S&P500月例レポート(24年4月配信)<後編>
米国経済
○2月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は52.5となりました。市場予想は51.5でした。
○2月のISM製造業景気指数は47.8となりました。市場予想は49.5で、1月の49.1から低下しました。
○2月のサービス業PMIは52.3となり、市場予想の51.3を上回りました。
○2月のISM非製造業景気指数は52.6となりました。市場予想は53.0でした(1月は53.4)。
○3月のPMI速報値は、製造業PMIが52.5と市場予想の51.8を上回りましたが、サービス業PMIは51.7となり、市場予想の52.0を下回りました。
○2月のCPIは、予想通り前月比0.4%上昇となりました。前年同月比は3.2%上昇となりましたが、市場予想は1月から変わらずの同3.1%上昇でした。コアCPIは前月比0.4%上昇しました。市場予想は同0.3%上昇でした。また、前年同月比は1月の3.9%上昇から同3.8%上昇に低下しました。
○2月のPPIは市場予想の前月比0.3%上昇に対して同0.6%上昇となりました(1月は同0.3%上昇)。前年同月比では1月の0.9%上昇から同1.6%上昇に加速しました。コアPPIは前月比0.3%上昇(1月は同0.5%上昇)、前年同月比では1月と変わらずの2.0%上昇でした。食品、エネルギー、貿易サービスを除いたPPIは前年同月比で2.8%上昇となり、1月の同2.6%上昇を上回りました。
○2023年第4四半期のGDP成長率確報値は、前期比年率3.4%となりました。市場予想は同3.2%でした。
○2023年第4四半期の企業利益の確報値は前期比8.6%増となりました。第3四半期は同0.1%減でした。
○2月の小売売上高は前月比0.6%増となりました。1月は当初発表の同0.8%減から同1.1%減に下方修正されました。
○1月の建設支出は前月比0.2%減となりました。市場予想は同0.2%増でした。また、12月は当初発表の同0.9%増から同1.1%増に上方修正されました。前年同月比では11.7%増となり、12月の同14.4%増から伸びが減速しました。
○2月の鉱工業生産指数は前月比0.1%上昇となりました。1月は当初発表の同0.1%低下から同0.5%低下に下方修正されました。2月の設備稼働率は78.3%に低下しました。1月は当初発表の78.5%から78.3%に下方修正されました。
○1月の貿易収支の赤字額は674億ドルとなりました。12月は642億ドルでした。
○1月の卸売在庫は、市場予想の前月比0.1%減に対し、同0.3%減となりました。12月は同0.4%増となりました。
○1月の製造業受注は前月比3.6%減となりました。市場予想は同3.0%減でした。12月は当初発表の同0.2%増から同0.3%減に下方修正されました。
○2月の耐久財受注は市場予想の前月比1.3%増に対し、同1.4%増となりました。1月は当初発表の同6.1%減から同6.9%減に下方修正されました。
○2月の輸入物価指数は、1月が前月比0.8%上昇したのに対し、同0.3%上昇しました。前年同月比では0.8%低下(1月の同1.3%低下から下落幅は縮小)しました。輸出物価指数は1月と同様に前月比0.8%上昇しました。前年同月比では1.8%低下し、1月は同2.2%低下しました。
○2月のミシガン大学消費者信頼感指数の確報値は、市場予想が当初発表から変わらずの79.6だったのに対し、76.9となりました。1年先のインフレ期待は変わらずの3.0%でした。
○3月のミシガン大学消費者信頼感指数の確報値は、市場予想が当初発表から変わらずの76.5だったのに対し、79.4となりました。1年先のインフレ期待は2.9%で、前月の3.0%から低下しました。
○民間調査機関コンファレンスボードが発表した3月の消費者信頼感指数は104.7となりました。市場予想は2月と変わらずの106.7でした。
○コンファレンスボードが発表した2月の米景気先行指数は前月比0.1%上昇となりました。市場予想は同0.3%低下でした。1月は同0.4%低下しました。
雇用関係
○2月のADP全米雇用統計では、民間部門雇用者数が14万人増となり、予想の15万人増を下回りました。娯楽・ホスピタリティー分野は4万1000人増でした。1月は当初発表の10万7000人増(市場予想は14万5000人増)から11万1000人増に小幅に上方修正されました。
○2月の雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比27万5000人増と市場予想の同19万人増を再び上回りました。1月は当初発表の同35万3000人増という大幅な増加から同22万9000人増(当初予想は17万人増)に大きく下方修正されました。
⇒2月の失業率は前月比横ばいの3.7%が予想されていましたが、3.9%に上昇しました(12月と11月は3.7%、10月は3.9%、9月は3.8%、なお2020年2月は3.5%でしたが、同年5月は13.3%となりました)。
⇒労働参加率は1月から横ばいの62.5%でした(12月は62.5%、11月は62.8%、10月は62.7%、9月は62.8%)。
⇒2月の週平均労働時間は市場予想の34.2時間を上回る34.3時間となりました。1月は当初発表の34.1時間から34.2時間に上方修正されました(12月は34.3時間、11月は34.4時間、10月は34.3時間、9月は34.4時間)。
⇒2月の平均時給は1月の前月比0.5%増(当初発表は同0.6%増)から同0.3%増へ伸びの低下が予想されていたのに対し、同0.1%増(前月の34.55ドルから34.57ドルに増加)となりました(12月と11月は同0.4%増、10月は同0.2%増、9月は同0.3%増)。前年同月比では予想通り4.3%増となり、1月の同4.4%増(当初発表は同4.5%増)を下回りました(12月は同4.0%増、11月は同4.0%増、10月は同4.0%増、9月は同4.2%増)。
