S&P500月例レポート(24年3月配信)<後編>

<前編>の続き

米国経済

 ○1月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.7となりました。市場では、12月の50.3から横ばいが予想されていました。

 ○1月のISM製造業景気指数は49.1となりました。市場予想は47.4、12月は47.1でした。

 ○1月のサービス業PMIは52.5となりました。市場予想は52.9でした。

 ○1月のISM非製造業景気指数は53.4となりました。市場予想は52.1、12月は50.5でした。

 ○2月のPMI速報値は、製造業PMIが51.5、サービス業PMIが51.3となっています。

 ○1月の消費者物価指数(CPI)は予想が前月比0.2%上昇だったのに対し、同0.3%上昇となりました。前年同月比は3.1%上昇となり、12月の同3.4%上昇から低下しましたが、期待されていた「3%未満」には届きませんでした。コアCPIは前月比0.4%上昇(12月は同0.3%上昇)、前年同月比では3.9%上昇(同3.9%上昇)となりました。先物市場が下落に転じる一方で、金利は上昇し、株式市場は2月13日に1.37%と大幅に下落しました。

 ○1月の卸売物価指数(PPI)は市場予想の前月比0.1%上昇に対して同0.3%上昇となりました。前年同月比では0.9%上昇となりました(12月は同1.0%上昇)。コアPPIは前月比0.5%上昇、前年同月比2.0%上昇となりました(同1.8%上昇)。

 ○2023年第4四半期のGDP成長率改定値は前期比年率3.2%となりました。事前予想では、速報値と変わらずの同3.3%が予想されていました。個人消費は、速報値の同2.8%増から同3.0%増に引き上げられました(確報値は3月に発表されます)。

 ○12月の建設支出は前月比0.9%増となりました。市場予想は同0.5%増でした。また、11月は当初発表の同0.4%増から同0.9%増に上方修正されました。前年同月比では13.9%増となり、11月の同12.8%増から伸びが加速しました。

 ○1月の小売売上高は前月比0.8%減となりました。市場予想は同0.1%減でした。12月は当初発表の同0.6%増から同0.4%増に下方修正されました。

 ○2023年第4四半期のEコマース小売売上高は前期比0.8%増となりました。市場予想は同1.8%増、第3四半期は同2.3%増でした。

 ○1月の小売在庫は前月比0.5%増となりました。12月は当初発表の同0.8%増から同0.6%増に下方修正されました。1月の卸売在庫は前月比0.1%減となりました。市場予想は同0.1%増、12月は同0.4%増でした。

 ○12月の製造業受注は前月比0.2%増となり、予想の同0.4%増を下回りました。11月は同2.6%増でした。

 ○1月の耐久財受注は市場予想の前月比4.5%減に対し、同6.1%減となりました。12月は当初発表の同横ばいから同0.3%減に下方修正されました。

 ○1月の個人所得は市場予想の前月比0.4%増に対し、同1.0%増となりました(12月は同0.3%増)。

  ⇒1月のPCE価格指数は前月比0.3%上昇しました。12月は当初発表の同0.2%上昇から同0.1%上昇に下方修正されました。1月の前年同月比は2.4%上昇でした(12月は同2.6%上昇)。コアPCE価格指数は前年同月比2.8%上昇しました(12月は同2.9%上昇)。

 ○12月の卸売在庫は前月比0.4%増となりました(予想通り)。11月は当初発表の同0.2%減から同0.45%減に下方修正されました。

 ○12月の企業在庫は予想通り、前月比0.4%増となりました。11月は同0.1%減でした。

 ○2023年第4四半期の非農業部門労働生産性(速報値)は前期比3.2%上昇しました。市場では同2.3%上昇が予想されていました。第3四半期は当初発表の同5.2%上昇から同4.9%上昇に下方修正されました。単位労働コストは前期比0.5%上昇しました。市場予想は同2.1%上昇で、第3四半期は当初発表の同1.2%低下から同1.1%低下に上方修正されました。

