱を軸に約1兆8,900億円を運用
3兆円へ今後の戦略:成⻑実現のための4本柱について
Q:どのような意図で4本柱(日本株式、OneAsia、実物資産、プライベート・エクイティ)の戦略を立ち上げてきましたか?(スパークスはどのように4本柱を育ててきたのですか?)
阿部修平氏(以下、阿部):これまでずっとみなさまにお話をしてきたのですが、スパークスは1989年7月に日本株の小型株に投資するという戦略をもって創業いたしました。
そこから35年あっという間に時間が過ぎたのですが、4月末現在で1兆8,933億円を運用しております。うち70パーセントが日本株であり、日本株の中にも大型株、中型株、小型株、それからロングショート、それからエンゲージメントなど、いくつかのストラテジーがあります。
そのような中で、それぞれの担当のポートフォリオマネージャーがリサーチを共有しながら、より強い運用を作っていくことに日々取り組んでおります。
みなさまご存じのように、35年間私たちが達成してきたパフォーマンスは非常に誇れるものだと思っております。どの調査機関も、私たちが圧倒的なパフォーマンスを上げていると評価しています。私は日本株における日本一の運用会社をみんなで協力して作ってきたと自負しております。
残り30パーセントのうち、約15パーセントは再生可能エネルギーの領域です。これは11年前に始めたストラテジーですが、福島の不幸な事故の後、固定価格買取制を採用し、再生可能エネルギーの日本への普及が本格化しました。
そこをベースに固定価格買取制度のもと、太陽光や風力、バイオマス等の再生可能エネルギーで日本の電力をクリーンな電力に変えていこうと、金融会社としてやりたいと思って始めた戦略です。11年が経ち、現在のアセットのサイズとしては日本で4番目のファンドに育つことができました。
ベンチャーキャピタルについては、約9年前に世界の投資家が共通して言っていたAIやロボティクスのような、新しい次世代の領域に投資をしていこうということです。日本でAIやロボティクスの時代を牽引する、最も重要なインダストリーは自動車の業界だと思い、トヨタ自動車にシードマネーをお願いしたのが始まりです。
トヨタ自動車にシードマネーを投資していただいた結果、日本を代表する金融機関を含めて事業会社等が投資をしてくれました。これによって、現在日本で3番目のベンチャーキャピタルの投資ファンドまでに成長してきました。
アジア投資については、2005年に香港・韓国にオフィスを作るところから始め、他のアセットクラスに比べるとなかなか進んではいないのですが、確実にアジアに対する知見を深めていくことができていると思っています。
申し上げたように、日本株式、再生可能エネルギーを軸とする実物資産、AI・ロボットを中心に据えているベンチャーキャピタル、アジアの投資の4つを軸に今、約1兆8,900億円を運用しております。
2026年にこの預かり資産を3兆円にするということが、私がみなさまやスパークスの仲間に話している目標です。これをぜひ達成すべく、もっと良い投資を考え、実践する会社にしていきたいと思っております。
3兆円へ今後の戦略:今後の具体的な取り組みについて
Q:具体的には戦略別にどのように取り組んでいきますか?
阿部:日本株は今、全体の70パーセント、約1兆円を超える規模にまで成長しています。その中核は長期厳選投資戦略です。長期厳選投資戦略は、長期的かつ圧倒的なパフォーマンスを実現している、日本を代表する世界に誇る日本株投資ファンドです。
このファンドについては、ここから大きく成長する余力があると思っていますし、その実績もあると思っていますので、ここから日本株が本格的に再生・復活する中で、スパークスの代表的なファンドとして、ぜひ世界の投資家にご紹介していきたいと思っています。
また、スパークスの祖業である中小型株も、厳選戦略に劣らない、非常に高い長期的な投資結果を残しております。大型株が先行しているという短期的なことも踏まえて、世界の投資家に私たちの強みを紹介して成長させていくか、日本株で3兆円の道のりの半分以上を増やして成長させていくことを考えております。
日本株の中に新しい戦略として、オルタナティブ、オルタナティブのエンゲージメント、それからオルタナティブの領域で私たちがインダストリーを作ったと言っても過言ではないロングショートについては、ここからさらに多くの世界の投資家に紹介していきたいと思っています。
世界の成長をリードするのはアジアの投資だという確信を持っています。その確信をベースに、2年ほど前に私が中心となって東京にアジアの調査運用投資チームを作り、今アジアで2つの個別ファンドを作っております。
1つはインドに集中的に投資するファンド、もう1つはアジア全域に投資するファンドです。この2つのファンドを軸に、東京、香港、韓国のチームが東京に集まってアジアを調査しております。この1年で、約10人のメンバーで約1,000社を回っております。日本株でやったような徹底したリサーチをベースに投資するということで、もうすでに高い投資成果を上げ始めております。これも世界にぜひ紹介していきたいと思っています。