○1月のJOLTS(求人労働異動調査)によると、求人数は886万3000件で、12月の888万9000件(当初発表は902万6000件)を下回りました。
○失業保険継続受給件数(季節調整済み)は、前月の186万2000件から179万5000件に減少しました。
⇒2024年3月7日発表の週間新規失業保険申請件数:21万7000件(当初の発表通り)。
⇒2024年3月14日発表の週間新規失業保険申請件数:20万9000件。
⇒2024年3月21日発表の週間新規失業保険申請件数:21万件。
⇒2024年3月28日発表の週間新規失業保険申請件数:21万件。
企業業績
○時価総額の99.5%に相当する499銘柄が2023年第4四半期の決算発表を終え、そのうちの369銘柄(73.9%)で営業利益が予想を上回り、497銘柄中332銘柄(66.8%)で売上高が予想を上回りました。第4四半期の最終結果は来週にも明らかになる予定ですが、暫定結果に基づくと、営業利益は前期比3.2%増、前年同期比では7.0%増になると予想されます。
⇒売上高は好調で、前期比4.6%増、前年同期比6.2%増となっており、2023年通年(15兆6000億ドル)で過去最高を更新するだけでなく、2023年第4四半期(初めて4兆ドルを超える見込み)も四半期ベースでの過去最高を更新する見通しです。
⇒2023年第4四半期の営業利益率は、第3四半期の11.15%から小幅に低下して11.00%になると予想されます(1993年以降の平均は8.39%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。
⇒現時点で、2023年第4四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は12.6%となっています。この割合は、2023年第3四半期は13.8%、2022年第4四半期は19.4%でした。
⇒2023年通年の利益は前年比8.4%増となる見通しで、この予想に基づく2023年の予想株価収益率(PER)は24.6倍となっています。
○2024年第1四半期については、決算期がずれている17銘柄が発表を終え、そのうち15銘柄で営業利益が予想を上回り、16銘柄中8銘柄で売上高が予想を上回りました。2024年第1四半期の利益は前期比0.6%増、前年同期比2.6%増となる見通しです。
○2024年通年の利益は前年比12.5%増が見込まれており、2024年の予想PERは21.9倍となっています。
○2025年通年の利益については、前年比13.9%増になると予想されており、2025年の予想PERは19.2倍となっています。
個別銘柄
○ディスカウントストア大手のダラー・ツリー
○メキシコ料理のファストフードレストラン、チポトレ・メキシカン・グリル
○米司法省は、アップルをスマートフォン市場の独占による連邦独占禁止法違反で提訴しました。
○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、ヘルスケア企業のソルベンタム
注目点
○ビットコインは2021年11月10日に記録した高値の6万8789ドルを上回る7万3750ドルをつけ、最高値を更新しました。その後、急落して一時5万9000ドル台をつけ、6万5420ドルで3月の取引を終えました。
○金価格も1トロイオンス=2215ドルをつけて過去最高を更新し、2184ドルで月末を迎えました。
○米国政府は半導体メーカー大手インテル
○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、オンライン小売りのアマゾン・ドット・コム
○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、テクノロジー企業のスーパー・マイクロ・コンピューター
配当金
○2024年第1四半期の配当支払い額は1株当たり18.06ドルで、過去最高を記録した前四半期の18.38ドルから1.7%減、前年同期の17.54ドルから3.0%増となりました。支払総額は1516億1000万ドルで、前四半期の1541億ドルからは減少、前年同期の1467億6000万ドルからは増加しました。
○2024年3月の配当支払い額は前年同月比9.0%減少しました(2024年1月は同7.4%増、2月は同11.1%増)。年初来の第1四半期の配当支払い額は前年同期比で3.0%増加しました。
⇒3月の配当支払額は前年同月の1株当たり6.36ドルから5.79ドルに減少し、支払総額も前年同月の532億3000万ドルから486億ドルに減少しました。
○2024年3月は、増配が15件、配当開始が0件、減配が1件で、配当停止は0件でした。2023年3月は、増配が26件、配当開始が0件、減配が2件、配当停止が1件でした。
⇒年初来の第1四半期では、増配が119件、配当開始が3件、減配が7件、配当停止が0件となっています。2023年第1四半期は、増配が134件、配当開始が1件、減配が6件、配当停止が2件でした。
⇒2023年通年では、増配が348件、配当開始が11件、減配が26件、配当停止が4件ありました。2022年は、増配が377件、配当開始が7件、減配が5件で、配当停止はありませんでした。
○3月の増配率の中央値は、2月の6.80%および1月の6.90%から7.14%に上昇し、年初来では6.80%となっています。3月の平均増配率は2月の8.91%から8.04%に低下し、年初来では8.46%となっています(いずれも2倍以上になった銘柄を除く)。2023年の年間の増配率の中央値は7.01%(2022年と2021年はともに8.33%)、平均値は8.68%(同11.80%、同11.76%)でした。