 ○1月の鉱工業生産指数は予想の前月比0.2%上昇に対し、同0.1%低下となりました。1月の設備稼働率は12月の78.7%から78.8%への上昇が予想されていましたが、78.5%に低下しました。

 ○12月の貿易統計によると、貿易赤字は622億ドルとなり、11月の619億ドルの赤字から小幅に増加しました。

 ○1月の輸入物価指数は、前月比0.1%低下の予想に対し、同0.8%上昇し、前年同月比では1.3%低下(12月は同1.6%低下)しました。輸出物価指数は前月比0.2%低下の予想に対し、同0.8%の上昇、前年同月比では2.4%の低下(同3.2%低下)でした。

 ○1月の貿易統計では、貿易赤字は902億ドルとなりました。輸入が前月比1.1%(12月は同1.5%)増加したのに対し、輸出は同0.2%(同2.5%)の増加でした。

 ○1月のミシガン大学消費者信頼感指数は前月の69.7から上昇し79.0となりました。1年先のインフレ期待は12月と変わらずの2.9%でした。

  ⇒2月のミシガン大学消費者信頼感指数の速報値は79.6で、前月の79.0から上昇しました。1年先のインフレ期待は3.0%で、前月の2.9%から上昇しました。

 ○民間調査機関コンファレンスボードが発表した2月の消費者信頼感指数は106.7に低下しました。市場では、1月の当初発表の114.8(改定値は下方修正されて110.9)から115.0に上昇すると予想されていました。

雇用関係

 ○1月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想の前月比17万人増を大幅に上回る同35万3000人増となり、12月は当初発表の同21万6000人増から同33万3000人増に上方修正されました。

  ⇒1月の失業率は3.8%への上昇が予想されていましたが、前月と変わらずの3.7%でした(11月は3.7%、10月は3.9%、9月は3.8%、なお2020年2月は3.5%でしたが、同年5月は13.3%となりました)。

  ⇒労働参加率は12月から横ばいの62.5%でした(11月は62.8%、10月は62.7%、9月は62.8%)。

  ⇒週平均労働時間は、12月の34.3時間から34.4時間への増加が予想されていましたが、34.1時間に減少しました(11月は34.4時間、10月は34.3時間、9月は34.4時間)。

  ⇒平均時給は12月の前月比0.4%増から同0.3%増へ伸びの低下が予想されていたのに対し、同0.6%増(前月の34.27ドルから34.55ドルに増加)となりました(11月は同0.4%増、10月は同0.2%増、9月は同0.3%増)。前年同月比では4.1%増となり、12月の同4.0%増を上回る伸びとなりました(11月は同4.0%増、10月は同4.0%増、9月は同4.2%増)。

 ○失業保険継続受給件数(季節調整済み)は、前月の183万3000件から186万2000件に増加しました。

  ⇒2024年2月1日発表の週間新規失業保険申請件数:22万4000件(当初の発表通り)。

  ⇒2024年2月8日発表の週間新規失業保険申請件数:21万8000件。

  ⇒2024年2月15日発表の週間新規失業保険申請件数:21万2000件。

  ⇒2024年2月22日発表の週間新規失業保険申請件数:20万1000件。

  ⇒2024年2月29日発表の週間新規失業保険申請件数:21万5000件。

企業業績

 ○時価総額の97.2%に相当する485銘柄が2023年第4四半期の決算発表を終え、そのうちの359銘柄(74.0%)で営業利益が予想を上回り、483銘柄中322銘柄(66.7%)で売上高が予想を上回りました。前期比で3.5%の増益、前年同期比で7.4%の増益が見込まれています。

  ⇒売上高は好調で、前期比3.0%増、前年同期比4.6%増となっており、2023年通年(15兆6000億ドル)で過去最高を更新するだけでなく、2023年第4四半期(初めて4兆ドルを超える見込み)も四半期ベースでの過去最高を更新する見通しです。