再生可能エネルギーも、今は日本で4番目ぐらいに大きな投資ファンドにまで成長しました。固定価格買取制をベースにしたアセットリターンを追求し、過去11年間で非常に高いリターンを上げております。
再生可能エネルギーは天候などに左右される不安定さがデメリットなのですが、これからは、蓄電所を設けることによって安定したクリーンな電力を供給するシステムを作るべく、投資家として資金を供給するファンドを作っていこうと準備を始めております。具体的にファンドが始まるのもそれほど遠くないと思っています。
また昨年、北海道苫小牧に水素を作る工場の建設を始めました。来年には稼働を始めると思いますので、今は組織づくりを一生懸命進めております。
水素の場合、作る、貯める、運ぶといったいろいろなプロセスの中で、非常に細かい規制に対する対応、配慮、そしてそれらを実行するプロフェッショナルチームが必要です。もうすでにその領域に非常に長けた数人のプロフェッショナルがスパークスに入社し、苫小牧の水素製造が始まる日をターゲットに準備を始めております。この苫小牧での取り組みは日本で最大級の水素製造所になるかと思います。
今年1月に、スパークスのファンドでこれまで行ってこなかったバイアウトの投資を行ったことについて付け加えたいと思います。IJTT社という、いすゞのエンジン部品を鋳造・鍛造する会社です。
エンジンに対して非常に誤った悲観論が台頭する中、私は非常に高品質なエンジンがこれからも残っていくと考えています。鋳造・鍛造という極めてアナログ、かつ高い精度が要求される技術をこれからも日本に残していかなければいけないという思いで、このIJTT社の株を取得しました。
そして、現経営とともに、いすゞやトヨタ自動車をはじめとする自動車業界全体の力を借りて、もっと強い会社にして再上場するという、投資のかたちとしてはバイアウトするという、スパークスでは初めての投資も実現することができました。これからはこのような投資もさらに進めていきたいと思っています。
IJTT社をバイアウトしたことによって、これからはプライベート・エクイティと言われる領域についても積極的に投資機会を見つけることができる会社でありたいと思っています。ベンチャーキャピタル、発電所への投資等は、広い意味ではプライベートエクイティ・インベストメントということになるのかもしれませんが、公開会社を非公開化する等、私たちが日頃考えるような、より積極的なプライベート・エクイティ投資についても果敢に取り組んでいきたいと思っています。
3兆円へ今後の戦略:経営指標の推移について
Q:重要な経営指標の推移についてどう考えていますか?
阿部:スパークスにおいては、KPIを置き、これまで経営してきました。こちらは運用報酬から基礎的なコストを引いた、非常にシンプルな損益計算書ですが、これを創業時から常に見ており、基礎収益で言うと過去最高水準のレベルに達しております。
また、株主のみなさまに還元する配当額も過去最高額となりました。
AUMは1兆8,900億円となっておりますが、ピークは2兆100億円くらいでしたので、ピークを更新するにはもう一息であります。こちらも必ず短い期間で更新していきたいと思っています。
利益については、2006年3月期に営業利益で164億円を出しております。今期は74億円であり、まだ過去最高水準と差があるのですが、ファーストステップとして営業利益100億円を目指すということを心の中に強く持って経営していきたいと思っています。できるだけ早い時期にそれを達成し、過去最高水準を視野に入れていくレベルに利益水準を押し上げたいと思っています。
さらにチャレンジングなのは、時価総額です。時価総額は2000年台前半に4,000億円のレベルに達しております。今はそのピークのレベルから劣後していますが、まずは1,000億、2,000億という企業価値向上を目指して、一歩一歩、株主のみなさまにも喜んでいただけるような結果を出すことに傾注していきたいと思います。
そのためには、いつもお話ししていますが、2026年までに預かり資産3兆円を必ずやり遂げることが前提条件だと思っております。時価総額について予想するのは難しいですが、3兆円のAUMが達成できれば、その他のKPIについても過去最高水準を更新できると思っております。
3兆円へ今後の戦略:阿部氏からのご挨拶
Q:最後に株主のみなさまにメッセージをお願いいたします。
阿部:この35年間一生懸命に組織を創り、いろいろな局面に対応してきた中で、やはり今、私が誇りに思うのは、スパークスが本当にすばらしい人財によって運営される組織になっているということです。
歴史を振り返ると、第1世代、第2世代、第3世代と組織が重層的に強くなっていると思います。もっと言えば、そのような世代間がお互いに励まし教え合う、新しいプロフェッショナルを創り出す、学校のような組織が出来上がったと思っております。
世界にも誇れる強い組織をベースに、この3兆円を必ず達成し、社員も誇りに思う組織にしていきたいと思っています。そして、それを達成することによって株主のみなさまの長期のご支援に報いることができると思っていますので、何卒よろしくお願いします。
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