○2024年の配当に関して、予想は増加となっており、年間の増配率は1936年以降の平均である5.79%前後となる見通しです。この予想ではFRBによる2024年第2四半期末時点での利下げ開始に加えて、景気の大幅な減速は回避され、政府の財政政策の大きな調整はない(政策とインセンティブの継続を予想)ことを織り込んでおり、2024年の実際の現金支払額は、2023年の5880億ドルから約6.0?6.5%増加して、6290億ドルになると予想しています(2023年は5.05%増、2022年は10.80%増)。これにより2024年の現金配当は、15年連続の増加と13年連続の過去最高の更新が見込まれます。
インデックス・レビュー
◇S&P500指数
S&P500指数は上昇基調が続き、終値での史上最高値を複数回更新しました。同指数は5100と5200の水準を突破してそれを上回って推移し、3月に終値での最高値を8回更新して、年初来での最高値更新を22回としました(データが遡れる1929年以降で過去最多の1995年の77回を上回る勢い)。2023年は最高値の更新がなく、2022年も1回だけでした(最初の取引日の2022年1月3日)。S&P500指数は3月に3.10%上昇して、5254.35と史上最高値を更新して月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス3.22%)。2月は5096.27で終え、5.17%上昇(同プラス5.34%)、1月は4864.60で終え、1.59%の上昇(同プラス1.68%)でした。年初来の第1四半期では10.16%の上昇(同プラス10.56%)でした。
3月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は0.73%と2月の0.74%から低下し、年初来では0.75%となっています。なお、2023年通年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.42%)。3月の出来高は、2月の前月比4%増加の後に、同5%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では12%減少しました。2024年3月までの12ヵ月間は前年同期比5%減少しています。2023年通年では前年比1%減で、2022年通年は同6%増でした。
3月は2月と同様に11セクターすべてが上昇しました(1月は5セクターが上昇)。年初来の第1四半期では11セクター中10セクターが上昇しています。3月のパフォーマンスが最も良かったのは、10.43%上昇したエネルギーです(年初来では12.69%上昇、2021年末比では70.61%上昇)。騰落率最下位となったのは一般消費財で、3月は0.01%の上昇(同4.75%上昇、同7.78%下落)でした。
S&P500指数は1月の6回、2月の8回に続き、3月に8回史上最高値を更新し、これで年初来の史上最高値の更新回数は22回となりました。3月は1%以上変動した日数は20営業日中3日(上昇が2日、下落が1日)で、2%以上上昇した営業日はありませんでした。2月は1%以上変動した日数は20営業日中4日(上昇が3日、下落が1日)でした。年初来では、1%以上変動した日数は10日(上昇が7日、下落が3日)で、2%以上変動した日数は1日(上昇)でした。2023年通年は、1%以上変動した日数が250営業日中63日(上昇が37日、下落が26日)、2%以上変動した日数が2日(上昇が1日、下落が1日)でした。
3月は20営業日中5日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上の変動はありませんでした。対して2月は1%以上の変動が20営業日中4日で、2%以上の変動はありませんでした。年初来では、13日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上の変動はありませんでした。2023年通年では1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が218日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日でした(4%以上の変動が4日、5%以上の変動が1日)。
3月は値上がり銘柄数が増加し、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を大幅に上回りました。3月の値上がり銘柄数は402銘柄(平均上昇率は6.32%)と、2月の351銘柄(同7.33%)から増加しました。年初来では369銘柄(同13.41%)が上昇しています。3月の10%以上上昇した銘柄数は72銘柄(同13.88%)と、2月の96銘柄(同15.04%)から減少し、25%以上上昇した銘柄も1銘柄と、2月の4銘柄から減少しました。一方、3月の値下がり銘柄数は100銘柄(平均下落率は3.57%)と、2月の151銘柄(同4.21%)から減少しました。3月は10%以上下落した銘柄数は5銘柄(同14.62%)で、2月の9銘柄(同14.57%)から減少し、25%以上下落した銘柄は2月と同様にありませんでした。
2024年年初来では、値上がり銘柄数は369銘柄(平均上昇率は13.41%)で、199銘柄(同20.27%)が10%以上上昇し、35銘柄が25%以上上昇しました。一方、値下がり銘柄数は134銘柄(平均下落率は6.70%)で、28銘柄(同17.03%)が10%以上下落し、4銘柄が25%以上下落しました。2023年通年では2022年から改善し、値上がり銘柄数は322銘柄で、値下がり銘柄数は179銘柄でした。10%以上上昇した銘柄数は248銘柄、10%以上下落した銘柄数は85銘柄でした。143銘柄が25%以上上昇し、20銘柄が25%以上下落しました。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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