  ⇒2023年第4四半期の営業利益率は、第3四半期の11.15%から小幅に上昇して11.21%になると予想されます(1993年以降の平均は8.39%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。

  ⇒現時点で、2023年第4四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は12.8%となっています。この割合は、2023年第3四半期は13.8%、2022年第4四半期は19.4%でした。

 ○2023年通年の利益は前年比8.5%増となる見通しで、この予想に基づく2023年の予想株価収益率(PER)は23.8倍となっています。

 ○2024年通年の利益は前年比12.6%増が見込まれており、2024年の予想PERは21.2倍となっています。

個別銘柄

 ○破綻したシグネチャーバンクの資産を昨年取得した地方銀行のニューヨーク・コミュニティ・バンコープは赤字を計上し、将来の損失に備えて引当金を積み増しました。

 ○配車サービス大手リフトは、プレスリリースにおいて、今年は利益率が500%拡大するとの誤った見通しを発表し、同社の株価が時間外取引で60%以上上昇しました。その後、500%から50%に訂正されましたが、株価はなお前月比35.1%高で2月の取引を終えました。

 ○半導体メーカーのエヌビディアは、決算発表前に株価が7%下落しました。同社の業績発表に対する期待が大きいことへの懸念が、利益確定売りにつながったためです。しかし、市場が引けた後(2024年2月21日)に発表された同社の決算が、予想を大幅に上回る好業績だったことから、株価は2月22日の1日で16%上昇し(過去最高値を更新)、時価総額が1日当たりの増加額としては過去最高となる2730億ドルの増加を記録しました(この増加額はS&P500指数の構成銘柄中、477銘柄の増加額を上回るものです)。同社の株価は年初来で58.6%上昇、2021年末からは490%上昇しており、時価総額はS&P500指数構成銘柄で3番目に大きい1兆9400億ドルとなりました(マイクロソフトの3兆600億ドル、アップルの2兆7000億ドルに次ぐ)

注目点

 ○iPhoneメーカーのアップルは、電気自動車の開発計画を中止すると報じられました(推定2000人の従業員がこのプロジェクトに取り組んでいました)。

 ○2月は2銘柄が株式分割を行いました(2024年の最初の株式分割。2023年は4銘柄が実施しました)。ウォルマートは3対1、クーパーは4対1の株式分割を実施しました。

 ○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、オンライン小売りのアマゾンをダウ・ジョーンズ工業株価平均に追加し、小売ドラッグストアのウォルグリーン・ブーツ・アライアンスを同指数から除外しました

配当金

 ○2024年2月の配当支払い額は前年同月比11.1%増加しました(2024年1月は同7.4%増)。年初来の配当支払い額は前年同期比で9.8%増加しました。

  ⇒2月の配当支払額は前年同月の1株当たり7.19ドルから7.99ドルに増加しました。支払総額も前年同月の601億3000万ドルから670億5000万ドルに増加しました。

 ○2024年2月は、増配が70件、配当開始が3件、減配が5件で、配当停止はありませんでした。2023年2月は、増配が76件、配当開始が0件、減配が4件、配当停止が1件でした。

  ⇒年初来では、増配が104件、配当開始が3件、減配が6件、配当停止が0件となっています。

  ⇒2023年通年では、増配が348件、配当開始が11件、減配が26件、配当停止が4件ありました。2022年は、増配が377件、配当開始が7件、減配が5件で、配当停止はありませんでした。

 ○増配率の中央値は1月の6.90%から2月は6.80%に低下し、年初来では6.67%となっています。2月の平均増配率は1月の8.59%から8.91%に上昇し、年初来では8.52%となっています(いずれも2倍以上になった銘柄を除く)。2023年の年間の増配率の中央値は7.01%(2022年と2021年はともに8.33%)、平均値は8.68%(同11.80%、同11.76%)でした。

 ○2024年の配当に関して、予想は増加となっており、年間の増配率は1936年以降の平均である5.79%前後となる見通しです。この予想ではFRBによる2024年第2四半期末時点での利下げ開始に加えて、景気の大幅な減速は回避され、政府の財政政策の大きな調整はない(政策とインセンティブの継続を予想)ことを織り込んでおり、2024年の実際の現金支払額は、2023年の5880億ドルから約6%増加して、6260億ドルになると予想しています(2023年は5.05%増、2022年は10.80%増)。これにより2024年の現金配当は、15年連続の増加と13年連続の過去最高の更新が見込まれます。

インデックス・レビュー

◇S&P 500指数

 S&P500指数は2月に5.17%上昇して、5096.27と史上最高値を更新して月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス5.34%)。1月は4845.65で終え、1.59%上昇(同プラス1.68%)、12月は4769.83で終え、4.42%の上昇(同プラス4.54%)でした。年初来では6.84%上昇(同プラス7.11%)、過去1年間では28.36%の上昇(同プラス30.45%)となっています。2023年は24.23%の上昇(同プラス26.29%)、2022年は19.44%の下落(同マイナス18.11%)でした。2月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は0.74%と1月の0.79%から低下し、年初来では0.76%となっています。なお、2023年通年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.42%)。2月の出来高は、1月の前月比5%減少の後に、同4%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では3%減少しました。2023年通年では前年比1%減で、2022年通年は同6%増でした。

 昨年12月の10セクター、1月の5セクターに対して、2月は11セクターすべてが上昇しました。2月のパフォーマンスが最も良かったのは、8.60%上昇した一般消費財です(年初来では4.74%上昇)。騰落率最下位となったのは公益事業で、2月は0.53%の上昇(同2.55%下落)でした。

 2月は1%以上変動した日数は20営業日中4日(上昇が3日、下落が1日)で、2%以上上昇した営業日が1日ありました。1月は1%以上変動した日数は21営業日中3日(上昇が1日、下落が2日)でした。2023年通年は、1%以上変動した日数が250営業日中63日(上昇が37日、下落が26日)、2%以上変動した日数が2日(上昇が1日、下落が1日)でした。2月は20営業日中4日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上の変動はありませんでした。対して1月は1%以上の変動が21営業日中4日で、2%以上の変動はありませんでした。2023年通年では1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が218日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日でした(4%以上の変動が4日、5%以上の変動が1日)。

 2月は値上がり銘柄数が増加し、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回りました。2月の値上がり銘柄数は351銘柄(平均上昇率は7.33%)と、1月の224銘柄(同4.75%)から増加しました。10%以上上昇した銘柄数は96銘柄(同15.04%)と、1月の24銘柄(同13.29%)から増加し、25%以上上昇した銘柄も4銘柄と、1月の1銘柄から増加しました。一方、2月の値下がり銘柄数は151銘柄(平均下落率は4.21%)と、1月の279銘柄(同5.28%)から減少しました。2月は10%以上下落した銘柄数は9銘柄(同14.57%)で、1月の39銘柄(同14.50%)から減少し、25%以上下落した銘柄は1月と同様にありませんでした。

 2024年年初来では、値上がり銘柄数は302銘柄(平均上昇率は9.56%)で、121銘柄(同16.35%)が10%以上上昇し、10銘柄が25%以上上昇しました。一方、値下がり銘柄数は201銘柄(平均下落率は6.77%)で、46銘柄(同15.52%)が10%以上下落し、25%以上下落した銘柄はありませんでした。2023年通年では2022年から改善し、値上がり銘柄数は322銘柄で、値下がり銘柄数は179銘柄でした。10%以上上昇した銘柄数は248銘柄、10%以上下落した銘柄数は85銘柄でした。143銘柄が25%以上上昇し、20銘柄が25%以上下落しました。
 

 

 

 

 

 

 
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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配信元: みんかぶ株式コラム